王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない

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怒れる公爵令嬢

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元婚約者候補のご令嬢達は、コリーナを見ると、笑みを浮かべた。その様子から彼女達はまだ王妃から詳細を聞いていないのだと理解した。夜会が始まって少し経つと、徐々に会場から人が消えて行く。その様子に、王妃様が動き出したことを察して、胸が痛くなった。

呼ばれたのは公爵家の二人から。エリザベス嬢と公爵、新しい婚約者である元侍従の彼も余裕のある表情で扉の向こうに消えて行く。すでに不敬を覚悟で自ら平民落ちしたご令嬢というのは、ストーン公爵家のライラ嬢だったようで、彼女は青白い顔で壁際に佇んでいたが、今は他人となった公爵と共に消えていった。

コリーナは、二人の反応を想像して胃が痛くなってきた。すでに全てを知っていた王妃様だが、決められた役を嫌がったコリーナが告げ口したとは思われないだろうか、と急に不安になったのだ。

エリザベス嬢には昔から思い込みの激しい面があった。自信家で影響力のある彼女は学生時代、取り巻きが勝手に起こした虐め事件で謹慎になったことがある。彼女は関与を否定していたが、彼女が勘違いからあるご令嬢に意見したことが引き金になった為だった。

あれは、コリーナは遠くから見ていたが、学園での記憶の中で、怖かった出来事の一つだ。

エリザベス嬢の提案に反対できなかったのも、面倒見の良い彼女に恐れを抱いてしまうのもあの出来事が原因だとわかっている。

まさか夜会で因縁をつけられることはないと思いたいが、そこまで彼女について知らないからか、断言は出来なかった。

いつのまにか側にいたヨハン殿下の、護衛の方が、たしかグリーク卿だったか、彼が急いだ様子で、コリーナを連れ出してくれなかったら、怒ったエリザベス嬢に絡まれていたかもしれない。

エリザベス嬢は王妃から、ジャンケンで婚約者を決めたことに苦言を呈され、すっかり頭に血が昇っていた。

彼女は折角仲間に入れてやり、面倒を見てあげた伯爵令嬢コリーナに、裏切られた気持ちしかなかったのだ。王妃様の説明により全てを理解した公爵と、エリザベス嬢の新しい婚約者の二人は、事態を正しく理解したのに、エリザベス嬢は話を聞いていない為に、全てがコリーナのせいだと考えた。

必死の形相でコリーナを探すが見つけられず、反対に探していないヨハンに見つかってしまう。

気まずさから、挨拶だけ交わして逃げようとすると、先に今までの無礼について謝られてしまい、エリザベスは忌々しさを隠せないままに、謝罪を受け入れた。

その態度は、まるで王子殿下よりも自分の立場を上だと思っているような慇懃な様子で、周りの貴族達のエリザベス嬢に対する評価は一気に下降した。

その後、候補者の選定が失敗に終わったことが発表され、今回の候補者と、ヨハン殿下の評価は少し下がった。

コリーナは話を事前に聞いていた為、それほどは衝撃を受けなかったのだが、エリザベス嬢は違った。彼女は、コリーナを最後までさがしていたが、ついぞみつけることは出来なかった。

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