復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

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第35話 セシリアSIDE

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「はぁっ!?」

 思わず口に含んだスープをこぼしながらダコタが声を荒げる。

「おい、今なんて言った?」

「だから、またナードとパーティーを組むのはどうかしらって言ったの」

「なに言ってんだ? あんな役立たずとまたパーティー組むってのか!?」

「でも、C級ダンジョンをソロでクリアしたんでしょ? クズでも少しは役に立つわ」

「待てよセシリア! これ以上、評判落としてどーすんだよ! 俺らが今、巷でなんて呼ばれてるか知らねーわけじゃねぇだろが!」

 ほら吹き、期待外れ、ニセモノ……。
 すべてA級ダンジョンをクリアできなかった【鉄血の戦姫アイアンヴァナディス】に浴びせられた言葉だ。

 それでいて、これまでの横柄な態度が災いしたのか。
 2人は、どの冒険者シーカーからも声をかけられることなく、ギルドで孤立を深めていた。

 デュカとケルヴィンが抜けてしまったのも大きい。
 あの2人は、北シルワ冒険者育成学校で天才と謳われた神童でもあり、評判も高かった。

 その彼らが抜けたということはタイクーンに問題がある、と周りが考えたとしても無理はない。

 1日でも早くA級ダンジョンをクリアしなければならないにもかかわらず、【鉄血の戦姫】の評判は地に落ちてしまっていたのだ。

 ここで、追放したナードをパーティーに戻すようなことになれば、一生笑いの種にされるのがオチだ、とダコタは思う。
 それは、自分たちの力ではどうすることもできなかったと、認めることになるわけだから。

「俺は絶対に反対だぞ!」

 朝食も早々に切り上げて、ダコタは席から立ち上がる。

「ダコタ。あなたはナードがどうして強くなったのか、知りたいとは思わないの?」

「んなもん知りたくもねぇぜ! どうせズルしてるに決まってんだ!」

「でも、ズルなんて本当にあるのかしら?」

「……ッ」

 ダコタも気付いていた。
 ズルという言葉で片付けるには、ナードの成長っぷりはあまりにも常識から外れすぎている、と。

 何か超常的な力にでも目覚めない限り、LP1の冒険者がC級ダンジョンをソロでクリアできるはずがないと、分かっているのである。

「だから、ナードをパーティーにもう一度戻せば、その理由も分かるかもしれないじゃない? ひょっとしたら、それを私たちに応用させることだってできるかもしれないわ」

「け、けどよ……」

 セシリアの提案はもっともだったが、ダコタは納得がいかなかった。
 両手で銀色の短髪を逆立てると、セシリアの顔を一瞥してこう告げる。

「セシリア。お前、やっぱりナードに気があんだろ?」

「なに?」

「昔からそうだったじゃねぇか! お前はずっとあの寄生虫と一緒だったよな!」

「はぁ? ちょっと待って、あり得ないんだけど。何度も言ってるでしょ? あいつと一緒にいたのは、お父様とお母様の言いつけだったから。全部金のためよ」

「ハッ、どうだかな! 俺がナードをぶちのめしてると、お前はいつも駆けつけてきたじゃねーか!」

「だから、あれもすべてパフォーマンスだったのよ。知ってたでしょ? ナードに気があるとか、吐き気がすること言わないでくれる? 私が惹かれるのは強い男だけよ。ダコタ、あなた以外にいないわ」

「分かるもんか」

「なに不貞腐れてるのよ」

「……」

 どうしてこう男っていう生き物は面倒なのかしら、とセシリアは思った。

(あの役立たずのゴミが恋愛対象なわけないでしょ。ホント、何も見えてないわね)

 だが、ダコタのその鈍感さは、今のセシリアにとっては好都合であった。
 昨日、大司祭に言われた言葉が脳裏に甦ってくる。





「――この杖は、セシリアさんもご存じの通り、相手のユニークスキルを交換することができます。本来ならば、成人の儀式で希望するユニークスキルを所持できなかった者同士が、お互いに同意の上で交換する際に使用する物です。これを使うには、C級以上の結界力の強い魔光石を上段にはめて、聖者の法衣を着る必要があります。1つの杖につき、1度だけ使用することが可能です」

「じゃあ、魔光石と聖者の法衣を揃えれば、原則使用可能……ってことですか?」

 セシリアが何を言いたいのかが分かったのだろう。大司祭はゆっくりと頷く。

「ありがとうございます、大司祭様。この恩は一生忘れませんわ」





(……つまり、同意を得なくても使用可能ってことね)

 とりかえの杖を使って、ナードのユニークスキルを奪う。
 そのためには、まずナードの警戒を解く必要があった。

 だから、ナードをパーティーに再び入れようと、セシリアはダコタに提案したのだ。

 だが、本当のことはまだ口にしていない。
 最初、昨日大司祭に会ったことも言おうとしたセシリアであったが……。

(ダメね。このことをダコタに話せば、それを自分が使うと言い出しかねないわ)

 とりかえの杖を使用できるチャンスは一度きりである。
 ダコタにその機会を奪われたら、もう二度とこんなチャンスは巡ってこないに違いない、とセシリアは考えていた。

 ダコタもまた、強欲にまみれた男であるということをセシリアは十分に理解していた。
 自分と似ていたからこそ、彼に惹かれた部分もあったわけだが。

(ここらが潮時かもね)

 ナードを陥れることとダコタを天秤にかけて、それでダコタに傾くほどセシリアは熱を上げていなかった。
 結局、一時の感情のまま、ここまでズルズルと来てしまったにすぎない。

 世界中を探せば、ダコタよりも魅力的な男など山ほどいることだろう。
 協力的でない以上、セシリアが彼にこだわる理由はもはや存在しなかった。

「どうしても嫌なの?」

「当たり前だ! あんな奴をまたパーティーに加えたところで、A級ダンジョンをクリアできるはずがねぇ! まだデュカとケルヴィンに戻ってもらった方が現実味があるぜ」

「そう……。なら、仕方ないわ」

「んだよ?」

「私たち、パーティー解消ね」

「は? おいッ、本当に俺よりもあいつを選ぶのか!?」

「少なくとも今のダコタよりは、ナードの方が役に立ちそうだから」

「ふ……ふざけんよッ! あんな奴のどこがいいんだ!」

 ガシャンッ!

 ダコタがテーブルを思いっきり蹴り飛ばし、食器が音を立てて揺れる。
 しかし、それでセシリアが態度を変えるようなことはなかった。

「俺は絶対に認めねーからな!」

 そう言い放つと、ダコタはセシリアのもとを去るのだった。
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