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1. 油断大敵
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うっ、ううっ……。
僕は意識を取り戻した。
『あっ、しらない天井だ』
そして、顔をよこに向けると……、
こっちは知ってる。ワンコのお菊だ。
すると僕と目があったお菊は、フンフンと鼻をならしながら顔を近づけてきた。
「んっ、どうしたの?」
べ~ろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ……。
「わわっ、ちょっ、お菊ストップ!ストップ! ステイ!ステイ!」
「ハハハハハ、ようやくお目覚めのようだね」
その言葉に、寝かされていた寝台から僕は反射的に身体を起こした。
「あれ、鈴木先生? ということは、ここって朝に寄った……」
「そのとおり。ここはギルド内の帯同動物検査室さ。君はダンジョン内で倒れているところを、たまたま通りかかった探索者に救助され運ばれてきたんだ」 (ギルド=日本ダンジョン協会)
「えっ、救護室とかじゃなくて、ここにですか?」
「君のパートナーであるお菊号が君のそばを離れなくてね。救護室に人間以外は入れないから、仕方なくここに運ばれたというわけさ」
「ああ~」
お菊は寝台のよこで嬉しそうに尻尾を振っている。
そうか、ずっとお菊が守っていてくれたんだな。
僕はお菊の頭をやさしくなでた。
「一応、吉田さんにも連絡しておいたから、そろそろこちらに見える頃じゃないかな。ここを出たら必ず病院に行って精密検査を受けるんだよ」
「はい、わかりました。本当に何から何まですいません」
「いいんだよ。君みたいにコツコツ真面目にやってくれる新人探索者を保護し、大事に育てていこうというのが、このギルドの基本方針だからね」
「それで、救助していただいた方は今どちらに?」
「うん、もう帰ってあるはずだよ」
「お礼も言っていないので、お会いしたかったのですが」
「そっちの方にも吉田さんから連絡が行っているはずだよ。詳しいことは吉田さんに聞くんだね」
「そうなんですね」
2学期を明日に控えた夏休みの最終日。
僕は日課をこなすような感覚で、朝から東京ダンジョンに潜っていた。
お菊の的確なサポートもあって、ダンジョン探索は順調に進んでいた。
モンスターを倒して得られる魔石の他に、魔鉱石もいくつか獲得していた。
「よーしお菊、よく見つけたね。こいつを採取したら今日は終わりにするから」
僕は通路脇にある岩によじ登ると、
飛び出している魔鉄鋼の周りにピッケルのブレードをあてて削り取っていく。
集中して採取作業を進めていると、
「わうわう! わうわう!」
いつのまにか、足元まできていたお菊が突然吠えだした。
僕は一旦手を止め、警戒しながら周りや天井を見渡してみたが、
これといって変わった様子はない。
お菊は耳が良いから、遠くにいる人の気配を感じたのかな?
それなら急がなければならない。
採掘中に限ったことではないけど、ダンジョン内では緊急時を除いて、
他の探索者との接触は極力避けるべきなんだ。
残念なことだが、
探索者の中には、たかりや盗み、恐喝をしてくるような連中もいるのだ。
「わかったよお菊。なるべく急ぐからね!」
「わうわう! わうわう! わうわう! わうわう!」
足に縋るようにして吠えまくるお菊。
僕はそんなお菊をなかば無視すると、大きく振りかぶったピッケルをダンジョンの壁に叩きつけた。
すると次の瞬間、
――ボコッ! ドシャドシャガラガラガラガラガラガラ……
突然、目の前の壁が崩れたと思ったら、
「うおわ! あ˝あ! あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
僕とお菊は、吸い込まれるように隠し縦穴へ落ちていった。
僕が発見されたのが4階層ということだから、3つ下の階層まで一気に落ちたことになる。
穴の深さはおよそ20m。
レベル2になったとはいえ、僕の身体は普通の人より若干強い程度。
落下の途中や着地する際は、お菊が結界を張ってかばってくれたんだと思う。
そうでなければ、僕は今ごろ車にひかれたカエルのようになっていただろう。
それにしても、運よく救助されたから良かったようなものの、よく無事に生還できたよな僕……。(遠い目)
――というのが今回の顛末でした。
ダンジョンは1階層といえども、決して油断してはいけないということだね。うん。
僕の名前は林 吉十16歳。
東京都内の白王学園高校に通う、ごく普通の高校生だ。
あ、いや、ごく普通とはちょっと言い難いかな。
ほら、どのクラスにも一人はいるでしょう。どんくさそうなちっこいデブ。
それが僕なのです。
こんな容姿のせいで中学生の時は散々な目にあってきた。
いわゆる『イジメ』というやつだ。
僕がいじめを受けていても止めてくれる人なんて誰もいない。担任の先生に相談したところ、一度だけだったが注意はしてくれた。しかし「よくも先公にチクリやがったな!」と今度は隠れてやられるようになった。それでも先生に訴えてはいたけど、「犯人がわからないのでは対処のしようがないな」と、きっぱり突き放され、逆に「家庭環境が悪いせいじゃないのか」と探りを入れられるような始末。要は先生も忙しかったのだろう。『お前にばかりかまってる暇はないんだ』と暗に言われているような気がした。そのあげくに不登校となり、出席日数がギリギリのところで学校に呼び戻されはしたが、だからといって教室に戻る勇気なんてない。結局のところが保健室登校。長期間休んでいたため勉強もかなり遅れていた。それでもなんとか拾ってくれる高校を探し、建前ばかりの試験と面接を経て、この春から白王学園高校に通いだしたのだ。
この学園は通信制のクラスもあるようなところなので、校則なんかは割とゆるめ。
髪の毛の色が変わっていようが、耳にピアスがついていようが、ドが過ぎなければ注意を受けることもない。
そんな校風だからか、うちの学園にはたくさんの『令和ギャルさま』がいらっしゃるのだ。
女子生徒の半分がギャルさま。
そういっても過言ではない教室の中はいつも賑やか。
『ViVi』や『JELLY』、『egg』といったギャル雑誌を広げ、それを数人囲んで騒いでいたり、
デコされたネイルチップを机の上にれ並べ、『どうよ』と品評会のように披露している者もいる。
かと思えば、
『それってどっから出した?』
そう言いたくなるような大きな鏡を出し、しきりに前髪をいじっていたり。
ギャルの皆さんって、本当に自由奔放なんだね。ハハハッ。
僕は意識を取り戻した。
『あっ、しらない天井だ』
そして、顔をよこに向けると……、
こっちは知ってる。ワンコのお菊だ。
すると僕と目があったお菊は、フンフンと鼻をならしながら顔を近づけてきた。
「んっ、どうしたの?」
べ~ろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ……。
「わわっ、ちょっ、お菊ストップ!ストップ! ステイ!ステイ!」
「ハハハハハ、ようやくお目覚めのようだね」
その言葉に、寝かされていた寝台から僕は反射的に身体を起こした。
「あれ、鈴木先生? ということは、ここって朝に寄った……」
「そのとおり。ここはギルド内の帯同動物検査室さ。君はダンジョン内で倒れているところを、たまたま通りかかった探索者に救助され運ばれてきたんだ」 (ギルド=日本ダンジョン協会)
「えっ、救護室とかじゃなくて、ここにですか?」
「君のパートナーであるお菊号が君のそばを離れなくてね。救護室に人間以外は入れないから、仕方なくここに運ばれたというわけさ」
「ああ~」
お菊は寝台のよこで嬉しそうに尻尾を振っている。
そうか、ずっとお菊が守っていてくれたんだな。
僕はお菊の頭をやさしくなでた。
「一応、吉田さんにも連絡しておいたから、そろそろこちらに見える頃じゃないかな。ここを出たら必ず病院に行って精密検査を受けるんだよ」
「はい、わかりました。本当に何から何まですいません」
「いいんだよ。君みたいにコツコツ真面目にやってくれる新人探索者を保護し、大事に育てていこうというのが、このギルドの基本方針だからね」
「それで、救助していただいた方は今どちらに?」
「うん、もう帰ってあるはずだよ」
「お礼も言っていないので、お会いしたかったのですが」
「そっちの方にも吉田さんから連絡が行っているはずだよ。詳しいことは吉田さんに聞くんだね」
「そうなんですね」
2学期を明日に控えた夏休みの最終日。
僕は日課をこなすような感覚で、朝から東京ダンジョンに潜っていた。
お菊の的確なサポートもあって、ダンジョン探索は順調に進んでいた。
モンスターを倒して得られる魔石の他に、魔鉱石もいくつか獲得していた。
「よーしお菊、よく見つけたね。こいつを採取したら今日は終わりにするから」
僕は通路脇にある岩によじ登ると、
飛び出している魔鉄鋼の周りにピッケルのブレードをあてて削り取っていく。
集中して採取作業を進めていると、
「わうわう! わうわう!」
いつのまにか、足元まできていたお菊が突然吠えだした。
僕は一旦手を止め、警戒しながら周りや天井を見渡してみたが、
これといって変わった様子はない。
お菊は耳が良いから、遠くにいる人の気配を感じたのかな?
それなら急がなければならない。
採掘中に限ったことではないけど、ダンジョン内では緊急時を除いて、
他の探索者との接触は極力避けるべきなんだ。
残念なことだが、
探索者の中には、たかりや盗み、恐喝をしてくるような連中もいるのだ。
「わかったよお菊。なるべく急ぐからね!」
「わうわう! わうわう! わうわう! わうわう!」
足に縋るようにして吠えまくるお菊。
僕はそんなお菊をなかば無視すると、大きく振りかぶったピッケルをダンジョンの壁に叩きつけた。
すると次の瞬間、
――ボコッ! ドシャドシャガラガラガラガラガラガラ……
突然、目の前の壁が崩れたと思ったら、
「うおわ! あ˝あ! あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
僕とお菊は、吸い込まれるように隠し縦穴へ落ちていった。
僕が発見されたのが4階層ということだから、3つ下の階層まで一気に落ちたことになる。
穴の深さはおよそ20m。
レベル2になったとはいえ、僕の身体は普通の人より若干強い程度。
落下の途中や着地する際は、お菊が結界を張ってかばってくれたんだと思う。
そうでなければ、僕は今ごろ車にひかれたカエルのようになっていただろう。
それにしても、運よく救助されたから良かったようなものの、よく無事に生還できたよな僕……。(遠い目)
――というのが今回の顛末でした。
ダンジョンは1階層といえども、決して油断してはいけないということだね。うん。
僕の名前は林 吉十16歳。
東京都内の白王学園高校に通う、ごく普通の高校生だ。
あ、いや、ごく普通とはちょっと言い難いかな。
ほら、どのクラスにも一人はいるでしょう。どんくさそうなちっこいデブ。
それが僕なのです。
こんな容姿のせいで中学生の時は散々な目にあってきた。
いわゆる『イジメ』というやつだ。
僕がいじめを受けていても止めてくれる人なんて誰もいない。担任の先生に相談したところ、一度だけだったが注意はしてくれた。しかし「よくも先公にチクリやがったな!」と今度は隠れてやられるようになった。それでも先生に訴えてはいたけど、「犯人がわからないのでは対処のしようがないな」と、きっぱり突き放され、逆に「家庭環境が悪いせいじゃないのか」と探りを入れられるような始末。要は先生も忙しかったのだろう。『お前にばかりかまってる暇はないんだ』と暗に言われているような気がした。そのあげくに不登校となり、出席日数がギリギリのところで学校に呼び戻されはしたが、だからといって教室に戻る勇気なんてない。結局のところが保健室登校。長期間休んでいたため勉強もかなり遅れていた。それでもなんとか拾ってくれる高校を探し、建前ばかりの試験と面接を経て、この春から白王学園高校に通いだしたのだ。
この学園は通信制のクラスもあるようなところなので、校則なんかは割とゆるめ。
髪の毛の色が変わっていようが、耳にピアスがついていようが、ドが過ぎなければ注意を受けることもない。
そんな校風だからか、うちの学園にはたくさんの『令和ギャルさま』がいらっしゃるのだ。
女子生徒の半分がギャルさま。
そういっても過言ではない教室の中はいつも賑やか。
『ViVi』や『JELLY』、『egg』といったギャル雑誌を広げ、それを数人囲んで騒いでいたり、
デコされたネイルチップを机の上にれ並べ、『どうよ』と品評会のように披露している者もいる。
かと思えば、
『それってどっから出した?』
そう言いたくなるような大きな鏡を出し、しきりに前髪をいじっていたり。
ギャルの皆さんって、本当に自由奔放なんだね。ハハハッ。
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