ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

063. 恋する人魚

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「こ…コイ!?」

「そうだ」

 仰け反って驚愕しているパレア。その背景には稲妻まで見えそうだ。
 そんな彼女にベルタリオは頷いた。
 しかしパレアは横に首を振る。

「いや……それはないわ」

「ほう。なぜだ?」

「だって、アタシの一族は気高きたいの人魚よ。こいの遺伝子なんかプランクトンほども入ってないわ」

 ふ……と何故か人生に疲れたOLのような哀愁を漂わせだしたパレア。たぶん意味はない。

「……おい、どうするカルラ。こいつ、思った以上にバカだぞ?」

「所詮は魚介類ですので、イルカほどの知能はないでしょう。そこは否定しませんが、彼女はただ知らないだけなのです。ベルタリオ様、ここは私めにお任せを」

「頼む。私には荷が重い」

「かしこまりました。さて、パレア・シンクロン殿」

 内緒話を終わらせたカルラは、パレアに向かって語りかけた。
 実はこの女性官僚、百戦磨の異名を持つ女傑だった。

「な、なによ……」

「ここからは僭越ながらベルタリオ様の副官である私が、同じ女性ということでお話をさせていただきます。さてパレア殿。我が主のいう恋とは、感情の一種です」

「感情の……一種?」

「そうです。生物が恋をすると、哺乳類ならば出産します。魚類ならば産卵します」

 かなり飛躍した話だが、初心うぶ稚魚ネンネにはこれくらいカマさないと理解できないはずだ。
 果たしてカルラの目論見は功を奏した。

「さ……さん、らん!?」

 ドギャーンと、再びパレアの背後に落雷。
 そういえば昔、友人の人魚たちが言っていた。おんなは恋をして美しくなるのだと。そして恋した相手のために卵を産みたくなるものだと。
 しかし、自分には一生縁がないと思っていた。


 実はパレア・シンクロンは、人魚としては落ちこぼれである。だからこそ魔王になれたとも言うが。
 人魚はある一定の年齢に達すると成魚となり、大人の体に変わる。
 しかし、パレアは成魚となっても大人の体に変わらなかった。
 成魚となった人魚の友達はみな美しい歌声と魅力的な身体で魚人の雄も人間の男も惹きつけていた。
 でもパレアには魅力的な身体はない。音痴だから歌も聴けたものではない。
 その代わり、パレアには莫大な魔力があった。そして海を操るという世界で唯一、パレアだけが持つ超絶スキルがあった。
 その才能を以て、パレアは海の覇道を邁進した。普通の人魚おんなとしての幸せを、魔王として成功することで昇華しようとしたのかも知れない。中学生男子が有り余る性欲をスポーツで発散させるようなものだ。
 そんな自分が産卵。捨てたはずの青春が戻ってくるかも知れない。
 これは千載一遇の好機だ。確信した。
 
「そ、そのユーゴ・タカトーはどこに行ったの!? アンタ、知ってるんでしょ、ベルタリオ。教えなさいよ!」

 切実さを感じさせるパレアに、ベルタリオは首を振った。

「ダメだ」

「えっ……な、何でそんなイジワルを言うのよ」

「それを訊く前にパレア。お主、私たちに言うことがあるのではないか?」

「う……」

「もしや我らが忘れたと思うておるわけではあるまい? お主が海神槍トリニティという餌につられ、グレンに加担したことを。そして実際に軍を展開したことを私達が知らんとでも? もうネタは上がっておる。白を切っても無駄だ」

 たしかに海の軍勢をこの国の南の海に集め、海から逃げられないよう包囲したのは事実だ。
 むしろ積極的に攻撃した。大津波でオーバーキル気味に。
 グレンが退いたことで有耶無耶にできるかもと思っていたが、それは甘い考えだったようだ。

「……ごめん」

「ん?」

「ごめんなさい。私が悪かった……です。このとおり謝ります」

 両手を揃え、深々と頭を下げたパレアにベルタリオ達は眉を上げて驚いた。

「……ほう」

 ベルタリオは、珍しい物を見るような反応をした。
 なんせ出会ってこの方、パレア・シンクロンは “わがまま・高飛車・意地っ張り” と、悪い意味で三拍子揃った女だったのだ。自分の非を認め、謝る姿など、想像だにしなかった。
 これもひとえに惚れた男に会いたいが為か。本人はまだそこまで意識していないだろうが。 
 ふう、とベルタリオは溜息をついた。

「……分かった、教えてやる。ユーゴの行き先をな」

「ほんと!? いいの?」

 一転して花が咲いたように笑顔になり、パレアの瞳が輝いた。

「ユーゴのお陰とはいえ、結局は何の被害も出ていないのだ。まぁお主が個人的にでも謝ったら赦そうとは思っておった」

「うん……」

「ユーゴはいま、ヨウゲン国を目指し、南下しておる。間違いなくスエナから船に乗って一番近い奉ヶ崎まつりがさきの村で降りるだろう」

「うん、うん!」

「さぁもう行け。ユーゴに迷惑をかけるなよ? そうしたら今度は本当に赦さんぞ?」

「うん、分かったわ。ありがとうベルタリオ。じゃあね!」

 嬉しそうに手を降ってパレアは転移していった。

「さて、これからどうなることやら……」

 魔王の一人を友とし、また一人を敵として打倒し、そしてもう一人を惚れさせた。
 とんでもない男だ、ユーゴ・タカトー。
 やつの行くところ、必ずや奇想天外な出来事がおこる。これからもきっとそうだろう。
 その結果がどうなるか。
 それは二百年生きた千獣の魔王ベヒモスですら分からなかった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 そして先回りしていれば会えるだろうと踏んで、スエナに転移したパレア。
 なんとその直後、目的のユーゴと遭遇した。
 なんという僥倖。
 声が裏返ってしまったが、何とか声をかけることに成功した。
 ユーゴの方もパレアを見て笑顔を浮かべて、彼女に語りかける。

「おお、お前か。会いたかったぜ!」

 アイタカッタゼ…アイタカッタゼ…アイタカッタゼ…………。

 その声がパレアの脳内でリフレインする。

「ほ、本当!?」

「ああ、本当だ」

 ユーゴにしてみれば見失ったと思っていた手がかりだ。会いたくなかったワケがない。

「で、お前はなにをしてんだ、ここで」

「え? ええと、あ、アンタに会いに来たのよ……」

「俺に? 何か用でもあるのか?」

「えっと……」

 しまった。衝動のまま動いてしまったので、どう話をしていいのかをまだ考えてなかった。
 必死に頭をフル回転させるパレア。しかしパニックで考えがまとまらない。目が渦潮のようにぐるぐる回る。
 ベルタリオの副官はなんと言っていただろうか。コイ?
 いや、アタシは鯛の人魚だ。鯉じゃない。いや違うそうじゃない。もっと何ていうか、衝撃的な……そうだ!

「アタシに……」

「ん?」

「アタシにアンタの卵を産ませなさい!」

「はぁ?」

 パレアの意味不明な発言に、ユーゴは間抜けな声を出した。
 チャキ。スッ。
 そしてフィールエルは剣の切っ先を、ネルは杖の重くて太い先端を攻撃対象へ向けた。
 すなわちユーゴの方へと。



──────to be continued

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