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第8話
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「案外暗いなぁ……」
薄暗いダンジョンをゆっくりと歩いていく。
氷柱がいたるところに密集して立っていて、中はひんやりとしている。
けど、思いのほか寒さは感じない。これなら問題なく先へ進めそうだ。
[冒険者の鉄則 その1]
魔獣の声に耳を澄ませるべし。
こういう時は、まず一度立ち止まって耳を澄ませてみる。
魔獣の叫び声が遠くから聞こえてくる場合があるからだ。
「……うん。まだ聞こえない」
魔獣の位置を把握しながら、慎重にダンジョンを進めというのが学校での教えだった。
とりあえず、明りがないと心もとないから、ビーナスのしずくに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げておく。
こうすることで、自分の周りは水晶の明るさで照らすことができる。
(E級ダンジョンはこれまで何度か入ったことがあるけど、【グラキエス氷窟】は初めてだよね)
ダンジョンによって生息している魔獣も異なるから一概には言えないけど、これまでの経験上、大抵の場合はスライムを最初に見つけることになるはず……。
スライム相手にどこまで戦えるかが、今後の指標になってくるのは間違いない。
ビーナスのしずくで足元を照らしながら、ぬかるんだ氷面に足を滑らせないように慎重に進んでいく。
すると。
(……いたっ!)
氷壁からしたたり落ちる水滴を摂取している黒色の物体が見えてくる。
スライムだ。
幸い、相手はまだこちらの存在に気付いていないみたいだった。
スライムの特徴はこれまでに何度か遭遇したことがあるから、情報は頭に叩き込んである。
魔族の中でも一番弱い魔獣で、自らの体の一部を投げつけて攻撃を仕掛けてくる。
形を変えてこちらの攻撃を回避するっていう特性もあるけど、不意打ちをかければそれもできないはずだ。
(氷柱を利用して殴ってみるとか?)
素手で魔獣に挑む場合、本来なら<体術>のスキルを覚えるべきなんだけど、僕には習得できるだけのLPが存在しない。
その他のスキルも覚えていなくて武器もろくに扱えないから、あり物で攻撃してみるしかなかった。
(うん。とりあえずやってみよう)
[冒険者の鉄則 その2]
魔獣を相手にするなら気持ちを強く持つべし。
こちらが怯んでいるってことは敵にも当然伝わってしまう。
魔獣はそういった人の感情に敏感だったりするから、そういう時は一斉に攻撃を仕掛けられてしまったりする。
ダンジョンに入ったのなら、戦う闘志を持て。
それが無ければ魔獣にやられてしまう、っていうのが学校での教えだった。
ビーナスのしずくから一度手を離すと、手頃なサイズの氷柱を1つ取って、ゆっくりスライムに近付いていく。
慎重に、慎重に……。
栄養を摂取している間のスライムは警戒心が弱くなるって話を聞いたことがある。
まだ、こちらの存在に気付いていないみたいだ。
スライムとの距離はどんどん縮まっていき、直接手が届く位置までやって来た。
やるなら今しかない!
氷柱を静かに振り上げると、それをスライム目がけて思いっきり振り下ろす。
が。
スカッ!
(えぇっ!?)
振り下ろした氷柱がスライムに当たることはなかった。
氷柱はむなしく空を切って、氷壁に当たり砕けてしまう。
避けられたんだって、気付くまでには、それほど時間はかからなかった。
すぐに辺りを見渡す。
でもいない……! 一体どこに!?
ドスンッ!
「うわっ!?」
次の瞬間、僕は後ろからスライムの体当たりを受けてしまう。
不意の出来事に、そのまま前のめりになって倒れてしまった。
(いったぁッ……)
最悪なことに、僕の体はスライムに下敷きにされてしまっていた。
ドスンッ! ドスンッ! ドスンッ!
「くっ……ち、ちょま……! いてぇっ……!?」
そのままスライムに体当たりを繰り返される。
体を動かしてどうにか逃げようとするけど、相手の方が素早くてまるで抜け出せない。
やがて、スライムは形を変えると、僕の顔面に張り付いてきて……。
(うぐっ……このままだと窒息しちゃうッ……!)
口元を塞がれた状態でスライムに体当たりを続けられ、僕のHPはみるみる減っていく。
いや、ちょっと待ってよ……!
スライムに殴り殺された冒険者なんて聞いたことがない!
こんなところで僕はまだ死ぬわけには……。
(そうだ、ポーション!)
肩にぶら下げた革のショルダーバッグからポーションを取り出そうとする。
けど。
パッリーン!
(あああぁっ!?)
氷面に落として容器を割ってしまう。
これじゃ、回復することもできないじゃんっ……!
スライムは口元を塞いだまま体当たりを続けてくるし、このままじゃ本当にやられちゃうよ!
でも、僕には詠唱できる魔法もないし、繰り出せる技もない。
パニックになった僕は、思わずユニークスキルをスライムに向けて叫んでいた。
「〝ダイデムゥプードゥッッ〟」
唱えた刹那、なにを意味のないことをやっているんだって思った。
だって<アイテムプール>は、亜空間にアイテムを出し入れするスキルであって、魔獣に使ったところでなんの効果もない。はずなんだけど……。
キュゥゥイィィィンン~~ッッ!
「!!?」
突如、スライムの全身が発光したかと思うと、そのまま眩い光に包まれて、僕の手のひらへ吸い込まれるようにスライムは姿を消してしまう。
この間、ほんの一瞬の出来事だった。
「ななな……なにが、起きたの!?」
気付けば、首にぶら下げているビーナスのしずくが発光していた。
ほとんど無意識のままエンドパーツに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げると、アナウンス画面が表示される。
『<アイテムプール>を魔獣に使用したため、<アブソープション>が覚醒しました』
「は……?」
<アブソープション>が覚醒した?
意味が分からず、そのままスクロールしてユニークスキルの項目を確認してみる。
-----------------
[ナード]
LP2
HP8/50
MP0/1
攻1
防1(+5)
魔攻1
魔防1
素早さ1
幸運1
ユニークスキル:
<アブソープション/スロットα>
<バフトリガー/OFF>
属性魔法:
無属性魔法:
攻撃系スキル:
補助系スキル:
武器:
防具:毛皮の服
アイテム:
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:9,100アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:E級魔獣1体
状態:
-----------------
「か、変わってるっ!?」
アナウンス画面にある通り、<アイテムプール>は<アブソープション>っていうユニークスキルに変わっていた。
でも、驚くのは早い。変化はそれだけじゃなかった。
「え? LP2? いやいや、ちょっと待って……」
なんかLPも変わってるんですけど!!?
「えええぇっ……!? LP2!?」
あ……あり得ないっ!
LPは1ヶ月に1ポイントずつ減るものであって、増えるなんてことは絶対にあり得ない。
もし増えるなんてことがあれば、この世界の常識が逆転しちゃうよ……!
「なんでこんなことが……」
ひょっとして水晶ディスプレイのバグ?
けど、そんな話聞いたことがない。
「お、落ちついて。まずは、<アブソープション>の性能を確認しないと……」
震える指を押さえつけながら、<アブソープション>の項目をタッチする。
-----------------
◆アブソープション
・スロットα
内容:相手のLPを1吸収する(1バトル/1回)
消費MP1
・スロットβ
内容:HP0となった相手のLPを吸収する(調整可)
消費MP0
-----------------
「な、なにこれ……」
薄暗いダンジョンをゆっくりと歩いていく。
氷柱がいたるところに密集して立っていて、中はひんやりとしている。
けど、思いのほか寒さは感じない。これなら問題なく先へ進めそうだ。
[冒険者の鉄則 その1]
魔獣の声に耳を澄ませるべし。
こういう時は、まず一度立ち止まって耳を澄ませてみる。
魔獣の叫び声が遠くから聞こえてくる場合があるからだ。
「……うん。まだ聞こえない」
魔獣の位置を把握しながら、慎重にダンジョンを進めというのが学校での教えだった。
とりあえず、明りがないと心もとないから、ビーナスのしずくに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げておく。
こうすることで、自分の周りは水晶の明るさで照らすことができる。
(E級ダンジョンはこれまで何度か入ったことがあるけど、【グラキエス氷窟】は初めてだよね)
ダンジョンによって生息している魔獣も異なるから一概には言えないけど、これまでの経験上、大抵の場合はスライムを最初に見つけることになるはず……。
スライム相手にどこまで戦えるかが、今後の指標になってくるのは間違いない。
ビーナスのしずくで足元を照らしながら、ぬかるんだ氷面に足を滑らせないように慎重に進んでいく。
すると。
(……いたっ!)
氷壁からしたたり落ちる水滴を摂取している黒色の物体が見えてくる。
スライムだ。
幸い、相手はまだこちらの存在に気付いていないみたいだった。
スライムの特徴はこれまでに何度か遭遇したことがあるから、情報は頭に叩き込んである。
魔族の中でも一番弱い魔獣で、自らの体の一部を投げつけて攻撃を仕掛けてくる。
形を変えてこちらの攻撃を回避するっていう特性もあるけど、不意打ちをかければそれもできないはずだ。
(氷柱を利用して殴ってみるとか?)
素手で魔獣に挑む場合、本来なら<体術>のスキルを覚えるべきなんだけど、僕には習得できるだけのLPが存在しない。
その他のスキルも覚えていなくて武器もろくに扱えないから、あり物で攻撃してみるしかなかった。
(うん。とりあえずやってみよう)
[冒険者の鉄則 その2]
魔獣を相手にするなら気持ちを強く持つべし。
こちらが怯んでいるってことは敵にも当然伝わってしまう。
魔獣はそういった人の感情に敏感だったりするから、そういう時は一斉に攻撃を仕掛けられてしまったりする。
ダンジョンに入ったのなら、戦う闘志を持て。
それが無ければ魔獣にやられてしまう、っていうのが学校での教えだった。
ビーナスのしずくから一度手を離すと、手頃なサイズの氷柱を1つ取って、ゆっくりスライムに近付いていく。
慎重に、慎重に……。
栄養を摂取している間のスライムは警戒心が弱くなるって話を聞いたことがある。
まだ、こちらの存在に気付いていないみたいだ。
スライムとの距離はどんどん縮まっていき、直接手が届く位置までやって来た。
やるなら今しかない!
氷柱を静かに振り上げると、それをスライム目がけて思いっきり振り下ろす。
が。
スカッ!
(えぇっ!?)
振り下ろした氷柱がスライムに当たることはなかった。
氷柱はむなしく空を切って、氷壁に当たり砕けてしまう。
避けられたんだって、気付くまでには、それほど時間はかからなかった。
すぐに辺りを見渡す。
でもいない……! 一体どこに!?
ドスンッ!
「うわっ!?」
次の瞬間、僕は後ろからスライムの体当たりを受けてしまう。
不意の出来事に、そのまま前のめりになって倒れてしまった。
(いったぁッ……)
最悪なことに、僕の体はスライムに下敷きにされてしまっていた。
ドスンッ! ドスンッ! ドスンッ!
「くっ……ち、ちょま……! いてぇっ……!?」
そのままスライムに体当たりを繰り返される。
体を動かしてどうにか逃げようとするけど、相手の方が素早くてまるで抜け出せない。
やがて、スライムは形を変えると、僕の顔面に張り付いてきて……。
(うぐっ……このままだと窒息しちゃうッ……!)
口元を塞がれた状態でスライムに体当たりを続けられ、僕のHPはみるみる減っていく。
いや、ちょっと待ってよ……!
スライムに殴り殺された冒険者なんて聞いたことがない!
こんなところで僕はまだ死ぬわけには……。
(そうだ、ポーション!)
肩にぶら下げた革のショルダーバッグからポーションを取り出そうとする。
けど。
パッリーン!
(あああぁっ!?)
氷面に落として容器を割ってしまう。
これじゃ、回復することもできないじゃんっ……!
スライムは口元を塞いだまま体当たりを続けてくるし、このままじゃ本当にやられちゃうよ!
でも、僕には詠唱できる魔法もないし、繰り出せる技もない。
パニックになった僕は、思わずユニークスキルをスライムに向けて叫んでいた。
「〝ダイデムゥプードゥッッ〟」
唱えた刹那、なにを意味のないことをやっているんだって思った。
だって<アイテムプール>は、亜空間にアイテムを出し入れするスキルであって、魔獣に使ったところでなんの効果もない。はずなんだけど……。
キュゥゥイィィィンン~~ッッ!
「!!?」
突如、スライムの全身が発光したかと思うと、そのまま眩い光に包まれて、僕の手のひらへ吸い込まれるようにスライムは姿を消してしまう。
この間、ほんの一瞬の出来事だった。
「ななな……なにが、起きたの!?」
気付けば、首にぶら下げているビーナスのしずくが発光していた。
ほとんど無意識のままエンドパーツに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げると、アナウンス画面が表示される。
『<アイテムプール>を魔獣に使用したため、<アブソープション>が覚醒しました』
「は……?」
<アブソープション>が覚醒した?
意味が分からず、そのままスクロールしてユニークスキルの項目を確認してみる。
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[ナード]
LP2
HP8/50
MP0/1
攻1
防1(+5)
魔攻1
魔防1
素早さ1
幸運1
ユニークスキル:
<アブソープション/スロットα>
<バフトリガー/OFF>
属性魔法:
無属性魔法:
攻撃系スキル:
補助系スキル:
武器:
防具:毛皮の服
アイテム:
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:9,100アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:E級魔獣1体
状態:
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「か、変わってるっ!?」
アナウンス画面にある通り、<アイテムプール>は<アブソープション>っていうユニークスキルに変わっていた。
でも、驚くのは早い。変化はそれだけじゃなかった。
「え? LP2? いやいや、ちょっと待って……」
なんかLPも変わってるんですけど!!?
「えええぇっ……!? LP2!?」
あ……あり得ないっ!
LPは1ヶ月に1ポイントずつ減るものであって、増えるなんてことは絶対にあり得ない。
もし増えるなんてことがあれば、この世界の常識が逆転しちゃうよ……!
「なんでこんなことが……」
ひょっとして水晶ディスプレイのバグ?
けど、そんな話聞いたことがない。
「お、落ちついて。まずは、<アブソープション>の性能を確認しないと……」
震える指を押さえつけながら、<アブソープション>の項目をタッチする。
-----------------
◆アブソープション
・スロットα
内容:相手のLPを1吸収する(1バトル/1回)
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・スロットβ
内容:HP0となった相手のLPを吸収する(調整可)
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