王子は真実の愛に目覚めたそうです

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番外編 ダミアン

許し

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隣国では貴族でも、平民として再スタートを切った私に世間は冷たかった。もし、私が身分に必死にしがみつきたい人間だったならば、耐えられないほどには。

私は既に平民として人生を全うする覚悟を決めている。そのため、世間は割と温かいものだと感じてしまった。実力さえあれば、認められる世の中は、素敵だ。

私は同じく文官を志す仲間ができた。

「お前が二日酔いなんて珍しいな。」
「ああ、話に夢中で、そんなに深酒をしていると気づかなかったんだ。」
「お前に臆せず、話に夢中になる人ってのも気になるな。女か?」
「ああ、とびっきり美しい女性だ。」

軽口を叩くのは、同じく平民のギース。彼は真面目な奴だが、人当たりが良く、人気がある。

ギースが思う女性にクラリス様は入るのだろうか。あんなに美しい人を見ることもないだろうから、見たら失神してしまうのではないだろうか。

私からしたら親ぐらいの年齢なのに、美しさはそのままに、苦労した年月が、今の彼女を形作っていて、年齢を重ねた今が一番美しい、と断言できる。

親ぐらいの、とは言っても、私を叔母に売り渡し領地に篭って細々と暮らしているはずの実の親とは、元々持ってうまれたものが違う。

私は両親のことを覚えていない。うすぼんやりとシルエットぐらいは覚えているが、記憶に靄がかかっていて、はっきりとは見えない。彼らは三人で、二人は両親だと思うが、もう一人は誰なのかわからない。二人の影より少し小さいので、私の兄弟かもしれない。

私は覚えていないなりに、推理する。彼は私の兄弟で、彼がいるから私は売られたのだと。彼は、実家で暮らし、両親に愛されて家を継ぐ。私とは全く違う人生を送っている。

今考えても仕方ないことだけれど、売られたのが、私ではなくて、彼だったなら、私には違う選択肢があった、と言うことだ。

彼らは、叔母の事件に無傷でいられただろうか。

特に思い入れもない、彼らの今にわざわざ目を向ける趣味はない。

ただ少し想像してみるだけだ。片田舎の伯爵家の領主として、家族と過ごす人生を。私が歩むかも知れなかった人生を想像してみる。


……つまらないかもしれない。


私は今の人生を愛している。

両親を恨み、兄弟を憎んだあの幼少期。叔母に躾けられた厳しい毎日、王女に蔑ろにされ、馬鹿にされ、利用された泣くに泣けない日々も、今の私を形成している大切な経験だ。

全てを許容することはできなくても、自分を許すことはできる。

クラリス様に会って、自分を許すことを知った。こんな私でも幸せになっていいのだと。

自分を売った家族や、裏切った王女を許せない自分でも、幸せになる権利はあるのだ、と。

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