悪役令嬢の次は、召喚獣だなんて聞いていません!

月代 雪花菜

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第七章 外から見た彼女と彼

ほのぼの親子に癒やされ中ですっ(マリアベル視点)

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「顔面じゃなくても受け止められますっ」

 もーちゃんを投げてみてください、受け止めてみせます! と宣言するルナ様に、リュート兄様は笑みを深めます。
 春の女神様は言われたとおりに投げてみるの? と首を傾げますが、だ、ダメですよ、お食事中ですから。
 私はこの流れはいけないともーちゃんをぎゅっと抱きしめて、春の女神様が本当に投げてしまわないよう完全確保しました。

「そうかそうか、だったらベオルフに要確認だな」
「え? だ、ダメです! 確認する相手が悪いのですっ」
「ルナのことを一番わかっているはずだろ?」
「そ、それは……そうなのですが……だ、ダメなのです」

 必死に首を振って「ダメダメ」と言っているルナ様の横で、リュート兄様はニヤリと意地悪な笑みを浮かべます。
 あ……この笑い方は小さい頃によく見ました。
 悪戯などを考えている時に見せる表情で、このリュート兄様には苦労させられましたが……本当に嫌だというレベルのことをしてこないことがわかっていたので、黙って様子を見守ります。

「そっか、今度そういう機会があったら、忘れずに尋ねてみよう」
「やーめーてーくーだーさーいーっ! ダメです、ベオルフ様が面白がってリュート様に色々話してしまいますからっ!」
「色々……ね」
「あ……いえ、あの……なにも……ないですよ?」

 失言だったと言わんばかりの表情で一瞬固まったルナ様は、オロオロしはじめてわかりやすいくらい狼狽した姿を見せました。
 そんなルナ様の可愛らしさに耐えきれず、全員が吹き出すように笑い出すと、はっ!とした顔をしてから原因となったリュート兄様に「もうっ」と怒りの声を上げて彼の腕をぺちぺちと叩き出したのですが、叩かれている本人は嬉しそうに頬を緩め甘んじてそれを受けているようです。

 ルナ様ったら、本当に可愛らしいっ!
 いいな……私もああやってぺちぺち叩かれてみたいですっ!

 暫くリュート兄様の腕をぺちぺち叩いているルナ様の可愛らしい仕草に和んでいたのですが、何かを思いついたのかピタリと動きを止めて唇に指を押し当て「うーん」と唸りだしてしまいました。
 
 悩んでいる姿ですら愛らしいだなんて……どこまでも罪な方ですよね。
 春の女神様がルナ様をチラチラ見ながら行動を真似ているのですけど、その光景はほのぼのポイントが高いですよ?
 見ているだけで心がほっこり癒やされます。

「とりあえず、折角パスタを運んできてもらったんだ。みんなもチャレンジしてみたらどうだ?」

 リュート兄様がルナ様から視線をそらす目的であったかどうかわかりませんが、配り終わっている皿に私達の意識を向けました。
 確かに、このまま放置していたら冷めてしまいそうです。

「フォークを手に取って、こういう風に持ってから指先で回すんだ」

 一度見本だというようにリュート兄様が先程の持ち方を披露してくれたのですが、やっぱり見ているだけならそれほど難しく無いように感じますが……
 まずは、レッツチャレンジですよね!
 リュート兄様の手元を真似るようにフォークを持ち替え、長いパスタのお皿にフォークを差し入れます。
 パスタを絡め取るように回して……って、アレ?意外と……む、難しいっ!?
 お皿と金属が擦れる音がしたり、フォークをパタリと倒してしまったりと、みんなも思うように行っていないようです。

「難しいね~、リュートは簡単にやっているけど、さすがって感じだ」
「コツがありそうです」

 王太子殿下とランディオのおじさまの会話を聞きながら出来るだけ意識を集中させますが、パスタをからめ取りつつ適量を巻いていくという、たったそれだけのことがこれほど難しいことなのだと痛感してしまいました。
 やっぱりリュート兄様は、様々なことに精通していて器用なのです。

「マリアベルはチェリシュと一緒のレベルかよ」
「はっ! 一緒……なのっ」
「うぅ……こ、これでは口に入りません」

 私のフォークには先程の春の女神様よりも大きく巻かれたパスタ……
 これを口にいれようものなら、赤く染まるどころではありませんよね。
 まずは、顎が外れます。
 これは絶対です!

「チェリシュも頑張るのっ」

 私のフォークの惨状を見てやる気を取り戻しませんでしたか? 春の女神様……
 でも、可愛らしいのでこれ以上は言いません。
 ですから、もっと愛らしい姿を見せてくださいね!

 期待を裏切らない春の女神様は、再び私の半分くらいに丸まったフォークをリュート兄様に見せつけます。
 笑いを堪えて肩を震わせている父と、頑張ったところを見せて褒めて欲しい娘の可愛らしい攻防。
 誰か、この瞬間を切り取って永久保存してくださらないかしら。

 みんなが四苦八苦しているのを確認したリュート兄様は、スプーンを使って少量をフォークで巻く方法を教えてくれたのですが、先程よりもやりやすいと感じました。
 これならなんとかなるかも?

「これで団子状にならずに済むな」

 リュート兄様がニヤリと笑うのですが、『ダンゴジョウ』って何ですか?
 そんな疑問を抱きながらも、スプーンを使って少量のパスタを巻きつけることに成功し、やった! とリュート兄様に見せつけ……は、しませんでしたが「どうですかっ!」という表情で見つめると、ぷっと吹き出されてしまいました。

「チェリシュと同レベルかよ」
「一緒にできたの、エライエライなのっ」

 リュート兄様の笑顔だけではなく春の女神様にも褒めていただけて、私は幸せです!
 ……が、ルナ様は先程から考え込んでいるようで、全く周囲の様子に気づいておりません。
 それを心配していると、ルナ様にも褒めてほしかったのか、春の女神様が小さなフォークに巻きつけたパスタをチラチラ見せました。
 全く反応がなくてションボリした春の女神様をリュート兄様が慰めようとした次の瞬間、なんとルナ様はそれをぱくりと食べてしまったのです。
 一瞬、何が起きたかわからず周囲に沈黙が落ちたのですが、すぐさま復活した春の女神様は急いでフォークにパスタを巻きつけて再度チャレンジ!
 ゆらゆら~と目の前で揺れる、小さなフォークに巻かれたパスタ。
 それが視界に入っているわけではないでしょうに、無警戒のままパクリと食べるルナ様。
 あ……やっぱり食べちゃうのですね。

「食べたのっ」
「よし、今のうちだ」

 何が今のうちなのですか?
 今度はリュート兄様がフォークに綺麗に巻きつけたパスタをルナ様の口元へ持っていき、パクリと食べさせては満足げに微笑みます。
 幸せを噛み締めているような表情で、せっせと口元へ運ぶ様は、親鳥が雛へ餌を運んでいるようにも見えますが……

 リュート兄様と春の女神様が競うようにルナ様に食べさせている様子を、テオ兄様が優しい視線で見守り、愛の女神様と前竜帝陛下も顔を見合わせてから楽しげに笑い、ほのぼの親子の様子を眺めておりました。
 どうやら、ルナ様は作ることには意欲的なのですが、食べることになると途端に消極的になってしまうようで、リュート兄様と春の女神様が必死になる気持ちもわかります。
 食べるということは生きること。
 それはつまり、生きることにも消極的だと捉えることができます。
 食べることに消極的という事実が、生命力の強さをルナ様からは感じられない原因の一つではないかと思いました。
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