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アリスの陥落 グレイス、ミリー、アリス視点
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グレイスはミリーに付き纏わられ、マーカスに話に行ったあの日から自分の世界が変わったことに気付いていた。何より婚約者とその恋人の話を聞いても、特に何も思わなくなっていた。
と言うより、ケヴィンに対して、自分が婚約者で申し訳ない、と言う気持ちがなくなって、不誠実な彼に対して怒りまで湧いてきたのだ。
兄は、グレイスの心境の変化を喜んでくれた。何せ、ケヴィンに対して気持ちがないのだから、秘密の、と態々いわなくとも、恋人を作ってくれて構わない。寧ろドンドンしてください、と思うのに、何故か自分達が被害者みたいな顔をするから腹が立つ。
被害者は第一王子ジュリアス様と、グレイスの方でしょうが!
そう言ったことを、マーカスに聞いて貰う日がグレイスの一番楽しい日。ミリーには散々悩まされたけれど、彼に会わせてくれたことだけは、彼女に感謝していた。
アリスのご友人からの嫌がらせも、最近は少なくなってきていたある日、グレイスの元に、「ロゼット公爵令嬢が婚約破棄された」との知らせが届く。
驚いてはいたが、ロゼット公爵令嬢とアクト公爵令息の仲を知っている者達は皆納得していた。
こうなってしまえば、グレイスは今よりたくさんの人に、二人の恋を邪魔する者として攻撃を受けるだろう、と思っていたが、結果は違った。
皆がグレイスに同情的になったのだ。
「第一王子を裏切ってまで恋に生きた公爵令嬢」を、皆は奇異な目で見た。
彼女は「意に沿わない婚約を強いられるも健気に愛を貫こうとする令嬢」から、「我儘で男を振り回す女狐」に成り下がった。
対してグレイスの印象は、「恋人同士を邪魔する我儘な令嬢」から、「色狂いに巻き込まれた被害者」に変わった。
何故このような印象操作が起きているのか、それは少し前に遡る。
第一王子ジュリアスにつけられた友人達は、ミリーの望む働きをしてくれた。ロゼット公爵令嬢は、アクト公爵令息に対する思いを全く隠していなかったから、証拠集めは簡単だった。アクト公爵令息に至っては、あくまでも自分は不貞をしていないと思い込んでいた為に、こちらも証拠はやまほどあった。
またどちらの公爵家も叩けば、埃もたくさん出る。それらを洗って天日干しすれば、巣食っていたダニは死滅した。
そこからはジュリアスの仕事である。言い逃れできない悪事の数々と、令嬢の不貞を突きつけられ、ロゼット公爵は、婚約破棄を受け入れた。
アクト公爵も、息子ケヴィンの後始末に追われ、ポートン侯爵家に慰謝料をいかほど用意すれば良いか、考える羽目になった。
こうなってしまえば、アリスとケヴィンがその愛を貫くことは絶望的だ。案の定、アリスは泣き喚き、自分は罠に嵌められたのだと口にした。
ロゼット公爵は自身が娘を過大評価していたことを認めないわけにはいかなくなった。
「嵌められた方が問題だ。お前は能力がない、と白状したようなものだぞ。」
公爵は、娘を自宅謹慎にして、騒ぎの鎮静化を待つことにした。
アリスは部屋で一人、考えを巡らせていた。誰が自分を恨んでいるか、候補が多すぎる。アリスは身分と地位を利用して、気に入らないご令嬢を虐めていた時がある。どれも相手側の泣き寝入りで終わっているが、彼女達に復讐をされたのだろうか。
ジュリアスがいないのに、ケヴィンだけ手に入っても仕方がない。
あくまでも自分は選ばれた側で捨てられた挙句に押し付けられるようなそんな存在ではない。
最近彼女がイライラをぶつける相手に選んでいたのは、ケヴィンの婚約者であるグレイスだ。
ケヴィンに手紙を書くのはいけないけれど、彼女に書くのは禁止されていないわよね?謝罪をしたいと手紙を出したら良いんじゃないかしら。
「良いこと思いついちゃったわ。」
侍女に便箋を持って来させるとアリスは丁寧に二通手紙を書き終えた。
「これを至急、届けてくれない?」
金にがめつい侍女は、握らせたお金で言うことを聞いてくれた。
と言うより、ケヴィンに対して、自分が婚約者で申し訳ない、と言う気持ちがなくなって、不誠実な彼に対して怒りまで湧いてきたのだ。
兄は、グレイスの心境の変化を喜んでくれた。何せ、ケヴィンに対して気持ちがないのだから、秘密の、と態々いわなくとも、恋人を作ってくれて構わない。寧ろドンドンしてください、と思うのに、何故か自分達が被害者みたいな顔をするから腹が立つ。
被害者は第一王子ジュリアス様と、グレイスの方でしょうが!
そう言ったことを、マーカスに聞いて貰う日がグレイスの一番楽しい日。ミリーには散々悩まされたけれど、彼に会わせてくれたことだけは、彼女に感謝していた。
アリスのご友人からの嫌がらせも、最近は少なくなってきていたある日、グレイスの元に、「ロゼット公爵令嬢が婚約破棄された」との知らせが届く。
驚いてはいたが、ロゼット公爵令嬢とアクト公爵令息の仲を知っている者達は皆納得していた。
こうなってしまえば、グレイスは今よりたくさんの人に、二人の恋を邪魔する者として攻撃を受けるだろう、と思っていたが、結果は違った。
皆がグレイスに同情的になったのだ。
「第一王子を裏切ってまで恋に生きた公爵令嬢」を、皆は奇異な目で見た。
彼女は「意に沿わない婚約を強いられるも健気に愛を貫こうとする令嬢」から、「我儘で男を振り回す女狐」に成り下がった。
対してグレイスの印象は、「恋人同士を邪魔する我儘な令嬢」から、「色狂いに巻き込まれた被害者」に変わった。
何故このような印象操作が起きているのか、それは少し前に遡る。
第一王子ジュリアスにつけられた友人達は、ミリーの望む働きをしてくれた。ロゼット公爵令嬢は、アクト公爵令息に対する思いを全く隠していなかったから、証拠集めは簡単だった。アクト公爵令息に至っては、あくまでも自分は不貞をしていないと思い込んでいた為に、こちらも証拠はやまほどあった。
またどちらの公爵家も叩けば、埃もたくさん出る。それらを洗って天日干しすれば、巣食っていたダニは死滅した。
そこからはジュリアスの仕事である。言い逃れできない悪事の数々と、令嬢の不貞を突きつけられ、ロゼット公爵は、婚約破棄を受け入れた。
アクト公爵も、息子ケヴィンの後始末に追われ、ポートン侯爵家に慰謝料をいかほど用意すれば良いか、考える羽目になった。
こうなってしまえば、アリスとケヴィンがその愛を貫くことは絶望的だ。案の定、アリスは泣き喚き、自分は罠に嵌められたのだと口にした。
ロゼット公爵は自身が娘を過大評価していたことを認めないわけにはいかなくなった。
「嵌められた方が問題だ。お前は能力がない、と白状したようなものだぞ。」
公爵は、娘を自宅謹慎にして、騒ぎの鎮静化を待つことにした。
アリスは部屋で一人、考えを巡らせていた。誰が自分を恨んでいるか、候補が多すぎる。アリスは身分と地位を利用して、気に入らないご令嬢を虐めていた時がある。どれも相手側の泣き寝入りで終わっているが、彼女達に復讐をされたのだろうか。
ジュリアスがいないのに、ケヴィンだけ手に入っても仕方がない。
あくまでも自分は選ばれた側で捨てられた挙句に押し付けられるようなそんな存在ではない。
最近彼女がイライラをぶつける相手に選んでいたのは、ケヴィンの婚約者であるグレイスだ。
ケヴィンに手紙を書くのはいけないけれど、彼女に書くのは禁止されていないわよね?謝罪をしたいと手紙を出したら良いんじゃないかしら。
「良いこと思いついちゃったわ。」
侍女に便箋を持って来させるとアリスは丁寧に二通手紙を書き終えた。
「これを至急、届けてくれない?」
金にがめつい侍女は、握らせたお金で言うことを聞いてくれた。
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