ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

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第二王子

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カトリーヌ嬢が目的の幽閉施設に無事に送り届けられたと言う連絡が、侯爵夫妻につけていた密偵より入ってきた。エトワールは崩れ落ちるように、ソファーに座り込み、考える。漸くエトワールの念願が叶う。

初めて好きになった女の子は、エトワールが好きになってはいけない子だった。調べていくうちに、話は隣国の王位継承権争いに行き着く。当時王太子だった第一王子が悪女によって身を滅ぼしたと言う話に。

よくよく調べていくと、単純な話だった。王太子ルークを陥れるために、弟である第二王子ラクタが仕組んだことだ。

王太子の好きになった相手は、たしかにその天真爛漫な姿から、悪女と呼ばれていた。魅了魔法の使い手でもあった。いや、魅了魔法に耐え得る体質であった、と言うべきか。

魅了魔法が禁術とされるのは、所謂精神に影響を及ぼすから、という理由だけではない。術者の側にも影響がある。それは元々持っている耐性によってどれほどの影響が出るか異なるのだが……

悪女と呼ばれた娘は侯爵家に生まれ、堅実な両親の間に生まれた我儘娘として慕われていた。侯爵家の娘であれば、少しばかり度が過ぎて我儘でも、高慢でも、それを正せる者などいない。彼女は、当時の王太子に恋をしたが、仲良くなれたのは、第二王子ラクタの方だった。彼はある魔道具を彼女に渡す。

「これが、君と兄の恋のお守りとなりますように。」

魔道具を身につけてから急激に彼女の恋は進展していく。

要はその魔道具のおかげで魅了魔法が使えていた。そして、ルークと彼女は恋仲になった。彼女は恋多き女と言われていたが、ルークと出会ってからは彼一筋だった。

王太子が、自分を種無しだと思いこんでいなければ、彼女が一途であることがわかっただろう。

エトワールは初めて、彼を見た時の衝撃を忘れない。サラを隣国に連れていけないのは、その為だが、彼はサラの正真正銘の父親だ。

王太子ルークを種無しと診断したのは、王宮に駐在している医師の一人ではあるが、彼に何らかの圧力があったことは事実である。

エトワールの思うに、第一王子は種無しではなかった。証拠に、事件の少し前に第一王子のお手つきになった王宮の侍女が一人仕事を辞めている。追ってみると、王太子との子供を出産していることがわかった。

子どもは男の子で、王太子にそっくりだそうだ。彼は第一王子が引き取らず、第二王子ラクタに引き取られ、息子として育てられている。隣国でも、この事実を知っている者は、少ない。第二王子派によって情報操作されているせいだ。

もしかして、種無しなのは、ルークではなく、ラクタの方ではないのか?

そんな疑問が出てくるが、確かめる術はない。



サラの父親である元王太子ルークは幽閉され、サラの母親は処刑された。

サラを逃してくれた当時の騎士団長がいれば、あの時の子どもと、カトリーヌが別人だと気がついただろうが、すでに彼は亡くなっている。

元王太子は、サラを見たことがない。だから、カトリーヌ嬢を見て、自分の娘ではないことに気がついたとしても、悪女が浮気していたと考え、カトリーヌ嬢の言葉を信じないだろう。

一種の賭けだった。カトリーヌ嬢がいくら、処刑されたサラの母親に似ていたとしても、父親は騙せるかどうか。

けれど、あちらの第二王子が色々策を巡らせていたおかげで、うまく乗り越えることが出来そうだ。

サラは何も知らない。知らなくていい。汚れた部分は私が全て受け持つから、そばにいてくれさえすればいい。

あともう少し、あともう少しだ。エトワールは祈った。幼い頃から描いた夢をもう少しで達成することができるのだから。
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