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愚物
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「エレナを聖女に認定しません。」
女神の声は確かに届けられた。だが、オーロラは聞き間違いではないかと、もう一度確認をする。召喚聖女がいなくなった後にエレナは持ち前の信仰心で女神との対話を試み、祈りを捧げてくれていたのに。
「エレナは堕ちました。驕り、妬み、羨み、愚物と化しました。貴女のように精神を強く持つことはできなかったのです。」
女神はそう告げた後、エレナを見ることもせずに立ち去った。オーロラはエレナを可哀想なものを見るような目で一瞥すると、特に声をかけることもなく、業務に戻った。残されたのはエレナとクリス。
王太子は、女神の愛し子でなくなった元聖女から事情を聞き、適正な処分を下さなくてはならない。
過去に聖女でなくなった者は皆、聖女らしからぬ願いを抱いたことでその資格を失った。クリスはエレナの媚びるような縋るような視線に嫌悪感が募る。
オーロラをそばに置く身であれば、女神の「堕ちた」と言う意味がよくわかる。召喚した聖女マユの側に彼女を置いたことで彼女は大いなる勘違いを起こしてしまった。聖女になればなんでも思い通りになる、と。狭い世界でオーロラやロジーナを慕っているうちは良かった。権力を急に持つことで広い世界を見たことでオーロラを下に見たのが運の尽き。
故意に誰かの失脚を狙うことは聖女のすることではない。
「聖女であり続けるのは難しいだろう?彼女の素晴らしさはわかったか?」
エレナは顔を真っ赤にして、此方を睨みつける。その姿こそが証拠。
「聖女は憎しみや怒りを持たない。あるのは慈悲だけだ。君はどうやら客観的に自分がどう見えるか理解できないらしい。今の姿こそが君が聖女に相応しくない証明だ。」
「聖女は罵られても蔑まれても貶されても怒ってはいけないの?そんなのおかしい。ロジーナ様だって……」
言いかけて、まさか、と言う表情になる彼女に、ようやく思い至ったのかと、クリスは笑みを浮かべた。
「だから、ロジーナはこの国から出て行っただろう。彼女はもう聖女の資格を持たないからだ。彼女の場合は、自ら進んで手放した。聖女かもしれなかった所為であんな男の婚約者にならされ、数年を犠牲にしたのだから。オーロラが聖女認定されたなら、自分はお役御免だと自ら出て行ったんだ。」
エレナは今までに見たロジーナとオーロラの姿を思い返してみた。
そうすると、自身の勘違いが見えてきた。
「オーロラがロジーナや君のように大それたことを口にしたことがあるか?他人を蹴落とそうとしたことがあるか?
誰に対しても分け隔てなく慈愛の精神を持ち続けていただろう?」
エレナはオーロラを妬む令嬢達からたくさんの悪口を聞かされていた。聞いている内にそれがまるで本当に起こったことみたいに思っていたけれど、違った。
元婚約者についても、クリスからの話を聞く限り、エレナが思いこんでいた話とは違っていた。彼は自ら愛する人を見つけ、エレナを選ばなかった。ただそれだけの話だ。
エレナを傷つけまいと、周りが隠した結果エレナはオーロラに恨みを持ってしまった。全ては自分の思い込みだった。
項垂れたエレナに容赦なく追い討ちをかけるのは、クリスの役目。エレナはもう一度聖女見習いから再スタートするか、ロジーナのように新しい世界を見に行くか選択を迫られた。
「改心したと言っても信用できないとは思いますが、話したいことがございます。」
睨みつけるような表情からは先程のような媚びは見当たらない。クリスは聞く価値があると判断し、話の続きを促した。
女神の声は確かに届けられた。だが、オーロラは聞き間違いではないかと、もう一度確認をする。召喚聖女がいなくなった後にエレナは持ち前の信仰心で女神との対話を試み、祈りを捧げてくれていたのに。
「エレナは堕ちました。驕り、妬み、羨み、愚物と化しました。貴女のように精神を強く持つことはできなかったのです。」
女神はそう告げた後、エレナを見ることもせずに立ち去った。オーロラはエレナを可哀想なものを見るような目で一瞥すると、特に声をかけることもなく、業務に戻った。残されたのはエレナとクリス。
王太子は、女神の愛し子でなくなった元聖女から事情を聞き、適正な処分を下さなくてはならない。
過去に聖女でなくなった者は皆、聖女らしからぬ願いを抱いたことでその資格を失った。クリスはエレナの媚びるような縋るような視線に嫌悪感が募る。
オーロラをそばに置く身であれば、女神の「堕ちた」と言う意味がよくわかる。召喚した聖女マユの側に彼女を置いたことで彼女は大いなる勘違いを起こしてしまった。聖女になればなんでも思い通りになる、と。狭い世界でオーロラやロジーナを慕っているうちは良かった。権力を急に持つことで広い世界を見たことでオーロラを下に見たのが運の尽き。
故意に誰かの失脚を狙うことは聖女のすることではない。
「聖女であり続けるのは難しいだろう?彼女の素晴らしさはわかったか?」
エレナは顔を真っ赤にして、此方を睨みつける。その姿こそが証拠。
「聖女は憎しみや怒りを持たない。あるのは慈悲だけだ。君はどうやら客観的に自分がどう見えるか理解できないらしい。今の姿こそが君が聖女に相応しくない証明だ。」
「聖女は罵られても蔑まれても貶されても怒ってはいけないの?そんなのおかしい。ロジーナ様だって……」
言いかけて、まさか、と言う表情になる彼女に、ようやく思い至ったのかと、クリスは笑みを浮かべた。
「だから、ロジーナはこの国から出て行っただろう。彼女はもう聖女の資格を持たないからだ。彼女の場合は、自ら進んで手放した。聖女かもしれなかった所為であんな男の婚約者にならされ、数年を犠牲にしたのだから。オーロラが聖女認定されたなら、自分はお役御免だと自ら出て行ったんだ。」
エレナは今までに見たロジーナとオーロラの姿を思い返してみた。
そうすると、自身の勘違いが見えてきた。
「オーロラがロジーナや君のように大それたことを口にしたことがあるか?他人を蹴落とそうとしたことがあるか?
誰に対しても分け隔てなく慈愛の精神を持ち続けていただろう?」
エレナはオーロラを妬む令嬢達からたくさんの悪口を聞かされていた。聞いている内にそれがまるで本当に起こったことみたいに思っていたけれど、違った。
元婚約者についても、クリスからの話を聞く限り、エレナが思いこんでいた話とは違っていた。彼は自ら愛する人を見つけ、エレナを選ばなかった。ただそれだけの話だ。
エレナを傷つけまいと、周りが隠した結果エレナはオーロラに恨みを持ってしまった。全ては自分の思い込みだった。
項垂れたエレナに容赦なく追い討ちをかけるのは、クリスの役目。エレナはもう一度聖女見習いから再スタートするか、ロジーナのように新しい世界を見に行くか選択を迫られた。
「改心したと言っても信用できないとは思いますが、話したいことがございます。」
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