あの気持ち悪い贈り物は貴方でしたの?

mios

文字の大きさ
3 / 13

そして

しおりを挟む
ルーカスが、ある伯爵夫人のパーティーに連れて行ってくださると聞き、嬉しくてウキウキしておりましたところ、また手紙が届きました。

いつも贈り物と一緒に手紙がついているのですが、今回は手紙だけでした。

すぐさま、夫に見せに行きました。開けて読むなり、夫はそれはそれは嬉しそうに笑いました。それはいつも私に見せてくれる慈愛に満ちた物ではなくて、どす黒い怒気を孕んだ笑顔でした。

ルーカスのこの笑顔は、前に一度見たことがあるように思いますが、どこでだったでしょうか。彼はこんな笑顔でも、素敵なのですわ。

そうして、今日を迎えたのです。

どうやら、夫はこのパーティーに、差出人がやってくると掴んでいたようです。あの時の手紙に書いてあったのでしょうか。

名前を問われた男は、顔を真っ青にしております。けれど、上の立場の方から、名前を聞かれて答えないと言う選択はしないでしょう。震えた声で自己紹介をされます。

「アンソニー・ミラーと申します。以後お見知りおきを。」

「ああ、ミラー伯爵家か。そこの長男だね。」

お義父様のお声も怒気が含まれておりますわ。

「はい。」

先ほどまでとは打ってかわり、すごく小さい声で返事をされます。私には至近距離であんな大声でしたのに。

「なるほど。ミラー伯爵家は、長男の教育に失敗したのか。自分より立場の弱そうなメイドをその気にさせておいて、衆人の前で身の程を知らせる遊びは、趣味が良いとは言えないな。それに、君は貴族として、常識もないようだね。彼女を見ても、まだわからないなんて。」

ルーカスが、面白くて仕方がない、と笑いながら煽っていきます。ああ、そのお顔も凄く素敵。

男は私の顔を穴が開くほど見ていますが、未だに顔に疑問符がたくさん見えるようです。私も自己紹介しましょうか?

ルーカスは私の腰に回した手に力をいれて、男に教えて差し上げます。

「彼女を知らない者が貴族の中にいるとは思わなかった。彼女はデビュタント以降、すぐに私と結婚したから知らないのも無理はないのかも知れないが。それでも、同情の余地はないよ。」

ルーカスが楽しそうですわ。対して真っ青になっているものの、まだよくわかってらっしゃらない頭の残念な男。

さあ、今から夫の見せ場と言う所で、邪魔が入ってしまいましたわ。

邪魔と言うのは失礼かしら。血相変えて飛び込んでこられたのですから。

「マーガレット様~!グレイ侯爵家様。何か粗相がございましたでしょうか?」

このパーティーの主催の伯爵夫人ですわ。

「いいえ、楽しんでいるわ。ありがとう。素敵なパーティーに呼んでくださって。挨拶が遅れましてごめんなさい。」

挨拶を忘れるなんて、淑女失格ですわ。

「いえいえ、楽しんでいただけると何よりです。グリーンウェル様にも、グレイ様にも、お世話になりましたから。こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。挨拶が遅くなり申し訳ありません。」

あらあら、全て話してしまうなんて。ルーカス様が愉快そうなので、許しますが、ダメですわよ?いいとこ取りは。これからは、夫のターンです。少し静かにして下さいませ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

その結婚、承服致しかねます

チャイムン
恋愛
結婚が五か月後に迫ったアイラは、婚約者のグレイグ・ウォーラー伯爵令息から一方的に婚約解消を求められた。 理由はグレイグが「真実の愛をみつけた」から。 グレイグは彼の妹の侍女フィルとの結婚を望んでいた。 誰もがゲレイグとフィルの結婚に難色を示す。 アイラの未来は、フィルの気持ちは…

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

公爵令嬢の何度も繰り返す断罪

アズやっこ
恋愛
私は第一王子の婚約者の公爵令嬢。 第一王子とは仲が良かったと私は思っていた。それなのに一人の男爵令嬢と出会って第一王子は変わってしまった。 私は嫉妬に狂い男爵令嬢を傷つけた。そして私は断罪された。 修道院へ向かう途中意識が薄れ気が付いた時、また私は過去に戻っていた。 そして繰り返される断罪…。 ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 主人公は乙女ゲームの世界とは知りません。

〈完結〉貴方、不倫も一つならまだ見逃しましたが、さすがにこれでは離婚もやむを得ません。

江戸川ばた散歩
恋愛
とある夏の避暑地。ローライン侯爵家の夏屋敷のお茶会に招待された六つの家の夫妻及び令嬢。 ゆったりとした時間が送れると期待していたのだが、登場したこの日の主催者であるローライン夫妻のうち、女学者侯爵夫人と呼ばれているルージュの口からこう切り出される。「離婚を宣言する」と。 驚く夫ティムス。 かくしてお茶会公開裁判の場となるのであった。

【完結】私は王子様の運命の相手だけど、そのことは誰にも言ってはいけない

雪野原よる
恋愛
ずっと王子の護衛騎士として仕えている男装の私は、王子のたった一人の「運命」でもある。なのに、国王陛下の厳命により、この事実は、この想いは隠し通さねばならない──  ※シリアスに見せかけたコメディです。  ※ネタバレ:王子が滅茶苦茶ブチ切れます。

それは確かに真実の愛

宝月 蓮
恋愛
レルヒェンフェルト伯爵令嬢ルーツィエには悩みがあった。それは幼馴染であるビューロウ侯爵令息ヤーコブが髪質のことを散々いじってくること。やめて欲しいと伝えても全くやめてくれないのである。いつも「冗談だから」で済まされてしまうのだ。おまけに嫌がったらこちらが悪者にされてしまう。 そんなある日、ルーツィエは君主の家系であるリヒネットシュタイン公家の第三公子クラウスと出会う。クラウスはルーツィエの髪型を素敵だと褒めてくれた。彼はヤーコブとは違い、ルーツィエの嫌がることは全くしない。そしてルーツィエとクラウスは交流をしていくうちにお互い惹かれ合っていた。 そんな中、ルーツィエとヤーコブの婚約が決まってしまう。ヤーコブなんかとは絶対に結婚したくないルーツィエはクラウスに助けを求めた。 そしてクラウスがある行動を起こすのであるが、果たしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

これからもあなたが幸せでありますように。

石河 翠
恋愛
愛する男から、別の女と結婚することを告げられた主人公。彼の後ろには、黙って頭を下げる可憐な女性の姿があった。主人公は愛した男へひとつ口づけを落とし、彼の幸福を密やかに祈る。婚約破棄風の台詞から始まる、よくある悲しい恋の結末。 小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...