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第33話 セシリアSIDE
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「つまり、あなたは以前、ナードというあの青年とパーティーを組んでいたのですね?」
「はい。ですけど、やっぱりそのことは関係ないかと――」
セシリアがそう続けようとしたところで、大司祭は真剣な表情でこう割り込んでくる。
「これからお話しする内容は、すべてご内密にお願いします」
「え……」
近くに助祭がいないことを確認すると、大司祭は静かに切り出した。
「実はですね。彼は、ユニークスキルを2つ所持していました」
「2つ?」
ユニークスキルを2つ所持していた?
言葉の意味が分からず、セシリアは頭の中で復唱してしまう。
ユニークスキルはエデンの神から授かるもので、1人につき1つしか受け取ることはできない。
それを2つ持っていたとは、一体どういうことなのか。
そして、続く大司祭の言葉に、セシリアはさらなる衝撃を受ける。
「あの青年――ナード・ヴィスコンティは、勇者フェイトの生まれ変わりである可能性があります」
「は……? 勇者フェイトって、伝説のあの勇者様のことですか?」
「そうです」
セシリアは唖然とした。
あのナードが、勇者様の生まれ変わり?
(あり得ない……あり得ないわッ!)
だって、あのクズは最低なステータスを受け取った役立たずの孤児なのだ、とセシリアは思う。
(どこかの家で奴隷になって、一生終えるのが相応しい身分のはずなのに……!)
ナードが冒険者をやっていることすら、セシリアにとっては許せないことであった。
そのナードが、勇者フェイトの生まれ変わりなどとぶっ飛んだことを言われて、セシリアが黙っていられるはずがなかった。
「大司祭様。お言葉ですが、仰っている意味が分かりかねます。あのナードが勇者様の生まれ変わりなんて、そんなこと……。話が飛躍しすぎていて理解ができませんし、絶対にあり得ません」
「ええ。私もあなたの意見には同意です」
「は、はい……? でしたら、なぜそんなことを!?」
「……」
セシリアがそう問うと、大司祭は再び黙り込んでしまう。
暫しの間、嫌な沈黙が大広間の一室に降り立った。
――やがて。
何かを決意したように、大司祭は口を開く。
「……彼は<アイテムプール>というスキルのほかに、<バフトリガー>というユニークスキルを所持していました」
「<バフトリガー>?」
「最初それを見た時、私も信じられませんでした。これまで何万という者たちの成人の儀式に立ち会ってきましたが、ユニークスキルを2つ所持していたのは、ナード・ヴィスコンティが初めてです。それにあのステータス。水晶板に表示された内容をあなたもご覧になったでしょう?」
セシリアは頷く。
1のオンパレードだったあんなステータスを自分が受け取っていたら、恥ずかしくて生きていけなかったに違いない。
「あれも、勇者伝承と一致するのです」
「あれも? どういうことですか?」
「今から約1,000年前、勇者フェイトは、プチャマチャ大陸にある聖ロストルム帝国の第1皇子として誕生しました。そのことは、セシリアさんもご存じですね?」
「知ってますけど……」
「その後、成人の儀式において勇者フェイトは最強のステータスを授与されて、魔王アビスとの戦いに挑むことになった。それが皆さんが子供の頃から伝え聞いてきた勇者伝承かと思います」
その通りだ、とセシリアは思った。
だから、子供たちは皆、成人の儀式で強力なステータスを受け取ることに憧れるのだ。
当時、冒険者という職業はなかったはずだが、現代人は勇者フェイトに理想の冒険者像を重ねていた。
しかし、続く大司祭の言葉は、そんなセシリアのこれまでの価値観を壊すことになる。
「……ですが、実際はそうではなかったという記述が、聖ロストルム帝国にあるエデン教総本山教会の古文書に残されているという話です」
「なッ……」
「勇者フェイトは今では英雄として語り継がれていますが、当時の彼は、成人の儀式において悪魔の子を言い渡されて国外追放されたと、その古文書には書かれていたというのです」
「!」
あの伝説の勇者フェイトが国外追放されていた!?
しかも、悪魔の子を言い渡されていたなんて……。
これまで信じていたものが、音もなく崩れ去っていく感覚をセシリアは抱く。
「当時、勇者フェイトはまだ皇位に就いておらず、先代の皇帝とその皇后は病で先に亡くなっていたようで、実権は宰相が握っていたようです。彼を追放したのは成人の儀式の結果にかこつけて、自分の立場を確実なものとするためだったのでしょう」
「そんなことが……」
「つまり、勇者フェイトもまた、あの青年と同様に、最低なステータスを授与されていたということです。それから勇者がどのように成長して、魔王を倒すまでに至ったのかは詳しく分かっていません。ですが、一説によると、LPを増やすことのできるユニークスキルを所持していたのではないかと言われています。それも1つではなく、2つ所持していたというのが識者たちの見解です」
「え? ま、待ってください……! なんて仰ったんです? LPを増やすことのできるユニークスキル? そんなもの、この世にあるはずが……」
LPは成人を迎えた後、歳を重ねるごとに減っていくもの、というのが常識だ。
小さい頃から何度も、セシリアはそう教えられてきた。
誰もが等しくLPを失っていき、20代になるとほとんどの者はLP1で過ごすことになる。
これは揺るぎない掟のはずであった。
たとえ伝説の勇者であろうとも、例外はない。
そう考えていたセシリアにとって、大司祭の言葉は認めるわけにはいかないものだった。
弁はさらに熱を帯びていく。
「だって、LPは下がっていくものですよね? だから、成人の儀式を終えたら、エデンの神と自分のステータスに感謝しながら日々を過ごすようにというのが、教会の教えではなかったのですか? 勇者フェイトが、実は悪魔の子だったっていう話も、納得できるものじゃありません。その古文書の記述がそもそもの間違いではありませんか? 勇者様は、最強のステータスを持っていたから、魔王を倒すことができたんです! LPが増えるスキルを持っていたなんて……私は、絶対に認められません!」
なぜだろうか。
この時、セシリアの脳裏には、昨晩ベッドの中でダコタから聞かされた話が甦っていた。
こんなことを認めてはいけないと、頭の中でガンガンと警告が鳴り響いていることにも気付く。
認めてしまえば、これまでのナードに対する優位性が一気に失われるような気がして、セシリアは怖かったのだ。
そんな恐怖心を隠すために、セシリアはさらに勢いよく言葉を続ける。
「仮に、勇者フェイトが悪魔の子を言い渡されて、ユニークスキルを2つ所持していたんだとしても……! それをあのナードに重ねるのは、さすがに暴論と言わざるを得ません! あの男がユニークスキルを2つ所持していたっていう話も、失礼ですけど、大司祭様の見間違いじゃないんですか?」
大司祭に対して、とても失礼なことを口にしているという自覚はあったが、セシリアは自分の主張を止めることができなくなっていた。
一方で大司祭は、彼女が勢いよく捲し立てるそのさまを静かに見守っていたが、やがて首を小さく横に振る。
そして、このタイミングで、本題の続きを口にした。
「……セシリアさん。あなたが私のもとへやって来た理由は、ユニークスキル<豪傑>の調子が最近おかしいということでしたね?」
「……はぁ? そ、そうですけど、それは今なんの関係もなく……」
「いえ。関係あるのです。では、はっきりとお伝えしましょう。<豪傑>の調子がおかしいというのは、あなたの勘違いです。本当は、どこもおかしいなんてことはないのです」
「そ……それはありえませんッ! だって、現に……」
「あなたのパラメーターが以前のように上がらないのは、あのナードという青年とパーティーを解消したことが原因なのですよ」
「!?」
「彼が所持している2つ目のユニークスキル<バフトリガー>は、タイクーンの能力をずば抜けて向上させることができるんです。あなたは、彼とパーティーを組んでいる間、知らずのうちにその恩恵を受けていたのでしょう。<豪傑>の調子がおかしいのではなく、元々の性能がそれなのです」
「……ッ、あ、あり得ないわ……」
言葉を詰まらせるセシリアであったが、心の奥底で覚悟していたことでもあった。
ユニークスキルの調子がおかしいなどという話は、これまで誰からも聞いたことがなかったからだ。
あるとすれば、他人のバフのおかげで自分のパラメーターが上がっていたということ。
それは、セシリアが一番危惧していた答えでもあった。
――そして。
大司祭はさらに残酷な言葉を口にする。
それにより、セシリアは徐々に認めざるを得ない状況へと追い込まれていく。
「ナード・ヴィスコンティは、C級ダンジョンをソロでクリアしたようですね?」
「! どうしてそれを……」
「仕事柄、そういった情報は耳に入ってきます。しかも、つい先日B級ダンジョンのクエストもソロで受注したようです」
「え、B級……ですか!?」
「正直、私も信じられませんでした。だって、セシリアさん。彼はあれほど最低なステータスを受け取ったんですよ? B級ダンジョンにソロで挑めるはずがありません」
LP1。
それがナードが受け取ったステータスだ。
にもかかわらず、どうしてB級ダンジョンのクエストが受注できるのか。
B級ダンジョンにソロで挑むには、LP50以上が必要なのだ。
これまで考えないようにしてきたセシリアであったが、もう疑いようがなかった。
大司祭は、ついにそれを言葉にしてしまう。
「もうお分かりでしょう。つまり、ナード・ヴィスコンティのLPは増えているのです」
「っ……」
「勇者伝承との一致は、これだけではありません。勇者フェイトは1,000年後に再びこの地に現れるという言葉を残して消えています。勇者が去ってから、すでに1,000年の時が経過していますし、あの青年の年齢を考えれば、それにもちょうど一致するのです」
「そ、そんな……」
(あの役立たずのクズが、勇者様の生まれ変わりだなんてッ……!)
これまでセシリアはナードよりも常に優位に立ってきた。
ナードは自分よりも遥かに劣った下級の存在であると、ずっとそう考えてきたのだ。
その考えが、大きく覆されていく……。
その場で膝から崩れ落ちると、セシリアは深い絶望の淵へと追い込まれるのだった。
「はい。ですけど、やっぱりそのことは関係ないかと――」
セシリアがそう続けようとしたところで、大司祭は真剣な表情でこう割り込んでくる。
「これからお話しする内容は、すべてご内密にお願いします」
「え……」
近くに助祭がいないことを確認すると、大司祭は静かに切り出した。
「実はですね。彼は、ユニークスキルを2つ所持していました」
「2つ?」
ユニークスキルを2つ所持していた?
言葉の意味が分からず、セシリアは頭の中で復唱してしまう。
ユニークスキルはエデンの神から授かるもので、1人につき1つしか受け取ることはできない。
それを2つ持っていたとは、一体どういうことなのか。
そして、続く大司祭の言葉に、セシリアはさらなる衝撃を受ける。
「あの青年――ナード・ヴィスコンティは、勇者フェイトの生まれ変わりである可能性があります」
「は……? 勇者フェイトって、伝説のあの勇者様のことですか?」
「そうです」
セシリアは唖然とした。
あのナードが、勇者様の生まれ変わり?
(あり得ない……あり得ないわッ!)
だって、あのクズは最低なステータスを受け取った役立たずの孤児なのだ、とセシリアは思う。
(どこかの家で奴隷になって、一生終えるのが相応しい身分のはずなのに……!)
ナードが冒険者をやっていることすら、セシリアにとっては許せないことであった。
そのナードが、勇者フェイトの生まれ変わりなどとぶっ飛んだことを言われて、セシリアが黙っていられるはずがなかった。
「大司祭様。お言葉ですが、仰っている意味が分かりかねます。あのナードが勇者様の生まれ変わりなんて、そんなこと……。話が飛躍しすぎていて理解ができませんし、絶対にあり得ません」
「ええ。私もあなたの意見には同意です」
「は、はい……? でしたら、なぜそんなことを!?」
「……」
セシリアがそう問うと、大司祭は再び黙り込んでしまう。
暫しの間、嫌な沈黙が大広間の一室に降り立った。
――やがて。
何かを決意したように、大司祭は口を開く。
「……彼は<アイテムプール>というスキルのほかに、<バフトリガー>というユニークスキルを所持していました」
「<バフトリガー>?」
「最初それを見た時、私も信じられませんでした。これまで何万という者たちの成人の儀式に立ち会ってきましたが、ユニークスキルを2つ所持していたのは、ナード・ヴィスコンティが初めてです。それにあのステータス。水晶板に表示された内容をあなたもご覧になったでしょう?」
セシリアは頷く。
1のオンパレードだったあんなステータスを自分が受け取っていたら、恥ずかしくて生きていけなかったに違いない。
「あれも、勇者伝承と一致するのです」
「あれも? どういうことですか?」
「今から約1,000年前、勇者フェイトは、プチャマチャ大陸にある聖ロストルム帝国の第1皇子として誕生しました。そのことは、セシリアさんもご存じですね?」
「知ってますけど……」
「その後、成人の儀式において勇者フェイトは最強のステータスを授与されて、魔王アビスとの戦いに挑むことになった。それが皆さんが子供の頃から伝え聞いてきた勇者伝承かと思います」
その通りだ、とセシリアは思った。
だから、子供たちは皆、成人の儀式で強力なステータスを受け取ることに憧れるのだ。
当時、冒険者という職業はなかったはずだが、現代人は勇者フェイトに理想の冒険者像を重ねていた。
しかし、続く大司祭の言葉は、そんなセシリアのこれまでの価値観を壊すことになる。
「……ですが、実際はそうではなかったという記述が、聖ロストルム帝国にあるエデン教総本山教会の古文書に残されているという話です」
「なッ……」
「勇者フェイトは今では英雄として語り継がれていますが、当時の彼は、成人の儀式において悪魔の子を言い渡されて国外追放されたと、その古文書には書かれていたというのです」
「!」
あの伝説の勇者フェイトが国外追放されていた!?
しかも、悪魔の子を言い渡されていたなんて……。
これまで信じていたものが、音もなく崩れ去っていく感覚をセシリアは抱く。
「当時、勇者フェイトはまだ皇位に就いておらず、先代の皇帝とその皇后は病で先に亡くなっていたようで、実権は宰相が握っていたようです。彼を追放したのは成人の儀式の結果にかこつけて、自分の立場を確実なものとするためだったのでしょう」
「そんなことが……」
「つまり、勇者フェイトもまた、あの青年と同様に、最低なステータスを授与されていたということです。それから勇者がどのように成長して、魔王を倒すまでに至ったのかは詳しく分かっていません。ですが、一説によると、LPを増やすことのできるユニークスキルを所持していたのではないかと言われています。それも1つではなく、2つ所持していたというのが識者たちの見解です」
「え? ま、待ってください……! なんて仰ったんです? LPを増やすことのできるユニークスキル? そんなもの、この世にあるはずが……」
LPは成人を迎えた後、歳を重ねるごとに減っていくもの、というのが常識だ。
小さい頃から何度も、セシリアはそう教えられてきた。
誰もが等しくLPを失っていき、20代になるとほとんどの者はLP1で過ごすことになる。
これは揺るぎない掟のはずであった。
たとえ伝説の勇者であろうとも、例外はない。
そう考えていたセシリアにとって、大司祭の言葉は認めるわけにはいかないものだった。
弁はさらに熱を帯びていく。
「だって、LPは下がっていくものですよね? だから、成人の儀式を終えたら、エデンの神と自分のステータスに感謝しながら日々を過ごすようにというのが、教会の教えではなかったのですか? 勇者フェイトが、実は悪魔の子だったっていう話も、納得できるものじゃありません。その古文書の記述がそもそもの間違いではありませんか? 勇者様は、最強のステータスを持っていたから、魔王を倒すことができたんです! LPが増えるスキルを持っていたなんて……私は、絶対に認められません!」
なぜだろうか。
この時、セシリアの脳裏には、昨晩ベッドの中でダコタから聞かされた話が甦っていた。
こんなことを認めてはいけないと、頭の中でガンガンと警告が鳴り響いていることにも気付く。
認めてしまえば、これまでのナードに対する優位性が一気に失われるような気がして、セシリアは怖かったのだ。
そんな恐怖心を隠すために、セシリアはさらに勢いよく言葉を続ける。
「仮に、勇者フェイトが悪魔の子を言い渡されて、ユニークスキルを2つ所持していたんだとしても……! それをあのナードに重ねるのは、さすがに暴論と言わざるを得ません! あの男がユニークスキルを2つ所持していたっていう話も、失礼ですけど、大司祭様の見間違いじゃないんですか?」
大司祭に対して、とても失礼なことを口にしているという自覚はあったが、セシリアは自分の主張を止めることができなくなっていた。
一方で大司祭は、彼女が勢いよく捲し立てるそのさまを静かに見守っていたが、やがて首を小さく横に振る。
そして、このタイミングで、本題の続きを口にした。
「……セシリアさん。あなたが私のもとへやって来た理由は、ユニークスキル<豪傑>の調子が最近おかしいということでしたね?」
「……はぁ? そ、そうですけど、それは今なんの関係もなく……」
「いえ。関係あるのです。では、はっきりとお伝えしましょう。<豪傑>の調子がおかしいというのは、あなたの勘違いです。本当は、どこもおかしいなんてことはないのです」
「そ……それはありえませんッ! だって、現に……」
「あなたのパラメーターが以前のように上がらないのは、あのナードという青年とパーティーを解消したことが原因なのですよ」
「!?」
「彼が所持している2つ目のユニークスキル<バフトリガー>は、タイクーンの能力をずば抜けて向上させることができるんです。あなたは、彼とパーティーを組んでいる間、知らずのうちにその恩恵を受けていたのでしょう。<豪傑>の調子がおかしいのではなく、元々の性能がそれなのです」
「……ッ、あ、あり得ないわ……」
言葉を詰まらせるセシリアであったが、心の奥底で覚悟していたことでもあった。
ユニークスキルの調子がおかしいなどという話は、これまで誰からも聞いたことがなかったからだ。
あるとすれば、他人のバフのおかげで自分のパラメーターが上がっていたということ。
それは、セシリアが一番危惧していた答えでもあった。
――そして。
大司祭はさらに残酷な言葉を口にする。
それにより、セシリアは徐々に認めざるを得ない状況へと追い込まれていく。
「ナード・ヴィスコンティは、C級ダンジョンをソロでクリアしたようですね?」
「! どうしてそれを……」
「仕事柄、そういった情報は耳に入ってきます。しかも、つい先日B級ダンジョンのクエストもソロで受注したようです」
「え、B級……ですか!?」
「正直、私も信じられませんでした。だって、セシリアさん。彼はあれほど最低なステータスを受け取ったんですよ? B級ダンジョンにソロで挑めるはずがありません」
LP1。
それがナードが受け取ったステータスだ。
にもかかわらず、どうしてB級ダンジョンのクエストが受注できるのか。
B級ダンジョンにソロで挑むには、LP50以上が必要なのだ。
これまで考えないようにしてきたセシリアであったが、もう疑いようがなかった。
大司祭は、ついにそれを言葉にしてしまう。
「もうお分かりでしょう。つまり、ナード・ヴィスコンティのLPは増えているのです」
「っ……」
「勇者伝承との一致は、これだけではありません。勇者フェイトは1,000年後に再びこの地に現れるという言葉を残して消えています。勇者が去ってから、すでに1,000年の時が経過していますし、あの青年の年齢を考えれば、それにもちょうど一致するのです」
「そ、そんな……」
(あの役立たずのクズが、勇者様の生まれ変わりだなんてッ……!)
これまでセシリアはナードよりも常に優位に立ってきた。
ナードは自分よりも遥かに劣った下級の存在であると、ずっとそう考えてきたのだ。
その考えが、大きく覆されていく……。
その場で膝から崩れ落ちると、セシリアは深い絶望の淵へと追い込まれるのだった。
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