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前皇后と皇帝陛下の闇
しおりを挟む前皇后は心優しく、美しい人だったと聞く。
彼女は不貞によってシエラを産んだが、それは元婚約者との子供であった。
前皇后にの美しさと、総てを受け入れるような温かい心に触れ当時の皇帝はその美しさからひくて数多であったにも関わらず、
すでに婚約者のいる前皇后であり、後のシエラの実母と無理矢理結婚した。
だがこれも、皇后の友人であったある人達と皇帝にしか知られていない事実である。
社交会の華であった前皇后はいつも人に囲まれており、彼女にとって皇帝ですらもその中の友人のひとりであった。
そう。ただの友人である。
にも関わらず日に日に、執拗なまでの執着を見せ貧乏な伯爵家の皇后の恋人では彼女を不幸にすると、無理矢理自らに嫁がせたのだ。
それでも諦めきれない二人は隠れて逢瀬を繰り返した。
二人を不憫に思う友人や、一部の使用人が協力した。
いつか離縁するのだと、前皇后はいつも言っていた。
「陛下は、悪い人ではないけれど…私は彼の元へ戻りたいわ。」
けれども皇帝の執着は溺愛というにしても過剰なものであった。
前皇后はだんだんと気力を失い、最後の手段で皇帝ではなく恋人の子を産むという一か八かの賭けに出たのだった。
皇帝との閨は断り続け、あからさまに産まれたらおかしい状況を作った。
そして、お腹が大きくなったのもバレないよう病を装い隠れて過ごした。
懐妊の際には、そそっかしい新人メイドに伝えに行かせるという作戦でバレた状況を誘導した。
「殺されるかもしれない、でもこの子だけはあの人の元へ…」
そう言って信用していた侍女に預けると言って、産後の疲れで眠ってしまった後、到着した皇帝は産まれたてのシエラを見てニヤリとした。
「…ほう、私と同じ髪と瞳。レイラにそっくりな顔立ちとなるだろう。」
「伯爵と、この件に関わった使用人を全員殺せ。」
「ひっ!陛下!!お助け下さい!」
使用人達が命乞いをする中、侍女はシエラを抱いて走った。
走って、走って、斬られても走った。
だが城から出る前にはもう、その命は尽きそっとシエラを抱き上げた皇帝は悲しそうな顔をして、目撃した者たちに言った。
「全員、死刑、頭から3つ程の高位貴族のみ集めよ。レイラにそっくりだな…子に罪はないだろう皇女として受け入れる。」
次に前皇后が目を覚ました時には、皇女として取り上げられたシエラと、
変わり果てた伯爵の姿。
居なくなった侍女や、一晩ですっかり変わった皇宮の使用人達や友人。
蔑むような高位貴族達の視線があった。
「あの子は…!シエラは貴方の子ではありません!!」
「なにを、子に罪はない。一度の過ちを許そう。」
「あの人を…殺したのね!」
「誰だったか?もう忘れなさい。」
「…!!貴方を愛する事はないわずっと!!!!!」
そう言った前皇后は、心の休養だと別宮へと移されたがそれは事実上の監禁であり、皇帝は彼女が自害するまで、
シエラを人質に、好きなように抱き、好きなように操った。
そして、対面上の公式のパートナーが必要となり今の皇后が側妃に召し上げられ、前皇后の死後、うまく皇帝の心を掴み皇后となったのだった。
マッケンゼン公爵の母はまた、シエラの母の親友であったがその地位と父が母の命を守り抜き、口を閉ざすことでその生を許された人物であった。
だからリヒトにとって噂などはどうだってよかった。
だが、無理矢理に婚約者になったシエラのやり方はまるで皇帝のようではないかと嫌悪していたのだった。
(だが、実際のシエラは傲慢でも強引でもなくまるで私しか頼る者が居ないというような縋り方であったな….)
分かっていても、一度感じた嫌悪は拭えなかった。
ある日突然、この世の全てを拒絶したかのような瞳で彼に微笑み、婚約解消を申し出るまでは…。
(あの小さな身体に、これ以上の何があったというのだ…)
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