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ジャンケンが弱い伯爵令嬢
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「あ、あー、負けた……」
「キャー!勝ちましたわ!やりましたわ!」
阿鼻叫喚の中、座り込む一人の伯爵令嬢。何が行われているのかと言うと、この国の第一王子ヨハンの婚約者選定。
総当たり戦で先に五敗したら、負け。最初は調子が良かった。ジャンケンという遊びは、公爵令嬢であるエリザベス様が孤児院の視察の際、子供達から仕入れてきた庶民の遊びだ。
三種類のポーズで勝ち負けを決める画期的な遊び。エリザベス様曰く、お掃除当番とか、食事係とか、面倒なことを決める時にこの遊びで決定したりするとのこと。
「だから、これで、パパッと婚約者を決めちゃうのはどうかしら。」
その一言で、誰もがこの婚約者と言う地位を面倒だと思っていることが判明してしまった。
初めてする遊びに戸惑うも、簡単なルールは覚えやすく、単純に楽しい。
「掛け声は必ずみんなでね、はい、「最初はグー」」
「「ジャンケン、ポン」」
「「アイコデショ」」
「「アイコデショ」」
「ああ~」「やったー!」
負けたのは、部屋の真ん中で座り込んでいるザガン伯爵家の、コリーナ嬢。彼女はジャンケンがこの中で一番弱かった。
コリーナはこの選定で選ばれなかったら、領地へ戻って薬草の研究に明け暮れる筈だった。果ては王宮の薬草研究員として働きたいと思っていたのだが。
コリーナは溢れる涙を抑えることは出来なかった。
婚約者候補に選ばれた令嬢の中で、恋人がいない令嬢として、一番望ましいと思われていたかもしれないコリーナだが、
小さい頃からの夢を断念せざるを得ない状況になれば、恋人と別れなければならないような感情に陥ってしまう。
研究が恋人と言っても、過言ではなかったが、正直なところ、ジャンケンに勝った他のご令嬢達は、内心ホッとしていた。彼女達の多くは婚約者はいなかったが、既に将来を約束した相手がおり、王子には全くこれっぽっちも興味がなかったのだ。
ああ、あの時パーを出していたら、私ではなくてローレル侯爵家のスザンヌ様に決まったと言うのに。スザンヌ様も恋人が、とか仰っていたけれど、それは狂言だったと知っている。
と言うより、当然だが、選定前に彼女は恋人と別れていたのだ。恋人がいる状態で王子殿下の婚約者候補になるのは失礼に当たるとそう仰って。
それなのに、神様は意地悪だ。
「私が何をしたって言うんですか?」
別に王子殿下には何の思いもない。だが、恨みはやっぱり出てきてしまうのだ。
ああ、あの時パーを出したらこんな訳の分からない世界に放り込まれることもなかったのに、と。
「キャー!勝ちましたわ!やりましたわ!」
阿鼻叫喚の中、座り込む一人の伯爵令嬢。何が行われているのかと言うと、この国の第一王子ヨハンの婚約者選定。
総当たり戦で先に五敗したら、負け。最初は調子が良かった。ジャンケンという遊びは、公爵令嬢であるエリザベス様が孤児院の視察の際、子供達から仕入れてきた庶民の遊びだ。
三種類のポーズで勝ち負けを決める画期的な遊び。エリザベス様曰く、お掃除当番とか、食事係とか、面倒なことを決める時にこの遊びで決定したりするとのこと。
「だから、これで、パパッと婚約者を決めちゃうのはどうかしら。」
その一言で、誰もがこの婚約者と言う地位を面倒だと思っていることが判明してしまった。
初めてする遊びに戸惑うも、簡単なルールは覚えやすく、単純に楽しい。
「掛け声は必ずみんなでね、はい、「最初はグー」」
「「ジャンケン、ポン」」
「「アイコデショ」」
「「アイコデショ」」
「ああ~」「やったー!」
負けたのは、部屋の真ん中で座り込んでいるザガン伯爵家の、コリーナ嬢。彼女はジャンケンがこの中で一番弱かった。
コリーナはこの選定で選ばれなかったら、領地へ戻って薬草の研究に明け暮れる筈だった。果ては王宮の薬草研究員として働きたいと思っていたのだが。
コリーナは溢れる涙を抑えることは出来なかった。
婚約者候補に選ばれた令嬢の中で、恋人がいない令嬢として、一番望ましいと思われていたかもしれないコリーナだが、
小さい頃からの夢を断念せざるを得ない状況になれば、恋人と別れなければならないような感情に陥ってしまう。
研究が恋人と言っても、過言ではなかったが、正直なところ、ジャンケンに勝った他のご令嬢達は、内心ホッとしていた。彼女達の多くは婚約者はいなかったが、既に将来を約束した相手がおり、王子には全くこれっぽっちも興味がなかったのだ。
ああ、あの時パーを出していたら、私ではなくてローレル侯爵家のスザンヌ様に決まったと言うのに。スザンヌ様も恋人が、とか仰っていたけれど、それは狂言だったと知っている。
と言うより、当然だが、選定前に彼女は恋人と別れていたのだ。恋人がいる状態で王子殿下の婚約者候補になるのは失礼に当たるとそう仰って。
それなのに、神様は意地悪だ。
「私が何をしたって言うんですか?」
別に王子殿下には何の思いもない。だが、恨みはやっぱり出てきてしまうのだ。
ああ、あの時パーを出したらこんな訳の分からない世界に放り込まれることもなかったのに、と。
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