この結婚に、恋だの愛など要りません!! ~必要なのはアナタの子種だけです。

若松だんご

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第5話 間違った攻防戦。2 (従者 * 侍女視点)

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 「えっ? じゃあ出してないんですかっ?」

 「出してない」

 そのムスッとした答えに、思わず天を仰ぎ「ジーザス」と呟いてしまう。

 「何やってるんですか。女なんていくらでも抱いてきたでしょう?」

 なにをどうして失敗したんだ、我が主は。

 「あんな風に泣き叫ばれては、出るものも引っ込む。萎える。今まで抱いてきた女は『痛い』と絶叫しなかったからな」

 ふてくされたように、そっぽを向いたまま答えられた。
 はあ?
 何言い出すんだ、この人は。
 呆れかけて、ふと思い至る。

 「もしかして、陛下。生娘とヤるのは初めてですか?」

 「当たり前だろう。娼婦に処女などいない」

 なるほど。商売女しか知らないのか。
 ん? ってことはまさか。

 「ねえ、まさかとは思うけど、前戯ナシ……なんてことはないよね?」

 娼婦は、特に戦場にいる娼婦の場合、複数の男を相手にしなくてはいけない関係上、手早く男が射精できるようにするための手練手管を持っている。萎えたままの男をあっという間に天国へと導く、そういう技だ。男は、女の身体を貪りたければ好きにすればいいが、逆に、何もしなくてもその技で奉仕され、絶頂を味合わせてもらえる。前戯ナシでも文句は言われない。
 閨での睦言も知らなかった主だ。まさかとは思うけど……。

 「『前戯』とは、なんだ?」

 やっぱりーっ! やってなかったのかぁっ!
 こんな予感、当たらなきゃよかったのに。勘のいい自分が恨めしい。

 「あのさ、陛下。仮にも王妃さまは処女だったわけだし、こういうことは初めてなんだから、イロイロしてあげなくっちゃいけないんだよ」

 「そうなのか?」

 「そうなのっ!」

 即答。

 「いい? 処女ってものは、商売女と違って、身体も硬く潤ってないから、優しく愛してあげて、それからことに及ばなきゃ」

 「愛してあげるとは、どういうことだ? 挿れるだけではダメなのか?」

 「ダメッ!」

 再び即答。
 というか、俺、どうしてこんな閨講義してるんだ?
 一瞬浮かんだツッコミめいた疑問は即座に打ち消しとく。考えたら負けだ。

 「最初は他愛もない会話から、口づけ。口だけじゃないよ、身体中のいろんなところを触ったり口づけたり。反応を見ながら少しづつね。緊張してるだろう身体から力が抜けるように、とろけるようにしてやるんだ」

 自分が女を抱く時はどうだったかな。なんて思い出しながら話していく。

 「反応がよくなったら、あそこをたっぷり愛撫してあげて。それでなくても処女の孔は硬いんだから、指や舌でほぐしてあげなきゃ」

 「指や、……舌? 『愛撫』?」

 なに驚いてるんだよ。

 「そ、愛撫。指や舌。孔だけじゃないよ。その上にある、小さな突起。それもじゅうぶんに弄ってあげてよ。そこがプックリ膨らんで腫れてきたら、感じてる証拠。そしたら、どれだけ濡れてるか、孔のなかに指を挿れて確かめるんだ」

 「濡れる?」

 「女は感じると濡れるの。濡れないままの挿入は、傷口をこすられるように、火がついたように痛いんだって」

 これは受け売り。それに、濡れてない膣への挿入は男も気持ちよくない。

 「あ、あと、処女が前戯だけでイクとか、挿れただけでイクとかいうの、あれ、ウソだから」

 娼婦たちが口癖のように言う「イク」。実際は、そう簡単なものではないらしい。って、これも受け売り。娼婦は、その膣の動きも自在に操れるらしく、それっぽく蠢かせて叫んで喘いで、男の興奮を高めるんだとか。

 「とりあえず、一気に挿れるんじゃなくって、王妃さまの様子を見ながらね。それでなくても破瓜は辛いものなんだから、優しい言葉をかけてあげながら、ゆっくり進めるんだ」

 間違っても、一気に貫くもんじゃない。

 「一気はダメなのか?」

 「ダメッ!」

 「むう。だが、すでにやってしまっていたら、どうしたらいい?」

 ……やったのかよ。
 それも前戯ナシで。破瓜の痛みを知らない俺でも、本気で王妃さまに同情する。
 大きなため息を漏らしたくなったが、グッとガマン。

 「とりあえず。次はやめてあげなよ」

 「わかった」

 素直な方ではあるんだよな、うちの陛下は。

 「抽送も、王妃さまの反応を見ながらね。気持ちよくさせるために、口づけたり、胸を吸ってあげたりしながらやるといいよ。あとは、孔の上にある花芽をいじってあげるとか」

 「あの女の胸はデカくていいぞ」

 ……知るかよ。へんなところでノロけるな。

 「とまあ、こういう感じだけど。しばらくは控えておいた方が良さそうだね」

 「どうしてだ?」

 「あのさ、叫ぶほどの痛みを与えといて、さあ今日やれって拷問でしょ!? 少し冷却期間をおいたほうがお互いのためだよ」

 王妃さまにとって、性交が恐ろしいものになってなければいいけど。この先、何度も子が出来るまで陛下と交わらなきゃいけないんだし。
 そのあたり、あの侍女、オルガに確認しておくか。
 オルガに会う口実が出来るのはうれしいが、なんで自分が主の閨事のために心を砕かねばならないのか。軽く理不尽さを感じる。

*     *     *     *

 「それでね、わたくしあまりの痛さに泣き叫んでしまったの」

 姫さまの言葉に、軽く言葉を失う。
 破瓜に痛みが伴うことを、この主は知らなかったのだろうか。

 「あの、姫さま、『初夜』がどういうものか、ご存知ですわよね」

 おそるおそる訊ねてみる。

 「知ってるわよ。陛下に挿れてもらい、出していただくのでしょう?」

 バカにしないで。そう目で訴えられる。……が。
 思わず「ジーザス」と呟き、天を仰いでしまう。

 「もしかして、前戯もナシに挿れられたのですか?」

 「『前戯』ってなに?」

 オーマイガー! 誰か、この無知なる夫婦に閨事を教えてあげてくださいまし。
 って、それは侍女たる私の役目か。

 「あのですね、姫さま。挿れて、出す。それは間違っておりませんが、それまでにもイロイロとやることがあるんでございますよ」

 「そうなの?」

 「そうなんですっ!」

 即答。

 「男性は、それこそ興奮さえすれば、いつだって貫けるほどそそり立たせることが出来ますが、女はそうはいきません。男性に愛されることで、性感を高め、濡れることで挿入しやすい身体になるんです」

 「濡れる?」

 「ええ、濡れるんでございます」

 どこが? 具体的に訊かれるのは恥ずかしかったので、たたみかけるように話を続ける。

 「姫さまがタップリ濡れて、たくさん感じたほうが子が授かりやすくなるんですよ」

 これは受け売り。イクと子どもを孕みやすい……らしい。だから、子が欲しくない場合は、なるべくイカないほうがいいという。あくまでウワサだけど。なにしたって、デキちゃうときはデキちゃうもんね。
 っと、話がそれた。

 「子がデキるようになるなら、濡れたほうがいいわね……」

 姫さまが、ブツブツと思案しながら呟く。
 真面目な方なのよね、うちの姫さまは。それが必要なことだとわかれば、恥ずかしいことであっても、全力で取り組む。

 「それに、濡れていたほうが、痛みは減るんでございますよ」

 「痛みが?」

 姫さまの重暗い顔が少し明るくなる。もしかすると、次もあの痛い目にあうのかと、閨事を恐れていたのかもしれない。

 「それに、二回目ともなれば、いくらか痛みは軽減されます」

 中出しはされてないみたいだけど、破瓜はすんでいる。じゅうぶんな愛撫さえ受ければ、痛みはかなり軽減される……ハズ。
 とはいえ、昨日の今日で抱かれるのは難しいだろう。孕むのに一番良かった日からも、外れてきている。次の月のものが来てから、あらためて挑戦したほうがよさそうだ。
 そのあたり、向こうさんにも伝えたほうがいいわね。
 しばらく寝所を共にしないこと。それと、次はタップリ愛撫してやれ、クソッたれ。女をイカせて、アンアン言わせてなんぼだろ、男ってヤツはよ。出せばいいってもんじゃないのよ、このヤリ○ン野郎っ!
 ……って、いけない、いけない。つい本音がポロポロ出てしまうわね。
 とりあえず、あちらの窓口になってくださってる、従者のルシアンさまに、それとなく伝えておきましょう。彼なら、きっとうまく取り計らってくださるはずよ。
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