ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

069. 覆面忍者黒風

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 お天道様が天頂に差し掛かった頃である。 
 陽元国は松風藩にある大商家、飛田屋の主、錦兵衛きんべえはほくそ笑んでいた。
 昨夜、待ちに待った大商いの好機が巡ってきたのだ。
 海の魔物が荒れ狂い、陽元国行きの船を襲っていたので一時はどうなるかと思ったが、瑪瑙国メナ・ジェンドの船乗りたちがうまく事を運んだようだ。
 この事業に大枚をはたいたのだ。万が一にもしくじるわけにはいかなかった。
 瑪瑙国メナ・ジェンドから届いたのは五匹。そのうちの一匹は自分がいただくとして、残り四匹は既に買い手がついている。
 早朝から商品到着の報せを出し、先ほどまで一番大口の顧客の代理人と受け渡しの打ち合わせをしていた。
 この顧客の旨みは、銭金だけではない。これで飛田屋も安泰だ。
 これで永遠の命と莫大な富、そして絶大な権力が手に入る。
 これからの飛田屋の繁栄を夢想していた錦兵衛だが、突如として庭先に轟いた爆音で、現実に引き戻された。

「な、な、何事じゃ!? 誰か、誰かおらんのかっ!?」

 ドタドタと縁側を掛けてくる複数の足音。
 家人や使用人が何事かと泡を食って出てきたのだ。
 いや、待て。庭の蔵には大事な商品を置いてあるのだぞ。
 錦兵衛は腰が抜けているため、四つん這いで縁側の障子を開けた。
 
「なっ……っ!?」

 あんぐりと口を開けた錦兵衛。そこには信じられない光景があった。
 人工池がある広い庭。その角には先祖代々の家宝などを収めてある大きな蔵があるはずだった。幾度もの戦火に曝されてもびくともしなかったその堅固な蔵が、無くなっていた。
 否、あるのだ。基礎だけは残っている。だがそのウワモノは無くなっていた。
 周りに散らばっている瓦礫はその残骸か。

「わ、儂の……儂の商品は……? んなっ!?」

 土煙が晴れた時、蔵の中が日の下に晒された。そこには、いるはずのない見覚えのない人影が三つあった。

「はーはっはっはっは! 天知る地知る、今日の朝飯、貝の味噌汁! 疾風はやての如く闇を駆け、下衆をおちょくり悪を討つ、覆面の忍者、我が名は黒風! うぇ~い!」

 真ん中の長身の男が声高らかに名乗り、両手の人差し指を天に向けてアゲアゲポーズを決めた。
 深黒の忍者装束に同色の頭巾と、顔の下半分を覆い隠す覆面をしている。

「同じく、青風よ!」

 黒風と名乗った人物の左隣に立つ、一番背の低い人物が元気よく名乗った。
 ミニスカートのような短い丈のくノ一装束は青色である。
 青風はシャラーン (←?)と、魔法少女ばりのギャンキャワポーズを決めた。

「……同じく白風ですぅ。うう……恥ずかしい」

 黒風の右隣で白い忍者装束の人物が、恥ずかしそうに名乗った。それで隠れられるわけでもないだろうに、両手で顔を隠してうずくまっている
 カクン。
 錦兵衛以下、飛田屋の面々は顎が外れるかと思うほど開いた口が塞がらなかった。

 ───なんだ奴らは。忍? いや、こんな堂々とした忍がいるものか。

「な、なにやつ!? どこの回し者だ!?」

 流石は大店の主というところで、いち早く我に返って素性を問うた。

「アンタみたいな悪人に名乗る名はないわ!」

「いや青風。俺たちもう名乗ったぞ。ていうかこういう場面で俺より面白いことをされると、俺の立つ瀬がないんだが。おい白風。いつまで恥ずかしがってんだ。そろそろ腹をくくれよ」

「別行動のフィ……桃風が羨ましいです。……ぐす」

 手を顔から外して立ち上がった白風は、既に半べそを掻いている。とんだ羞恥プレイだった。
 解説するのも馬鹿らしいが、何を隠そう黒風の正体はユーゴである。青風はパレア。白風はネル。ちなみに桃風ことフィールエルは別任務のため、この場には居ない。

「さて、悪徳商人飛田屋錦兵衛。貴様、遠い大陸を越え、西の海から何の罪もない人魚の幼子五人をかどわかし、自らその肉を喰らおうとし、あまつさえ売り捌こうとしたな?」

「な、何を……!?」

 黒風の告発に、錦兵衛以外の飛田屋全員がざわついた。

「ち、父上。あの者の言っていることは本当ですか?」

 跡取り息子が困惑気味に尋ねた。

「し、し、知らん。何のことだか分からんぞ! あの賊の戯言だ。惑わされるでない!」

 錦兵衛は内心ひどく焦っていた。
 人魚や獣人の売買は陽元国でもご法度。露見すれば打首。飛田屋も潰れてしまう重罪だ。なぜバレたのだ!?
 しかし大丈夫だ。証拠はない。

「曲者め。滅多な事を申すな。そのような事、儂がする筈がないだろう」

 不敵に笑って、錦兵衛は言い放った。

「おいおいおい。証拠も何も、ここにいるじゃねぇかよ」

 黒風もといユーゴは背後に並んでいる樽の上蓋を叩き割ると、そこに両手を突っ込んで、あるものを引き上げた。
 ユーゴの両手に抱えられていたのは、五歳くらいの人魚の子供だった。

「う……ぎゃー! ママー!」

 子供はユーゴの顔を見ると、ギャン泣きした。

「おお…よっぽど怖かったんだな。もう大丈夫だぞー。大丈夫……おいまさか俺の目つきが怖いから泣いてるとかじゃねぇよな?」

「やめなさいよ。ほら白風、全部開けるわよ」

「は、はい……」

 手分けして全部の樽に人魚の子供が入っていたことを確認させた。
 飛田屋の面々に動揺が広がる。

「ふ、ふん。その樽がうちのものだという証拠が何処にある? 儂を貶めるために、貴様らが仕込んだのであろう。……そ、そうか、貴様ら、どこぞの商売敵の手の者だな!?」

 前半はただの苦しい言い訳だが、後半は半ば本気で思い込んでいるようだった。

「へー。ほー。まぁそのくらいは抵抗するよな。そのくらいのしぶとさがないと、商人なんて出来ねぇよな。想定内だ。んじゃ、やっぱアレか。ちょうどあっちも準備が出来たようだしな。おーい、桃風。いいぞ、やってくれ‼︎」

 ユーゴは錦兵衛の呼びかけた。
 錦兵衛が後ろ───縁側の反対、つまり室内───をゆっくり振り返ると、桃色のくノ一装束を着た女が、なにか作業をしていた。
 誰だ? いつの間に儂の部屋に入ったのだ?

「あ、どうも。桃風だ。いまから良いものを観せてやろう」

 桃風───フィールエルは映像機テレビの電源を操作した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


『それで飛田屋。間違いないのだな?』

『左様でございます、駒井様。確認いたしましたが、間違いなく人魚の子供でございます』

『くくく。そうか。ならばあのお方もきっとお歓びになる。あのお方が不老不死になれば、この国もかつての正しき陽元に戻るだろう。その暁には飛田屋、そちにも今までの働きに報いていただけるよう、儂からあのお方に口添えしてやろう』

『おお! 誠で御座いますか、駒井様。それが叶いますれば重畳。これ以上ない光栄にございます』

『そうであろう、そうであろう。ついてはだな、飛田屋。そちにひとつ頼みがある』

『と、申しますと?』

『うむ。正直に申せ。そちも人魚を確保しておるのだろう? 己の分として。それをな、儂にも少し回してもらえんか? そちにとってもその方が都合が良かろう? 儂以上に融通が利くものは、金輪際現れないであろうしな』

『確かに。我らが永遠に組んでおれば、無敵でございますな。駒井様もなかなか、悪でございますなぁ』

『飛田屋には敵うまいて。そちが話の分かる者で儂も助かるぞ。それで受け渡しの方法だがな───』

 画面では、二人の悪人が悪巧みをさらに発展させていた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あ、ああ、ああああああ…………」

 錦兵衛はいま観た内容を認めたくないのか、イヤイヤと首を振り続けている。

「父上……貴方という人は……」

 跡取り息子も、その他の者も、汚らしいものを見る目で錦兵衛を見ている。
 ポン。
 いつの間にかユーゴが錦兵衛の傍らにしゃがみ込んで、彼の肩に手を置いた。

「おつかれちゃーん。どう、ウチのカメラマン…じゃなくてカメラガール、良い腕してんだろ? でもな、これ、まだ本番じゃないんだわ」

「え?」

 と、錦兵衛が呆然として聞き返した。

「これからもっと面白くなるぜってことだ。ニンニン」

 にっ。黒風はウサギをおちょくるライオンの目をして笑った。

──────to be continued

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