あの気持ち悪い贈り物は貴方でしたの?

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「マーガレット、良く来てくれた。私は君に謝らなければいけないんだ。」

芝居じみた登場をされたこの方を、私は一切存じ上げません。

私の名前を呼ばれた気もしますが、特に変わった名前でもないので、別の方なのでしょう。場所をお譲りするために、後ろに下がろうとする私に、この男性は、迫り寄って来ます。

「マーガレット、どこに行くんだ。」

肩を掴まれてしまいました。
びっくりして顔を上げると、何やら喚いておいでです。

「私がまだ話してるだろう。ちゃんと愛する男の話は聞くものだ。まあ、その気持ちには、もう私は答えられないのだが。」

本当に、何か頭のご病気なのでしょうか。私達、お会いしたのは初めてなのですが。

「失礼ですが、お尋ねしても?」
「ああ、何だ。」
「あの、どちら様でしょうか?初めてお目にかかりますが。」
「ああ、愛する者の顔すら忘れたのか?たかがメイドに情けをかけてやったのに。ひどいな。」
酷いのはどちらでしょうか。情けをかけていただいた、という意味が分かりませんが。

「何か、人違いか、勘違いをなさっておりますが。」

「何がだ。俺の贈り物は届いていただろう。君が俺の気持ちを受け入れてくれたから今この場にいるのだろう?手紙に書いた筈だ。」

手紙?贈り物?

思い当たる節が……!

「ああ、あの気持ちの悪い贈り物は貴方でしたの?」

ああ、なるほど。合点がいきましたわ。

あら、驚かれたみたいですね。

「差出人が書かれていない物でしたので、読まずに夫に渡しておりました。夫が調べて下さるようでしたので。」

「……夫?」

「ええ、夫です。今日こちらに参りましたのも、こちらの伯爵夫人から、お誘いをいただいたからですのよ。」

「いや、だってメイドとして、侯爵家で働いていたではないか。」

見知らぬ男にアレを見られていたのね。

「あら、お恥ずかしいですわ。あの格好は、動くのに楽なのですわ。家ではよくあの格好をしているのです。」

メイド服は便利で可愛いのです。来てみたいと思っても良いじゃないですか。旦那様も、これはこれで良い、とご満悦でしたし。

あら、何も言わなくなってしまったわ。
どうしましょう?

「あら、夫が来たようですわ。ご紹介致しますわね。」

「侯爵様?侯爵様の妾でしたか?」
「君は……失礼、最近物覚えが悪くて、マーガレットの知り合いかな?彼女は私の妾なんかではなくて、次期侯爵夫人だよ。長男のルーカスの妻だ。」
「いえ、私も初めてお会いしたのですわ。えーと、貴方お名前教えていただけません?存じ上げなくて。」

義父の侯爵様の背後から夫のルーカスが現れた。
「そうだな。差出人の名前が無かったから、私にも教えていただけるかな?」
旦那様は、怒っていらっしゃるようね。良かったわ。同じ気持ちで。
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