お花畑聖女は願う

mios

文字の大きさ
7 / 17

元後ろ盾の感謝

しおりを挟む
アメリア・ハーベイ伯爵令嬢はギリギリ間に合った。聖女が帰る前に、イーサン第二王子との婚約を無事に解消まで持って行くことが出来た。イーサンはアメリアの判断を、愚かな選択だと馬鹿にしていたが、アメリアはそんな小言など意に介さなかった。

イーサンが第二王子と言われ続けたところで彼が王位を継ぐなんて万に一つもないだろう、とハーベイ伯爵家、ひいてはアメリアもそう思っていたからだ。

(王族に残れたことだけでも感謝しておけば良かったのに。)

アメリアは聖女マユに逃げられたと悟った後の元婚約者ご一行を見て、笑いを堪えることが難しかった。

杜撰な計画なのに、何故か皆マユが自分のために動くと信じて疑わなかった、ある意味、純粋な人達は、事情を知らない人達でも察するほどあからさまに、ショックを受けていた。


アメリアからすれば、あの召喚された聖女が彼らの企みに少しでも勘付くか、もしくは本人は知らなくても巧みに誘導されれば、簡単に掌を返されるぐらいの関係性だったと思う。彼らの中身のない話を聞いているだけで頭が痛くなったアメリアは彼らとマユの頭の中は似たようなもの、即ち同族だったように見えた。

あのマユという聖女は、よく彼らを引き連れては、アメリア達にマウントでも取るように薄気味悪い笑顔を浮かべていた。

まるでマユさえいれば、自分で努力しなくても王位を取り戻せる、と思い込んでいる元婚約者イーサンととても似合いの性根。



聖女マユの人を下に見た目を思い出す度にアメリアは楽しくて楽しくて笑い出したくなる。あんな屑にチヤホヤされて、あんな得意げな顔をして!

流石に品がないかと、自分を律したアメリアだったが案の定訪れた客人によって更なる笑いを贈られることになるとは思ってもいなかった。

「おい。どういうことだ。貴様、私と婚約解消などと。」

伯爵家の家令が止めたにも関わらず、不法侵入して来た元婚約者は暴れる前にお帰りいただくことになった。一応まだ王族だから、丁寧には対処しなければ、と思っていたのだが。

「第一王子とそっくりですわね。さすがご兄弟ね。」

そう、詰めの甘さは本当にそっくり。

伯爵家だと散々アメリアを下に見て来た彼は、ずっと婚約を解消させたがっていたというのに、実際に後ろ盾を失って見たら、不味いと気がつくなんて。



婚約をやめたとして、痛くも痒くもないハーベイ家は第二王子を切り捨てることで王太子を支持することにした。

元々こうしたかったのだ。ロジーナ様について行きたかった身としては。

アメリアは、第一王子の元婚約者のロジーナを尊敬を通り越して崇拝していた。彼女を助ける為に、第二王子の婚約者になった程。

そして、第一王子を誘惑したオーロラ嬢の魔の手から彼女を逃す為に一旦敵の懐に入り込みたかった。

オーロラ嬢は聖女としては優秀だ。だってロジーナから全てを奪うことができたのだから。女神の寵愛も、ロジーナの努力も全て。

いつも穏やかで、聖女らしい聖女は、ロジーナよりも聖女にも、王妃にも相応しい。そんな風潮が、アメリアにはとても不可解に思えた。

誰にも好かれるなんて、そんな人間が居るはずもないのに。

愚かな婚約者は役に立ってくれた。彼女の興味をロジーナからマユへ移すことができたのは、彼のおかげだ。その点だけは感謝していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魅了魔法に対抗する方法

碧井 汐桜香
恋愛
ある王国の第一王子は、素晴らしい婚約者に恵まれている。彼女は魔法のマッドサイエンティスト……いや、天才だ。 最近流行りの魅了魔法。隣国でも騒ぎになり、心配した婚約者が第一王子に防御魔法をかけたネックレスをプレゼントした。 次々と現れる魅了魔法の使い手。 天才が防御魔法をかけたネックレスは強大な力で……。

聖女の御技を使いましょう

turarin
恋愛
公爵令嬢スカーレットは、幼い頃から皇太子スチュアートの婚約者である。 穏やかな温かい日々を過ごしていたかが、元平民の聖女候補、メイリンの登場で、事態は一変する。 スカーレットはメイリンを妬み様々な嫌がらせをしたと噂される。 スチュアートもスカーレットを庇おうとはしない。 公爵令嬢スカーレットが、黙ってやられるわけが無い。幼い頃から皇太子妃教育もこなし、その座を奪おうとする貴族達を蹴散らしてきた百戦錬磨の『氷姫』なのだから。 読んでくださった方ありがとうございます。 ♥嬉しいです。 完結後、加筆、修正等たくさんしてしまう性分なので、お許しください。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

新しい聖女が優秀なら、いらない聖女の私は消えて竜人と暮らします

天宮有
恋愛
ラクード国の聖女シンシアは、新しい聖女が優秀だからという理由でリアス王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 ラクード国はシンシアに利用価値があると言い、今後は地下室で暮らすよう命令する。 提案を拒むと捕らえようとしてきて、シンシアの前に竜人ヨハンが現れる。 王家の行動に激怒したヨハンは、シンシアと一緒に他国で暮らすと宣言した。 優秀な聖女はシンシアの方で、リアス王子が愛している人を新しい聖女にした。 シンシアは地下で働かせるつもりだった王家は、真実を知る竜人を止めることができない。 聖女と竜が消えてから数日が経ち、リアス王子は後悔していた。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...