31 / 49
第31話
しおりを挟む
「C級ダンジョンクリアおめでとうございます、ナード様! これが今回の初回クリア報酬ヴァルキリーの聖弓ですよ。どうぞ♪」
「どうもありがとうございます!」
煌びやかな聖なる弓を受け取りつつ、受付のお姉さんに頭を下げる。
デュカとケルヴィンと別れた後、僕はさらにダンジョンを降りて、最下層にいるメガリスグリフォンを倒した。
ウロボロスアクスと上帝の盾のおかげで、ほとんど苦労することなく討伐に成功し、こうして無事に城下町へと戻って来たっていうわけだ。
帰りの道中、ずっと2人に言われた言葉が頭の中を駆け巡っていた。
(僕が、勇者様の生まれ変わり……)
それは、ギルド内の換金所でC級魔光石とヴァルキリーの聖弓を換金し終えてからも同じで、その言葉はずっとリフレインしていた。
けど、なんだか周りが騒がしいことに気付いて、ハッと意識を戻す。
「悪魔の子がソロでC級ダンジョンをクリアしたみたいだぞ!」
「実はあの人って、ものすごい人?」
「絶対、チートスキルが覚醒したのよ! かっこいいわ~」
「オイ、誰かあいつをパーティーに誘えって」
「そのうち歴史に名を刻むタイクーンになるんじゃね? 悪魔の子からC級ソロでクリアとか前代未聞じゃん!」
ザワザワと騒ぎ立つ冒険者ギルドを足早に後にする。
(なんか僕の評判も上々みたい)
ちょっとだけ嬉しい。
これまでにないくらい僕を見る周りの目は変わっていた。
今なら声をかければ、誰かパーティーに加わってくれるかもしれないけど、僕はソロの姿勢を崩すつもりはなかった。
それは多分、あの追放劇がトラウマになっているっていう理由が大きい。
デュカとケルヴィンには謝罪されたけど、心の傷が癒えたわけじゃない。
(もう誰かを信じて、裏切られるのはゴメンだ)
それにソロでいた方がその分受け取れる報酬も多いし。
ノエルのためにも、貰える報酬は多いに越したことはないから。
◇
ガチャッ。
「ノエルただいま! お兄ちゃんついにC級ダンジョン攻略したよー!」
元気よくそう声を上げて玄関のドアを開ける。
今日は金貨が100枚以上手に入ったから、市場で普段は買えない豪華な食材を買い込んで帰宅した。
おかげでけっこう遅い時間になってしまっている。
「ノエルー?」
玄関先でそう声を上げるも、ノエルの返事はない。
でも、アパートの外灯は点いているから、朝からずっとベッドで眠ったままっていうわけじゃなさそうだけど……。
少し心配になって、そのままノエルの部屋へ直行することに。
コンコン。
「ノエル? 大丈夫?」
そう声をかけると、ようやくドア越しにノエルの声が返ってくる。
『……あっ、お兄ちゃん……?』
「どうしたの? 体調が悪い?」
『う、うん……。昨日、ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れちゃったみたい』
「えっ……ユグドラシルの葉はちゃんと飲んだよね?」
『お昼に飲んだよ』
「そっか……」
そういえば今朝、ノエルがなんとなくだるそうにしていたのを思い出す。
【プロケッラ風穴】の攻略に頭がいっぱいになっていたばかりに、ノエルの体調にまで気を配れていなかった。
(なにやってるんだ僕は……)
昨日、ノエルの体調が良さそうだったから、すっかり油断してしまっていたんだ。
けど、最近はそんなことが多い。
体調を良さそうにしていた次の日には、とても具合を悪くしたり……。
普段はあまり考えないようにしていたけど、ノエルの体調は年々悪くなっているような気がする。
昔は夜に遠くまで外出することもできたんだけど、最近じゃそれも難しい。
本来なら、冒険者育成学校に通って、青春を謳歌しているような年齢だ。
なのに、ノエルは孤児院でもこのアパートでも、ずっと内にこもって、陽の浴びない生活をずっと続けている。
(ユグドラシルの葉だけじゃダメなんだ。ちゃんと完治させてあげなくちゃ……)
勇者様の生まれ変わりなんて言われて、内心浮かれていた自分が恥ずかしい。
目の前の大切な妹も守れないで、とんでもない話だよ。
グッと拳に力を込めながら、僕は努めて明るくノエルに声をかけた。
「あのさ! 実はお兄ちゃん、今日C級ダンジョンクリアしたんだ! それで報酬もいっぱい入ったから、豪華な食材を買ってきたんだけど。もし食べられそうだったら、一緒にどうかな?」
『……ごめんなさい。今日はちょっと難しいかも……』
「そ、そう……」
『ホントごめんね? お兄ちゃんがせっかくC級ダンジョンクリアしたのに、こんな体調で……』
「いや全然っ! ノエルが気を遣う必要なんてまったくないからさ! 今日はゆっくり休むといいよ」
『うん……。ありがと、お兄ちゃん』
そっとノエルの部屋の前を後にする。
いくら金貨が手に入っても意味はない。
早く一流冒険者の証を手に入れて、グレー・ノヴァへ連れて行かないと……。
目指すはA級ダンジョン踏破。
いよいよ現実味を帯びてきたその目標に、僕は決意を新たにした。
「どうもありがとうございます!」
煌びやかな聖なる弓を受け取りつつ、受付のお姉さんに頭を下げる。
デュカとケルヴィンと別れた後、僕はさらにダンジョンを降りて、最下層にいるメガリスグリフォンを倒した。
ウロボロスアクスと上帝の盾のおかげで、ほとんど苦労することなく討伐に成功し、こうして無事に城下町へと戻って来たっていうわけだ。
帰りの道中、ずっと2人に言われた言葉が頭の中を駆け巡っていた。
(僕が、勇者様の生まれ変わり……)
それは、ギルド内の換金所でC級魔光石とヴァルキリーの聖弓を換金し終えてからも同じで、その言葉はずっとリフレインしていた。
けど、なんだか周りが騒がしいことに気付いて、ハッと意識を戻す。
「悪魔の子がソロでC級ダンジョンをクリアしたみたいだぞ!」
「実はあの人って、ものすごい人?」
「絶対、チートスキルが覚醒したのよ! かっこいいわ~」
「オイ、誰かあいつをパーティーに誘えって」
「そのうち歴史に名を刻むタイクーンになるんじゃね? 悪魔の子からC級ソロでクリアとか前代未聞じゃん!」
ザワザワと騒ぎ立つ冒険者ギルドを足早に後にする。
(なんか僕の評判も上々みたい)
ちょっとだけ嬉しい。
これまでにないくらい僕を見る周りの目は変わっていた。
今なら声をかければ、誰かパーティーに加わってくれるかもしれないけど、僕はソロの姿勢を崩すつもりはなかった。
それは多分、あの追放劇がトラウマになっているっていう理由が大きい。
デュカとケルヴィンには謝罪されたけど、心の傷が癒えたわけじゃない。
(もう誰かを信じて、裏切られるのはゴメンだ)
それにソロでいた方がその分受け取れる報酬も多いし。
ノエルのためにも、貰える報酬は多いに越したことはないから。
◇
ガチャッ。
「ノエルただいま! お兄ちゃんついにC級ダンジョン攻略したよー!」
元気よくそう声を上げて玄関のドアを開ける。
今日は金貨が100枚以上手に入ったから、市場で普段は買えない豪華な食材を買い込んで帰宅した。
おかげでけっこう遅い時間になってしまっている。
「ノエルー?」
玄関先でそう声を上げるも、ノエルの返事はない。
でも、アパートの外灯は点いているから、朝からずっとベッドで眠ったままっていうわけじゃなさそうだけど……。
少し心配になって、そのままノエルの部屋へ直行することに。
コンコン。
「ノエル? 大丈夫?」
そう声をかけると、ようやくドア越しにノエルの声が返ってくる。
『……あっ、お兄ちゃん……?』
「どうしたの? 体調が悪い?」
『う、うん……。昨日、ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れちゃったみたい』
「えっ……ユグドラシルの葉はちゃんと飲んだよね?」
『お昼に飲んだよ』
「そっか……」
そういえば今朝、ノエルがなんとなくだるそうにしていたのを思い出す。
【プロケッラ風穴】の攻略に頭がいっぱいになっていたばかりに、ノエルの体調にまで気を配れていなかった。
(なにやってるんだ僕は……)
昨日、ノエルの体調が良さそうだったから、すっかり油断してしまっていたんだ。
けど、最近はそんなことが多い。
体調を良さそうにしていた次の日には、とても具合を悪くしたり……。
普段はあまり考えないようにしていたけど、ノエルの体調は年々悪くなっているような気がする。
昔は夜に遠くまで外出することもできたんだけど、最近じゃそれも難しい。
本来なら、冒険者育成学校に通って、青春を謳歌しているような年齢だ。
なのに、ノエルは孤児院でもこのアパートでも、ずっと内にこもって、陽の浴びない生活をずっと続けている。
(ユグドラシルの葉だけじゃダメなんだ。ちゃんと完治させてあげなくちゃ……)
勇者様の生まれ変わりなんて言われて、内心浮かれていた自分が恥ずかしい。
目の前の大切な妹も守れないで、とんでもない話だよ。
グッと拳に力を込めながら、僕は努めて明るくノエルに声をかけた。
「あのさ! 実はお兄ちゃん、今日C級ダンジョンクリアしたんだ! それで報酬もいっぱい入ったから、豪華な食材を買ってきたんだけど。もし食べられそうだったら、一緒にどうかな?」
『……ごめんなさい。今日はちょっと難しいかも……』
「そ、そう……」
『ホントごめんね? お兄ちゃんがせっかくC級ダンジョンクリアしたのに、こんな体調で……』
「いや全然っ! ノエルが気を遣う必要なんてまったくないからさ! 今日はゆっくり休むといいよ」
『うん……。ありがと、お兄ちゃん』
そっとノエルの部屋の前を後にする。
いくら金貨が手に入っても意味はない。
早く一流冒険者の証を手に入れて、グレー・ノヴァへ連れて行かないと……。
目指すはA級ダンジョン踏破。
いよいよ現実味を帯びてきたその目標に、僕は決意を新たにした。
129
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる