幼馴染が恋をしたら、もれなく巻き込まれました

mios

文字の大きさ
8 / 11

追い詰められていたのは ケヴィン視点

しおりを挟む
アクト公爵家では、一人の男が途方に暮れていた。

一体全体どうしてこんなことになっているのか、理解が追いつかない。幼馴染以上の気持ちを持たないあのアリスと自分が不貞したと言う噂を親友であるジュリアスが疑いもせず信じたこと。不貞など何もしていないのに、それらしい証拠がみつかっていること。ジュリアスはアリスとの婚約を破棄したこと。それに伴いポートン侯爵家から婚約破棄の申し出が出ていること。それを王家と父が了承したこと。

など、全てに理解できない、理解したく無い光景が広がっている。

アリスについての、下位貴族からの虐めの件はアリスから単なる僻みだと聞いていたが、違うのか?

グレイスに嫌がらせ?仲が良かったのではないのか?

グレイスの友人に、グレイスの名で誤解されるような下品な手紙を送った?

一体彼女は何がしたかったんだ?


背中がうすら寒くなる。友人だと思って大切にしていた人に、そう思われていなかったなんて。彼女はいつも、ジュリアスの話ばかりだったじゃないか。私達が常に一緒にいたのは、ただのフリだったじゃないか。

頭ではわかっている。アリスの言うことを無条件に信じすぎた自分が悪いのだと。彼女の傲慢な性格を知らない訳がない。幼馴染として、友人として、あれだけそばに居たのだから、彼女が自分とジュリアスの間にいることを望み、二人ともに良い顔を見せていたのにも気がつくべきだった。

「選んだ後にそれが間違いだって気がついたなら、いつでも間違いを正してもらって良いんだ。」

アリスから、グレイスに宛てた手紙には、アリスの本音が全て書かれていた。前の自分ならアリスを陥れる為に嵌められたと言われれば信じるレベルの言葉の数々に。自分はアリスにまんまと騙されていたと知る。

「グレイスと婚約破棄をして、どうするのですか。私にアリスの後始末をしろ、と?」

「そんなことをしたら、公爵家は終わる。心中したい程にアリス嬢に溺れている、とそう言うことか?違うなら口を噤め。愚か者が。」

父は見たこともない冷たい表情で、息子の言葉を切り捨てた。

「お前は、アリス・ロゼットに騙された愚か者として、生きるんだ。社交界で馬鹿にされながら。それでも貴族としては生きられるし、結婚もできる。妻には頭が上がらんだろうが、優秀な妻が出来るのだから、彼女に任せておけばよい。まさか、我が公爵家が下位貴族に頼らなければいけない日が来るなんてな。笑うに笑えない。」

笑えないと言いながら乾いた笑い声をあげて、父は天を仰いだ。王家からの提案で、ケヴィンの妻はすでに決められているらしい。

その相手が一度見たことがあるだけの、子爵令嬢だなんて、思いもせず。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

婚約者に好きな人がいると言われました

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

婚約者と従妹に裏切られましたが、私の『呪われた耳』は全ての嘘をお見通しです

法華
恋愛
 『音色の魔女』と蔑まれる伯爵令嬢リディア。婚約者であるアラン王子は、可憐でか弱い従妹のセリーナばかりを寵愛し、リディアを心無い言葉で傷つける日々を送っていた。  そんなある夜、リディアは信じていた婚約者と従妹が、自分を貶めるために共謀している事実を知ってしまう。彼らにとって自分は、家の利益のための道具でしかなかったのだ。  全てを失い絶望の淵に立たされた彼女だったが、その裏切りこそが、彼女を新たな出会いと覚醒へと導く序曲となる。  忌み嫌われた呪いの力で、嘘で塗り固められた偽りの旋律に終止符を打つ時、自分を裏切った者たちが耳にするのは、破滅へのレクイエム。  これは、不遇の令嬢が真実の音色を見つけ、本当の幸せを掴むまでの逆転の物語。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

望まない相手と一緒にいたくありませんので

毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。 一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。 私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

処理中です...