悪役令嬢の次は、召喚獣だなんて聞いていません!

月代 雪花菜

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第二章 外堀はこうして埋められる

2-5 朝ごはんを作りましょう!

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 リュート様が用意してくれたブレンダーの器の部分に、卵(常温)、塩、レモン汁、白ワインビネガー半量、マスタードを投入して、蓋をするとスタートボタンを押す。
 刃が無いからどんな風になるのかと思いきや、中で凄まじい勢いで撹拌されていて、あっというまに材料が混ざってしまいましたね。
 そこに、油を少量ずつ足して撹拌してを繰り返し、油の量が半分以下になったところで、残りの白ワインビネガーも入れて、混ぜ込んでいきます。
 残りの油も、すこーしずつ加えないと分離してしまいかねませんからね?
 丁寧な仕事が求められます。
 油も冷やしているほうが分離しづらいようで、私は好んでそうしていますが、人によってそこは違うかもしれませんね。
 白っぽくなり、とろみがついてきたら完成です!

 オーブンレンジの天板にジャガイモと先ほど切ったニンジンを並べます。
 大きさが違いすぎますが、大丈夫なのでしょうか……オート調理機能に任せ、その間に、玉ねぎ、きゅうり、ハムを準備。
 それぞれを食べやすいようにカットしていきますけれど、フードカッターが材料を瞬く間に設定したとおりに切っていくのが爽快です!
 材料をボウルにうつし、次の材料を投入して……と、私の手がせわしなく動いているのが気になるのか、ガルムもタロモも興味津々です。

 どこかで聞いたことがあるような電子音が流れ、中を覗き込んでみると、大きなジャガイモにもニンジンにも火が通っているようで、いい感じに湯気がたっていました。
 念のために菜箸をさしてみると抵抗感なくすんなり貫通してしまい、ガルムがぴょんと跳ね、タロモが拍手です。
 大きさが違っても問題ないとか凄い!

 さて、火が通ったジャガイモを、熱い内に……

「あっつ!」
「きゅーっ!」
「ぎゃぅ!?」

 流石に熱かったですね……指先ジンジンですけれど、水で冷やせば大丈夫でしょう。
 私の周りで慌てているガルムとタロモをなだめるが、赤くなっている指先を見て泣きそうになっている。
 ガルムは、私の真っ赤な指先をぺろぺろ舐めて治療し、タロモがふーふーして冷たい息を吹きかける。
 二人が必死に、ぺろぺろ、ふーふーしてくれたおかげなのか、驚くぐらい痛みが消えていく。

「二人共凄いですねぇ、治療魔法ですか? それとも、自然治癒を高めているのでしょうか。不思議ですねぇ」

 タロモのふーふーは冷たいから、多分、水か氷なのかしら。
 ガルムは、治癒力……? うーん、ちょっと違う感じがしますが、回復が少し早くなったような?

「ありがとうございます、気をつけますね」

 お礼を言うと、赤味が引いた指先を見て、二人はホッとしたようだった。
 なにも、泣かなくても……よしよし、驚かせてごめんなさいね。
 二人の頭を優しく撫でて、ガルムの唾液でベタベタになった手を洗ってから、お料理再開です!

 今度は気をつけて皮をむき、木べらで適当な大きさに崩していきましょう。
 玉ねぎはこの段階で加えると、辛味が随分弱まります。
 気になる人は、レンジを使って火を通して水分を切った方がいいかもしれませんね。
 きゅうりは塩もみして、水気を絞り、ジャガイモの粗熱がとれたら、混ぜ込んでいきます。
 ハムとニンジンとマヨネーズとマスタードを投入して混ぜ、塩コショウで味を調えたらポテトサラダの出来上がりです!
 生野菜を添えて、彩りよく盛り付けておきましょう。
 これで、一品目ですね!
 大量ですが気にしない……リュート様もレオ様もよく食べますもの。
 大きなボウルいっぱいです。
 マヨネーズも大量に作っておいて正解ですね。

 さて、お次は、洗浄ボタンを押して綺麗にしておいたブレンダーの中に、ふるった小麦粉、卵、塩、牛乳を加えて撹拌します。
 シッカリ混ぜたら、もちっとした食感の生地になるからオススメですね。
 生地は一旦冷蔵庫に入れて、少しの間寝かせます。

 続いてお野菜の準備をしましょう。
 アスパラとシメジみたいなきのことすっぱいトマトとほうれん草……この世界では、ほうれん草ではなくレンソンというそうですが……クレソンみたいな名前ですよね。
 それを食べやすい大きさにフードカッターに切ってもらって、それぞれ準備します。

 切れた材料にベーコンを加えて天板に並べ、塩コショウしてスイッチオン!
 調理時間も短いし本当に頼りになりますねぇ、これは一家に一台でしょう。

 天板を取り出し、野菜にちゃんと火が通っているのを確認したら別の器に移して、天板をオーブンレンジの中に入れて、洗浄ボタンをぽちっと押せば……綺麗になりました!

 油汚れとかこびりつき知らずですね……夢の調理器具たちです。
 日本にいる母が知ったら飛びつくこと間違いなしですね。
 こびりつき汚れに困り果てた母を見かねて、休日の朝からキッチンで奮闘していた父の姿が懐かしいです。

 綺麗になった天板を取り出し、油を薄く敷いて生地を流し入れてくるりと回して薄く伸ばし、オーブンレンジでチンッとすれば、綺麗な円形のもちもちな生地ができました。

 小麦粉で作るガレットですよ!
 そば粉でなくても出来るし、ボリュームもあって、お野菜もとれますからオススメです。
 お野菜は、なんでもいいですものね。

 ただ、ガレットってフライパンで作ると四方を折りたたんで一回一枚って感じですが、オーブンレンジは2段あるわけで……ふふっ、一度に大きめなものが4枚も焼けてしまいます。
 お店のオーブンレンジだったら、倍ほど焼けそうですね。
 カフェとラテも、すごく喜んだのでしょうね……小躍りどころか、しっぽふりふりダンスが目に浮かぶようです。
 天板はものすごく軽くて熱伝導に優れた丈夫な金属で出来ているようで、とても助かりますね。

 この世界の素材は、どうやら魔物の素材も有用みたいですから、考えている以上に種類が多いのかもしれません。
 未知の食材なんてものも……きっとあるはずですよね。
 見た目がミカンのようだから甘酸っぱいだろうと思っていたら、桃のようにとろっと甘かったりすることもあるのでしょうか。
 いつか……本当に、リュート様と食材探しの旅へ出てみたいものです。

 生地の上に、火が通っている具材をサークル状に配置し、真ん中のくぼみに卵を落として、チーズを乗せ四方を内側に折り込み、再びレンジの中へ!
 これ、普通のオーブンレンジでやったら大爆発ですが、魔法は関係ないようで助かります。
 卵の項目メニューで『とろり半熟』なんてあったから、ポチっておきました。
 わかっていますね、製作者様……あ、リュート様でしたから、その辺りはやはり抜かりなしですよね!
 出来上がりの合図と共に、ガルムとタロモと共に開いて見れば……

「きゅーっ!」
「がぁうぁっ」

 うわぁ……美味しそうに出来上がりました。
 チーズがとろりととろけて、卵も半熟のとろとろ卵なのが目で見てわかります。

 タロモとガルムも目をキラキラ輝かせて、ガルム、あなたよだれが垂れていますよ?
 タロモが懐から出したハンドタオルで、口元を拭いてあげています。
 中々面倒見がいいですね。

 取り出した天板の上では、まだくつくつとチーズが音を立てていて、とても美味しそうです!
 ああ、これをとろーっと伸ばして食べたいですね。

 これで、小麦粉のガレット完成です!
 さぁ、アイテムポーチの中に収納して、次っ!

 ガルムとタロモがぴょんぴょん跳ねて喜んでいるのを横目に、生地と野菜がなくなるまで焼き、全部アイテム収納した私はほくほく顔です。
 こんなに早く、たくさん作れるなんて……日本より進んだ調理器具たちのおかげですね。
 本当に、魔法って凄い!
 
「大満足って顔をしているな。できた?」
「リュート様っ!」

 いつの間に来ていたのか、私を後ろから眺めていたようで、戸口のところで腕を組んだ格好でもたれている姿は、ドキドキするくらい格好いいです。
 あ、でも、まだ片付けが……と、まだ熱い天板に不用意に触れようとした私の手を取ったリュート様から魔力の流れを感じる。
 4枚の天板が瞬時にきれいになってしまいました。
 洗浄魔法ですか?
 うわぁ……リュート様って器用ですね。

「熱い天板を素手で触るなんて、危ないだろ?」
「す、すみません。つい……」

 貴方に見惚れて判断を誤りましたとは言えず、気まずげに視線をさまよわせていると、リュート様が「おっちょこちょいだな」と私の頭を優しく撫でてくれる。

「寂しくなってきたところじゃないか?」
「あ……確かに……」

 そういえば、いつの間にかガルムもタロモもいなくなっていますね。
 あっ……リビングで、レオ様とシモン様にじゃれついていましたか。
 ズルイですよ! 私だって、リュート様にじゃれつきたいのにっ!

「美味そう。これ、ガレット……か? へぇ……小麦粉で作ったんだな。こんな代用とかアレンジなんて思い浮かばねーわ。すげーな! こっちはマヨネーズか。分離してない……やっぱり、ルナはスゴイなぁ」

 目をキラキラさせて褒め称えてくれるリュート様の笑顔……癒やされます!
 もっと褒めてください!
 ぎゅぅってしてくださっても良いのですよ?

 そんな私の考えなどわかっていないのでしょうに、リュート様が私の耳元に唇を寄せて小さく呟く。

「後で……な?」

 きゅうんっとしますうぅぅぅっ!
 今の甘く低い声はなんですかっ!?
 耳を押さえて、真っ赤になっている私に満足したのか、魅惑的な笑みを浮かべたリュート様は、すぅっと目を細めてから、まだアイテムポーチに入れていない出来上がった料理を次々に手に取り運び始めたのだけれど、私はドキドキしてしまって、何故か力が入りづらくなっている足を支えるだけで精一杯であった。

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