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第2章 王都フローリアへの旅
第27話 エルフの錬金術師
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翌朝、バレンシア商会から紹介された錬金工房を訪れた。
約束の時間に、錬金工房に行くとアスナ・バレンシアが待機していた。
「あれ、アスナさん、どうしてここに?」
アスナは微笑みながらオレの方へ近づいて来た。
「昨日は、ありがとうございました。
ハヤミ様は、これからバレンシア商会の重要な取引先になるのだから、お前が行って直接ご案内しなさいと、父に言われまして……
ですから、本日は私も同席させていただきます」
そう言って、アスナはオレたちと一緒に工房へ入った。
錬金工房は店舗も兼ねており、錬金術によって作られた、数々の品が展示されていた。
「私の工房へようこそ」
そう言って工房の奥から20代後半と思しき女性が現れた。
彼女こそ、この錬金工房の主ソラリア・シュヴェリーンであった。
王都の西の外れにある錬金工房の主ソラリア・シュヴェリーンは全身を覆う緋色のローブを纏ってオレたちを出迎えた。
「初めてお目にかかります、錬金術師のソラリア・シュヴェリーンでございます」と挨拶した。
フードを取ると美しい金色の長い髪、若々しく端正な顔立ち、そして独特の形をした耳が顕になった。
「ソラリア様は、古のエルフ族の末裔なのです」とアスナが紹介した。
お~、エルフか、話には聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。
エルフ族は長命と聞くが、見た目はどうみても20代後半だが、実際の歳は何歳なのだろう。
王都でも他のエルフは見かけていない。
確か、エルフは排他的で人間嫌いだと聞いていたが、ソラリア師を見る限り、落ち着いた物腰で静かに話し、知性的な女性だと感じさせた。
「初めまして、ハヤミ・カイトと申します」
アスナにはバレているので、オレは実名を名乗ることにした。
「隣りにいるのが錬金術師のトリン、その隣がアシスタントのソニアです」
「ほう、こちらの方は、お若いのに私と同業なのですね」
ソラリア師にそう言われてトリンは真面目な顔で答えた。
「はい、私はリルトランデ王国の筆頭宮廷錬金術師メルキューラ様の弟子として6歳から10年間、師事しました」
「なるほど…。
東大陸のリルトランデ王国に高名な錬金術師がいると聞いておりましたが、トリンさんは、そのお弟子さんなのですね」
「はい、実はある出来事が原因で、メルキューラ様から破門を言い渡されまして、今は弟子ではありません。
私は新たな仕官先を求めて旅に出たのですが、この大陸に渡る船旅で遭難し、砂浜に打上げられた所を偶然通りかかったカイト様に救っていただき、今はカイト様の従者として働いています」
「そうですか、まだお若いのに大変な目に遭われましたね。
それで、今日はどのようなご用でしょう?」
「はい、実は私の領内にトリンの錬金工房を作ったのですが、高品質で純度の高いポーションを造るためには、錬金釜が必要とトリンから聞きまして…
それでバレンシア商会で、錬金釜の製造を相談したところ、ソラリア様が、錬金釜を造る鍛冶師をご存知ではないかと聞き、本日参上した次第です」
「そうでしたか、錬金釜をご所望でしたか」
ソラリア師はそう言うと、じっとトリンを見つめた。
「確かに私の工房には錬金釜がございますし、それを製作した鍛冶師をご紹介することも可能です。
しかし、その前に、どのような錬金釜がトリンさんの錬金術に合うのか見極める必要があります。
一言に錬金釜と言っても、錬金術師の魔力種別や技量によって適合する錬金釜の素材も構造も違ってきます。
つまり、どのような錬金釜を作れば良いのか、まずトリンさんの錬金術を私にお見せいただきたいと言うことです」
「なるほど、そう言うことですか、分かりました。
トリン、ソラリア様に、錬金術をお見せしなさい」
「分かりました…」
トリンは不安そうにオレの方を見た。
「工房の奥に私の使っている錬金釜がありますので、それをお使い下さい」
ソラリア師はオレたちを隣室にある錬金釜の前に案内した。
「これがソラリア様の錬金釜なのですか…
私が以前使っていたのと、かなり造りが違います」
綺麗に手入れされてはいるが、かなり年季の入ったソラリア師の錬金釜を見ながらトリンが言った。
「後ろの棚に基本的な錬金素材が揃っているので、それでヒールポーションを作ってみて下さい」
そう言ってソラリア師が素材庫を指差した。
因みにヒールポーションとは怪我治癒薬で、ポーションを負傷部分に掛けるか、直接飲むことにより、効果を発揮する魔法薬である。
ポーションのレベルにより治癒力や効果は異なる。
純度により4級から特急までの5段階に分類され、レベルが高いほど治癒力が上がり、治癒可能な負傷範囲も広がる。
王都の相場だと3級ヒールポーションは市場価格で銀貨3枚(約1万5千円)、2級ヒールポーションになると銀貨5枚(約2万5千円)で取引されている。
トリンは考えながら、何十種類もの素材を調合し、ソラリア師の錬金釜でヒールポーションを作り始めた。
トリンが実際にポーションを作っているをオレは初めて見た。
神経を集中し、一心に術を使うトリンは凛々しく美しく見えた。
暫くすると、釜の中の錬金素材が融合し、光を放ち液体化し始めた。
その液体はトリンの術の動きに合わせ、ゆっくりと撹拌され、やがて小瓶の中に入り静止した。
「これで完成です」
トリンはヒールポーションの小瓶をソラリア師に手渡した。
ソラリア師はそれを光に翳して、じっと見ている。
「これは2級レベルのポーションですね、なかなかの純度です」
「まだ、お若いのに高度な技術をお持ちのようです」
「トリンさんの錬金術特性が分かりましたから、その特性に合わせた錬金釜を作成することが可能です。
ですが、それには、それなりの費用と時間がかかりますが、その準備はございますか?」
「どれくらい掛かるのですか?」
「新しい錬金釜は作るには、私が錬金釜の仕様書を作成して、熟練した鍛冶師に十分理解してもらう必要がありますし、アダマンタイトやミスリル鉱など特殊な鉱石の調達と鋼材の錬成で最低でも3ヶ月はかかると思います…
費用は、そうですね、ざっと見積もってスター金貨100枚くらいかと思います」
因みにスター金貨1枚は日本円換算10万円なので1000万円ということになる。
「分かりました、それ位でしたら用意できますので、製作をお願いします」
オレは先日バレンシア商会との取引で得たスター金貨120枚があるので、それで足りて良かったと内心ホッとした。
「では、その条件で私の懇意にしている鍛冶師に錬金釜の製作を発注します」
「宜しくお願いします」
オレはソラリア師に礼を言った。
「ところでトリンさん、私のところで暫く修行する気はありませんか?」
そう言われ、トリンは面食らった様子だった。
「え?、私がソラリア様の元で修行、ですか?」
「そうです、私の見立てでは、あなたはとても良い素質をお持ちですが、まだ術の精度が甘いように思います」
「錬金釜が完成するまでに3ヶ月は掛かりますから、その間王都に滞在して私の元で修行しては如何ですか?」
約束の時間に、錬金工房に行くとアスナ・バレンシアが待機していた。
「あれ、アスナさん、どうしてここに?」
アスナは微笑みながらオレの方へ近づいて来た。
「昨日は、ありがとうございました。
ハヤミ様は、これからバレンシア商会の重要な取引先になるのだから、お前が行って直接ご案内しなさいと、父に言われまして……
ですから、本日は私も同席させていただきます」
そう言って、アスナはオレたちと一緒に工房へ入った。
錬金工房は店舗も兼ねており、錬金術によって作られた、数々の品が展示されていた。
「私の工房へようこそ」
そう言って工房の奥から20代後半と思しき女性が現れた。
彼女こそ、この錬金工房の主ソラリア・シュヴェリーンであった。
王都の西の外れにある錬金工房の主ソラリア・シュヴェリーンは全身を覆う緋色のローブを纏ってオレたちを出迎えた。
「初めてお目にかかります、錬金術師のソラリア・シュヴェリーンでございます」と挨拶した。
フードを取ると美しい金色の長い髪、若々しく端正な顔立ち、そして独特の形をした耳が顕になった。
「ソラリア様は、古のエルフ族の末裔なのです」とアスナが紹介した。
お~、エルフか、話には聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。
エルフ族は長命と聞くが、見た目はどうみても20代後半だが、実際の歳は何歳なのだろう。
王都でも他のエルフは見かけていない。
確か、エルフは排他的で人間嫌いだと聞いていたが、ソラリア師を見る限り、落ち着いた物腰で静かに話し、知性的な女性だと感じさせた。
「初めまして、ハヤミ・カイトと申します」
アスナにはバレているので、オレは実名を名乗ることにした。
「隣りにいるのが錬金術師のトリン、その隣がアシスタントのソニアです」
「ほう、こちらの方は、お若いのに私と同業なのですね」
ソラリア師にそう言われてトリンは真面目な顔で答えた。
「はい、私はリルトランデ王国の筆頭宮廷錬金術師メルキューラ様の弟子として6歳から10年間、師事しました」
「なるほど…。
東大陸のリルトランデ王国に高名な錬金術師がいると聞いておりましたが、トリンさんは、そのお弟子さんなのですね」
「はい、実はある出来事が原因で、メルキューラ様から破門を言い渡されまして、今は弟子ではありません。
私は新たな仕官先を求めて旅に出たのですが、この大陸に渡る船旅で遭難し、砂浜に打上げられた所を偶然通りかかったカイト様に救っていただき、今はカイト様の従者として働いています」
「そうですか、まだお若いのに大変な目に遭われましたね。
それで、今日はどのようなご用でしょう?」
「はい、実は私の領内にトリンの錬金工房を作ったのですが、高品質で純度の高いポーションを造るためには、錬金釜が必要とトリンから聞きまして…
それでバレンシア商会で、錬金釜の製造を相談したところ、ソラリア様が、錬金釜を造る鍛冶師をご存知ではないかと聞き、本日参上した次第です」
「そうでしたか、錬金釜をご所望でしたか」
ソラリア師はそう言うと、じっとトリンを見つめた。
「確かに私の工房には錬金釜がございますし、それを製作した鍛冶師をご紹介することも可能です。
しかし、その前に、どのような錬金釜がトリンさんの錬金術に合うのか見極める必要があります。
一言に錬金釜と言っても、錬金術師の魔力種別や技量によって適合する錬金釜の素材も構造も違ってきます。
つまり、どのような錬金釜を作れば良いのか、まずトリンさんの錬金術を私にお見せいただきたいと言うことです」
「なるほど、そう言うことですか、分かりました。
トリン、ソラリア様に、錬金術をお見せしなさい」
「分かりました…」
トリンは不安そうにオレの方を見た。
「工房の奥に私の使っている錬金釜がありますので、それをお使い下さい」
ソラリア師はオレたちを隣室にある錬金釜の前に案内した。
「これがソラリア様の錬金釜なのですか…
私が以前使っていたのと、かなり造りが違います」
綺麗に手入れされてはいるが、かなり年季の入ったソラリア師の錬金釜を見ながらトリンが言った。
「後ろの棚に基本的な錬金素材が揃っているので、それでヒールポーションを作ってみて下さい」
そう言ってソラリア師が素材庫を指差した。
因みにヒールポーションとは怪我治癒薬で、ポーションを負傷部分に掛けるか、直接飲むことにより、効果を発揮する魔法薬である。
ポーションのレベルにより治癒力や効果は異なる。
純度により4級から特急までの5段階に分類され、レベルが高いほど治癒力が上がり、治癒可能な負傷範囲も広がる。
王都の相場だと3級ヒールポーションは市場価格で銀貨3枚(約1万5千円)、2級ヒールポーションになると銀貨5枚(約2万5千円)で取引されている。
トリンは考えながら、何十種類もの素材を調合し、ソラリア師の錬金釜でヒールポーションを作り始めた。
トリンが実際にポーションを作っているをオレは初めて見た。
神経を集中し、一心に術を使うトリンは凛々しく美しく見えた。
暫くすると、釜の中の錬金素材が融合し、光を放ち液体化し始めた。
その液体はトリンの術の動きに合わせ、ゆっくりと撹拌され、やがて小瓶の中に入り静止した。
「これで完成です」
トリンはヒールポーションの小瓶をソラリア師に手渡した。
ソラリア師はそれを光に翳して、じっと見ている。
「これは2級レベルのポーションですね、なかなかの純度です」
「まだ、お若いのに高度な技術をお持ちのようです」
「トリンさんの錬金術特性が分かりましたから、その特性に合わせた錬金釜を作成することが可能です。
ですが、それには、それなりの費用と時間がかかりますが、その準備はございますか?」
「どれくらい掛かるのですか?」
「新しい錬金釜は作るには、私が錬金釜の仕様書を作成して、熟練した鍛冶師に十分理解してもらう必要がありますし、アダマンタイトやミスリル鉱など特殊な鉱石の調達と鋼材の錬成で最低でも3ヶ月はかかると思います…
費用は、そうですね、ざっと見積もってスター金貨100枚くらいかと思います」
因みにスター金貨1枚は日本円換算10万円なので1000万円ということになる。
「分かりました、それ位でしたら用意できますので、製作をお願いします」
オレは先日バレンシア商会との取引で得たスター金貨120枚があるので、それで足りて良かったと内心ホッとした。
「では、その条件で私の懇意にしている鍛冶師に錬金釜の製作を発注します」
「宜しくお願いします」
オレはソラリア師に礼を言った。
「ところでトリンさん、私のところで暫く修行する気はありませんか?」
そう言われ、トリンは面食らった様子だった。
「え?、私がソラリア様の元で修行、ですか?」
「そうです、私の見立てでは、あなたはとても良い素質をお持ちですが、まだ術の精度が甘いように思います」
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