3 / 42
周りの者達の胸の内
しおりを挟む
場所は変わって、学園の生徒会室には、第一王子エリオスと、件の男爵令嬢が二人、エリオスの護衛をはるか後ろに携えて寄り添って座っていた。
肉付きのいい健康的な体を利用して、男爵令嬢は、王子を籠絡している最中だ。
「ジョセフィーヌ、ベアトリスから君を側妃に捻じ込む約束を貰えたよ。」
実際にベアトリスは、宰相と相談してみる、と言っただけだが、彼の思考では既に決まったこととして、認識されている。
「側妃って、一番じゃありませんの?エリオス様が他の方と一緒にいるのを見るなんて、嫉妬してしまいそうです。」
「ジョセフィーヌには、苦労をしてほしくないんだ。王妃候補のベアトリスや、君と同じ側妃の、ローゼリア、アリーチェは私が選んだ婚約者ではなく、母が選んだんだ。婚約者と言うよりは、お目付役みたいなものだから、恋愛感情はないよ。」
「それでも、側妃ならオーブリー様がいらっしゃるでしょう?彼女は、エリオス様が選ばれたと聞きましたわ。」
上目遣いで見つめながら、王子の太腿に触れる。王子がわかりやすくニヤけるのを後ろの護衛は白い目で見ている。
「彼女は体が弱く、領地に閉じ込められていると聞いていたから、かわいそうになってね。側妃候補として王宮に呼んだら、最高の医療も受けることができるだろう?」
「慈善活動ということ?オーブリー様を愛してらっしゃらないの?」
さらに少し距離を詰めて、迫ると、殆どすぐに抱きしめられる位置に移動した。
「愛してはいるけれど、家族愛みたいなもので、君に対して感じる愛とは違うよ。」
「本当かしら。では、子爵家の方達は、どうなるのですか?彼女達は、愛妾として、貴方に愛されるのでしょう?浮気ではないの?」
そもそもお前も浮気だと、その場に居合わせた者達が他にいたら総ツッコミが入りそうだな、と護衛は思う。護衛は、王子付きとなり、早四年になる。学園で王子が羽目を外しすぎないように、との配慮から公爵家によりつけられた護衛だ。
勿論、この出来事も、ベアトリスの元へ報告される。
「愛妾と言うのは、ただの名義に過ぎない。側妃に値しない身分だが、保護しなくてはならない場合に使う名義だよ。」
「エリオス様は人気ですもの。独り占めできないことはわかっておりますわ。それでも、同じ気持ちでいられないのは、寂しいことですの。」
「私の心は全てジョセフィーヌの物だよ。他の妃には公務をして貰うつもりで、側に置いたに過ぎない。君が嫌がるのであれば、君以外はいらないよ。ただ王妃になれば、公務を全く人任せには出来ないから、それはこなして貰う必要がある。私は君に苦労をかけさせたくなかったから、側妃にしたのだが、余計なことだったみたいだね。
だけど、王妃である母も、一人で何でもこなしていたのだから、充分可能な筈だよ。
わかった。ベアトリスに言って、全て白紙にして貰うよ。君だけを愛している証明をするよ。」
エリオスの言葉を受けて、ジョセフィーヌは微笑んだ。既に顔の前にあったエリオスから、深く口付けされる。
護衛は目を逸らし、怒りをどうにか分散させた。
ベアトリスは、王子の部下ではない。あまりの愚かさに呆れるが、婚約が白紙になるのならば、確実にベアトリスは幸せになる。
それまでは、何が何でも側にいて、証拠を掴んでやろうと、護衛は決意した。
さて、当然ではあるが、王子が男爵令嬢に虜になっている裏で、二人の子爵令嬢が一矢報いるための策を巡らせていた。
彼女達が、王子殿下の愛妾になったのは、事情がある。
早い話が王子のお手付きになったからである。経緯については、彼女達にも瑕疵があるが、王子が責任を取るのは当然で、尚且つ今後真っ当な縁談は望めない。ただ、王子の愛妾となれば、その立場を辞めた後でも、ある程度の地位は保証され、彼女達の人生にプラスになると、ベアトリスら三人が知恵を絞り、説得した結果だった。
それでも愛妾として迎えられたのは二人だけで、残りのご令嬢は修道院やら、歳の離れた貴族や商人の後妻として、嫁に入ってしまった。
彼女達は、ベアトリス、ローゼリア、アリーチェに忠誠を誓っているが、王子殿下については敵だと認識している。
彼女達の元にも、男爵令嬢ジョセフィーヌとエリオス王子殿下の醜態は、耳に入っていた。そして、ベアトリス達がお怒りだと言うことも、把握していた。
「ベアトリス様達が居なくなってしまわれたらどうされます?」
オラージュ子爵家のエリーヌ嬢が呑気に隣のご令嬢に尋ねる。彼女は、マイペースでのんびりできれば何でも良いというタイプ。肝の座り方に、ベアトリスが感心していたぐらいだ。実際、エリーヌ嬢が一番話しやすいと感じたのは、ベアトリス嬢で、身分の差はあれど姉のように親しみを持って接していた。
尋ねられた令嬢は、サイル子爵家のミランダ嬢。彼女は色気のある美人で、自分に自信があるタイプ。勉強をするのが、得意で資質だけなら、ローゼリアが側妃にしたがった。
本人は面倒だからと辞退した通り、愛妾という立場を最大限に利用してやるつもりだった。
「愛妾の座を辞退するか?いいえ、新参者には礼儀から教えて差し上げなくては。身分だって今は私達より下の男爵令嬢よ?エリオス様の御心も、取り戻して差し上げましょう?ただ太いだけの女性より、メリハリのある私達の方が殿下はお好きだと思わない?」
ミランダが自信を持ってそう言うと、何だか悩んでいるのが馬鹿らしくなる。
「ベアトリス様達の空いた場所に誰が新しく入るのか、よね。私達がそこに繰り上がる訳でもないのだし。なるようになるわよ。」
「それもそうね。」
エリーヌは、焼き立てのクッキーを味わった。甘い香りと共に、不安も溶けていった。
肉付きのいい健康的な体を利用して、男爵令嬢は、王子を籠絡している最中だ。
「ジョセフィーヌ、ベアトリスから君を側妃に捻じ込む約束を貰えたよ。」
実際にベアトリスは、宰相と相談してみる、と言っただけだが、彼の思考では既に決まったこととして、認識されている。
「側妃って、一番じゃありませんの?エリオス様が他の方と一緒にいるのを見るなんて、嫉妬してしまいそうです。」
「ジョセフィーヌには、苦労をしてほしくないんだ。王妃候補のベアトリスや、君と同じ側妃の、ローゼリア、アリーチェは私が選んだ婚約者ではなく、母が選んだんだ。婚約者と言うよりは、お目付役みたいなものだから、恋愛感情はないよ。」
「それでも、側妃ならオーブリー様がいらっしゃるでしょう?彼女は、エリオス様が選ばれたと聞きましたわ。」
上目遣いで見つめながら、王子の太腿に触れる。王子がわかりやすくニヤけるのを後ろの護衛は白い目で見ている。
「彼女は体が弱く、領地に閉じ込められていると聞いていたから、かわいそうになってね。側妃候補として王宮に呼んだら、最高の医療も受けることができるだろう?」
「慈善活動ということ?オーブリー様を愛してらっしゃらないの?」
さらに少し距離を詰めて、迫ると、殆どすぐに抱きしめられる位置に移動した。
「愛してはいるけれど、家族愛みたいなもので、君に対して感じる愛とは違うよ。」
「本当かしら。では、子爵家の方達は、どうなるのですか?彼女達は、愛妾として、貴方に愛されるのでしょう?浮気ではないの?」
そもそもお前も浮気だと、その場に居合わせた者達が他にいたら総ツッコミが入りそうだな、と護衛は思う。護衛は、王子付きとなり、早四年になる。学園で王子が羽目を外しすぎないように、との配慮から公爵家によりつけられた護衛だ。
勿論、この出来事も、ベアトリスの元へ報告される。
「愛妾と言うのは、ただの名義に過ぎない。側妃に値しない身分だが、保護しなくてはならない場合に使う名義だよ。」
「エリオス様は人気ですもの。独り占めできないことはわかっておりますわ。それでも、同じ気持ちでいられないのは、寂しいことですの。」
「私の心は全てジョセフィーヌの物だよ。他の妃には公務をして貰うつもりで、側に置いたに過ぎない。君が嫌がるのであれば、君以外はいらないよ。ただ王妃になれば、公務を全く人任せには出来ないから、それはこなして貰う必要がある。私は君に苦労をかけさせたくなかったから、側妃にしたのだが、余計なことだったみたいだね。
だけど、王妃である母も、一人で何でもこなしていたのだから、充分可能な筈だよ。
わかった。ベアトリスに言って、全て白紙にして貰うよ。君だけを愛している証明をするよ。」
エリオスの言葉を受けて、ジョセフィーヌは微笑んだ。既に顔の前にあったエリオスから、深く口付けされる。
護衛は目を逸らし、怒りをどうにか分散させた。
ベアトリスは、王子の部下ではない。あまりの愚かさに呆れるが、婚約が白紙になるのならば、確実にベアトリスは幸せになる。
それまでは、何が何でも側にいて、証拠を掴んでやろうと、護衛は決意した。
さて、当然ではあるが、王子が男爵令嬢に虜になっている裏で、二人の子爵令嬢が一矢報いるための策を巡らせていた。
彼女達が、王子殿下の愛妾になったのは、事情がある。
早い話が王子のお手付きになったからである。経緯については、彼女達にも瑕疵があるが、王子が責任を取るのは当然で、尚且つ今後真っ当な縁談は望めない。ただ、王子の愛妾となれば、その立場を辞めた後でも、ある程度の地位は保証され、彼女達の人生にプラスになると、ベアトリスら三人が知恵を絞り、説得した結果だった。
それでも愛妾として迎えられたのは二人だけで、残りのご令嬢は修道院やら、歳の離れた貴族や商人の後妻として、嫁に入ってしまった。
彼女達は、ベアトリス、ローゼリア、アリーチェに忠誠を誓っているが、王子殿下については敵だと認識している。
彼女達の元にも、男爵令嬢ジョセフィーヌとエリオス王子殿下の醜態は、耳に入っていた。そして、ベアトリス達がお怒りだと言うことも、把握していた。
「ベアトリス様達が居なくなってしまわれたらどうされます?」
オラージュ子爵家のエリーヌ嬢が呑気に隣のご令嬢に尋ねる。彼女は、マイペースでのんびりできれば何でも良いというタイプ。肝の座り方に、ベアトリスが感心していたぐらいだ。実際、エリーヌ嬢が一番話しやすいと感じたのは、ベアトリス嬢で、身分の差はあれど姉のように親しみを持って接していた。
尋ねられた令嬢は、サイル子爵家のミランダ嬢。彼女は色気のある美人で、自分に自信があるタイプ。勉強をするのが、得意で資質だけなら、ローゼリアが側妃にしたがった。
本人は面倒だからと辞退した通り、愛妾という立場を最大限に利用してやるつもりだった。
「愛妾の座を辞退するか?いいえ、新参者には礼儀から教えて差し上げなくては。身分だって今は私達より下の男爵令嬢よ?エリオス様の御心も、取り戻して差し上げましょう?ただ太いだけの女性より、メリハリのある私達の方が殿下はお好きだと思わない?」
ミランダが自信を持ってそう言うと、何だか悩んでいるのが馬鹿らしくなる。
「ベアトリス様達の空いた場所に誰が新しく入るのか、よね。私達がそこに繰り上がる訳でもないのだし。なるようになるわよ。」
「それもそうね。」
エリーヌは、焼き立てのクッキーを味わった。甘い香りと共に、不安も溶けていった。
163
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる