ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

文字の大きさ
142 / 163
セイクリッド・マテリアル編

142. 歌姫救出

しおりを挟む
「おい、ゼフィーリア。いまどこにいる?」

 呼びかけるユーゴは、のんびりとしたゼフィーリアの返答を予想してた。
 しかしスペリオールウォッチから聞こえてきたのは、

『───ユーゴ、救けて! 馬車よ!!』

 ゼフィーリアの切迫した声だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 時は舞台が終わった瞬間まで遡る。
 万雷の拍手が鳴り止まぬ中、緞帳が降りていく。
 ゼフィーリアは幕が下りきったステージで胸を撫で下ろした。
 なんとか無事に終えることができた、と。
 今日の公演はいつも以上に緊張した。ユーゴが観に来ているはずだから、下手な演技を見せられないからだ。
 ユーゴと鉄太の招待状には、ゼフィーリアの楽屋に来るように示してある。
 彼らが来るまでに少しメイクを整えたいと思ったゼフィーリアは、舞台袖にいたスタッフに、今日はこのまま楽屋に直行すると共演者たちへの言付けを頼み、そのまま楽屋へ向かった。
 ゼフィーリアが一番乗りだから、楽屋には誰もいないはずだった。
 ところが楽屋の扉を開けた瞬間、四人の男たちに体中を縛られ、猿ぐつわを噛まされた。

「きゃっ……!? え、え、むぐっ……!?」

 何が起きているのか理解できないまま体をまるごと包むほどの袋に入れられ、荷物のようにゼフィーリアは抱えられた。
 男達は予め用意していた大きな籠にゼフィーリアを入れた袋を積み込んで、ひまわり座の外へと運び出した。
 馬車の中へ押し込んで、急いで発車させた。

「おい、ちゃんと呼吸しているか確認しろ」

 男達のリーダー格の命令で、ゼフィーリアは袋から顔だけ出され、猿ぐつわを外された。
 もし恐怖や混乱で嘔吐してしまった場合、口を塞がれたままだと窒息してしまう恐れがあるからだ。

「ぷはっ! ちょ……貴方達、いったい何なの!? どういうつもりっ!? いきなりこんなことして、馬鹿じゃないのっ!?」

 口を開いた瞬間、伯爵令嬢や歌姫の仮面をかなぐり捨てて、ゼフィーリアは悪態をついた。
 このような狼藉者どもに猫をかぶる必要はないのだ。
 その時、ピロピロピロとこの世界で聞くことがなかった電子音が鳴った。

「何だこの音は? どこから鳴っている?」

 男達が戸惑う。
 だがその音源が何なのか、ゼフィーリアには理解できた。左手首の振動が教えてくれている。

「電話に出て!」

 ユーゴの説明でスマートウォッチのように音声アシスタント機能があることを知っていたゼフィーリアは、スペリオールウォッチに届くよう叫んだ。

「ユーゴ、救けて! 馬車よ!!」

 繋がったと確信して、ゼフィーリアはユーゴに救けを求めた。

「おい、口を塞げ!」

 不測の事態に焦る男達に再び猿ぐつわを噛まされたゼフィーリアは、涙を堪えて祈った。
 ユーゴが自分の窮地に気づいてくれることを。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「鉄太。先に寮に帰っていてくれ。俺はゼフィーリアを探して追いかける」

「───っ! 了解」

 鉄太と別れてひまわり座をでたユーゴは周囲を見渡したが、馬車の姿はない。
 舞台の幕が下りてから今までの経過時間が約十分。
 この世界の馬車は地球の馬車よりも速く、急いだ時は時速二十キロメートルほどの速度を出せる。
 つまり、最大でも三キロメートル強ほどの移動距離である。
 この世界が地球と同じ曲率ならば、立っていれば充分に見渡せる距離である。
 しかしひまわり座は繁華街の中にあるため、障害物が多い。地上から三キロメートル先の目標を見つけるのは至難の業である。
 とはいえ、【千里眼ワールドゲイザー】は実は精密さを要する探し物には向いていない。
 視界が二分割されるため、集中力に欠けるからだ。
 大きな建物や静止している物体ならまだしも、移動している馬車などはすぐには見つけづらい。
 舌打ちして周囲を見回したユーゴは、近隣で一番高い建物を見つけた。
 四階建てほどの高さの時計塔だ。
 重力を操作して適当な建屋の屋上に飛び乗ったユーゴは、そのまま屋根伝いに移動し、時計塔の壁へ飛びついた。
 ぶつかる寸前に重力の作用方向を壁側へ向け、時計塔の壁を
 時計塔の頂上へ到達し、再び地面方向へ重力の作用をもとに戻したユーゴは、地上を三百六十度見渡した。
 これだけの高さがあれば、充分見渡せるはずである。
 視界に映る馬車は十台。
 さらにその内、ひまわり座から離れていく馬車は六台。その内訳は、北方向に二台。南方向に三台。東方向に一台。それを急いでいる馬車に絞ると、各方向に一台ずつ。
 その三台に見当をつけ、【千里眼ワールドゲイザー】を発動させる。
 北───違う。
 東───違う。
 南───これだ!
 【千里眼ワールドゲイザー】で覗いた車内には、先刻の男三人と、猿ぐつわをされて瞳を涙で濡らしているゼフィーリアが居た。
 馬車までの距離は三キロメートル強。ユーゴの通常武装の射程範囲外だ。
 【無限のシークレットもちゃ箱フロンティア】からネオ・アルファを取り出したユーゴは、助走をつけて屋根が凹むほど力強く跳躍した。馬車へと向かって。
 重力を操作して滑空するように緩く放物線を描き、目標へと近づいていく。
 だが、彼我の移動速度はほぼ同等。
 その距離を縮めるため、ユーゴは【電光石火フリーウェイジャム】を発動。”世界”の流れを遅滞させたため相対的にユーゴの速度は速くなり、ぐんぐん馬車へと近づいていく。
 系統の異なる能力を同時併用した時の激しい頭痛に耐えながら、ユーゴは馬車の車輪を狙って発砲。
 大口径ではないが、飛龍の頭を撃ち抜くほどの威力を持つ弾丸は、鉄製の車輪を破壊した。

「な、何だ!? 何が起きた!?」

 車内で男達が慌てた。
 バランスを崩して走行不能となった馬車へ追いついたユーゴは、着地と同時に【電光石火フリーウェイジャム】を解除。さらに【無限のシークレットもちゃ箱フロンティア】から完全切断ナイフ【シグマ】を取り出し、ドアを切り開いた。

「な、何だキサ……ぐぉっ!?」

 一番手前の男の鼻面に拳をめり込ませ、さらに馬車から引きずり出す。
 その次の男も同様に排除し、目をまんまるに見開いているゼフィーリアを、袋ごと抱え出した。
 一瞬馬車から目を逸したユーゴを隙ありと見た御者役の男が、背後からナイフで襲いかかる。
 無論この程度は、隙にすらならないユーゴである。
 そのナイフを後ろ回し蹴りで払い落とし、そのまま踵を御者の顎へと叩き込んだ。
 流石に敵わないと悟った四人目の男は、馬車から這い出るなり打ち上げ花火のような光を上空へと打ち放った。
 光は赤く、炸裂音とともに数秒間街を包んだ。実はこれは信号弾で、赤い光は『暴徒あり』の合図であった。

「ゆ、勇悟。来てくれたの……?」

 瞳を潤ませて、ゼフィーリアはユーゴを見上げた。

「話は後だ。鬱陶しい奴らが、うじゃうじゃと虫みたいに湧いてきやがった」

 信号弾を見た憲兵たちが、街のそこかしこから馬車の方へと集まってくる。
 何事だと叫ぶ憲兵に、四人目の男が叫び返す。

「私は王家直轄諜報部【月影】の者だ。この男が重要参考人ゼフィーリア・バーグマンを強奪した! 奪還するために手を貸してくれ!」

 その言葉を受けて、憲兵全員の目が険しくなった。

「おいキサマ、動くな。動くと撃つぞ!」

 憲兵たちの総数は、ざっと二十人。
 周囲の無関係な一般人に被害を与えないよう憲兵たちを鏖殺するのは容易だが、殺してしまっては後々面倒なことになるだろう。

「以前と同じで芸が無いが、仕方ない。こいつに頼むか」

 ユーゴが嘆くように呟くと、虚空から一個のカプセルがせり出してきた。
 その片側半分が開き、一匹の小動物がぴょこんと飛び出した。

「ミュー。このあいだと同じように、奴らの銃を無力化しろ」

「ミュウッ!」

 ユーゴの左肩に登った神獣ミューはオレンジ色の霧を作り出し、憲兵たちを包み込んだ。
 彼らの身につけている金属や酸化反応を起こすものはことごとく錆びたり変色し、その用を為さなくなった。

「ミュー、そのまま乗ってろ」

 カプセルだけ虚空に収納したユーゴはゼフィーリアをお姫様抱っこし、混乱の極みにある憲兵隊を置き去りにして近くの建物の屋根へと跳び移った。

「ちょ……ええっ!?」

 ノミかバッタのように軽々と跳躍して屋根を飛び移っていくユーゴと、そんな彼に抱かれている自分。
 ゼフィーリアはそんな現実離れした光景に、やっぱりこの世界は藤本楓香の夢の中なのかもしれないと思った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。 17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。 その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。 その本こそ、『真魔術式総覧』。 かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。 伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、 自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。 彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。 魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。 【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

処理中です...