ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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めいでぃっしゅへようこそ! 編

132. 【余話】ゆう坊とお姉ちゃん③

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 グラーニャの町。その繁華街は今日も賑わっていた。
 上品そうな貴婦人や初老の紳士、職人風の男達。様々な人が行き交っている。

「まずはアンタの服をなんとかしなくちゃね」

 その中を、パレアとゆうご少年は歩いていた。
 ゆうご少年は相変わらずだぼだぼシャツだが、裸足ではない。
 サイズの小さいパレアのローファーに布切れを詰めて履かせているのだ。
 それでも歩きにくい事には違いないので、必然、よたよたと危なっかしい歩き方になってしまう。
 それを見かねたパレアは、ゆうご少年に手を差し出した。

「ほら、つかまりなさい。ゆう坊」

「はい」

 二人は手を繋いで歩き出した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「うん。似合う似合う」

 子供服専門の洋裁店に入ったパレア達は、早速手頃そうな服と下着を見繕った。
 そしていまパレアの目の前には、嬉しそうにはにかむゆうご少年が立っていた。
 彼が身につけているのは、ピッタリサイズの白いシャツにチェック柄のハンチング帽。それと同じ柄のパンツをサスペンダーで吊っている。おまけに足には布製の靴。
 それにあと数点の下着をパレアは買い求めた。
 パレアにとって痛い出費であるが、嬉しそうなゆうご少年を見るとそれも気にならなくなった。喜んでくれたのならば、買い食いを我慢してめいでぃっしゅの給金を貯金していた甲斐があったというものだ。
 それからパレアは、ゆうご少年を連れて街を歩き回った。
 疲れたら飲み物とサンドイッチのような軽食を買って、公園で休憩。
 ベンチに腰掛けて、仲良さそうに頬張る姿は実の姉弟のようだった。

「さ、そろそろ帰りましょうか」

 陽が傾きだした───といっても、この世界は太陽の位置は殆ど変わらず、色彩が変化しだした───ことで、帰途につくことにした。
 その途中。グラーニャの街を二分割する大きな運河に掛かる橋の半ばに、一台の屋台があった。
 それを見てパレアは本来の目的を思い出した。

「そういえばアタシ、あのワッフルが食べたかったんだっけ。ゆう坊、ワッフル食べたい?」
 
 パレアがイメージする子供といえば、ピーピー泣くし騒がしいし、わがままだし、とかく疲れることが多くてイライラさせられる存在だった。
 だがゆうご少年は大人しく素直で、ちっちゃいながらもパレアを必死で守ろうとしてくれた。
 これで気に入らないはずがない。
 いままで世話をされたことはあっても世話をしたことなど無いパレアが、ゆうご少年にあれこれと気を回している理由がそれだった。
 つまり、この頃にはすっかりパレアはゆうご少年のお姉ちゃん気分だった。
 ゆうご少年は、パレアの問にこくりと頷いた。

「そう。じゃあここで大人しく待ってなさい。お姉ちゃん、すぐに買って戻ってくるから」

 小走りに屋台に向かい、注文を行うパレア。
 ゆうご少年は彼女を見ていたが、予期せぬ突風が彼の顔を叩き、ゆうご少年は目を瞑った。
 
「あ!」

 勢いよく吹いた風に、ゆうご少年のハンチング帽が宙に舞った。
 意地悪な風はそれだけでは飽き足りず、いたいけな少年を揶揄うように帽子を連れ去った。
 風に煽られ、河面へと放物線を描いて向かっていく帽子を見て、ゆうご少年は「大変だ!」と焦った。
 パレアお姉ちゃんから買ってもらった、大切な帽子。
 無くしたらお姉ちゃんが悲しんじゃう!
 とっさに欄干にしがみつき、ゆうご少年は体ごと手を伸ばして帽子を掴もうとする。
 良かった。間に合いそう───。
 だがその思いは虚しく砕かれた。
 再び突風が、先程よりも強くあり得ないほどの勢いでゆうご少年の背を押したのだ。

「すごい風だったわ……」

 ちょうど注文を終えたパレアの耳に、通行人の悲鳴が飛び込んできた。

「大変だ! 子供が運河に落ちたぞ!」

 子供?───まさか!?
 急いで橋の上にゆうご少年の姿を探すパレアだが、その姿が見当たらない。
 河面を覗き込む通行人たちに混じり、パレアは欄干から上半身を乗り出す。
 果たしてそこには、沈み込むまいと河面で必死にもがくゆうご少年の姿があった。

「ゆう坊!!」

 心臓がぎゅっと掴まれたように縮まり、パレアは悲鳴を上げた。
 ただでさえ着衣で泳ぐというのは大人でも至難の業。その上、彼はいまパニックに支配されている。
 ゆうご少年の全身は、あっけなく河の中へ沈んでいった。
 貨物船が運行する運河である。幅も深さもある。沈んでしまえば一巻の終わりだ。
 パレアは一切の迷いなく、運河へと飛び込んだ。
 水中に潜ったパレアは、ゆうご少年の姿を探す。
 人魚である彼女の視界は水中にあってもクリアだ。
 キョロキョロと周りを見回す。
 すると遠くに、赤い妙な魚が泳いでいるのを発見した。
 ゆうご少年を探している最中にもかかわらず、パレアが思わず注視してしまった理由は、その魚の異様さにある。
 それをただの魚類と呼ぶのは憚られた。
 まずその体長はパレアよりも長く、一見マンボウのようなフォルムをしているが、ヒレは全て鋭い針のように尖っており、可愛らしさのかけらも無い。
 身体を覆う鱗は血のように赤く輝き、鮫のような冷酷さを感じさせる目をしている。
 なによりもその魚の異様さを際立たせているのは、尾びれから伸びている五本の触手である。
 長くグロテスクなその触手の先端は、なんと人の手の形をしている。
 この世界の水生生物には詳しくないパレアだが、周りを泳いでいる魚たちに比べると、明らかに生物として規格外のカテゴリーに属しているように感じられる。
 その怪魚はパレアの方には全く興味を示さず、ただそこに静かに浮いているだけだ。
 パレアの方も当初の目的を果たすべく、怪魚を無視することにした。
 ───いた!
 怪魚とは反対方向。少し離れた場所にもがきながら沈みゆくゆうご少年を発見した。
 パレアの身体が一瞬発光し、両足が股下から融合する。
 それは、瞬く間に尾びれへと変化し、パレアは大きな尾びれを掻いた。
 河の魚たちが目をむいて引くほどの速度でゆうご少年をキャッチすると、すぐに岸へと上げた。
 人間体に戻ったパレアも河から這い上がると、ゆうご少年の容態を確かめた。

「ゴホッゴホッ、おええっ」

 えずいているが、意識はある。
 良かった。水を飲んだだけのようだ。
 
「うええええええん」

 さすがのゆうご少年も溺れかけたのは果てしない恐怖だったので、顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。

「このおバカ……。心配かけるんじゃないわよ。でも……アンタが無事で良かったわ」

 安堵したパレアの涙腺が緩み、一筋の涙が彼女の頬を滑り落ちた。それを皮切りに、パレアはポロポロと嗚咽する。
 河の水とは明らかに異なる、清らかな輝きを放つその涙を見て、ゆうご少年は泣き止んだ。

「お姉ちゃん、ごめんなさい。泣かないで」

 そしてパレアの両頬を包み込むようにして、優しく手を当てた。

「ぼくが泣くとママがいつもこうしてくれるんです。泣かないでって。強くて女の子を守れる男の子になりなさいって」

 パレアの瞳をじっと見つめ、ゆうご少年は宣言する。

「ぼく、強くなってパレアお姉ちゃんを守るから。だから泣かないで」

 パレアはいう後の手に己の手を重ね、目を細める。
 それは、慈愛に満ちた微笑みだった。


 パレアは魔術を使ってゆうご少年の帽子を取り戻し、【乾燥】の魔術で衣服を乾かした。
 二人仲良く手を繋いで帰宅すると、パレアはゆうご少年はを世話するその甲斐甲斐しさで皆を驚かせた。
 ゆうご少年をお風呂に入れて身体を拭いてやり、ご飯を食べさせておやつのワッフルを食べさせ、一緒に洗面してパジャマに着替えさせ、そしてパレアのベッドで二人一緒に眠った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ユーゴが目を覚ますと、まず頭のだるさと甘い匂いに違和感を覚えた。

「なんか、だりぃな……。つーかここ、どこだ?」

 見覚えのない部屋である。家具も寝具もユーゴの部屋のものではない。
 何より最大の相違点は───。

「なんでパレアが隣で寝てるんだ?」

 脳内にエクスクラメーションマークが乱舞する。
 ユーゴが混乱している中、パレアがゆっくりと瞼を開けた。

「ん……ゆう坊、起きたの?───あ」


「よ、よう……」

 目をこすりながらユーゴを見て、パレアはが終わったことを悟った。
 そんな彼女にユーゴは片手を挙げて挨拶した。

「も、もしかしてここ、お前の部屋か?」

「そうよ。……元に戻ったのね」

「……? どういう意味だ?」

「こっちの話よ。ちょっと待ってなさい。アンタの服を持ってくるから。それ着たら出ていきなさいよ」

「お、おう。てか俺、どうしてここで寝てたんだ? しかもこんなシャツ一枚で」

「さあね。寝ぼけて部屋を間違えたんじゃない?」

「んなバカな……。どんな寝ぼけ方だよ」

 パレアはそれ以上は構わず、さっと部屋を出ていった。

「……?」

 いつもと違うそのそっけない態度に、ユーゴの混乱はますます深まった。



 フィールエルやネル達も、少し様子が違っていた。
 ユーゴを見るとぎょっとするが、会話は普通にする。ぎこちなくはあるが。
 というのも、ネルの発案で、ユーゴが幼児化していたことは本人に知らせずにおこうということになっているからだ。
 きっと、知ってしまえばユーゴのプライドが傷つくだろうと。
 そしてパレア。彼女の様子が一番変だった。
 元気がなく、ため息が多い。さらにユーゴを見ては悲しそうに目を伏せ、彼を避けるように会話も減った。
 それが数日続いたある日。川べりを歩いていたユーゴは、遠目にパレアの姿を見つけた。
 大きなアーチを描く橋の上で、物憂げに河を見ながらの。

「何やってんだよ、こんなところで」

 ここ数日の様子が気になっていたユーゴは、パレアに近づいて声を掛けた。

「……別に。何でも無いわよ」

 ユーゴを一瞥もせずに、パレアは答えた。
 女性は落ち込んだり元気がなかったりイラついたといった様子を定期的に見せるものだが、ことパレアに関しては今までそれがなかった。
 明らかになにかがあったのだ。
 だが、それに突っ込むべきか……。
 ユーゴは言葉を続けようとしたが、それが出来なかった。

「!?」

 パレアが流した涙によって、阻まれたのだ。

「お前……」

「あ、あれ? おかしいわね……」

 流すつもりのなかった涙を必死に隠すように拭うパレアを見て、ユーゴの両手が彼女の頬に伸びた。

「え……」

 両手でパレアの頬に触れ、彼女の顔を己に向けさせたユーゴは告げる。

「何があったのかは知らないが、お前に涙は似合わねぇ。いつも元気で騒々しくて、バカなことをして俺を笑わしてくれる。それが俺にとってのパレア・シンクロンだ。もしお前を泣かすやつが居たら俺に言え。俺がぶっ飛ばしてやる。俺はそのくらいには強い」

 その言葉と行動にパレアはぽかんとする。
 ややあって、

「ふふ。アタシを泣かしてるのは、アンタよ。バカね」

 苦笑した。

「は? 俺が?」

「まぁでもやっぱり、アンタもアイツなのよね。うん。もういいわ。何でも無い。ヘンなとこ見せて悪かったわね」

「……よく判らんが、解決したなら良い」

「ていうかアンタ、これ」

 そう言ってパレアは、己の頬に触れるユーゴの手の甲をつねった。

「痛ぇ。ああ……。これは昔俺が泣いている時に、おふくろがよくこうやってくれたんだよ。ガキの頃、隣りに住んでた女にも同じことをやったら、『女の顔に気安く触るな』って怒られていて以来、封印してたんだが……。お前の泣き顔を見てたら、何故かやっちまった」

「まったく……。まぁある意味アンタらしいわね。とりあえずアタシはもう帰るわ」

「俺も帰るか……。あ」

 そこでユーゴは一台の屋台を見つけた。
 甘い物が苦手なユーゴだったが、このときばかりは何故か無性に食べたくなった。

「おい、パレア。お前、甘い物好きだったよな。アレ、食べるか?」

 ユーゴの指差す方を見て、パレアが破顔した。

「いいわね。今日はアンタが奢りなさいよ」

「今日は? ……まぁいいか」

 そしてパレアは、ワッフルの屋台へと歩いていく。ユーゴの手を引っ張りながら。
 ユーゴは不思議とそれを解く気になれず、なされるがまま従いていったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 時を同じくして、グラーニャへと急ぎ戻り行く一台の馬車があった。
 その中には、この世のものとは思えぬほどの美貌と、この世のものとは思えぬ衣を纏った女が居た。

「まさかとは思ったけど、あんなに厄介なが配置されてたなんて……。急いでユーくんに報せなきゃ」

 以前ユーゴが働く店を訪れた後、グラーニャを離れていた女神ユーラウリアだった。
 その表情は憂慮で固くなっており、よほど切迫した事態なのだと伺わせる。
 土埃を上げながら帰路を急ぐ馬車。
 その来し方、遠方には、小山にも匹敵するほど巨大な猫の像が黄金色に輝いていた。
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