異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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夏休みの延長戦~自分にどう向き合うか~

暗闇を抜け出して

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深い闇の中でボクは生きてきた。生まれてすぐにお母さまが死に、お父さまからはお母さまを殺した存在として憎まれて育った。メイドや執事からは厄介者として扱われ、自分の名前よりも先に自分の置かれている状況を知った。お父さまの機嫌が悪い時は鞭を打たれ、体には数えきれないほどの傷痕があったにもかかわらず、一度も泣いたり叫んだりしたことはなかった。
ボクには感情がなかったのだ。喜怒哀楽を人生で一度も感じたことがなかった。

そんなボクの人生が少しだけ変わったのは8才の時だった。お父さまが仕事の関係で帝国の外へ行っている間、ボクはお父さまの弟に預けられた。

そこでは毎日毎日勉強をさせられた。一問で間違うと背中を鞭で打たれ、「無能だ、出来損ないだ」と言われた。その時、ボクの中に一つの感情が生まれた。「不快」という単純な感情だったけれど、それはボクをボクでいさせた。

「僕」が路地裏で会った男は間違いなく「ボク」の叔父だ。そして、人ならざる者の気配がした。あの時感じた「不快」な感情は人と人ならざる者を見極める半神の力の一つだった。

あの時のボクは覚醒前だったにも関わらず、それを持っていた。極限状態の環境下で生存のために開花した能力だった。

あの男からは常に悪臭がしていた。密閉された部屋に死体を丸三日置いたような、そんな匂いだった。そんな男から解放されたのは10才の時だった。お父さまがお義母さまを連れて帝国に戻ってきたのだ。そのことにどうしてか怒り狂った叔父がボクを気絶するまで殴った。その時に「僕」ができた。

「僕」は不思議な人だった。こことは違う世界の記憶を持っていて、ボクよりもソトのことを知っていた。ボクの記憶の一部を「僕」は持っているようだったけど、なぜか記憶には齟齬があった。「僕」は叔父のことを何一つ覚えていなかった。そのうえ、8才から10才までの記憶が書き換えられていた。叔父がボクを殴ったことにより「僕」が生まれたのに、「僕」は継母に叩かれて記憶を取り戻したと思っていたのだ。自己防衛なのか、はたまた神の思し召しなのかは分からないが、ボクはそのことを黙っておくことにした。思い出しても不愉快なだけであるし、「僕」が背負うものではないからだ。

コウに会った時ぐらいから、「僕」は笑うようになった。やっと取り戻せた感情をボクの記憶によって消したくはなかった。

……ほんとうに、そう思っていた。でも、神様はそれを許してはくれないみたいだった。そう遠くない内に「ボク」と「僕」は一つになるだろう。灰色の世界に色をつけてくれた彼は、もう守られるだけの存在ではなくなったのだ。


カイ視点

僕は気がつけば深い海の底のような場所にいた。息は苦しくなかったし、どこか懐かしい気持ちがした。何時間、いや、何日たったのだろうか。そこでは時間の概念がないため、分からなかったが、終わりは突然訪れた。

金髪の髪に銀色の瞳をした少年が僕の腕を掴んで上へ上へと連れて行った。ほんの少し見えた少年の顔はレイにそっくりだった。僕の周りには金色の蝶がたくさん飛んでいて、一緒に上へと上がっていった。

「カイ、もう少しだ。もう少しでお前は…」

そんな声が聞こえてきた。不意に瞼を開けると眩い光が僕の眼を貫いた。
眩しすぎてとっさに閉じてしまった。意を決して今度は恐る恐る瞼を開けると、そこはライズにある屋敷の自分の部屋だった。

ゆっくりと体を起こすと自分の体の傷がほとんどなくなっていることに気づいた。
眠っていたベッドの脇にあった机には『絶対安静』の文字と『起きたら横の紐を引っ張って人を呼びなさい。間違っても逃げないように』と書かれてあった。

…これは逃げた方がいいのでは?

と思っていると扉が開き叔父様が入ってきた。

「起きたのなら人を呼べと書いてあっただろう?まったく、、痛いところは?」

叔父様はそう言って脇に置いてあった椅子に座る。

「ないです。僕は何日眠っていたんですか?」

「五日だ。毒とケガで三日間生死を彷徨っていたんだ。…一体何があった?」

「ルシアン様からは何も聞いていませんか?」

「ルシアン?…ああ、アイツからは何も聞いていない。それどころかカイに聞けと言われてしまったよ。」

「…そうですか。陛下も交えてお話することはできませんか?」

「陛下も?できるかできないかでいったらできるが、そこまで重要な話なのか?」

「ええ、まあ。」

「分かった。陛下にはここへ寄るよう、要請しておく。」

「えっ、陛下がここに来るんですか?」

「ああ。ちょうど帝国との交渉事があってね。近日中にこの近くを通るんだ。その時に寄ってもらうように頼んでおく。」

帝国との交渉事ねぇ…十中八九今回の件かな…

「わかりました。ありがとうございます。」

そう言って僕は深々と頭を下げた。
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