復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
33 / 49

第33話 セシリアSIDE

しおりを挟む
「つまり、あなたは以前、ナードというあの青年とパーティーを組んでいたのですね?」

「はい。ですけど、やっぱりそのことは関係ないかと――」

 セシリアがそう続けようとしたところで、大司祭は真剣な表情でこう割り込んでくる。

「これからお話しする内容は、すべてご内密にお願いします」

「え……」

 近くに助祭がいないことを確認すると、大司祭は静かに切り出した。

「実はですね。彼は、ユニークスキルを2つ所持していました」

「2つ?」

 ユニークスキルを2つ所持していた?
 言葉の意味が分からず、セシリアは頭の中で復唱してしまう。

 ユニークスキルはエデンの神から授かるもので、1人につき1つしか受け取ることはできない。
 それを2つ持っていたとは、一体どういうことなのか。

 そして、続く大司祭の言葉に、セシリアはさらなる衝撃を受ける。

「あの青年――ナード・ヴィスコンティは、勇者フェイトの生まれ変わりである可能性があります」

「は……? 勇者フェイトって、伝説のあの勇者様のことですか?」

「そうです」

 セシリアは唖然とした。
 あのナードが、勇者様の生まれ変わり? 

(あり得ない……あり得ないわッ!)

 だって、あのクズは最低なステータスを受け取った役立たずの孤児なのだ、とセシリアは思う。

(どこかの家で奴隷になって、一生終えるのが相応しい身分のはずなのに……!)

 ナードが冒険者シーカーをやっていることすら、セシリアにとっては許せないことであった。

 そのナードが、勇者フェイトの生まれ変わりなどとぶっ飛んだことを言われて、セシリアが黙っていられるはずがなかった。

「大司祭様。お言葉ですが、仰っている意味が分かりかねます。あのナードが勇者様の生まれ変わりなんて、そんなこと……。話が飛躍しすぎていて理解ができませんし、絶対にあり得ません」

「ええ。私もあなたの意見には同意です」

「は、はい……? でしたら、なぜそんなことを!?」

「……」

 セシリアがそう問うと、大司祭は再び黙り込んでしまう。
 暫しの間、嫌な沈黙が大広間の一室に降り立った。

 ――やがて。
 何かを決意したように、大司祭は口を開く。

「……彼は<アイテムプール>というスキルのほかに、<バフトリガー>というユニークスキルを所持していました」

「<バフトリガー>?」

「最初それを見た時、私も信じられませんでした。これまで何万という者たちの成人の儀式に立ち会ってきましたが、ユニークスキルを2つ所持していたのは、ナード・ヴィスコンティが初めてです。それにあのステータス。水晶板に表示された内容をあなたもご覧になったでしょう?」

 セシリアは頷く。

 1のオンパレードだったあんなステータスを自分が受け取っていたら、恥ずかしくて生きていけなかったに違いない。

「あれも、勇者伝承と一致するのです」

「あれも? どういうことですか?」

「今から約1,000年前、勇者フェイトは、プチャマチャ大陸にある聖ロストルム帝国の第1皇子として誕生しました。そのことは、セシリアさんもご存じですね?」

「知ってますけど……」

「その後、成人の儀式において勇者フェイトは最強のステータスを授与されて、魔王アビスとの戦いに挑むことになった。それが皆さんが子供の頃から伝え聞いてきた勇者伝承かと思います」

 その通りだ、とセシリアは思った。
 だから、子供たちは皆、成人の儀式で強力なステータスを受け取ることに憧れるのだ。

 当時、冒険者という職業はなかったはずだが、現代人は勇者フェイトに理想の冒険者像を重ねていた。

 しかし、続く大司祭の言葉は、そんなセシリアのこれまでの価値観を壊すことになる。

「……ですが、実際はそうではなかったという記述が、聖ロストルム帝国にあるエデン教総本山教会の古文書に残されているという話です」

「なッ……」

「勇者フェイトは今では英雄として語り継がれていますが、当時の彼は、成人の儀式において悪魔の子フォーチュンデビルを言い渡されて国外追放されたと、その古文書には書かれていたというのです」

「!」

 あの伝説の勇者フェイトが国外追放されていた!?
 しかも、悪魔の子を言い渡されていたなんて……。

 これまで信じていたものが、音もなく崩れ去っていく感覚をセシリアは抱く。

「当時、勇者フェイトはまだ皇位に就いておらず、先代の皇帝とその皇后は病で先に亡くなっていたようで、実権は宰相が握っていたようです。彼を追放したのは成人の儀式の結果にかこつけて、自分の立場を確実なものとするためだったのでしょう」

「そんなことが……」

「つまり、勇者フェイトもまた、あの青年と同様に、最低なステータスを授与されていたということです。それから勇者がどのように成長して、魔王を倒すまでに至ったのかは詳しく分かっていません。ですが、一説によると、LPを増やすことのできるユニークスキルを所持していたのではないかと言われています。それも1つではなく、2つ所持していたというのが識者たちの見解です」

「え? ま、待ってください……! なんて仰ったんです? LPを増やすことのできるユニークスキル? そんなもの、この世にあるはずが……」

 LPは成人を迎えた後、歳を重ねるごとに減っていくもの、というのが常識だ。
 小さい頃から何度も、セシリアはそう教えられてきた。

 誰もが等しくLPを失っていき、20代になるとほとんどの者はLP1で過ごすことになる。
 これは揺るぎない掟のはずであった。

 たとえ伝説の勇者であろうとも、例外はない。
 そう考えていたセシリアにとって、大司祭の言葉は認めるわけにはいかないものだった。

 弁はさらに熱を帯びていく。

「だって、LPは下がっていくものですよね? だから、成人の儀式を終えたら、エデンの神と自分のステータスに感謝しながら日々を過ごすようにというのが、教会の教えではなかったのですか? 勇者フェイトが、実は悪魔の子だったっていう話も、納得できるものじゃありません。その古文書の記述がそもそもの間違いではありませんか? 勇者様は、最強のステータスを持っていたから、魔王を倒すことができたんです! LPが増えるスキルを持っていたなんて……私は、絶対に認められません!」

 なぜだろうか。
 この時、セシリアの脳裏には、昨晩ベッドの中でダコタから聞かされた話が甦っていた。
 
 こんなことを認めてはいけないと、頭の中でガンガンと警告が鳴り響いていることにも気付く。
 認めてしまえば、これまでのナードに対する優位性が一気に失われるような気がして、セシリアは怖かったのだ。

 そんな恐怖心を隠すために、セシリアはさらに勢いよく言葉を続ける。

「仮に、勇者フェイトが悪魔の子を言い渡されて、ユニークスキルを2つ所持していたんだとしても……! それをあのナードに重ねるのは、さすがに暴論と言わざるを得ません! あの男がユニークスキルを2つ所持していたっていう話も、失礼ですけど、大司祭様の見間違いじゃないんですか?」

 大司祭に対して、とても失礼なことを口にしているという自覚はあったが、セシリアは自分の主張を止めることができなくなっていた。

 一方で大司祭は、彼女が勢いよく捲し立てるそのさまを静かに見守っていたが、やがて首を小さく横に振る。
 そして、このタイミングで、本題の続きを口にした。

「……セシリアさん。あなたが私のもとへやって来た理由は、ユニークスキル<豪傑>の調子が最近おかしいということでしたね?」

「……はぁ? そ、そうですけど、それは今なんの関係もなく……」

「いえ。関係あるのです。では、はっきりとお伝えしましょう。<豪傑>の調子がおかしいというのは、あなたの勘違いです。本当は、どこもおかしいなんてことはないのです」

「そ……それはありえませんッ! だって、現に……」

「あなたのパラメーターが以前のように上がらないのは、あのナードという青年とパーティーを解消したことが原因なのですよ」

「!?」

「彼が所持している2つ目のユニークスキル<バフトリガー>は、タイクーンの能力をずば抜けて向上させることができるんです。あなたは、彼とパーティーを組んでいる間、知らずのうちにその恩恵を受けていたのでしょう。<豪傑>の調子がおかしいのではなく、元々の性能がそれなのです」

「……ッ、あ、あり得ないわ……」

 言葉を詰まらせるセシリアであったが、心の奥底で覚悟していたことでもあった。
 ユニークスキルの調子がおかしいなどという話は、これまで誰からも聞いたことがなかったからだ。

 あるとすれば、他人のバフのおかげで自分のパラメーターが上がっていたということ。
 それは、セシリアが一番危惧していた答えでもあった。

 ――そして。

 大司祭はさらに残酷な言葉を口にする。
 それにより、セシリアは徐々に認めざるを得ない状況へと追い込まれていく。

「ナード・ヴィスコンティは、C級ダンジョンをソロでクリアしたようですね?」

「! どうしてそれを……」

「仕事柄、そういった情報は耳に入ってきます。しかも、つい先日B級ダンジョンのクエストもソロで受注したようです」

「え、B級……ですか!?」

「正直、私も信じられませんでした。だって、セシリアさん。彼はあれほど最低なステータスを受け取ったんですよ? B級ダンジョンにソロで挑めるはずがありません」

 LP1。
 それがナードが受け取ったステータスだ。

 にもかかわらず、どうしてB級ダンジョンのクエストが受注できるのか。
 B級ダンジョンにソロで挑むには、LP50以上が必要なのだ。

 これまで考えないようにしてきたセシリアであったが、もう疑いようがなかった。
 大司祭は、ついにそれを言葉にしてしまう。

「もうお分かりでしょう。つまり、ナード・ヴィスコンティのLPは増えているのです」

「っ……」

「勇者伝承との一致は、これだけではありません。勇者フェイトは1,000年後に再びこの地に現れるという言葉を残して消えています。勇者が去ってから、すでに1,000年の時が経過していますし、あの青年の年齢を考えれば、それにもちょうど一致するのです」

「そ、そんな……」

(あの役立たずのクズが、勇者様の生まれ変わりだなんてッ……!)

 これまでセシリアはナードよりも常に優位に立ってきた。

 ナードは自分よりも遥かに劣った下級の存在であると、ずっとそう考えてきたのだ。
 その考えが、大きく覆されていく……。

 その場で膝から崩れ落ちると、セシリアは深い絶望の淵へと追い込まれるのだった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

処理中です...