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エーリッヒ視点
しおりを挟むどうしてこんなことになった…。
さっきまで彼女が座っていた席を見て呆然とする。
婚約解消をする気なんて全くなかったのに…。
婚約解消の話をすれば、彼女なら拒否してくれると信じて疑わなかったのに、蓋を開ければ婚約解消に対して用意周到で嫌がる素振りすらなかった。
嫌がるどころか、今まで見た事もない嬉しそうな顔をしていた。
その表情を見れたのは嬉しかったが、その笑顔が婚約解消の話が理由なんて、素直に喜べるわけがない。
「どうすればいいんだ…」
アリアは私に惚れているはずだったのに…。
一体何が問題だったんだ。
婚約してからずっと、私といる時は笑顔だったのに。
たまに私がほかの令嬢と仲良くしているように見せていた時は、まゆをひそめていたが、それは嫉妬じゃなかったのか?
普通、毎回注意して来たら嫉妬してると思うだろ!
なのに、婚約者として注意していたなんて。
そんなことあるか…?
確かに、彼女に対してわざと冷たく当たったりはした。
けど、それは彼女が私の機嫌を取ろうと話しかけて来たりするからであって、嫌ってたわけではない。
むしろ彼女以外に結婚する相手は居ないと思っているのに。
婚約も、向こうの家族がずっと拒否していたのを権力にものを言わせて取り付けたのに…。
何故だ!
何がいけなかったんだ!
私達は上手くいっていたはずだろ!
「アリア…」
彼女の名前を呟くが、返事は来ない。
虚しく庭園に響く。
「エーリッヒ様」
「なんだ…」
傷心している主の姿が見えないのか、空気を読まない私の専属執事が声をかけてくる。
「婚約解消の件が、既に陛下のお耳に入ったようです」
「なに!?まだ1時間も経っていないだろ!それなのに何故だ!」
「アリア様は本当に無駄の無いお方のようで、着実に婚約解消へ向けて動いて居られるようです」
「くっ…今すぐ父上にお会いしなければ!」
なんとしてでも婚約解消を食い止めなければ…!
でなければ、彼女との接点がもうなくなってしまう!
彼女は私のものなんだ!逃してたまるか!
「父上!婚約解消の件でお話が」
「ああ、アリア嬢から話は聞いている」
「なら話は早いです。婚約解消を受理しないで…」
「安心しろ、もう受理はした」
「なっ…」
「婚約解消の件は、段階的に周りに周知させるから問題はないぞ」
遅かったか…。
「アリア嬢との噂は私の耳にも入っていたからな。婚約解消する方がお互いのためにも良いだろう」
「噂とは…?」
「そなたがアリア嬢を嫌っている。という噂だ。噂だと思って信じてはいなかったが、事実だったようだな」
何故そんな噂が流れているんだ!
確かに、彼女への対応は良くなかったかもしれないが、パーティのパートナーや公の場では一緒に参加していただろう。
まさか、その噂のせいで私から愛されてないと思い婚約解消を望んでいたのか?
それなら誤解だ!
今からでも彼女に事実を伝えれば、また婚約し直してくれるかもしれない。
待っていてくれ、誤解は必ずとくから!
今から君を迎えに行くよアリア。
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