1 / 2
小物呼ばわりされた第一王子
しおりを挟む
百年に一度現れるとされる聖女様。国の危機には必ず現れる、とされる聖女様。今回はアリーヤ・クルエル男爵令嬢がその聖女に選ばれた。
聖魔法を使う彼女は、れっきとした男爵令嬢なのだけれど、淑女教育は遅れがちで、全く身についていない為に、婚約者を巡るトラブルに巻き込まれている。
男性にベタベタと近づく聖女様を男性の婚約者が注意すると、聖女様は大袈裟に泣き、男性がそれを庇い、女性が激昂する。
何度も何度もループするその一連の流れに、第一王子ミカエルは呆れを通り越して退屈さえ感じていた。
聖女は所謂男好きで、第一王子にも馴れ馴れしくベタベタとひっついてくるのに、自分の護衛や側近もそれを咎めるどころか羨ましそうな顔をしている。
ミカエルは全てが終われば、彼らとはサヨナラすることになるだろうな、と思いながら彼らを見ていた。
彼女の前に立ち塞がるのは、ミカエルの婚約者、侯爵令嬢のレイラ。彼女は聖女に耳打ちする。
美しい瞳を彼女に向けながら、何故かミカエルとは目が合わない。アリーヤ嬢はいつもなら泣き喚いたり、悲劇のヒロインになりきるのに、レイラの言葉に衝撃を受けた様子で、「確かに、そうだわ。」と呟いた。
「ええ。なのに、どうして、そうなさらないのかと。彼方もきっとお待ちになられているのでは?」
聖女様はレイラの言葉に何を思ったのか一目散に走り出し、ミカエルを除く男性がその姿を追った。
「ミカエル様の護衛と側近は選び直しになりますわね。」
「元々そのつもりだったから大丈夫だ。護衛対象を置いて女性を追いかける護衛など、言語道断だ。」
アリーヤに掴まれていたせいで、甘ったるい香水の残り香が移っている上着を脱いで、レイラと手を繋ぐと、ふと気になったことを聞いてみる。
「彼女が血相変えて出ていくなんて驚いたな。なんて言ったのか教えてくれないか?今後の対策にしたいんだ。」
「今後、彼女が戻ってくることは多分ないと思いますわよ。彼女の対策よりも帝国にお詫びをする用意をされれば良いと思いますわ。」
レイラの言う通り、聖女は帰って来なかった。聖魔法の使い手が居なくなったことで少しは支障が出るかと思ったが、そんなことにはならなかった。
百年前とは違い、今の国は平和で、訓練を受けた騎士や、魔法師達が国を守っているし、聖魔法はなくとも、治癒魔法の使い手は増えていて、聖女がいなくとも、皆立派に機能していた。
聖女様は帝国に向かったそうだが、その後の足取りは掴めなかった。一緒に国境を越えた男性達が夢から醒めたように我が国に帰って来て、不思議なことを口にしたのを皮切りに、聖女について見直しが検討された。
彼らは「魅了魔法」を、かけられたとか何とか話していたが、我が国ではとっくの昔に廃れたそれが本当にかけられていたのかは、誰にもわからない。
それこそ、かけられている現場に、帝国の皇太子のような人が居合わせないことには。
「確か帝国の皇太子様は、全ての魔法を無効化するのでしたわね。」
「ああ、しかも痕跡も辿れるから、言い逃れは出来ない。」
「聖女様がお勉強嫌いで助かりました。」
久しぶりにみるレイラの微笑みにミカエルは幸せな気分になる。結局、レイラが聖女様に伝えた言葉は教えてもらえなかったが、ミカエルは漸く平穏を手に入れたことに夢中で、言葉などどうでも良いと思っていた。
聖魔法を使う彼女は、れっきとした男爵令嬢なのだけれど、淑女教育は遅れがちで、全く身についていない為に、婚約者を巡るトラブルに巻き込まれている。
男性にベタベタと近づく聖女様を男性の婚約者が注意すると、聖女様は大袈裟に泣き、男性がそれを庇い、女性が激昂する。
何度も何度もループするその一連の流れに、第一王子ミカエルは呆れを通り越して退屈さえ感じていた。
聖女は所謂男好きで、第一王子にも馴れ馴れしくベタベタとひっついてくるのに、自分の護衛や側近もそれを咎めるどころか羨ましそうな顔をしている。
ミカエルは全てが終われば、彼らとはサヨナラすることになるだろうな、と思いながら彼らを見ていた。
彼女の前に立ち塞がるのは、ミカエルの婚約者、侯爵令嬢のレイラ。彼女は聖女に耳打ちする。
美しい瞳を彼女に向けながら、何故かミカエルとは目が合わない。アリーヤ嬢はいつもなら泣き喚いたり、悲劇のヒロインになりきるのに、レイラの言葉に衝撃を受けた様子で、「確かに、そうだわ。」と呟いた。
「ええ。なのに、どうして、そうなさらないのかと。彼方もきっとお待ちになられているのでは?」
聖女様はレイラの言葉に何を思ったのか一目散に走り出し、ミカエルを除く男性がその姿を追った。
「ミカエル様の護衛と側近は選び直しになりますわね。」
「元々そのつもりだったから大丈夫だ。護衛対象を置いて女性を追いかける護衛など、言語道断だ。」
アリーヤに掴まれていたせいで、甘ったるい香水の残り香が移っている上着を脱いで、レイラと手を繋ぐと、ふと気になったことを聞いてみる。
「彼女が血相変えて出ていくなんて驚いたな。なんて言ったのか教えてくれないか?今後の対策にしたいんだ。」
「今後、彼女が戻ってくることは多分ないと思いますわよ。彼女の対策よりも帝国にお詫びをする用意をされれば良いと思いますわ。」
レイラの言う通り、聖女は帰って来なかった。聖魔法の使い手が居なくなったことで少しは支障が出るかと思ったが、そんなことにはならなかった。
百年前とは違い、今の国は平和で、訓練を受けた騎士や、魔法師達が国を守っているし、聖魔法はなくとも、治癒魔法の使い手は増えていて、聖女がいなくとも、皆立派に機能していた。
聖女様は帝国に向かったそうだが、その後の足取りは掴めなかった。一緒に国境を越えた男性達が夢から醒めたように我が国に帰って来て、不思議なことを口にしたのを皮切りに、聖女について見直しが検討された。
彼らは「魅了魔法」を、かけられたとか何とか話していたが、我が国ではとっくの昔に廃れたそれが本当にかけられていたのかは、誰にもわからない。
それこそ、かけられている現場に、帝国の皇太子のような人が居合わせないことには。
「確か帝国の皇太子様は、全ての魔法を無効化するのでしたわね。」
「ああ、しかも痕跡も辿れるから、言い逃れは出来ない。」
「聖女様がお勉強嫌いで助かりました。」
久しぶりにみるレイラの微笑みにミカエルは幸せな気分になる。結局、レイラが聖女様に伝えた言葉は教えてもらえなかったが、ミカエルは漸く平穏を手に入れたことに夢中で、言葉などどうでも良いと思っていた。
478
あなたにおすすめの小説
婚約破棄でよろしいんですの?
かぜかおる
恋愛
婚約者のエリックが懇意にしているご令嬢が突撃してまいりましたの
そして婚約破棄を求めて来ましたわ
わたくしはそれでもよろしいのだけど、本当にあなた達はそれでよろしいの?
4話完結、完結まで毎日更新です。
婚約破棄ですって?私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
花見 有
恋愛
「ダーシャ!お前との婚約を破棄する!!」
伯爵令嬢のダーシャ・パレデスは、婚約者であるアーモス・ディデス侯爵令息から、突然に婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄ですって?アーモス様は私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
断罪するならご一緒に
宇水涼麻
恋愛
卒業パーティーの席で、バーバラは王子から婚約破棄を言い渡された。
その理由と、それに伴う罰をじっくりと聞いてみたら、どうやらその罰に見合うものが他にいるようだ。
王家の下した罰なのだから、その方々に受けてもらわねばならない。
バーバラは、責任感を持って説明を始めた。
エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。
ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています
宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。
そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。
「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」
いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。
そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
愛に代えて鮮やかな花を
ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。
彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。
王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。
※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる