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千獣の魔王 編
042. 再びベルーナへ
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翌日。またもや狐獣人の双子が迎えに来たので、ユーゴは再び官邸へ赴くことになった。
その道中、双子がちらっとユーゴの股間を憐憫の目で見たのが少し引っかかったが。
「また足を運ばせてしまって申し訳ないのう、ユーゴよ」
ベルタリオが再び迎えた。今日は一人だった。
「話は聞いた。すまんのう。私の部下が余計なことをしたようだ」
開口一番部下の無礼を詫びたベルタリオに、ユーゴは手を振った。
「別に実害はなかったから気にすんなよ。忠誠心が高いのは良いことだ」
昨日と同じように、応接ソファーで向かい合って座った二人。無論、また人払いをした上でだ。
「さて、昨日の件だが、私は協力しても良いと思っておる」
「へー。意外だな。てっきり断られるかと思ったよ」
「若い頃なら、あるいはそうだったかもしれぬな。しかし、私も国を治めるようになって随分経つ。若い頃に切り捨てたはずの地球が懐かしくなってしまってのう。元異世界人には元異世界人なりの苦労も解っているつもりだ。同じ境遇にあるものが危機にあると言うならば、同郷の誼で助けるのも悪くは無い。それに、私に直接危害を加えるのなら何とかしようもあるが、国民に被害が及ぶ可能性は見逃せぬ」
ベルトリオの瞳が強い光を発する。
「そうか。助かる。それじゃあ───」
と、ユーゴがスペリオール・ウォッチを渡そうとした時、
「ただ、お主にも少し手伝って欲しいことがある」
「……オーケー。聞こうか」
何らかの交換条件は想定内だ。
「うむ。実はなお主と会ったチアキの仕事───ベルーナ遺跡の補修と点検を手伝って欲しいのだ」
「遺跡の……補修と点検を?」
「うむ。あの遺跡は、私が百年ほど前から、知人から管理を任されておっての。だが、ここ数年忙しさにかまけてサボっておった。まぁ強固な結界を施しておるから人間や魔族は立ち入ることができないだろうと思って安心しておったのもある。ところが数日前に様子を見に行くと、遺跡に何者かの手が加えられておる形跡があった。しかも結界の封印が解かれておる。元は経年消滅したのかと思ったが、よく考えたら、まだ五十年は保つはずなのだ。これは異常でな。あの遺跡には、人間がありがたがるような宝などは無い。そのくせ、トラップだけは厭らしいほどにあるからのう。早急に手を打たねばならんのだ」
「話はわかった。協力するのはいいが、俺にこの世界のダンジョンの知識は無いぞ?」
「心配には及ばぬ。ちゃんと詳しい者をつける。その後はその者の指示で動いてもらえれば良い。聞いたぞ、なかなかの使い手らしいではないか」
ベルタリオは側近の女から報告を受けていた。
「それに、性欲がなくなる病気とも。可哀想にな。まだ若いのに」
深い同情の眼差しで、ベルタリオはユーゴを見つめた。
「いやいやいやいや。違う。それは誤解だ!」
ユーゴは全力で否定した。ここ最近の戦闘よりも多くの力を使って。
「そうなのか?」
「そうだ。だから気にしないでくれ。まぁ、遺跡の件は了解した。俺はいつでも大丈夫だ。何なら今からでもな」
「お主ならそう言ってくれるだろうと、なんとなく思っておったよ。では、今から北の大門と言うところに向かってくれるか。部下と備品を持たそう」
「了解だ。ところで、一つだけ疑問がある」
「なんだ?」
「ベルタリオ。あんた一体いくつなんだ?」
「もうかれこれ二百年は生きておるよ」
「まじかよ……」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
北の大門に着くと、少し遅れて狐獣人の双子が現れた。それぞれ一つずつカバンを持っている。
「これが」
「ベルタリオ様から預かった」
「「荷物です」」
ユーゴが二つのバックを受けると同時に、上空から何かが落ちてきた。いや誰かが着地した。
「待たせたの、ユーゴ」
紫髪のウェーブしたロングヘアに、ボディーラインも露わなチャイナドレスをまとった佳人、チアキだった。
双子を労って下がらせたチアキは、翼を出現させた。
「行き先はあの遺跡なんだろう? じゃあもっと早い方法がある」
そう言ってユーゴは人目がないのを確認し、地面に手をついて念じた。
【幽世の渡航者】───発動。
地面に何十もの光の縁が組まれ、その中心から1枚の白く輝く板が地面から生えるように出てきた。
「これはゲート? 何かを召喚するつもりか? だが、少し普通のゲートと様子が違うようだが」
ゲートは特定の物質を移動させられても、術者自身は移動できないというのが常識だ。
「いや、これは見ての通り特殊でな。俺が一度でも行った場所なら、俺を含め移動できるゲートなんだ」
「ほう。それは便利だのう」
「まぁな。さあ、行こうか」
二人はゲートをくぐった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「誰だ……? 冒険者なのか?」
ベルーナ遺跡地下一階。ベガス一行の前に現れた美少女二人を見て、ベガスはつぶやいた。
「いや。僕たちは冒険者じゃない」
首を振って否定したのは、桃髪の女騎士───フィールだった。
「大変です。皆さん負傷していらっしゃいますね」
栗色の髪をした修道女が慌ててベガスたちに駆け寄る。ネルだ。
「主よ。偉大にして、善良な神ミラールよ。彼の者たちにどうか主のお慈悲をお与えください。」
祝詞を唱えると、ベガスたち四人の全身が淡い光に包まれた。
「傷が…治っていく⁉︎」
「疲れも吹っ飛んだぜ! こりゃなんだ、すげえ!」
「もしかして…【祈癒】⁉︎ 噂の……」
「【祈癒の聖女】なの⁉︎」
ベガス、ギラン、リリ、レイア。4人とも驚きを隠せない。
「はい。ミラール教のネル・クロウセスと申します」
優しげな笑みを浮かべての自己紹介したネルを、ベガスたちは物珍しげな目で見た。
「ヴァリオン教徒の私でも癒してもらえるのね」
レイアが呟いた。皮肉ではなく、その声には感嘆が含まれていた。
「主ミラールの愛は分け隔てありません」
「ふーん。それで見返りを求めないのが信じられないけど、助かったわ」
「こんなところで聖女ネル様に会えるなんて…でもなぜこんなダンジョンに?」
リリの疑問にネルが答える。
「実は私とこちらの方───【聖戦の聖女】フィールエル様は人探しをしておりまして…」
「聖戦の聖女だって⁉︎」
「亡くなったんじゃなかったの⁉︎」
ギランとリリの疑問にフィールエルは答える。
「いや。実は魔女との争いで、しばらく身を潜めていただけなんだ。ところで、あなたたちは見てないかな。こう、背が高くて、黒革の変な上着を着た飄々とした感じの男なんだが……」
「おそらく昨日、この遺跡のどこかのダンジョンに潜ったようなんです」
リリとレイアはお互いの顔を見合わせる。
「あの、その人、もしかしてユーゴって名前じゃないですか?」
まさかと思いつつ、リリが心当たりのあった名を告げた。
「ご存知なんですね!」
ネルは嬉しそうに笑顔を作った。
「ええ…彼とはこのダンジョンに一緒に来たので」
「なるほど。あなた達だったのか。一緒に行動していたと言うのは。しかし、ユーゴの姿が見えないが、あいつはどこに?」
フィールエルは周囲を見回したが、やはりユーゴの姿は見えない。
リリとレイアは気まずそうな顔して「えっと…」と言いよどんだ。
「ユーゴは、このパーティーから追放した」
言いにくいはずの出来事をあっけらかんと言ってのけたのは、やはりベガスだった。
──────to be continued
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お読みいただき誠にありがとうございます。
この作品が
「面白い」 「続きが読みたい」 「推してもいい」
と少しでも思って頂けた方は、
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この作品を読者の皆様の手で育てて下さい。
そして「この作品は人気のない時から知ってたんだぜ?」とドヤって頂けることが夢です。
よろしくお願いいたします。
その道中、双子がちらっとユーゴの股間を憐憫の目で見たのが少し引っかかったが。
「また足を運ばせてしまって申し訳ないのう、ユーゴよ」
ベルタリオが再び迎えた。今日は一人だった。
「話は聞いた。すまんのう。私の部下が余計なことをしたようだ」
開口一番部下の無礼を詫びたベルタリオに、ユーゴは手を振った。
「別に実害はなかったから気にすんなよ。忠誠心が高いのは良いことだ」
昨日と同じように、応接ソファーで向かい合って座った二人。無論、また人払いをした上でだ。
「さて、昨日の件だが、私は協力しても良いと思っておる」
「へー。意外だな。てっきり断られるかと思ったよ」
「若い頃なら、あるいはそうだったかもしれぬな。しかし、私も国を治めるようになって随分経つ。若い頃に切り捨てたはずの地球が懐かしくなってしまってのう。元異世界人には元異世界人なりの苦労も解っているつもりだ。同じ境遇にあるものが危機にあると言うならば、同郷の誼で助けるのも悪くは無い。それに、私に直接危害を加えるのなら何とかしようもあるが、国民に被害が及ぶ可能性は見逃せぬ」
ベルトリオの瞳が強い光を発する。
「そうか。助かる。それじゃあ───」
と、ユーゴがスペリオール・ウォッチを渡そうとした時、
「ただ、お主にも少し手伝って欲しいことがある」
「……オーケー。聞こうか」
何らかの交換条件は想定内だ。
「うむ。実はなお主と会ったチアキの仕事───ベルーナ遺跡の補修と点検を手伝って欲しいのだ」
「遺跡の……補修と点検を?」
「うむ。あの遺跡は、私が百年ほど前から、知人から管理を任されておっての。だが、ここ数年忙しさにかまけてサボっておった。まぁ強固な結界を施しておるから人間や魔族は立ち入ることができないだろうと思って安心しておったのもある。ところが数日前に様子を見に行くと、遺跡に何者かの手が加えられておる形跡があった。しかも結界の封印が解かれておる。元は経年消滅したのかと思ったが、よく考えたら、まだ五十年は保つはずなのだ。これは異常でな。あの遺跡には、人間がありがたがるような宝などは無い。そのくせ、トラップだけは厭らしいほどにあるからのう。早急に手を打たねばならんのだ」
「話はわかった。協力するのはいいが、俺にこの世界のダンジョンの知識は無いぞ?」
「心配には及ばぬ。ちゃんと詳しい者をつける。その後はその者の指示で動いてもらえれば良い。聞いたぞ、なかなかの使い手らしいではないか」
ベルタリオは側近の女から報告を受けていた。
「それに、性欲がなくなる病気とも。可哀想にな。まだ若いのに」
深い同情の眼差しで、ベルタリオはユーゴを見つめた。
「いやいやいやいや。違う。それは誤解だ!」
ユーゴは全力で否定した。ここ最近の戦闘よりも多くの力を使って。
「そうなのか?」
「そうだ。だから気にしないでくれ。まぁ、遺跡の件は了解した。俺はいつでも大丈夫だ。何なら今からでもな」
「お主ならそう言ってくれるだろうと、なんとなく思っておったよ。では、今から北の大門と言うところに向かってくれるか。部下と備品を持たそう」
「了解だ。ところで、一つだけ疑問がある」
「なんだ?」
「ベルタリオ。あんた一体いくつなんだ?」
「もうかれこれ二百年は生きておるよ」
「まじかよ……」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
北の大門に着くと、少し遅れて狐獣人の双子が現れた。それぞれ一つずつカバンを持っている。
「これが」
「ベルタリオ様から預かった」
「「荷物です」」
ユーゴが二つのバックを受けると同時に、上空から何かが落ちてきた。いや誰かが着地した。
「待たせたの、ユーゴ」
紫髪のウェーブしたロングヘアに、ボディーラインも露わなチャイナドレスをまとった佳人、チアキだった。
双子を労って下がらせたチアキは、翼を出現させた。
「行き先はあの遺跡なんだろう? じゃあもっと早い方法がある」
そう言ってユーゴは人目がないのを確認し、地面に手をついて念じた。
【幽世の渡航者】───発動。
地面に何十もの光の縁が組まれ、その中心から1枚の白く輝く板が地面から生えるように出てきた。
「これはゲート? 何かを召喚するつもりか? だが、少し普通のゲートと様子が違うようだが」
ゲートは特定の物質を移動させられても、術者自身は移動できないというのが常識だ。
「いや、これは見ての通り特殊でな。俺が一度でも行った場所なら、俺を含め移動できるゲートなんだ」
「ほう。それは便利だのう」
「まぁな。さあ、行こうか」
二人はゲートをくぐった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「誰だ……? 冒険者なのか?」
ベルーナ遺跡地下一階。ベガス一行の前に現れた美少女二人を見て、ベガスはつぶやいた。
「いや。僕たちは冒険者じゃない」
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「大変です。皆さん負傷していらっしゃいますね」
栗色の髪をした修道女が慌ててベガスたちに駆け寄る。ネルだ。
「主よ。偉大にして、善良な神ミラールよ。彼の者たちにどうか主のお慈悲をお与えください。」
祝詞を唱えると、ベガスたち四人の全身が淡い光に包まれた。
「傷が…治っていく⁉︎」
「疲れも吹っ飛んだぜ! こりゃなんだ、すげえ!」
「もしかして…【祈癒】⁉︎ 噂の……」
「【祈癒の聖女】なの⁉︎」
ベガス、ギラン、リリ、レイア。4人とも驚きを隠せない。
「はい。ミラール教のネル・クロウセスと申します」
優しげな笑みを浮かべての自己紹介したネルを、ベガスたちは物珍しげな目で見た。
「ヴァリオン教徒の私でも癒してもらえるのね」
レイアが呟いた。皮肉ではなく、その声には感嘆が含まれていた。
「主ミラールの愛は分け隔てありません」
「ふーん。それで見返りを求めないのが信じられないけど、助かったわ」
「こんなところで聖女ネル様に会えるなんて…でもなぜこんなダンジョンに?」
リリの疑問にネルが答える。
「実は私とこちらの方───【聖戦の聖女】フィールエル様は人探しをしておりまして…」
「聖戦の聖女だって⁉︎」
「亡くなったんじゃなかったの⁉︎」
ギランとリリの疑問にフィールエルは答える。
「いや。実は魔女との争いで、しばらく身を潜めていただけなんだ。ところで、あなたたちは見てないかな。こう、背が高くて、黒革の変な上着を着た飄々とした感じの男なんだが……」
「おそらく昨日、この遺跡のどこかのダンジョンに潜ったようなんです」
リリとレイアはお互いの顔を見合わせる。
「あの、その人、もしかしてユーゴって名前じゃないですか?」
まさかと思いつつ、リリが心当たりのあった名を告げた。
「ご存知なんですね!」
ネルは嬉しそうに笑顔を作った。
「ええ…彼とはこのダンジョンに一緒に来たので」
「なるほど。あなた達だったのか。一緒に行動していたと言うのは。しかし、ユーゴの姿が見えないが、あいつはどこに?」
フィールエルは周囲を見回したが、やはりユーゴの姿は見えない。
リリとレイアは気まずそうな顔して「えっと…」と言いよどんだ。
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