悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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幸せになるはずなのに2

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「なにをしているんだ?」


「リヒト!お帰りなさいっ!!これはね……違うのっ、使用人が私の悪口を言ったからとても悲しくて、事情を聞いていたの」



メリーのその変わり身の速さに驚いたのは使用人だけじゃなくリヒトも同じだった。


(近頃少し…….ヒステリックな所があると感じていたが病気の所為ではないとすれば元々こうなのか?)



彼女は、変わってしまったのだろうと例え少しでもその原因を自分が担っているのだとしたら、救う責任があると感がえていたのだったがだとすれば彼女はどうしてこうなってしまったのか?


妻としての愛はなくとも、、幼馴染であるメリーをこう言いたくはないが、元々こう言う人間だったのだろうと思わざるを得ないのだ。



「メリー、悪いが俺はうちの使用人達を信頼している。何か誤解があったんじゃないか?」



「……えっ?」


メリーは少し驚いてかやあからさまに嫌な顔をしたが、リヒトにそう言われてしまえば、納得のいっていない様子を隠す様子もなく渋々と場を収めるしかなかった。



「わ、私も誤解していたのかもしれないわ……もう行っていいわよ」



「はい…….失礼します」


(やっぱり、皇宮に行ってからリヒトが変だわ!)


メリーは飾ってある花瓶をチラリと横目で確認すると、ふらりとよろけてぶつかり、花瓶を割った。


「あっごめんなさいっ!少し立ちくらみがして……」


そして、「私共が」と迅速に対応する使用人を押し退けて、急いで拾うフリをすると指先をツボの破片で少し切った。



「キャア…….っ、あ………そんな!いやよ!」


突然震え出して、まるで気でも狂ったように取り乱すメリーにメリーの侍女が「フラッシュバックですリヒト様!どうかメリー様をお救い下さいっ」と号泣する始末に、リヒトは立ったまま少し屈んでメリーの手を取る。


すると、いつもは注視することなかったメリーの表情がニヤリと一瞬歪んだのが見えてゾッと背中が冷たくなった。


「メリー」


「いやよ!血が……血がっ!」


「メリー!




メリーの手を少しだけ粗雑に投げ捨てると、床に彼女の血が一滴落ちた。



「え…?」


「気をひく必要はない。病院に通うふりも、浅かった手首の傷を大袈裟に話す必要も、ありもしないトラウマの小芝居ももう要らないと言っている」



「ーっなんでそんなこと言うの?リヒトは私が嘘を言っているって思うの?」


「……発作が止まったようだな」


「あっ!!そ、それはリヒトが呼んでくれたから」



「責任持って片付けておくように」


そう、メリーの侍女達に命令すると公爵邸の使用人達に自らの配置に戻るようにと促した。




「リヒトっ!!」


「メリー、もう嘘はつかなくていい……」


「へっ?」

(やっぱりリヒトは私を愛して……!!)


「どんな手を使おうと、例え本当に自害しようともお前を愛する事など一生ないのだから」




クスクスと笑う公爵邸の使用人達の声がやけに耳にあたるメリーは恥ずかしさと怒り、そして不安で使用人たちに怒鳴り込んだ。




「あんた達!今笑ったわね!!!!」



「なぜ、長年気づかなかったんだろう……そっちが本性か?」


「あ…….リヒト、ちがっ」



「ここの使用人はとある高貴な方も認めた、公爵家が誇れる精鋭達ばかりだ。中にはお前と同じ伯爵家の出の者も居る。危害を加えられては敵わんからな………」



「なに?なんの話?私の話を聞いてよリヒト!!」



「今後、メリーの邸への出入りは俺の許可無しでは拒否するように。そもそも今となっては両親が許嫁にしたという話も嘘らしく感じる」



「私は婚約者なのよ!!!」



「あぁそれも、これ以上問題を起こすなら考えねばなるまい。あくまでこれは世話になったお前のご両親への義理だ。邸に帰って息を潜めていろ」




見た事もないほどに、メリーに怒るリヒトの威圧感にメリーは思わずガタガタと震え上がった。


侍女達に支えられて、後日運び出された荷物を馬車に乗せて公爵邸を追い出されるメリーはとても顔色が悪かったらしい。



「あははっ!今更気づいたの、リヒト」


「ああ、不甲斐ないばかりです。でも何故……」



「僕や姉様が言って信じたの?マッケンゼンは家族を大切にするでしょ?僕たち皇族と違って絆が堅い。ご両親の遺言というのが嘘だという証拠がないからね、どうしても……」



執務で訪れた皇宮で、突然噂を聞いたジェレミアにお茶に誘われたリヒトは、事情を聞かれ「やっぱりと」ジェレミアに笑われていた。



「君には悪いけど……当時は姉様とリヒトを引き離すのに役立ちそうだとは思ったよ」




(気付いていなかったのは俺だけなのか……)



「シエラ皇女に愛想をつかされるわけですね……」



「姉様ほどの女性になると、僕ほど一途で良い男でも靡かないから、落ち込まなくていいよリヒト」



クツクツと笑うジェレミアはどこかスッキリとした表情で、その瞳から溢れる哀愁がまだシエラを愛しているのだと切なくさせたが、



ならば、だからといってリヒトもシエラを吹っ切ることが出来たのかと言われるとどれほど自分が情けなかったとはいえ、やはりシエラを愛したままだった。





「あーでも、どうやったかのか僕よりもっと深い裏から姉様を攫われるなんて思わなかったなぁ……カシージャスを調べたけど……」


「??」


「僕に劣らず美しく、お前とも並ぶセクシーな男だった」



「何!?」


「気怠げで、冷酷そうな雰囲気とは相反する赤い髪と情熱的な姉様への愛を語る金色の瞳は純粋に姉様の幸せだけを考えているようだった」




「あぁ、長く過酷だったよなんてのは二度とやりたくないね」


「……」


「リヒト、間抜けだった君はともかく、僕は姉様を傷つけようとしたメリーを許さないよ」



「……陛下の性格は痛いほど知っています」





「じゃあ、先ずは……馬鹿な父上達からなんだけど、来る?」


そう言って笑ったジェレミアの表情は無邪気だったが、


何故かリヒトは身体が冷えた気がした。



















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