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支えるまでもなく
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「あら、珍しい方ですのね。態々宜しかったですのに。」
エリオスが在学中に手を出し、愛妾として召し上げるのを決めた二人の子爵令嬢は、ヘンドリックを見ても意外でもなさそうに、お茶を楽しんでいた。
ヘンドリックも席を勧められて、一杯だけお茶を頂くことにする。
エリーヌ嬢とミランダ嬢は既に何の用事でこちらが訪れたのか理解しているようだった。
「それで、アレスティ様の後見をなさるのですか?」
「いえ、まだそこまでは決まっておりません。自分がそこまでやる必要があるのか、わからないのです。」
ミランダ・サイル子爵令嬢とは全くの初対面ではないが、そこまで話したこともなければ、自分のことを知られているなんて、知らなかった。
「候補は何人かいるのですが。」
「ああ、どなたも、アレスティ様の後見としては、少し弱いですわよね。何人かは、ご本人の能力は良いのですが、少し厄介なお身内がいらっしゃるようですし。」
「あまりに弱い後見ですと、どこかの第一王子を再度担ごうとする輩が出てきかねませんもの。」
とても自然に和やかにエリーヌ・オラージュ子爵令嬢も会話に加わる。
ヘンドリックは当初、愛妾となる契約が無くなったことを告げてさっさと退散しようと考えていたが、それが叶わないことを悟る。
彼女達は、王妃殿下や、あの御三方の審査を乗り越えた後、愛妾として認められたのだから、彼女達が凡庸である訳がない。正規ルートで契約されたご令嬢なのだ。
ヘンドリックの考えは、わかられていたようで、考えを改めた後は少し態度が軟化したように感じる。
「必要以上に畏まることはありません。私達の立場は子爵令嬢でしかありませんわ。ただ困りましたね。愛妾と言う地位を与えられる筈でしたのに、これからどうやって生きていくのか、考え直さねばなりません。」
言葉とは裏腹に二人からは悲壮感は漂うこともなく、淡々と受け止められる。
「そうですわね。まあ、ベアトリス様が居なくなった時点であちこちに情報網を広げておりましたし、貴族の家の様子も逐一報告されておりますので、大丈夫ですわ。」
そう言いながら一枚の紙切れを、手にするエリーヌ嬢。本当にどこで知り得たのか少し背筋が寒くなる程度には筒抜けらしい。
その中には、今後王家の脅威となる企みの見える貴族家の一覧と、交渉の落としどころ、弱味など、残しておくと明らかに不味い記録のオンパレード。
エリーヌ嬢は、穏やかに微笑んでいる。リストを取ろうとしたが、彼女は手を離さない。
「勿論、タダ働きするつもりはありませんわ。ご存知ですわよね。」
タダより高いものはない。
「ええ。貴女達の望むものは何なりと手に入れて見せましょう。」
「良かったぁ。言ってみるものね。流石に叱られるかと思ったわ。」
怯えもみせずに、無邪気に笑うエリーヌ嬢が恐ろしい。脅したのはそちらだろうに。
ヘンドリックは彼女達と対等に交渉するのは、無理だと諦める他なかった。
「それで、何がほしいのですか?」
「契約不履行に対する慰謝料が欲しいわ。大金でなくていいの。それを頂けたなら、結婚できなくとも、後悔はしないし、一人でも生きていける商売の足しにするわ。」
「側妃様達とは違って、私達を囲うのに、国から予算は出ていないから、どうしても、彼のポケットマネーからになるわね。
今すぐに大金は無理でしょうから毎月少しずつ強制的に搾取していきたいわ。だって形はどうあれ、私達を裏切ったのですもの。相応の罰は受けていただきませんと。」
「望むなら、職も提案できますが、どうなさいますか?正直、人手が足りず、大変なので手伝って貰えたら嬉しいのですが。」
「私達にできるかしら。」
「寧ろ貴女方にしかできない仕事です。」
提案はどうやらお気に召したようだった。
「わかったわ。私達に任せて!」
ヘンドリックは心強い味方を手に入れた。
エリオスが在学中に手を出し、愛妾として召し上げるのを決めた二人の子爵令嬢は、ヘンドリックを見ても意外でもなさそうに、お茶を楽しんでいた。
ヘンドリックも席を勧められて、一杯だけお茶を頂くことにする。
エリーヌ嬢とミランダ嬢は既に何の用事でこちらが訪れたのか理解しているようだった。
「それで、アレスティ様の後見をなさるのですか?」
「いえ、まだそこまでは決まっておりません。自分がそこまでやる必要があるのか、わからないのです。」
ミランダ・サイル子爵令嬢とは全くの初対面ではないが、そこまで話したこともなければ、自分のことを知られているなんて、知らなかった。
「候補は何人かいるのですが。」
「ああ、どなたも、アレスティ様の後見としては、少し弱いですわよね。何人かは、ご本人の能力は良いのですが、少し厄介なお身内がいらっしゃるようですし。」
「あまりに弱い後見ですと、どこかの第一王子を再度担ごうとする輩が出てきかねませんもの。」
とても自然に和やかにエリーヌ・オラージュ子爵令嬢も会話に加わる。
ヘンドリックは当初、愛妾となる契約が無くなったことを告げてさっさと退散しようと考えていたが、それが叶わないことを悟る。
彼女達は、王妃殿下や、あの御三方の審査を乗り越えた後、愛妾として認められたのだから、彼女達が凡庸である訳がない。正規ルートで契約されたご令嬢なのだ。
ヘンドリックの考えは、わかられていたようで、考えを改めた後は少し態度が軟化したように感じる。
「必要以上に畏まることはありません。私達の立場は子爵令嬢でしかありませんわ。ただ困りましたね。愛妾と言う地位を与えられる筈でしたのに、これからどうやって生きていくのか、考え直さねばなりません。」
言葉とは裏腹に二人からは悲壮感は漂うこともなく、淡々と受け止められる。
「そうですわね。まあ、ベアトリス様が居なくなった時点であちこちに情報網を広げておりましたし、貴族の家の様子も逐一報告されておりますので、大丈夫ですわ。」
そう言いながら一枚の紙切れを、手にするエリーヌ嬢。本当にどこで知り得たのか少し背筋が寒くなる程度には筒抜けらしい。
その中には、今後王家の脅威となる企みの見える貴族家の一覧と、交渉の落としどころ、弱味など、残しておくと明らかに不味い記録のオンパレード。
エリーヌ嬢は、穏やかに微笑んでいる。リストを取ろうとしたが、彼女は手を離さない。
「勿論、タダ働きするつもりはありませんわ。ご存知ですわよね。」
タダより高いものはない。
「ええ。貴女達の望むものは何なりと手に入れて見せましょう。」
「良かったぁ。言ってみるものね。流石に叱られるかと思ったわ。」
怯えもみせずに、無邪気に笑うエリーヌ嬢が恐ろしい。脅したのはそちらだろうに。
ヘンドリックは彼女達と対等に交渉するのは、無理だと諦める他なかった。
「それで、何がほしいのですか?」
「契約不履行に対する慰謝料が欲しいわ。大金でなくていいの。それを頂けたなら、結婚できなくとも、後悔はしないし、一人でも生きていける商売の足しにするわ。」
「側妃様達とは違って、私達を囲うのに、国から予算は出ていないから、どうしても、彼のポケットマネーからになるわね。
今すぐに大金は無理でしょうから毎月少しずつ強制的に搾取していきたいわ。だって形はどうあれ、私達を裏切ったのですもの。相応の罰は受けていただきませんと。」
「望むなら、職も提案できますが、どうなさいますか?正直、人手が足りず、大変なので手伝って貰えたら嬉しいのですが。」
「私達にできるかしら。」
「寧ろ貴女方にしかできない仕事です。」
提案はどうやらお気に召したようだった。
「わかったわ。私達に任せて!」
ヘンドリックは心強い味方を手に入れた。
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