最後のスチルを完成させたら、詰んだんですけど

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愛されヒロイン

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コンラート・ギルマンは夫人となってくれた元王女エルフリーデを愛でるのに忙しい。

前世の記憶を思い出してからずっと、彼女はコンラートから距離を取っている。

彼女の記憶の中の自分がどれだけ酷い人物なのかと問うと、エルフリーデは首を振る。

「コンラートには、悪いことはされてないわ。だけど、貴方は私を助けようとして、ヒロインの信者から、やられてしまうの。

エルフリーデは大好きなコンラートを失って、生きる気力を失ってしまうのよ。そこにつけ込まれて、お飾りの妻に仕立て上げられるのよ。」

「大好きな?」

「え?ええ、大好きな……」

得意げに話していたかと思ったら語尾が随分小さくなって行くエルフリーデを可愛く思いながら、コンラートは続きを促す。

「もう、意地悪ね。ゲームの中の貴方はこんなに意地悪じゃなかったわ。」

「お嫌いですか?こんな意地悪な私は。」

コンラートはエルフリーデに好かれている自信はある。エルフリーデを問い詰めるといつも最後には何も言えなくなって、観念するのだ。

「いいえ、私が貴方のことが好きだって知ってるでしょう?」

自分をヒロインだと自称する男爵令嬢は、エルフリーデが自分を助ける存在だと言って、初対面から失礼だった。エルフリーデに対し、役立たずだと罵り、挙げ句の果てに冤罪をでっち上げ、エルフリーデを修道院に追いやろうとした。

エルフリーデ曰く、「計画通り!」と言うことだったが、コンラートは不服だった。彼女を説き伏せ、何も本当に修道院に行くことはない、身を守るため、ギルマン伯爵家に隠れていてくれ、と言うと、修道院への道中に不安があるから申し出は有難いと言い、話に乗ってくれた。

修道院での道中では、モニカが仕掛けた破落戸が、エルフリーデを狙っていた。ゲーム内ではモニカを慕う下位貴族の手の者だったようだが、現実のモニカに信者などいない。だからなのか自ら手を汚して、エルフリーデを亡き者にしようとしたらしい。

コンラートは、モニカに最初から何の感情も持ち合わせていない。エルフリーデの邪魔になるぐらいなら、処理しましょうか、と言うぐらいの存在。自分は、エルフリーデを愛でるのに忙しい。

だから、あと少しで触れ合うあの瞬間に開かれた馬車の扉の向こうには殺意が湧いた。何なら今でも少し恨んでいるぐらいである。

ヒロインが貴族夫人を害そうとした罪で処刑されても、コンラートにはどうでもいい。それは、あの件に関わった皆が思っていることだ。

誰にも愛されない「ヒロイン」とやらは、何がしたかったのかはわからない。それでも、最後の頼みの綱に、撒かれて途方に暮れた姿を見て少しは溜飲が下がった自分は性格が悪いとは思う。

コンラートは、エルフリーデが居れば良い。だって彼にとっての「愛されヒロイン」はエルフリーデなのだ。異論は認めない。

他の男達だって同じこと。特に恋愛においては、ゲームとやらのようにたった一人を奪い合うことはない。

いくらエルフリーデが可愛くても、そう思うのはコンラートだけでいい。コンラートだって愛されたいのは、エルフリーデただ一人。

それが正しいヒロインだと思っている。

コンラートは幸せだ。大好きなヒロインとずっと一緒に居られるのだから。


終わり

読んでいただきありがとうございました。     mios
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