異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

文字の大きさ
280 / 343
アルバード王立高等学院~這い寄る魔の手~

卒業試験1日目~幻影魔法~

しおりを挟む
「で、僕らをここに呼んだ理由は何ですか?」

屍翼鴉デスウィングが出てきたということは他にもっと強い魔物が出てくる可能性が高い。この後、一人で調査には行かない方がいいんじゃないかと思ってな。ハルシャ卿とフローレス嬢はどう思う?」

「でもこれ以上人員はさけないんですから、一番強い僕が行くのは普通かと思いますけど。」

「私はもう一人いたほうがいいんじゃないかと思います。あのレベルがたくさんいるとなるとハルシャ卿だけではさすがに手に余るのでは?」

「仕事は調査だけですよね?僕の職業はシーフです。そういうのを一番得意としているジョブですよ。なめてもらっては困ります。」

実際、気づかれずに横を通ることだってできるだろう。本気を出せば。

「まあ本人がいけるというのなら信じるしかないわけだが、、」

「大丈夫です。何かあったら狼煙をあげて伝えますから。」

狼煙とは発煙筒のようなもので、赤、緑、青の三種類がある。ちなみに、ケガで助けが必要なときが赤、何らかの緊急事態に遭遇したときが緑、調査が終わり今から帰るという合図が青だ。

「無理だと思ったらすぐに帰ってきてくれ。君を失ったまま二日目を迎えるのは非常に悪手だからな。」

さすがリーダー。僕のことを駒としか思っていない。

「それじゃあ早めに行ってきます。15時までに戻らなかったら何かあったと思ってください。」

…あぁ、なるほど…これがフラグってやつなのか…戻れない気がしてきた。

「怖いこと言わないでください。」

「ごめんって。フローレス嬢は僕が上げた狼煙を絶対に見逃さないよう、見張り役に言っておいてね。」

「分かりました。」

満足気に僕はうなずいて、石像のある場所から小走りで立ち去った。

******
高原と呼ばれるだけあって、岩が多く歩きづらい。そして気づかないうちに狼に囲まれているのがウルフ高原だ。いやーもはやどうしてここまで囲まれているのか謎だな。

目の前には10匹ほどの狼が僕を囲んでいた。僕が進めば狼も進み、必ず一定距離を保って僕の周りにいた。

「相手の力量を見誤って襲おうとするなんて、愚か者のすることだよ。狼は賢い生き物だと思ってたんだけどなー」

棒読みのセリフは誰に聞かれるわけもなく、消えていく。

「僕が疲れて動けなくなるところを狙ってるんだと思うけど、残念ながら僕は疲れないんだ。」

まあ疲れないといっても、調子にのって動きすぎた結果、足の筋肉が正常に動かなくなったり、翌朝筋肉痛で痛い目を見ることはあるんだけどね。疲れないという能力に体がついていってない証拠である。

「あーでも狼に乗っていった方がはやく任務が終わるかも。」

そう言ってパンっと手を合わせて周囲に魔力をひけらかす。魔法の練習をしていたらかなり魔力量が増えたのだ。
魔物にとって魔力とは絶対的な指数。ボスだって魔力量で決まるぐらいだ。まあ人間はそんなことないんだけどね。

周りにいたウルフたちが一度ビクッと体を震わせたかと思うと一斉に腹を見せて転がり始めた。

「分かってるじゃん。よし、君にしよう。」

そう言ってひときわ大きい狼をポンと叩くと、それ以外の狼たちは全速力で逃げ出した。

クッ…クウーン…

「…君、さっきまでそんな声出してなかったよね?」

これは確実に食べられると思ってる目だ。

「食べないよ。ちょっと君に乗ってここを調査したいんだ。」

僕がそう言うと、狼はゆっくり体を起こし、乗りやすいような体勢をとった。

「やっぱり君、言葉分かってるでしょ。」

そう言いながら狼に跨った。
ルーンだって会った当初から言葉が分かってる感じだったんだ。野良で言葉が分かる狼だっているに違いない。

「後で群れのところに帰してあげるから、石像があるところには来てはいけないよ。来たら倒さないといけなくなるから。」

「クウーン!」

もはや犬だな。ちょっとかわいい。まあルーンには敵わないが。

「そこで止まって。」

そこは歪な気配がした。普通の景色ではあるが何かが違う、そんな気がした。

「グルルルル…」

ちらりと狼の方を見ると、どこかに向かって吠えていた。

「…本能ってすごいね。なんとなく分かるんだ。ここが作られた場所だってこと。大きい幻影魔法がかけられている線が濃厚かな。そんなことができるのは学院長ぐらいだとは思うんだけど…」

魔法をかけた本人がいないから、これをどうにかするのは無理だな。こんな大規模な幻影魔法はドーム状がほとんどだと聞いたことがある。その場合、外から内部に入るのは術者であっても非常に困難だが、下から内部に入るのは意外と簡単だ。

「…ここで帰る方がいいんだろうね。」

そう言って青色の狼煙を上げたその時、地面から何かが出てきて僕を地面へと引きずり込んだ。

「ちょっ…って…ええっ?」

驚く間もなく僕の体は完全に地上から消えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

処理中です...