迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
38 / 90
2章

第12話

しおりを挟む
 グリューゲル修道院の帰り道。
 ゼノとモニカは、修道士が手配した馬車に揺られながら、マスクスの町へと帰っていた。

 結局、あの後、自らの私情でモニカに濡れ衣を着せたことを認めたポーラは、モニカにかけた〔オラクル・ロック〕の制限を解除した。

 馬車を手配した修道士によると、王都の総本山教会に今回の件の手紙を書くという話であった。
 近々、グリューゲル修道院には調査が入るようだ。

 ゼノは、ワゴンから橙色に染まる田園風景を眺めていた。
 ふと、隣りに座るモニカに視線を向ける。

「……」

 修道院を出てからモニカはずっと黙ったままだ。
 何かを1人で考えているように、ゼノの目には映った。

 ――やがて。

 マスクスの入口が見てきたところで、ゼノはモニカと一緒に下車する。
 御者に銅貨を6枚手渡し、馬車が走り去ってしまうと、後には2人だけが残された。 

「着いちゃいましたね」

「そうだな」

「本当にいろいろとありがとうございました。これ、昨日渡せなかった報酬です」

「うん」

 今度こそ、ゼノはモニカから報酬を受け取る。

 すると。

 本当にすべてが終わってしまったようで、ゼノの中に寂しさのようなものが一気に込み上げてくる。
 それを誤魔化すように、ゼノは早口で訊ねた。

「でも、よかったのか? 修道院に残らなくてさ。シスターたちからも、これまでのことはきちんと謝られたんだろ?」

「はい。あの人たちもちゃんと話してみると、そんなに悪い人じゃないって分かりました」

「だったら……」

「いいんです。わたしは自分の居場所を……ちゃーんと見つけましたから♪」

「居場所?」

 ゼノが首を傾げると、モニカがいきなり腕に抱きついてくる。

「はぁい♪ のお隣りです♡」

「お……おいっ!?」

「実は、これまでずっ~~とガマンしてたんです! ゼノ様にこうやってくっ付きたくて。だから、もういいですよね?」

「いいって何がっ?」

「殿方に惹かれたのなんて……生まれて初めての経験なんです。あんなカッコいい姿を見せられちゃったら、もう自分の気持ちに嘘はつけません。ゼノ様……好きです♡」

「!?」

「んぅ……」

 顔を赤らめながら、モニカがぷるっぷるっに潤った唇を差し出してくる。

「ちょ、ちょっと待ったッ!!」

「あのぉ……。乙女に、恥をかかせないでください……」

「いやいやっ! いきなり展開がおかしいだろ!?」

 たしかに、別れるのは寂しいと思ったが、こんなことを望んでいたわけじゃない、とゼノは思う。

(モニカとは、依頼主とクエストを受注する冒険者って関係だったはずで……どうしてこうなった!?)

 両肩を掴むと、ゼノは彼女に冷静に言い聞かせる。

「いや、あのさ……。気持ちは嬉しいんだけど、俺には好きな女性がいて……。これ、昨日も言ったよな?」

「もちろん、分かってますよぉ~。魔女さんですよね?」

「だったら、なんでっ?」

「べつに、わたしは二番目でもいいんです。愛人枠ということで♪」

「そんな枠は設けたくない!」

「まぁ、でも……今回は分かりました。ゼノ様にもキスをするには心の準備がありますよね?」

「心の準備とか、そういう問題じゃないんだが」

「んふふっ、ゼノ様は案外照れ屋なんですね♡ そこもなんか可愛いです~♪」

 そう言いながら、モニカはゼノの腕にぴったりとくっ付いてくる。

(む、胸が当たってるんですけどぉ……!?)

 横乳のボリュームはまさに国宝級だ。

 これまでほとんど意識してこなかったゼノだったが、改めてモニカの胸に目を向けると、彼女が量感たっぷりの巨乳持ちであることに気付く。

(……いや、何を考えているんだ。俺は)

「居場所を見つけたって……まさか、ずっと傍にいるつもりなのか?」

「はい♪ もちろんですよ~。ゼノ様と一緒に暮らしちゃいます♡」

「そんな余裕、うちの宿舎には……」

 そう言いかけたところで、ゼノはふと気付く。

(……あるなぁ。それもかなりの部屋が)

「ゼノ様が、どこで寝泊まりしているのかはもう調査済みです。なので、余裕はないなんて言えませんよね?」

「……なんか、めちゃくちゃ怖いんだが。というか、いつ調査したんだよ!?」

「あ、そんな態度でいーんですか? わたしがフォーゲラングの村に居づらくなったっていうのは、事実なんですからね」

「いや……。その件は本当に悪いと思ってるんだけど……」

「だったら、いいですよね? 一緒に暮らしても。わたし、これまでずっと宿屋で寝泊まりをしてきたんで、マイホームって憧れがあったんですよ♪」

「マイホームじゃない! ただ俺はギルドから借りてるだけだっ!」

 ゼノの声が耳に入っていないのか、モニカは夢見心地で話し続ける。

「それと……ゼノ様と一緒にパーティーを組んで冒険者もやっちゃいます♪」

「は……? ちょっと待ってくれっ……! さすがに、話が早すぎて追いついていけない……」

「だって、ゼノ様は〈回復術〉を使えないじゃないですかぁ~? だから、ヒーラーのわたしとパーティーを組むメリットはあると思うんです」

「いや、そうだろうけど……。でも、そんな簡単に自分の人生決めていいのか? 冒険者なんかよりも、もっとやりたいことがあるんじゃ……」

 依頼を受けてもらった見返りとして、モニカがそう提案しているように思えて、ゼノはその申し出を素直に受け入れることができない。
 
 が。

 モニカは、ゆっくりと首を横に振る。

「……違いますよ、ゼノ様。そんな簡単に、じゃないんです」

「え?」

「わたしはこの一週間近く、自分のすべきことについてずっと考えてきました。そして今日、わたしはようやくその答えを見つけたんです。ゼノ様……。わたしは、貴方のお役に立つために生まれてきたんです。大げさでもなんでもなく、ゼノ様と出会えたことは運命なんだって……。わたしにはそう思えたんです。だから、わたしは決めました。ゼノ様のお傍にずっといたいって」

「モニカ……」

「ちょっと重たいかもしれないですけど、あはは……。でも、これがわたしの出した答えなんです」

 さすがにここまで言われてしまうと、ゼノはそれ以上拒むことができなかった。
 モニカの想いが、はっきりと伝わってきたのだ。

「……分かった、もう何も言わないよ。今日から俺とパーティーを組もう。それで、一緒に暮らして……。お師匠様を救う手助けをしてほしい」

「はい♪ 聖女として、精一杯ゼノ様のお役に立ちたいと思います」

「ありがとう」

「魔女さんを助け出した際は、ゼノ様の愛人としてご挨拶させていただきますね♡」

「いや、それはいろいろと誤解を招きそうだからやめてくれ……」

 マスクスの入口に、鮮やかな西日が差し込む。
 2人はそんな景色を背景に、しっかりと握手をかわした。

「これからはずっ~~と、ゼノ様と一緒です。えへへ♪」

 そんな風に満面の笑みをこぼすモニカを目にして、これでよかったのかもしれないな、とゼノはふと思った。

 彼女が一歩前に踏み出したことが分かって、ゼノは心から嬉しく感じるのであった。



 ◆



 アスター王国の王都サーガ。
 
 山岳地帯の天上にそびえ立つアスター城の、煌びやかな玉座の間。
 上段の黄金の椅子に腰を掛けるのは、6年前に15歳の若さで女王の座に就いたギュスターヴだ。

 ブロンド色の艶やかなロングヘアと色白で整った上品な美貌は、まさに絶世の美女と呼ぶに相応しいオーラがあった。

 すらっとのびた長い脚を組み替え、すべてを見通したような妖艶な瞳で、真下の者に目を向けている。

 彼女は、華やかな装飾とアスター王国の国旗が模様されたサーコートの上にブルーのマントを羽織っており、その気品に満ち溢れたさまは、まさに一国の君主そのものであった。

 ギュスターヴの眼下には、頭を低く下げて敬礼する貴族の男がいる。
 
 ゼノの父親ウガンだ。
 その傍らには、兄であるアーロンの姿もあった。

「陛下、お呼びでしょうか?」

「ハワード卿。よく来てくれたな。そなたと話したいことがあってな」

「はい。なんでしょうか?」

「その息子……アーロンについてなのだが、実は処罰に悩んでおってな」

「処罰っ……? こいつが何かしましたか……?」

「うむ。率直に言うが、魔導官の一員として宮廷の役に立っていないのだ」

「!」

「これまでの3年間、大した結果も残せずにおる。徴税においては、《疾走》の魔法で運んでいる最中、大量の金貨をバラまいて失ったと聞いておる。議会の議事録への書き込みも、《達筆》の魔法を上手く扱えず、作成することができなかったという話もあるな」

「アーロン、貴様……!」

「す、すみません、父様っ……!」

 アーロンがウガンに深々と頭を下げる。

「大変申し訳ございません、陛下……。この愚息のせいで多大なるご迷惑をおかけしました。お好きに、処罰を与えていただければと思います……!」

「いや、ハワード卿よ。処罰を与えようと思っているのは、何もアーロンだけではないのだ。そなたなら、分かっておるのではないか?」

 冷ややかな目をギュスターヴが向けてくる。
 一瞬ゾッとしつつ、ウガンは女王へ訊ねた。

「……と、おっしゃいますと?」

「そなたが治める領地の奉納品の質は、年々低下しておる。また、領民からも悪政を指摘する声や不満が届いているのは知っておるな? このままだと、そなたの爵位を格下げすることになるぞ」

「っ……し、承知いたしました! すぐに状況を改善し、今後そのような粗相がないように、精一杯努めたいと思います……!」

 ここでギュスターヴは目を細めてウガンに口にする。

「そなた。たしか、次男がおったようだな? なんでも、生まれながらにして魔力値9999を授かり、大賢者の素質があったとか」

「え、えぇ……」

「仮にもし、その者が生きておったのなら……。そなたらの粗相もカバーするほどの働きを見せてくれていたかもしれんな。実に残念だ」

「っ……」

 ウガンもアーロンも屈辱的な表情を浮かべる。
 
「まぁよい。今回の件は大目に見よう。だが、次はないぞハワード卿。我は父王のように甘くはない。至らぬ点が改善しないと判断した瞬間、その場できつく処罰する」

 ギュスターヴは冷酷にそう一言告げる。
 それに、ウガンもアーロンも戦々恐々とするのであった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...