王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない

mios

文字の大きさ
13 / 13

こどもみたいな願い

しおりを挟む
マリアの願いが叶ったのか、少しすると、ヨハン殿下が王籍を抜ける、と発表された。彼自身が望んだことだが、婚約者候補による押し付け合いが影響したことかどうかは彼にしかわからない。

幸いにも王位継承権を持つ者は他にもいたが、その全員に婚約者がいたために、新しい犠牲者が出ることはなかった。

マリアは平民としていきたい気持ちと、ヨハンへの気持ちで揺れていたが、彼が平民になったことで、夢を諦めなくて済んだ。

「私の為に身分まで捨ててくれたのだから、頑張って幸せにしないとね。」
マリアはそう言うが、コリーナには彼の良さが全くわからない。

「だから、良いのよ。皆には人気がない方が安心よ。貴女もそう思うでしょう?」
コリーナはグリーク卿と良い関係を築いてはいる。だが彼は皆に優しいから、人気も高く、コリーナを気にせずに近づいて来る人もいる。

「グリーク卿ほど、わかりやすい人でもコリーナには不安なのね。確かにモテるけど彼は貴女しか見えていないのに。」

マリアは平民だけど、いや、平民だからか、人の気持ちを敏感に感じ取り、色々なアドバイスをしてくれる。

コリーナが詳しいのは薬草についてだけなのでそれが非常にありがたい。

「次代の王は、王弟殿下の御子息に決まったんですってね。」

「そうらしいわ。ヨハン曰く、賢くて可愛くないこども、らしいけれど。」

「婚約者もちゃんといるのでしょう。仲は良いのかしらね。」

「エリザベス嬢の妹何ですって?確か、幼い頃に先王陛下に引き取られた実妹なんでしょう。エリザベス嬢に嫌われて公爵家にいられなくなったと聞いたわ。」

「あの時は、よくわかっていなかったし、妹さんが悪いみたいな風潮があったけれど、今となってはわからないわね。妹さんはもしかしたら、彼の方の思う通りに動かなくて、彼女の逆鱗に触れただけかもしれないもの。」

コリーナは自分が受けた彼女からの仕打ちを思い出し、家族だからと、あんな理不尽な怒りを小さい子が受けていたら、と思うと居た堪れなくなった。

「全然有り得ると思うわ。だって、妹さんはとても優秀だと聞くもの。」


その後の夜会で、出会ったそのエリザベスの妹は、コリーナと会った瞬間、全身で喜びを表現し、「姉に一泡吹かせた人に会えて嬉しい」と無邪気に彼女達の仲を暴露した。

「安心してください。姉はもう社交界に戻ることはありません。私が社交界の頂点に君臨したのですから、腑が煮え繰り返りそうでも、近づいて来ることはないと思いますわ。」

コリーナはその笑顔につられて、笑顔になる。

「じゃあ、そろそろ結婚しますか。」

グリーク卿と喜び合うと元気にコリーナは頷いた。

終わり

最後まで読んで頂きありがとうございました。      mios





しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

王宮図書館の司書は、第二王子のお気に入りです

碧井 汐桜香
恋愛
格上であるサーベンディリアンヌ公爵家とその令嬢ファメリアについて、蔑んで語るファメリアの婚約者ナッツル・キリグランド伯爵令息。 いつものように友人たちに嘆いていると、第二王子であるメルフラッツォがその会話に混ざってきた。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

処理中です...