復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

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第22話 セシリアSIDE

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 【鉄血の戦姫アイアンヴァナディス】の4人は、A級ダンジョン【エクスハラティオ炎洞殿】で、デーモンバトラーと対峙していた。

 溶岩に囲まれた禍々しい空間に怒声が行き交う。

「早く切り込めって!」

「分かってるわよ! その前にデュカ! あんた偉そうなこと言う前に、付与魔法で私の攻撃力上げてよ!」

「んなこと言っても、もうMPがないんだよ!」

「はぁ? ちょっとケルヴィン! あんたがアイテム担当でしょ! 早くデュカにマジックポッド使って!」

「むちゃ言わないでください! ボク、今盾で相手の攻撃防ぐのに精一杯なんですから!」

 仲間内でそう言い争いをしているうちに

「グゴオオオオオオオーーーッ!」

 デーモンバトラーが釜のように巨大な手を大きく振り上げてくる。
 真っ先にそれに気付いたのはダコタだった。

「おいマズいぞ! 《ツインアルティメットクロー》の構えだ! 全体攻撃が来ちまうッ……!」 

「セシリアさん! もう撤退しましょう! あれヤバいですって!」

「チッ、あとちょっとでコイツ倒せそうなのに……」

「んなこと言ってる場合かよ! あれ食らったらオレたちは全滅だ!」

「くっ……」

 デュカのその言葉に、セシリアは槍を持つ手をギュッときつく握り締める。
 彼の言う通り、次に強力な全体攻撃を受ければ、パーティーの全滅は免れなかった。

「おいどうすんだ、セシリアッ!」

 判断を求めるダコタの声が上がる。

「……わ、分かったわ!」

 デーモンバトラーが攻撃のモーションに入ろうとした瞬間、セシリアは《瞬間移動テレポート》を唱えて、間一髪のところでパーティーを帰還させることに成功した。



 ◇



 その後、一同は酒場を貸し切って反省会を開いていた。

「ダコタ、これはどういうことだよ! A級ダンジョンは楽勝だったんじゃなかったのか? 話が違うじゃないか!」

 グラスに注がれたエールを飲み干しながら、デュカが鋭い声を上げる。

「こんなことなら、もっと他のタイクーンと組むべきだったんじゃないですか?」

 加勢してきたケルヴィンの言葉にも、ダコタは何も答えない。
 ただグラスを傾けたまま、静かに黙っているだけだ。

「あの女と組めば一流冒険者の証シーカーライセンスが手に入るって言うから、オレは賛成したんだ。なのに、結局クリアできなかったじゃないか!」

「セシリアさん。ボクたちにあれこれ命令するだけしておいて、自分は好き勝手行動しますし。そのくせ、ボス魔獣がいるフロアまで辿りつけなかったなんて……いい笑い話ですよ」

 【鉄血の戦姫】がA級ダンジョンのクエストに失敗したという噂は、すでに冒険者ギルドで広まっていた。
 自信たっぷりとクリアの宣言をセシリアが行っていたため、噂のほとんどは嘲笑の含まれるものとなっていた。

 あれだけの強力なステータスを授与されたにもかかわらず、結局A級ダンジョンを踏破できなかったのか、と。
 手のひらを返すように、周りの視線はこれまでと違い、非常に冷めたものとなっていた。

「ダコタ! 黙ってないで何か言ったらどうだ!」

 席から立ち上がると、デュカはダコタをまっすぐに睨みつける。
 酒もある程度入っているのだろう。モヒカンを揺らしながら、威圧するように低い声で続けた。

「とっくに気付いてんだよ! お前、セシリアが自分の女だから、このパーティーに加わろうって言ったんだろ? オレとケルヴィンはおまけに過ぎなかったんだ」

「……」

「オレたちにだって、冒険者シーカーのプライドってもんがある」

 デュカは、カウンターに立てかけるようにして置いていた大きな斧を手に取る。

「親父から受け継いだこのウロボロスアクスも、使う場面がないんじゃ宝の持ち腐れだ。オレはべつに、回復術師でもエンチャンターでもない。【エクスハラティオ炎洞殿】をクリアできるって言うから、これまであの女に従っていただけだ!」

「そうですよ。だから、ボクも両親から貰ったこの上帝の盾を使って、前衛でタンクを頑張ってきたんです。この盾に何度も救われてきたはずなのに、あの人感謝の言葉すらないですし……」

 セシリアに対する2人の不満は、爆発寸前まで溜まっていた。
 ダコタはグラスをはじくと、ようやく一言口にする。

「……そう言うなよ。アイツがいたから、B級ダンジョンだってクリアできたんだ。お前らもちゃんと分け前は貰っただろーが」

「天空のティアラはあの女の取り分だったじゃないか! 全然足りないんだよ! 10日もかけて結局何も成果が出ないなら、C級ダンジョンでも周回してた方がマシだったぞ!」

「おい待てよ、デュカ。セシリアと組んだおかげで【エクスハラティオ炎洞殿】にだって挑戦できたんだろ? 本来なら、俺たちだけじゃ入ることもできねーんだよ」

「話をすり替えるな! オレたちの目標はA級ダンジョンに入ることじゃなかったはずだ! 一流冒険者の証の入手だろ!」

「ダコタさん、最初に言いましたよね? セシリアさんと組めば、一流冒険者の証を必ず手に入れられるって。この結果、どう説明されるんですか?」

「だから、次こそ手に入れられるように……」

「ふざけるな! 次はもうない!」

 ガシャンッ!

 テーブルのグラスを払いのけ、ついにデュカがダコタに掴みかかる。
 酒場は、修羅場の空気が流れ始めていた。



 ◇



 一方、セシリアはというと、冒険者ギルドの受付に顔を出して、【エクスハラティオ炎洞殿】登録解除の手続きをしていた。

「お疲れさまです、セシリア様! これにて手続きは終了となります。またのクエスト挑戦、心からお待ちしております~♪」

「え、ええ……」

 受付嬢との温度差を感じつつ、冒険者ギルドを後にする。
 心なしか周りの視線も冷たい気がする、とセシリアは思った。

 あれだけA級ダンジョンをクリアすると豪語してきたのだ。
 間違いなく自分の評価は下がったと、城下町の通りを歩きながらセシリアは考える。

(それもこれも、<豪傑>の調子がおかしいことが原因よ。たしか、あのクズをパーティーから追い出した日からヘンなのよね。なにか関係があるの?)

 だが、セシリアはすぐに首を振ってそれを否定する。

(……いえ、関係なんてあるわけがないわ。あんな役立たず、パーティーに置いておくだけでデメリットでしかなかった。お父様とお母様の言いつけがなかったら、あんな軟弱な男と関わることもなかったもの。むしろ、縁が切れて清々してるわ)

 そんなことを考えながら、セシリアは予定通り酒場の前に到着する。
 今日はメンバー全員で話し合いを持つことになっていた。

 少しだけ気分が重くなりつつも、セシリアは酒場のドアを開ける。
 すると――真っ先に罵声が飛んできた。

「ダコタ! お前、あの女にそそのかされすぎだぞ!」

「あんッ?」

「これじゃオレらまで笑いのタネだ! あんな女、そもそもタイクーンとしての素質がないんだよ!」

「てめー言い過ぎだぞ、デュカッ!」

「ま、まぁまぁ……2人ともここは落ちついて……」

 ケルヴィンが仲裁に入ろうとするも、2人とも大柄な体格をしているため、まったく効果がない。
 そこに、セシリアの鋭い一声が割って入る。

「デュカ!」

「っ!?」

「あんた、私のいないところで悪口とはいい度胸ね? 言いたいことがあるなら、直接私に言いなさい」

 真っ赤なストレートヘアを払いのけ、セシリアがデュカをきつく睨みつける。
 だが、デュカもこれで怯むような男ではなかった。

「なら、言わせてもらうけどな。このパーティーに入ったのは失敗だったよ!」

「そう。文句があるなら、出て行ってもらって構わないわよ」

「待てよセシリア。コイツも悪気があって言ってるわけじゃねぇんだ。成果が出なかったから、ちょっとイライラしてるだけで……」

「ダコタ、あなたは誰の味方なの?」

「いや、俺は……」

 引き止めに入ってきたダコタを振り払うと、セシリアは強気に続ける。
 自分のプライドを守るためにも、セシリアもまた一歩も引けなくなっていた。

「私に不満があるなら、今すぐに出て行きなさい!」

「ああ、もちろんだ! そんな態度ならこっちから願い下げだ。行くぞケルヴィン!」

「ですね。まったく話のできない人たちです。もう会うこともないでしょう」

 椅子をガシャン!と蹴りつけると、デュカはケルヴィンと一緒に酒場から出て行ってしまう。

「おい……いいのか。2人がいねぇとこの先大変だぞ」

「あんな奴ら、べつにいなくても問題ないわ」

「たしかに、デュカとケルヴィンの態度はムカつくが……。アイツらに助けられてきたのも事実だろ?」

「なに? なんでそんなこと言うの?」

「……」

「大丈夫よ。この先は絶対に上手くいくわ。ダコタは付いてきてくれるんでしょ? 私たち2人が揃っていれば最強よ。ね? お願いダコタ……」

「……ったく、分かったよ」

 もたれかかってきたセシリアの頭を、ダコタは強く抱きしめる。
 ちょっとした安心感を抱きながら、セシリアは思った。

(そうよ……。この先は上手くいく。私はこんなところで躓いていられないの。お父様やお母様のように、世界で活躍する一流の冒険者になるんだから……)
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