王子は真実の愛に目覚めたそうです

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おめでとうございます

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「ジャンヌ・スクレ公爵令嬢!」

学園の卒業式に、私の婚約者の名前が響き渡る。私達二人は顔を見合わせて微笑んでみせる。

来るんじゃないかな、と思ってたけど、本当に来た。兄上は相当にバカになってしまったようだ。

仕方ないから、私の姫をエスコートして、兄上の前に姿を表すと、私が一緒にいるのが意外だったのか、唾を飛ばして喚いている。

汚いなぁ。


「兄上、此度は、おめでとうございます。」

恭しく礼をして、見上げると、驚いた間抜け面が目に入る。みすぼらしい女性を腕にぶら下げ、まあ、悪目立ちしている。

正直、私の姫にこんな汚い恥さらしを見せるのも嫌だ。

「兄上は、真実の愛と言うものを見つけられたとのこと。今回のことは、国王陛下も喜んでおられました。」

兄は、そう言われて、嬉しそうな得意気な顔をしている。


「本当に兄上は素晴らしい。真実の愛を貫くために、王子と言う身分を捨てるなんて、私には到底できません。」

おや、みるみるうちに、顔色が悪くなってきましたね。

「本日のパーティーを持ちまして、兄上は、平民として再出発をなさいます。皆様、盛大な拍手で、門出を祝ってください。」

パチパチと拍手が送られる。

「殿下、廃嫡おめでとうございます。真実の愛を貫かれどうぞ、お幸せになってください。元婚約者として、お祈りしておりますわ。」

そこまで話すと、完璧なカーテシーをして下がろうとするジャンヌを兄上は無粋にも呼び止める。

「待て!元婚約者とはどう言う意味だ。」

「兄上、ジャンヌ公爵令嬢とは三か月前に婚約解消になっています。」

そう、お前が隣のぶら下がり女に、入れ込み始めたその時に。


「心配は御無用です。既に私ルーカスと、ジャンヌ嬢の婚約は成立しております。ジャンヌ嬢の幸せは私が頑張りますので、こちらはお気になさらず、自分の幸せを優先してください。」

そこまで言い切ると、今度こそ、礼をして会場を後にする。

ジャンヌは、私の手を握り、礼を口にした。
気にしなくて良いのに。

私がしたいからしたのだ。

私の愛したジャンヌ嬢を勝手に婚約者に据えておいて、蔑ろにしたのが悪いのだから。

王妃の息子である第一王子は、高貴な身分を振りかざす、それ以外何も持っていない男だ。王になれる器ではない。能力も低い、愚かな王になるのは分かりきっていた。

ジャンヌがいればこそ、立てた地位を、真実の愛とやらで、手放したのは、向こうだ。

「ジャンヌ、私と幸せになってくれる?」
「当然ですわ。」

幼い頃からずっと夢にみた、大好きな彼女を抱きしめながら幸せを噛み締める。
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