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第三章 妹
第28話
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「郡司佐也加副本部長、作戦は?」
「貴様は飛んで来た拳の迎撃に専念しろ」
「迎撃、ですか? ですが――、」
冬鷹は、自分が氷の巨人への有効な攻撃手段を持ち合わせていない事を手短に伝えた。
「そうか。……ならば、リンクする異能具は〈黒川〉だけにしろ」
「え? なぜです? せめて〈力天甲〉も使って膂力を上げるべきでは――、」
「これ以上話している時間はない。いくぞ」
佐也加は飛び出す。〈ゲイル〉はない。だがその場合、佐也加はすぐに〈操氣術〉による身体強化に切り替えている。〈氣〉――〈生命子〉により脚力が強化された佐也加の移動速度は、万全時とほぼ遜色がない。さらには、
「〈パラーレ〉」
敵の攻撃とは関係ない宙に『壁』を張り、それを足場にして空中へと飛び出す。
通常ならばあり得ない。生命子を使う〈操氣術〉と魔素子を使う〈パラーレ〉の同時使用。さらには操氣術によって生まれた空中へと飛び出すほどの脚力、それに耐えうる『壁』の強度と、高速移動しながらも足場に出来る程の安定感をもった座標維持。
そして、空中で自在に軌道を変える程の連続使用。
冬鷹は、佐也加以外でそんな防壁の使い方をしている者を見た事がない。
だが、逆に佐也加はそれをさも当然の如くやってのける。
やっぱり違う――。
自分と天才との差をまざまざと見せつけられる。自分が苦戦していた相手を翻弄しているのだから尚の事だ。
しかし、そんな天才でも、武器を持たないというのは明確なハンディキャップなようだ。
氷の巨人の攻撃は佐也加に一切当たる気配はない。だが攻撃手段のない佐也加もまた氷の巨人になんらダメージを負わせてはいない。
倒れていた巨人も起き上がり、計三体から攻撃。それを全て躱し切っていると、佐也加は冬鷹の前に移動してきた。一体の巨人は標的の場所を確認すると拳を大きく振り上げる。
佐也加は「出番だ」と、さっと冬鷹の後ろに回り込む。
「他の異能を使用しても構わん。だがリンクするのは〈黒川〉だけにしろ」
訳が分からない。だが冬鷹は佐也加の言葉を信じていた。
佐也加の指示の下、冬鷹は〈黒川〉に集中する。
「避けろ。その最中、刃を添えるようにして斬れ」
巨大な拳が飛んできた。冬鷹はギリギリ避けられる分だけ横にずれる。
そして言われるがまま、拳の進行方向に〈黒川〉を置くように構える。
次の瞬間、拳が冬鷹の横を通過してゆく。圧力と突風が顔を強く撫でる。
〈黒川〉にリンクし、〈切れ味補助〉と〈形状維持〉の出力を上げた。すると――。
取り過ぎる腕に刃が深くめり込んだ。
え!? なんで――!?
「その要領だ。次は切り落とすぞ」
理解が追いつかない頭には構わず、身体は佐也加の言葉に従い、もう一方の腕に備える。
「先と似たやり方だが、此度は下から上へと、斜めに刃が進むよう力を入れろ」
無傷であるもう一方の拳が放たれると、冬鷹は避ける位置にずれ、刀を低く構える。リンクは好調。理解のできない困惑と、ダメージを与える事ができたという興奮が心拍数を上げた。
拳とすれ違う。低く構えていた刃を、下から氷の腕に切り込ませる。
「そのまま切り落とせ」
冬鷹は〈力天甲〉とリンクせず、通常通り魔素子を多く流す事で出力を上げる。
氷の腕はバターのごとく刃を通した。
たちまち、刀に掛かる圧がフッと消える。巨大な手首が音をたて地面に落ちた。
これ、俺がやったのか――?
自分でも信じる事ができない。だが余韻に浸っている暇を佐也加は与えなかった。
「今の感覚だ。このまま他の奴らをも沈めきるぞ」
「貴様は飛んで来た拳の迎撃に専念しろ」
「迎撃、ですか? ですが――、」
冬鷹は、自分が氷の巨人への有効な攻撃手段を持ち合わせていない事を手短に伝えた。
「そうか。……ならば、リンクする異能具は〈黒川〉だけにしろ」
「え? なぜです? せめて〈力天甲〉も使って膂力を上げるべきでは――、」
「これ以上話している時間はない。いくぞ」
佐也加は飛び出す。〈ゲイル〉はない。だがその場合、佐也加はすぐに〈操氣術〉による身体強化に切り替えている。〈氣〉――〈生命子〉により脚力が強化された佐也加の移動速度は、万全時とほぼ遜色がない。さらには、
「〈パラーレ〉」
敵の攻撃とは関係ない宙に『壁』を張り、それを足場にして空中へと飛び出す。
通常ならばあり得ない。生命子を使う〈操氣術〉と魔素子を使う〈パラーレ〉の同時使用。さらには操氣術によって生まれた空中へと飛び出すほどの脚力、それに耐えうる『壁』の強度と、高速移動しながらも足場に出来る程の安定感をもった座標維持。
そして、空中で自在に軌道を変える程の連続使用。
冬鷹は、佐也加以外でそんな防壁の使い方をしている者を見た事がない。
だが、逆に佐也加はそれをさも当然の如くやってのける。
やっぱり違う――。
自分と天才との差をまざまざと見せつけられる。自分が苦戦していた相手を翻弄しているのだから尚の事だ。
しかし、そんな天才でも、武器を持たないというのは明確なハンディキャップなようだ。
氷の巨人の攻撃は佐也加に一切当たる気配はない。だが攻撃手段のない佐也加もまた氷の巨人になんらダメージを負わせてはいない。
倒れていた巨人も起き上がり、計三体から攻撃。それを全て躱し切っていると、佐也加は冬鷹の前に移動してきた。一体の巨人は標的の場所を確認すると拳を大きく振り上げる。
佐也加は「出番だ」と、さっと冬鷹の後ろに回り込む。
「他の異能を使用しても構わん。だがリンクするのは〈黒川〉だけにしろ」
訳が分からない。だが冬鷹は佐也加の言葉を信じていた。
佐也加の指示の下、冬鷹は〈黒川〉に集中する。
「避けろ。その最中、刃を添えるようにして斬れ」
巨大な拳が飛んできた。冬鷹はギリギリ避けられる分だけ横にずれる。
そして言われるがまま、拳の進行方向に〈黒川〉を置くように構える。
次の瞬間、拳が冬鷹の横を通過してゆく。圧力と突風が顔を強く撫でる。
〈黒川〉にリンクし、〈切れ味補助〉と〈形状維持〉の出力を上げた。すると――。
取り過ぎる腕に刃が深くめり込んだ。
え!? なんで――!?
「その要領だ。次は切り落とすぞ」
理解が追いつかない頭には構わず、身体は佐也加の言葉に従い、もう一方の腕に備える。
「先と似たやり方だが、此度は下から上へと、斜めに刃が進むよう力を入れろ」
無傷であるもう一方の拳が放たれると、冬鷹は避ける位置にずれ、刀を低く構える。リンクは好調。理解のできない困惑と、ダメージを与える事ができたという興奮が心拍数を上げた。
拳とすれ違う。低く構えていた刃を、下から氷の腕に切り込ませる。
「そのまま切り落とせ」
冬鷹は〈力天甲〉とリンクせず、通常通り魔素子を多く流す事で出力を上げる。
氷の腕はバターのごとく刃を通した。
たちまち、刀に掛かる圧がフッと消える。巨大な手首が音をたて地面に落ちた。
これ、俺がやったのか――?
自分でも信じる事ができない。だが余韻に浸っている暇を佐也加は与えなかった。
「今の感覚だ。このまま他の奴らをも沈めきるぞ」
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