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第3章 準備を整えよう
第29話 勇者候補
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診療所にくると、白衣の女性が近づいてきた。エメラルドグリーンの髪で、左目に眼帯をした青い目のエルフだった。その姿は、どことなくソエルに似ていた。
「あなた、タカシ様でいらっしゃいますか?」
彼女は、おれに話しかけてきた。
「おれが、タカシだけど……」
「そうですか。ワターシは、ここの診療所の院長をしている『カロエル』と申します」
すこし、片言な喋り方をしていた。この独特な喋り方は、ソエルのそれだった。
「最近のエルフはみんな、片言なのか?」
「いいえ、そんな事はアーリマせん。生まれがちょっと、違うだけでーす」
「まあいいか。で、何用?」
あまりにも似すぎているので、ソエルの縁者なのだろうか。と、質問をしようとした。たが、さっきの話の件もあるので様子を見る事にした。
「あなたが助けた5人の女性の村の人々から、勇者への推薦状が届いております」
「勇者?」
「はい、詳しくは登録所のメイドに聞いてください」
「ああ、わかった」
おれは、登録所のメイドの所へ出向いた。こうしてみると、見てくれは、普通の若いメイドなのだが……。
「ひっひっひ、久しぶりじゃな」
老声で、メイドは話しかけてきた。見てくれのイメージを損なう瞬間だ。
「よう、ひっひっひのメイドさん。推薦状の事で来たんだけど」
「ひっひっひ言うな若僧。わしにも名前がある。クロトと呼ぶんじゃ」
「じゃあ、クロちゃん」
おれのパッシブスキル。【あだ名生成】が発動した。
「……まあ良いじゃろ。あんたは緊急任務に相当するオーク盗賊団殲滅と、人質救出を達成した。その甲斐あって、人質達の村の住人の一定数の高評価と推薦状が届いたのじゃよ」
「あれって、緊急任務だったのか」
「これからの行動次第で、勇者の称号をもらえるかもしれんぞ」
このメイド、大事な事を後から言うから油断ならない。
「で、オチは?」
「ひっひっひ、オチが欲しいのかい」
「いつも話の最後に大どんでん返しするじゃねえか」
「残念ながら、今回の話はこれで終わりじゃよ。まあ、オチが付くとしたら、候補はお前さんだけじゃないって事ぐらいじゃよ。そして、この帝国で勇者の称号を得られるのは1人だけじゃ」
「あまり興味ないな……面倒ごとに巻き込まれやすくなるって事だろそりゃ」
「その分見返りも大きいぞい」
「勇者が1人だけってことは、今は勇者不在なのか?」
「そういう事になるのう、ひっひっひ」
クロトは、そう言うと、カウンターに山積みになっている書類の整理を始めた。
どちらかというと、勇者になるより王様を仲間にして利用した方が、楽な気がした。仲間銃を持っているおれだけが言える事だが。
奥のラウンジが、何やら騒がしくなった。
「クロちゃん……今、ラウンジで何かあるのか?」
「今、話していた勇者候補の一人が、SSクラス任務を2つ達成して帰ってきたそうじゃ。たしか……トロルのアジト強襲任務と、山岳地帯のアンデット殲滅任務じゃったかな」
「2つも受けたのか」
「名を上げるのに必死じゃよ。それだけ勇者の称号が欲しいんじゃ」
「よほど勇者になりたいんだな」
その勇者候補は一体どんな奴なのか。興味を持ったおれは、ラウンジに足を向けた。
ラウンジは、屈強な男達と町娘でいっぱいだった。ちょっとしたお祭り状態だ。
正装をした、体の小さい男が、場を仕切っていた。
「皆さん、我々は無事帰ってきました! 今回我々は、トロル強襲とアンデット殲滅をこなし、生還しました」
「おおー! さすが勇者候補『アポロス』!」
「アポロス様が勇者になれば、この帝国は安心よね!」
周囲が騒がしくなった。
──勇者候補は、アポロスという名前か。
「それでは皆さん! 『《白の閃光》アポロス』のご登場です!」
ラウンジの人だかりは、まるでモーゼが海を割ったように道を作る。そこに姿を現したのは、純白で気品のある鎧を装備した、一人の戦士だった。
「みんな、集まってくれてありがとう、だが、そんなに盛大に喜ばないでほしい。実は、今回の遠征で期待のルーキーだった勇者候補の『マクベス』が死んだ。彼は勇敢だった! 彼の頑張りのおかげでおれ達は生き延びる事が出来た! 私は、彼を称えたい」
「アポロス様の為に……なんて勇ましい!」
「運が無かったんだ。勇敢に戦ったのなら本望だろう」
まるで、選挙演説を見ているようだった。おれは、それとなくその場を立ち去ることにした。
「ねえ、そこの君!」
アポロスは、立ち去ろうとしたおれを指さした。
「お……おれ?」
「君は、勇者候補だね!」
おれは、群衆の視線の的となった。
「あなた、タカシ様でいらっしゃいますか?」
彼女は、おれに話しかけてきた。
「おれが、タカシだけど……」
「そうですか。ワターシは、ここの診療所の院長をしている『カロエル』と申します」
すこし、片言な喋り方をしていた。この独特な喋り方は、ソエルのそれだった。
「最近のエルフはみんな、片言なのか?」
「いいえ、そんな事はアーリマせん。生まれがちょっと、違うだけでーす」
「まあいいか。で、何用?」
あまりにも似すぎているので、ソエルの縁者なのだろうか。と、質問をしようとした。たが、さっきの話の件もあるので様子を見る事にした。
「あなたが助けた5人の女性の村の人々から、勇者への推薦状が届いております」
「勇者?」
「はい、詳しくは登録所のメイドに聞いてください」
「ああ、わかった」
おれは、登録所のメイドの所へ出向いた。こうしてみると、見てくれは、普通の若いメイドなのだが……。
「ひっひっひ、久しぶりじゃな」
老声で、メイドは話しかけてきた。見てくれのイメージを損なう瞬間だ。
「よう、ひっひっひのメイドさん。推薦状の事で来たんだけど」
「ひっひっひ言うな若僧。わしにも名前がある。クロトと呼ぶんじゃ」
「じゃあ、クロちゃん」
おれのパッシブスキル。【あだ名生成】が発動した。
「……まあ良いじゃろ。あんたは緊急任務に相当するオーク盗賊団殲滅と、人質救出を達成した。その甲斐あって、人質達の村の住人の一定数の高評価と推薦状が届いたのじゃよ」
「あれって、緊急任務だったのか」
「これからの行動次第で、勇者の称号をもらえるかもしれんぞ」
このメイド、大事な事を後から言うから油断ならない。
「で、オチは?」
「ひっひっひ、オチが欲しいのかい」
「いつも話の最後に大どんでん返しするじゃねえか」
「残念ながら、今回の話はこれで終わりじゃよ。まあ、オチが付くとしたら、候補はお前さんだけじゃないって事ぐらいじゃよ。そして、この帝国で勇者の称号を得られるのは1人だけじゃ」
「あまり興味ないな……面倒ごとに巻き込まれやすくなるって事だろそりゃ」
「その分見返りも大きいぞい」
「勇者が1人だけってことは、今は勇者不在なのか?」
「そういう事になるのう、ひっひっひ」
クロトは、そう言うと、カウンターに山積みになっている書類の整理を始めた。
どちらかというと、勇者になるより王様を仲間にして利用した方が、楽な気がした。仲間銃を持っているおれだけが言える事だが。
奥のラウンジが、何やら騒がしくなった。
「クロちゃん……今、ラウンジで何かあるのか?」
「今、話していた勇者候補の一人が、SSクラス任務を2つ達成して帰ってきたそうじゃ。たしか……トロルのアジト強襲任務と、山岳地帯のアンデット殲滅任務じゃったかな」
「2つも受けたのか」
「名を上げるのに必死じゃよ。それだけ勇者の称号が欲しいんじゃ」
「よほど勇者になりたいんだな」
その勇者候補は一体どんな奴なのか。興味を持ったおれは、ラウンジに足を向けた。
ラウンジは、屈強な男達と町娘でいっぱいだった。ちょっとしたお祭り状態だ。
正装をした、体の小さい男が、場を仕切っていた。
「皆さん、我々は無事帰ってきました! 今回我々は、トロル強襲とアンデット殲滅をこなし、生還しました」
「おおー! さすが勇者候補『アポロス』!」
「アポロス様が勇者になれば、この帝国は安心よね!」
周囲が騒がしくなった。
──勇者候補は、アポロスという名前か。
「それでは皆さん! 『《白の閃光》アポロス』のご登場です!」
ラウンジの人だかりは、まるでモーゼが海を割ったように道を作る。そこに姿を現したのは、純白で気品のある鎧を装備した、一人の戦士だった。
「みんな、集まってくれてありがとう、だが、そんなに盛大に喜ばないでほしい。実は、今回の遠征で期待のルーキーだった勇者候補の『マクベス』が死んだ。彼は勇敢だった! 彼の頑張りのおかげでおれ達は生き延びる事が出来た! 私は、彼を称えたい」
「アポロス様の為に……なんて勇ましい!」
「運が無かったんだ。勇敢に戦ったのなら本望だろう」
まるで、選挙演説を見ているようだった。おれは、それとなくその場を立ち去ることにした。
「ねえ、そこの君!」
アポロスは、立ち去ろうとしたおれを指さした。
「お……おれ?」
「君は、勇者候補だね!」
おれは、群衆の視線の的となった。
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