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第29話
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「誰かぁっ! 助けてくれえぇぇっ~~!」
「エデンの神様! どうかお願いしますぅっ~~!」
叫び声がするフロアへ飛び込んだ瞬間、思わず目を疑った。
「!!?」
その広い空間は、おびただしいほどの魔獣で埋め尽くされていたからだ。
ギルムやマザーヴァファローのほかにも、ビーストクルーザーの姿まである。
これまで存在した風穴は一切なく、そこはまるで円形闘技場の様相を呈していた。
そして、ここがいわゆる魔獣の巣窟というフロアであることに気付くまで、そう時間はかからなかった。
(くっ……。だから、これまで魔獣にまったく遭遇しなかったんだ!)
最悪なことに、声を上げている人たちは、フロアの中央で多くの魔獣に取り囲まれていた。
とっさに柱の影に隠れると、周囲の様子を素早く観察する。
(え……待って、あの2人って……)
魔獣に取り囲まれている人たちの顔には見覚えがあった。
それがデュカとケルヴィンであることに、すぐ気が付く。
(どうしてこんなところに!?)
が、すぐにその答えに思い当たる。
そうだ! 2人は【鉄血の戦姫】を抜けたんだ!
多分、不届きな盗賊として、違法でダンジョンに入り込んだに違いない。
すべてのダンジョンは登録制で、1つのパーティーしか入れない決まりになっている。
けど、中には違法でダンジョンに忍び込むならず者もいて、先にボス魔獣を倒して、魔光石を手に入れてしまうなんてことも実際にあるみたいだし。
デュカとケルヴィンが何を考えて忍び込んだのかは分からないけど、2人が倫理に背いた行為をしていることだけは確かだった。
「死にたくねぇーよオレッ! 誰かぁっ~~!」
「お願いしますお願いしますぅぅっ! 見逃してくださいぃぃ~~!」
2人は自身の周りに頑丈な檻のような結界を張って、魔獣からの攻撃を凌いでいた。
多分、《ソリッドシェルター》だ。
全ダメージを無効化することができるけど、その効果はずっと続くわけじゃない。
ここで助太刀しなくちゃ、きっと2人は助からない。
でも、ふと思い出す。
あの2人は、セシリアとダコタと一緒に、僕をパーティーから追い出したんだって。
(助ける義理なんてないじゃないか)
2人がここで朽ち果てたとしても僕には関係ない。自業自得だ。
そう思って、フロアを後にしようとするけど……。
ガシャンッ!
「えっ?」
目の前に巨大な魔法扉が下りてきて、退路は完全に断たれてしまう。
ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!
見れば、四方にある残りの出入口にも、魔法扉が下りてしまっていた。
その光景を目の当たりにして、僕は学校の授業で習った内容を思い出した。
魔獣の巣窟に足を踏み入れた冒険者は、その場にいる魔獣すべてを倒さない限り、フロアから出ることはできないんだ!
《瞬間移動》も使うことができないから、もしそのような状況に陥った場合は、パーティー全員が協力して魔獣を倒すようにって、たしかメリアドール先生も言っていた。
だけど、今の僕には仲間と呼べる者はいない……!
デュカとケルヴィンは取り囲まれていて、2人とも魔獣の餌食になるのは時間の問題だった。
(罠だったんだ……)
多分、僕ははぐれたパーティーの1人として認識されたんだろう。
全員をおびき寄せることに成功したから、魔法扉も作動したに違いない。
「やめろぉっ! 来るな、来るな、来るなぁ~~っ!」
「どうかご慈悲を! エデンの神様お願いしますぅぅ~~~!」
ほとんどの魔獣は、フロアの中央で防衛対策を講ずるデュカとケルヴィンに攻撃を繰り返していて、こちらの存在にまだ気付いていなかった。
(ど、どうしよう!?)
性格は置いておいて、デュカもケルヴィンも才能に恵まれた冒険者だ。
その2人がこんな風に窮地に陥っているってことは、これがどれほどヤバい状況かってことなわけで……。
「「ギギギギギイギギッ……!」」
「「ダシャーーーーッ!」」
「「ググギャアァアァアァアァ!」」
魔獣の雄叫びがフロア全体に折り重なるようにして木霊する。
全部で20体……いや、それ以上いるよ……!
(考えなくちゃ! どうやってこの状況を切り抜けられるか、考えないとッ!)
頭を必死で回転させる。
何か、何か必ず手はあるはずだ……。
こういう時のセオリーは全体攻撃で敵を殲滅すること。
真っ先に思い付いたのは、《プラズマオーディン》を乱れ撃ちすることだった。
けど、マザーヴァファローには雷魔法・被ダメージ半減があるから、10発……いや、それ以上撃ち込む必要がある。
(なら、水魔法は?)
水魔法も雷魔法と同じでグループ攻撃が可能だ。
ビーナスのしずくに触れて、素早く水晶ディスプレイに水魔法一覧を表示させる。
-----------------
◆初級魔法-フリーズウォーター/消費LP20
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(小)を与える
威力30ダメージ/詠唱時間4秒
消費MP5
◆中級魔法-バブルハウリング/消費LP50
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(中)を与える
威力80ダメージ/詠唱時間6秒
消費MP10
◆上級魔法-ブルーリヴァイアサン/消費LP100
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(大)を与える
威力250ダメージ/詠唱時間8秒
消費MP20
-----------------
LPが131ある今なら、《ブルーリヴァイアサン》 の習得も可能だけど……。
雷魔法と同じで、敵全体に攻撃を当てられないっていう難点がある。
威力もそこまで期待できないから、これも数を撃たないとマザーヴァファローもビーストクルーザーも殲滅することができない。
残された選択肢は、強力な【攻撃系スキル】で1体ずつ撃破していくことだった。
<片手剣術>上級技である《グラビティサザンクロス》を習得すれば、ここにいるどの魔獣も瞬殺できるに違いない。
でも、1体ずつ撃破していくのは、ほかの魔獣に襲撃される危険と隣り合わせだ。
昨日もそうやって襲われたばかりだし、この手段も最良の選択とは言えないかもしれない。
そんな風に躊躇している間に――。
「ググギャアァアァッ!」
「!?」
ビーストクルーザーの1体がこちらの存在に気付いたらしく、間近まで迫ってきていた。
しかも、その足元には魔法陣が……!
相手はすぐさま《サイレントカッター》を2発撃ち込んでくる。
ヴィーーーンッ!! ヴィーーーンッ!!
「ぐあぁ゛ぁ!?」
とっさに逃げようとするも、後ろは魔法扉で閉ざされていることに気付いて、その攻撃を直に受けてしまう!
「……ッ、ぅぐく……」
幸運なことに即死するようなことはなかったけど、<全魔法・被ダメージ半減>がなかったら多分死んでいたはず……!
「〝聖なる無垢な癒しよ その永遠の輝きにより エデンの加護とともに彼の者の傷を治せ――《ヒールプラス》〟」
魔法ポーチから水晶ジェムを取り出すと、即座に回復魔法を唱えた。
HPを全回復させた後、すぐに立ち上がるも、逃げ場はどこにもないことに気が付く。
目の前のビーストクルーザーは、強靭な8本足を動かしながらジワリジワリとにじり寄って、照準を僕に定めていた。
「ググギャアァアァアァアァ!」
そして、鋭いトゲの連なった巨大な尻尾をフロアの床にドンッ!と叩きつけると、雄叫びを上げて威嚇してくる。
また同じ攻撃を受けたら非常にマズいッ! 迷っているヒマはなかった。
(ここは《ブルーリヴァイアサン》を乱れ撃ちして、運良く敵を殲滅するのを祈るしかない……!)
水晶ディスプレイの操作をするため、目の前のビーストクルーザーを一瞬撒く必要があった。
幸いほかの魔獣は、フロア中央で防戦するデュカとケルヴィンに集中していたから、前方には空白地帯が存在した。
素早さならこっちが勝っている!
そう思った僕は、相手のわずかな隙を突いてそこに目がけて走り始めた。
――その瞬間。
視界にある物が映り込む。
(!? あれは……!)
魔獣が群がる結界の近くに、大蛇が象られた真っ赤な斧が落ちているのが見えた。
すぐに気付く。
それが、デュカがいつも持ち歩いていたウロボロスアクスだってことに。
冒険者の父親から譲り受けた貴重な武器だって、デュカはいつも自慢していた。
多分、防戦している最中に落としてしまったんだろう。
そして、ふとあることを閃く。
(……そうだ! <斧術>は全体攻撃じゃないか!)
こうなれば、イチかバチかだ。僕は進路を変更して駆け出す。
「《アルファウォール》……続けて《風のカーテン》!」
走りながらそう唱えて、敵陣の中へ突っ込んで行く。
こちらの動きに数体の魔獣が気付くも、僕は迷わず走り続けた。
「うおおおおおぉぉぉっーーーー!」
攻撃を受けても構うもんか! とにかく今はアレを手に入れなきゃ!
そう思って、決死の突撃を続けていると……。
「お、お前ッ……!」
「悪魔の子!?」
魔獣に取り囲まれた結界越しから、デュカとケルヴィンの視線が飛んでくる。
2人ともとても驚いた表情をしていた。
けど、今はそんなことには構っていられない!
ウロボロスアクスは、デュカの足元付近に落ちていた。
走りながら、僕はそれを指さして大声で叫ぶ。
「デュカーー! その斧を僕に渡してッーーー!」
一瞬、デュカが意表を突かれた顔をする。
言葉の意味が分からないのか、ケルヴィンも混乱した表情を覗かせた。
でも。
「っ!」
デュカはしゃがみ込んでウロボロスアクスに手を伸ばすと、それを思いっきり僕が駆け出す方角へ向けて投げつける。
この状況でとっさに判断し、信じてくれたんだ!
シュルシュルシュルシュルッ!
フロアの床を滑るようにして運ばれてきた斧を、僕は走りながらがっちりと掴む。
(よしっ!)
あとは、水晶ディスプレイで<斧術>を習得して……――ッ!?
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
突如、なだれ込むように襲いかかってきた3体のマザーヴァファローから、横殴りの《あばれ倒し》を連続で受けてしまい、僕はまたも吹き飛ばされてしまう。
「ぅぐぉっ……!」
なんとかその場で立ち上がろうとするけど、マザーヴァファロー集団の後方では、数体のビーストクルーザーが足元に魔法陣を浮かび上がらせていた。
(マ、マズい……! やられるッ!?)
あとちょっとなのに……! そんなタイミングで、僕は絶体絶命のピンチに陥った。
バックラーを構えて、死すらも覚悟したその時――。
「《ソリッドシェルター》!」
魔獣の雄叫びが折り重なる空間において、そんな叫び声が聞こえてくる。
ズピーーーンッ!
次の刹那、僕の周囲には檻の結界が張り巡らされ、ビーストクルーザーの《サイレントカッター》を間一髪のところで防いでくれる。
一体何が起こったのかが分からず、おそるおそる目を開ければ、ケルヴィンが僕に向けて両手をかざしていた。
守ってくれたんだ……!
そして、自分がウロボロスアクスを落とさずに握ったままであることに気付いた。
(――今ならいける!)
水晶ディスプレイを急いで立ち上げると、無我夢中で操作を行う。
デュカとケルヴィンにはもう時間がほとんど残されていない。
助けられた以上、ここで2人を見捨てるわけにはいかなかった。
LP10を消費して<斧術>のスキルを習得してしまうと、そのまま技一覧も表示する。
-----------------
◆初級技-メテオスピン/消費LP30
内容:敵全体に物理攻撃(小)を与える
威力40ダメージ
消費MP6
◆中級技-無双炎車輪/消費LP75
内容:敵全体に物理攻撃(中)を与える
威力150ダメージ
消費MP18
◆上級技-終焉の大斧/消費LP120
内容:敵全体に物理攻撃(大)を与える
威力550ダメージ
消費MP54
-----------------
現在のLPは121。ギリギリ上級技を習得できるぞ……!
『LP120を消費して《終焉の大斧》を習得します。よろしいですか(Y/N)?』
水晶ディスプレイを触れる指先が震える。もう1秒たりとも無駄にできない。
絶対に押し間違えないように、慎重に(Y)を選んでタップする。
『《終焉の大斧》を習得しました』
アナウンス画面を確認したちょうどそのタイミングで
「うあぁあ゛あぁぁ゛あああ゛ッ~~~~!」
「エデンの神様ぁぁっお助けぇぇええ~~~!」
デュカとケルヴィンを守っていた結界がついに解かれる。
群がるようにして一斉に魔獣が襲いかかるも、僕がウロボロスアクスを振り上げるのが先だった!
「すべてを粉砕し闇の彼方へ滅せよ! 斧術上級技――《終焉の大斧》!!」
ウロボロスアクスを思いっきり振り下ろしたその瞬間。
ズドゴォバァァァアァァゴォーーーーンンッ!!!
縦横無尽に暴れまわる閃光がフロアの床を激しく打ち砕き、爆裂した衝撃波とともに魔獣の巣窟の魔獣を1体残らず殲滅する。
ほとんど一瞬のうちの出来事だった。
「……は、はは……すごい! 全部倒しちゃったよ……!」
すべてを飲み込む大蛇の名を冠した通り、この武器の斬撃で形勢を一気に逆転させてしまった。
衝撃的な偉業を目の当たりにして、デュカもケルヴィンもその場で崩れ落ちたまま、大勢の魔獣が倒れた空間を唖然と眺めていた。
「エデンの神様! どうかお願いしますぅっ~~!」
叫び声がするフロアへ飛び込んだ瞬間、思わず目を疑った。
「!!?」
その広い空間は、おびただしいほどの魔獣で埋め尽くされていたからだ。
ギルムやマザーヴァファローのほかにも、ビーストクルーザーの姿まである。
これまで存在した風穴は一切なく、そこはまるで円形闘技場の様相を呈していた。
そして、ここがいわゆる魔獣の巣窟というフロアであることに気付くまで、そう時間はかからなかった。
(くっ……。だから、これまで魔獣にまったく遭遇しなかったんだ!)
最悪なことに、声を上げている人たちは、フロアの中央で多くの魔獣に取り囲まれていた。
とっさに柱の影に隠れると、周囲の様子を素早く観察する。
(え……待って、あの2人って……)
魔獣に取り囲まれている人たちの顔には見覚えがあった。
それがデュカとケルヴィンであることに、すぐ気が付く。
(どうしてこんなところに!?)
が、すぐにその答えに思い当たる。
そうだ! 2人は【鉄血の戦姫】を抜けたんだ!
多分、不届きな盗賊として、違法でダンジョンに入り込んだに違いない。
すべてのダンジョンは登録制で、1つのパーティーしか入れない決まりになっている。
けど、中には違法でダンジョンに忍び込むならず者もいて、先にボス魔獣を倒して、魔光石を手に入れてしまうなんてことも実際にあるみたいだし。
デュカとケルヴィンが何を考えて忍び込んだのかは分からないけど、2人が倫理に背いた行為をしていることだけは確かだった。
「死にたくねぇーよオレッ! 誰かぁっ~~!」
「お願いしますお願いしますぅぅっ! 見逃してくださいぃぃ~~!」
2人は自身の周りに頑丈な檻のような結界を張って、魔獣からの攻撃を凌いでいた。
多分、《ソリッドシェルター》だ。
全ダメージを無効化することができるけど、その効果はずっと続くわけじゃない。
ここで助太刀しなくちゃ、きっと2人は助からない。
でも、ふと思い出す。
あの2人は、セシリアとダコタと一緒に、僕をパーティーから追い出したんだって。
(助ける義理なんてないじゃないか)
2人がここで朽ち果てたとしても僕には関係ない。自業自得だ。
そう思って、フロアを後にしようとするけど……。
ガシャンッ!
「えっ?」
目の前に巨大な魔法扉が下りてきて、退路は完全に断たれてしまう。
ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!
見れば、四方にある残りの出入口にも、魔法扉が下りてしまっていた。
その光景を目の当たりにして、僕は学校の授業で習った内容を思い出した。
魔獣の巣窟に足を踏み入れた冒険者は、その場にいる魔獣すべてを倒さない限り、フロアから出ることはできないんだ!
《瞬間移動》も使うことができないから、もしそのような状況に陥った場合は、パーティー全員が協力して魔獣を倒すようにって、たしかメリアドール先生も言っていた。
だけど、今の僕には仲間と呼べる者はいない……!
デュカとケルヴィンは取り囲まれていて、2人とも魔獣の餌食になるのは時間の問題だった。
(罠だったんだ……)
多分、僕ははぐれたパーティーの1人として認識されたんだろう。
全員をおびき寄せることに成功したから、魔法扉も作動したに違いない。
「やめろぉっ! 来るな、来るな、来るなぁ~~っ!」
「どうかご慈悲を! エデンの神様お願いしますぅぅ~~~!」
ほとんどの魔獣は、フロアの中央で防衛対策を講ずるデュカとケルヴィンに攻撃を繰り返していて、こちらの存在にまだ気付いていなかった。
(ど、どうしよう!?)
性格は置いておいて、デュカもケルヴィンも才能に恵まれた冒険者だ。
その2人がこんな風に窮地に陥っているってことは、これがどれほどヤバい状況かってことなわけで……。
「「ギギギギギイギギッ……!」」
「「ダシャーーーーッ!」」
「「ググギャアァアァアァアァ!」」
魔獣の雄叫びがフロア全体に折り重なるようにして木霊する。
全部で20体……いや、それ以上いるよ……!
(考えなくちゃ! どうやってこの状況を切り抜けられるか、考えないとッ!)
頭を必死で回転させる。
何か、何か必ず手はあるはずだ……。
こういう時のセオリーは全体攻撃で敵を殲滅すること。
真っ先に思い付いたのは、《プラズマオーディン》を乱れ撃ちすることだった。
けど、マザーヴァファローには雷魔法・被ダメージ半減があるから、10発……いや、それ以上撃ち込む必要がある。
(なら、水魔法は?)
水魔法も雷魔法と同じでグループ攻撃が可能だ。
ビーナスのしずくに触れて、素早く水晶ディスプレイに水魔法一覧を表示させる。
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◆初級魔法-フリーズウォーター/消費LP20
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(小)を与える
威力30ダメージ/詠唱時間4秒
消費MP5
◆中級魔法-バブルハウリング/消費LP50
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(中)を与える
威力80ダメージ/詠唱時間6秒
消費MP10
◆上級魔法-ブルーリヴァイアサン/消費LP100
内容:敵1グループに水魔法ダメージ(大)を与える
威力250ダメージ/詠唱時間8秒
消費MP20
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LPが131ある今なら、《ブルーリヴァイアサン》 の習得も可能だけど……。
雷魔法と同じで、敵全体に攻撃を当てられないっていう難点がある。
威力もそこまで期待できないから、これも数を撃たないとマザーヴァファローもビーストクルーザーも殲滅することができない。
残された選択肢は、強力な【攻撃系スキル】で1体ずつ撃破していくことだった。
<片手剣術>上級技である《グラビティサザンクロス》を習得すれば、ここにいるどの魔獣も瞬殺できるに違いない。
でも、1体ずつ撃破していくのは、ほかの魔獣に襲撃される危険と隣り合わせだ。
昨日もそうやって襲われたばかりだし、この手段も最良の選択とは言えないかもしれない。
そんな風に躊躇している間に――。
「ググギャアァアァッ!」
「!?」
ビーストクルーザーの1体がこちらの存在に気付いたらしく、間近まで迫ってきていた。
しかも、その足元には魔法陣が……!
相手はすぐさま《サイレントカッター》を2発撃ち込んでくる。
ヴィーーーンッ!! ヴィーーーンッ!!
「ぐあぁ゛ぁ!?」
とっさに逃げようとするも、後ろは魔法扉で閉ざされていることに気付いて、その攻撃を直に受けてしまう!
「……ッ、ぅぐく……」
幸運なことに即死するようなことはなかったけど、<全魔法・被ダメージ半減>がなかったら多分死んでいたはず……!
「〝聖なる無垢な癒しよ その永遠の輝きにより エデンの加護とともに彼の者の傷を治せ――《ヒールプラス》〟」
魔法ポーチから水晶ジェムを取り出すと、即座に回復魔法を唱えた。
HPを全回復させた後、すぐに立ち上がるも、逃げ場はどこにもないことに気が付く。
目の前のビーストクルーザーは、強靭な8本足を動かしながらジワリジワリとにじり寄って、照準を僕に定めていた。
「ググギャアァアァアァアァ!」
そして、鋭いトゲの連なった巨大な尻尾をフロアの床にドンッ!と叩きつけると、雄叫びを上げて威嚇してくる。
また同じ攻撃を受けたら非常にマズいッ! 迷っているヒマはなかった。
(ここは《ブルーリヴァイアサン》を乱れ撃ちして、運良く敵を殲滅するのを祈るしかない……!)
水晶ディスプレイの操作をするため、目の前のビーストクルーザーを一瞬撒く必要があった。
幸いほかの魔獣は、フロア中央で防戦するデュカとケルヴィンに集中していたから、前方には空白地帯が存在した。
素早さならこっちが勝っている!
そう思った僕は、相手のわずかな隙を突いてそこに目がけて走り始めた。
――その瞬間。
視界にある物が映り込む。
(!? あれは……!)
魔獣が群がる結界の近くに、大蛇が象られた真っ赤な斧が落ちているのが見えた。
すぐに気付く。
それが、デュカがいつも持ち歩いていたウロボロスアクスだってことに。
冒険者の父親から譲り受けた貴重な武器だって、デュカはいつも自慢していた。
多分、防戦している最中に落としてしまったんだろう。
そして、ふとあることを閃く。
(……そうだ! <斧術>は全体攻撃じゃないか!)
こうなれば、イチかバチかだ。僕は進路を変更して駆け出す。
「《アルファウォール》……続けて《風のカーテン》!」
走りながらそう唱えて、敵陣の中へ突っ込んで行く。
こちらの動きに数体の魔獣が気付くも、僕は迷わず走り続けた。
「うおおおおおぉぉぉっーーーー!」
攻撃を受けても構うもんか! とにかく今はアレを手に入れなきゃ!
そう思って、決死の突撃を続けていると……。
「お、お前ッ……!」
「悪魔の子!?」
魔獣に取り囲まれた結界越しから、デュカとケルヴィンの視線が飛んでくる。
2人ともとても驚いた表情をしていた。
けど、今はそんなことには構っていられない!
ウロボロスアクスは、デュカの足元付近に落ちていた。
走りながら、僕はそれを指さして大声で叫ぶ。
「デュカーー! その斧を僕に渡してッーーー!」
一瞬、デュカが意表を突かれた顔をする。
言葉の意味が分からないのか、ケルヴィンも混乱した表情を覗かせた。
でも。
「っ!」
デュカはしゃがみ込んでウロボロスアクスに手を伸ばすと、それを思いっきり僕が駆け出す方角へ向けて投げつける。
この状況でとっさに判断し、信じてくれたんだ!
シュルシュルシュルシュルッ!
フロアの床を滑るようにして運ばれてきた斧を、僕は走りながらがっちりと掴む。
(よしっ!)
あとは、水晶ディスプレイで<斧術>を習得して……――ッ!?
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
突如、なだれ込むように襲いかかってきた3体のマザーヴァファローから、横殴りの《あばれ倒し》を連続で受けてしまい、僕はまたも吹き飛ばされてしまう。
「ぅぐぉっ……!」
なんとかその場で立ち上がろうとするけど、マザーヴァファロー集団の後方では、数体のビーストクルーザーが足元に魔法陣を浮かび上がらせていた。
(マ、マズい……! やられるッ!?)
あとちょっとなのに……! そんなタイミングで、僕は絶体絶命のピンチに陥った。
バックラーを構えて、死すらも覚悟したその時――。
「《ソリッドシェルター》!」
魔獣の雄叫びが折り重なる空間において、そんな叫び声が聞こえてくる。
ズピーーーンッ!
次の刹那、僕の周囲には檻の結界が張り巡らされ、ビーストクルーザーの《サイレントカッター》を間一髪のところで防いでくれる。
一体何が起こったのかが分からず、おそるおそる目を開ければ、ケルヴィンが僕に向けて両手をかざしていた。
守ってくれたんだ……!
そして、自分がウロボロスアクスを落とさずに握ったままであることに気付いた。
(――今ならいける!)
水晶ディスプレイを急いで立ち上げると、無我夢中で操作を行う。
デュカとケルヴィンにはもう時間がほとんど残されていない。
助けられた以上、ここで2人を見捨てるわけにはいかなかった。
LP10を消費して<斧術>のスキルを習得してしまうと、そのまま技一覧も表示する。
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◆初級技-メテオスピン/消費LP30
内容:敵全体に物理攻撃(小)を与える
威力40ダメージ
消費MP6
◆中級技-無双炎車輪/消費LP75
内容:敵全体に物理攻撃(中)を与える
威力150ダメージ
消費MP18
◆上級技-終焉の大斧/消費LP120
内容:敵全体に物理攻撃(大)を与える
威力550ダメージ
消費MP54
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現在のLPは121。ギリギリ上級技を習得できるぞ……!
『LP120を消費して《終焉の大斧》を習得します。よろしいですか(Y/N)?』
水晶ディスプレイを触れる指先が震える。もう1秒たりとも無駄にできない。
絶対に押し間違えないように、慎重に(Y)を選んでタップする。
『《終焉の大斧》を習得しました』
アナウンス画面を確認したちょうどそのタイミングで
「うあぁあ゛あぁぁ゛あああ゛ッ~~~~!」
「エデンの神様ぁぁっお助けぇぇええ~~~!」
デュカとケルヴィンを守っていた結界がついに解かれる。
群がるようにして一斉に魔獣が襲いかかるも、僕がウロボロスアクスを振り上げるのが先だった!
「すべてを粉砕し闇の彼方へ滅せよ! 斧術上級技――《終焉の大斧》!!」
ウロボロスアクスを思いっきり振り下ろしたその瞬間。
ズドゴォバァァァアァァゴォーーーーンンッ!!!
縦横無尽に暴れまわる閃光がフロアの床を激しく打ち砕き、爆裂した衝撃波とともに魔獣の巣窟の魔獣を1体残らず殲滅する。
ほとんど一瞬のうちの出来事だった。
「……は、はは……すごい! 全部倒しちゃったよ……!」
すべてを飲み込む大蛇の名を冠した通り、この武器の斬撃で形勢を一気に逆転させてしまった。
衝撃的な偉業を目の当たりにして、デュカもケルヴィンもその場で崩れ落ちたまま、大勢の魔獣が倒れた空間を唖然と眺めていた。
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「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
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「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
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