22 / 138
第3章 準備を整えよう
第22話 干からびの沼
しおりを挟む
かなりの時間が経過した。もうすぐ日が暮れそうだが、一向に脅迫者は現れない。半ば諦めかけたその時、ファリスが何かに気付いたように言葉を発した。
「林の奥、正面に2人、左右に2人。近づいてきているのは、おそらくゴブリンっスよ大将」
「わかるのか?」
「オリジナルのパッシブスキルがあるっスから」
そういえば、ファリスは本来、剣聖にまで上り詰めたほどの腕の持ち主だ。そのぐらいの便利なスキルはあって当然だろう。
「ご主人様、確認いたしますか?」
ファリスをうらやましそうに見ていると、ミツユスキー気を利かせて声をかけてきた。
「できるのか?」
「はい、これを使えば……」
ミツユスキーは、荷車の御者席に置いてあった木箱から、木の実のようなものを取り出し、目の前に差し出した。
「これは『ミルミルの実』です。人や生物の気配を察知する能力が一時的に高くなります」
「そんなものがあったのか!」
ミツユスキーは、それを自分で一つ食べて見せる。面白そうなので、ちょっと食べてみることにした。差し出された木の実を一つだけつまみ、口へと放り込む。と、その瞬間、甘酸っぱい味と共に静電気が走ったようなビリビリ感が体を駆け巡った。
「目を凝らして林を見てください」
ミツユスキーに言われた通り、目を凝らしてみる、すると、奥の林に小さな人影のようなものが赤外線サーモグラフィーで見ているかのように視界に映った。集中を解くと、通常の風景に戻るようだ。
もう一度、目で集中して辺りを確認すると、前方に2人、左右の林に1人ずついる。ファリスの認識と一致した。
沼を挟んで反対側の林にいたゴブリン2匹が、沼の真ん中に歩いて来た。
「あいつ等が受け取り役か」
「大将、あっしが一緒にいくっス」
俺とファリスは、ミツユスキーから金貨を受け取り、沼の中央に進んだ。干からびの沼の中央まで歩き、俺たちはゴブリン2匹と対峙する。
ゴブリンは、臭い息を放ちながら、話しかけてきた。
「オマエラ、人間カ? クセーゾ」
「ケツ洗ッテンノカ? サッサト金ヨコセ」
口は臭いだけではなく、言葉の臭そうだ。
「ケンタ……いや、アリシアは無事なんだろうな!」
「オマエラ何様ダ、立場ヲワキマエロ」
「女殺スゾ! 金ヨコセ」
──少し、下手に出て話してみるか……。
「あ、アリシアは無事ですか?」
「オマエラ何様ダ、立場ヲワキマエロ」
「女殺スゾ! 金ヨコセ」
…………。
「大将……こいつら多分、同じことしか言わないっス」
「こっちの話は聞かないって事か」
完全にこちらの話を無視している。
「早クダセ! 金貨」
「ケツ洗ッテンノカ? 金ヨコセ」
ここで揉めてもしょうがないので、奴等の言う通りに、金貨の入った袋を差し出した。相手に金貨を持たせるのも作戦のうちだ。あまり気乗りはしないが、仕方がない。
「ほら、金貨だ」
「オマエ、イイヤツダ。ケツ洗エヨ!」
ゴブリンは、差し出した袋をぶんどった。
「明日モ持ッテコイヨ!」
「ケツモ洗ットケヨ! 追ッテキタラ女殺スゾ!」
ゴブリンは、袋を持って走り去った。
「やられたっス。やつら、ケンタ君を解放する気ないっス」
「初めから決裂してたってわけか……」
交渉を有利にする為の材料は、残念ながらこちらには無かった。まだ、左右の林にゴブリン達が一匹ずつ待機している。後を追ってくるか確認しているのだろう。俺たちは、一旦沼を離れてやり過ごすことにした。
しばらくして、辺りは完全に暗闇になった。おそらく、相手はこれも計算に入れて日暮れ近くに姿を現したのだろう。ゴブリン気配をファリスに注意させながら、干からびの沼に戻る。さすがにゴブリンの気配は消えていた。
ミツユスキーは、ランプに火を灯し、周囲を照らす。
「じゃあ、後を追いますか、ご主人様」
「そうだね」
ミツユスキーは『ココココ羅針盤』を木箱から取り出した。矢印の針が付いた円状の皿だった。装飾のあるガラスケースに入れられている。針は、ずっと同じ方向を指していた。
「この針の方向が、金貨を持ち去った奴等のいる方です」
”コッチダヨ! コッチダヨ!”
ココココ羅針盤は、小さく可愛い声を出した。
「音声ナビか!」
「かわいいっスね」
ひとまず俺たちは、獣車に乗りこみ出発した。ミツユスキーは、小さなランプの明かりで林道を照らしながら獣車を走らせる。そして、ファリスのスキルで、周囲を警戒しつつ、羅針盤の指す方向を頼りに奴らの後を追った。
「林の奥、正面に2人、左右に2人。近づいてきているのは、おそらくゴブリンっスよ大将」
「わかるのか?」
「オリジナルのパッシブスキルがあるっスから」
そういえば、ファリスは本来、剣聖にまで上り詰めたほどの腕の持ち主だ。そのぐらいの便利なスキルはあって当然だろう。
「ご主人様、確認いたしますか?」
ファリスをうらやましそうに見ていると、ミツユスキー気を利かせて声をかけてきた。
「できるのか?」
「はい、これを使えば……」
ミツユスキーは、荷車の御者席に置いてあった木箱から、木の実のようなものを取り出し、目の前に差し出した。
「これは『ミルミルの実』です。人や生物の気配を察知する能力が一時的に高くなります」
「そんなものがあったのか!」
ミツユスキーは、それを自分で一つ食べて見せる。面白そうなので、ちょっと食べてみることにした。差し出された木の実を一つだけつまみ、口へと放り込む。と、その瞬間、甘酸っぱい味と共に静電気が走ったようなビリビリ感が体を駆け巡った。
「目を凝らして林を見てください」
ミツユスキーに言われた通り、目を凝らしてみる、すると、奥の林に小さな人影のようなものが赤外線サーモグラフィーで見ているかのように視界に映った。集中を解くと、通常の風景に戻るようだ。
もう一度、目で集中して辺りを確認すると、前方に2人、左右の林に1人ずついる。ファリスの認識と一致した。
沼を挟んで反対側の林にいたゴブリン2匹が、沼の真ん中に歩いて来た。
「あいつ等が受け取り役か」
「大将、あっしが一緒にいくっス」
俺とファリスは、ミツユスキーから金貨を受け取り、沼の中央に進んだ。干からびの沼の中央まで歩き、俺たちはゴブリン2匹と対峙する。
ゴブリンは、臭い息を放ちながら、話しかけてきた。
「オマエラ、人間カ? クセーゾ」
「ケツ洗ッテンノカ? サッサト金ヨコセ」
口は臭いだけではなく、言葉の臭そうだ。
「ケンタ……いや、アリシアは無事なんだろうな!」
「オマエラ何様ダ、立場ヲワキマエロ」
「女殺スゾ! 金ヨコセ」
──少し、下手に出て話してみるか……。
「あ、アリシアは無事ですか?」
「オマエラ何様ダ、立場ヲワキマエロ」
「女殺スゾ! 金ヨコセ」
…………。
「大将……こいつら多分、同じことしか言わないっス」
「こっちの話は聞かないって事か」
完全にこちらの話を無視している。
「早クダセ! 金貨」
「ケツ洗ッテンノカ? 金ヨコセ」
ここで揉めてもしょうがないので、奴等の言う通りに、金貨の入った袋を差し出した。相手に金貨を持たせるのも作戦のうちだ。あまり気乗りはしないが、仕方がない。
「ほら、金貨だ」
「オマエ、イイヤツダ。ケツ洗エヨ!」
ゴブリンは、差し出した袋をぶんどった。
「明日モ持ッテコイヨ!」
「ケツモ洗ットケヨ! 追ッテキタラ女殺スゾ!」
ゴブリンは、袋を持って走り去った。
「やられたっス。やつら、ケンタ君を解放する気ないっス」
「初めから決裂してたってわけか……」
交渉を有利にする為の材料は、残念ながらこちらには無かった。まだ、左右の林にゴブリン達が一匹ずつ待機している。後を追ってくるか確認しているのだろう。俺たちは、一旦沼を離れてやり過ごすことにした。
しばらくして、辺りは完全に暗闇になった。おそらく、相手はこれも計算に入れて日暮れ近くに姿を現したのだろう。ゴブリン気配をファリスに注意させながら、干からびの沼に戻る。さすがにゴブリンの気配は消えていた。
ミツユスキーは、ランプに火を灯し、周囲を照らす。
「じゃあ、後を追いますか、ご主人様」
「そうだね」
ミツユスキーは『ココココ羅針盤』を木箱から取り出した。矢印の針が付いた円状の皿だった。装飾のあるガラスケースに入れられている。針は、ずっと同じ方向を指していた。
「この針の方向が、金貨を持ち去った奴等のいる方です」
”コッチダヨ! コッチダヨ!”
ココココ羅針盤は、小さく可愛い声を出した。
「音声ナビか!」
「かわいいっスね」
ひとまず俺たちは、獣車に乗りこみ出発した。ミツユスキーは、小さなランプの明かりで林道を照らしながら獣車を走らせる。そして、ファリスのスキルで、周囲を警戒しつつ、羅針盤の指す方向を頼りに奴らの後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる