ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

088. 四神無双(後)

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 ユーゴはスサノオの眼前まで再び移動し、ある方向を指さして大声を張り上げる。

「信衛。いまから向こうの平地に奴らを誘導しろ! お前の姉ちゃんにも伝えてくれ!」

「は、はい!」

 飛んでいったユーゴを追いかけながら、信衛は雪との通信チャンネルを開いた。

「姉上。あちらの平野に移動しましょう。ゆうご殿になにか策があるようです」

「ゆうご様が? わかったわ」

 リッカもスサノオも、そしてユーゴも同じ方向へ移動していくのを発見し、フィールエルも彼らを追いかけた。

「どうしたんだ、ユーゴ?」

「無事だったか、フィールエル。面倒くせえから、いまから一気に片付けようと思ってな。お前もちょっとはなれてろよ」

 その時、リッカが森林地帯を抜け出した。
 追撃してくるジンライに気を取られ、前方にある小さな池に気づかずに脚部を引っ掛けて、倒れ込んでしまった。
 フィールエルに声をかけた直穂、ユーゴはリッカの危機に気づいた。

「アレはちょっとまずそうだな」

 しかし距離が遠い。間に合うか。
 狙いやすい的となったリッカに、四体のジンライが霊子ライフルを向ける。
 リッカの主武装である吹雪は既にエネルギー切れだった。迎撃は不可能。
 万事休す。
 ジンライが一斉に銃爪を引いた。
 搭乗席の雪は、光が放たれる瞬間をスローモーションで見ていた。
 これが噂に聞く走馬灯か。
 ここで私の人生は終わるのか。
 自分の運命を受け入れたのか、それとも諦めたのか。雪が瞼を閉じかけ、光がモニターを埋め尽くした時、

「諦めるなよ」

 モニターには、黒い影。

電光石火フリーウェイジャム】を発動し、リッカを庇うようにジンライと向き合いって玄武の障壁で全ての光弾を防いだユーゴは、肩越しにリッカに振り向いて声をかけた。

「ゆ、ゆうご様?」

 ユーゴがこの戦場に到着していたのは弟からの通信で知っていたが、どのように戦っていたのは見ていなかった。
 異形の黒甲冑に、非神威状態でも感じ取れるほどの神力を持つ武具を纏ったその姿。
 圧倒的存在感に、雪は心を奪われた。

「おい。ぼけっとしてないで、ここから離れてな」

「は、はい」

 ユーゴの警告に慌てて返事し、リッカは素早い動作で離脱した。
 霊子ライフルのオゾン臭のような臭いが残された土煙が晴れると、今まで居なかったはずのエクスブレイバーの姿にジンライたちが一歩後退った。
 
「それでは、陽元国の皆様には前代未聞の奇術をお見せいたしましょう……なんてな」

 両軍の現在位置は、ユーゴの背面方向にスサノオ、リッカ、フィールエル。
 対して前面方向には倒幕連合軍が何の遮蔽物もなくその姿を晒している。
 本来追撃する側は、何らかの罠の可能性を考え警戒するものだが、数で勝っていることに油断し、それが災いした。

宇宙遊泳リバティウイング

 両手を前に突き出し、前方の広大な範囲の重力を操作。十分の一の重力で反転。
 連合軍のジンライが全て、ゆっくりと上昇しだした。
 予想だにしなかった挙動。いや、現象に、ジタバタと手足をもがく連合軍の機巧武人ジンライたち。
 
「ここなら森の動物さんたちに気を使わず、一斉に持ち上げられるもんなぁ」

 何処か愉悦を含んだユーゴの声。人間体であれば確実に邪悪な笑みをしていたことだろう。
 ある程度───地上に累が及ばないくらい───の高度まですべての機体が達すると、ユーゴ自身も同じ高度まで上昇した。
 その両肩の青龍は、既に吠える準備を整え、前方に狙いをつけている。
 九能家当主も、神威の巫女姫も、聖戦の聖女も、唖然と空を見上げていた。
 フィールエルに至っては映像で見ていて知っていたにも関わらず、実際にその目で見てると、改めてその超常の光景に言葉を失ったほどだ。

「咆えろ。青龍」

 ユーゴの呟きとともに二つの砲門から、まさしく龍の咆哮もかくやという轟音が響き渡り、スパークを纏った紡錘状の光線が二条放たれた。
 竜巻のような光が敵機を蹂躙していき、信衛たちはあまりの眩しさに腕で顔を隠し、さらにフィールエルは衝撃波で吹き飛ばされそうになるのに耐えなければならなかった。
 わずか数秒で光と衝撃波は収まり、信衛と雪は、そこに空の色しか無いことに目を疑った。

「参ったな。出力は抑えたんだが、それでもまだ世界に影響を及ぼすか」

 メナ・ジェンド獣王国で使用したときのように空間に穴こそ開かなかったが、それでも、水に浮いた油のように、天空の一部は七色に輝いて歪んでいた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ゆうご殿、凄まじいですね」

 地上に降りたユーゴに、スサノオの胸部中央にあるコクピットのハッチを開けて顔を見せた信衛が声をかけた。

「いや、だいぶ手加減したつもりなんだが……まぁ、自然環境に悪影響はないと思うが」

 なぜか気まずそうに行ったユーゴに、信衛は提案する。

「敗残兵を捕らえてきます。ここはもう拙者一人で大丈夫ですので、ゆうご殿たち城にお戻り下さい」

 言葉に甘えることにしたユーゴ、フィールエル、雪の三人は、ネルが待っている高台に移動した。

「ネル、無事か?」

「私は大丈夫ですよ、フィー。私よりも皆さんがご無事で何よりです。でも……」

「どうした?」

 笑顔から一転してくらい顔を見せるネルに、フィールエルは小首をかしげて声をかけた。

「私、今回何も出来ませんでした……」

「それは違うぜ、ネル」

 自分が役に立たなかったと恥じるネルに、ユーゴはその述懐を否定した。

「俺は一見何でもアリに思われがちだが、自分の傷を治すことが出来ない。黒魔女の時みたいにかも知れないが、あれはリスクが高いし、治癒とは違う。いままでの人生、傷を負って、それが元で死んだことも少なくない。そのぶん逃げることと避けることが上達したわけだが。つまり何が言いたいかっていうと、俺……いや、俺たちはネルが居てくれるだけで安心して思い切り戦えるんだ」

 ユーゴは頭に手を載せて言った。

「ユーゴさん、ありがとうございます」

「つーわけで、帰るか。もうヘトヘトだ」

「それはいいが、ユーゴ。相変わらずネルには優しいな」

「なんだよフィールエル。別にそんなことはないと思うが……」

「いや、あるね。いつも突っ慳貪なくせに、さっきは丁寧に気遣った発言をしたじゃないか。ボクにはいつも突き放す発言ばかりなのに。何故だ?」

「何故って、そりゃ……」

 ユーゴにしてみれば特に意味など無い。
 強いて言えば、自虐的な思考を続けられると、次、もし有事が起こった場合に、ネルが自分のスペックを発揮しきれなくなる可能性がある。それを回避するためだ。
 しかしそれをいま説明するのは面倒くさい。ユーゴは現在、疲労の極地にある。

「……勘弁しろよ。俺はお前もネルも、扱い方に差をつけるつもりはねぇ」

「ふぅん。それなら……ん」

「は? なんだよ、頭を突き出して」

「ネルと扱い方に差をつけないんだろう? じゃあ、ボクも頭をナデナデして欲しい」

 にっこりと笑って言ったフィールエル。そんな彼女をユーゴは引き攣った表情で眺める。
 こ、こいつ……面倒くせぇ!

「くそ、柄にもないことするんじゃなかったぜ」

 ユーゴは後悔しながら、フィールエルの頭を撫でた。
 まぁいいか。こいつも頑張って戦ったようだし、ご褒美代わりだ。
 そのように己の行動を正当化したユーゴは、すぐに彼女の頭から手を離すと、幽世の渡航者ワンダフルダイバーを発動させた。

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