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第13話 夜明けの悲喜こもごも。 (王妃 * 陛下 * 王妃の視点)
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腰が重い。
清らかな朝の陽ざしが部屋に満ちている。
その部屋の、一人で眠るには大きすぎる寝台の上で、かすかに身じろぎする。
乱れたリネン。手を伸ばすと、そこに、かすかな温もりが残っている気がした。
……陛下。
昨夜の庭園。
オルガの情事を見てしまった私は、そのあと陛下と出会ってしまい、そのまま身を交わした。
子を成すのにふさわしい日ではない。
わかっていたけど、そのムダになる子種を受け入れてしまった。
だって。
……すごく、気持ちよかったのだもの。
自分の指で触れるのとは違う。先日の挿れただけの交わりとも違う。
もったいないなんて思わなかった。逆に、もっと欲しいとすら思ってしまった。
だから。
だから、陛下に部屋まで運ばれて、もう一度交わってしまった。
交わって、気持ちよくなって、そのまま陛下にすがるようにして眠ってしまった。
陛下も、そんなわたくしを抱きしめ、一緒にいてくださった。
朝になって、陛下はご自分の部屋に戻られてしまったけれど、その前に受けた口づけが、ボンヤリと身体に熾火のような熱さを残す。
また、抱いてくださらないかしら。
挿入のとき、陛下のそれはとても大きくて、少し痛かったけれど、それでも受け入れた後は、半端なく気持ちよかった。濡れていたおかげかしら。痛みより快楽の方が大きかった。突き上げられる快感から逃れられないことのほうが苦しかったぐらい。
初めてのときは、痛くて二度としたくないと思ったけれど、今は違う。子がデキるデキないよりも、またあの快楽を味わいたい。
不思議。
今まで陛下のことを、契約相手程度にしか思っていなかったのに、今は愛しくてたまらない。夫婦になれたことを、神に感謝したい気分。
* * * *
最高の一夜だった。
そう思ったのは、明け方、あの女の寝所を離れたときだった。
夫婦として、正しい営みをしたと思っている。互いに快楽を求めるように身体を交え、愛し合った。
庭での情事は、ルシアンのものを見て興奮した衝動からだったが、二度目は違う。あの女を抱きたい、愛したいという感情からくるものだった。
なぜ、庭で自慰行為にふけっていたのかは知らない。だが、あの場にあの女がいたことで、思わぬ快楽を得ることに成功した。
ルシアンから当分はつつしめと言われたのに、その日の夜に抱いているとは。
まさかの展開に、自分でも驚く。
本当は、朝の興奮を鎮めるためにも、もう一度抱いておきたかったが、夜明け前に自室に戻りたかったので、グッとこらえた。なんとなくだが、この一夜のことを、ルシアンに知られたくなかったのだ。部屋で、普通に眠ったふりをして、夜が明けきるのを待つ。
目を閉じて、思い出すのはあの柔らかな肢体。朝の別れの時、名残惜しそうに伸ばされた細い指が触れた感覚。
黎明の空が白く晴れ渡り、鳥のさえずりが聞こえはじめる。
「陛下、起きていらっしゃいますか?」
遠慮がちな叩扉の音とともに、ルシアンが入ってくる。
今目が覚めたばかりのような顔をして、大きく背伸びをする。
着替えを手伝わせ、真新しいシャツに袖を通す。
「今日の予定は?」
「本日は、少々の謁見と、ご城下へのパレードが予定されています」
ああ、そうか。王妃を城下の者たちにお披露目するためのパレードだ。当然ながら、あの女も参加する。
どんな顔をして現れるのだろうな。
まさか、結婚式のときのような、ツンとすました顔はしていないだろう。だからといって、あの夜のような目の下を赤く染め抜いた色っぽさはないだろうが。
恥ずかしがるか? それとも?
愛らしいあの声で「陛下」と、鈴を転がすかのように呼ばれたら、冷静でいられる自信はないな。
「陛下?」
クラヴァットと結びに目の前に立ったルシアンが、不審な顔をした。
いかん、いかん。
ゆるみかけた頬を、ムッと引き締める。
* * * *
今日は、確か城下にパレードに出る日だったわね。
そんなことを思いながら、ゆっくりと身体を起こす。
ということは、わたくし、陛下にお会いすることになるのかしら。
……どんな顔して会えばいいの?
昨夜のことを思い出して、一人、顔が熱くなる。
微笑む? それとも無表情で?
ああ、でも、笑ったとしても、ニヤケてはダメよ。あくまで、優雅に典雅に。だって、皆に観られるのだもの。はしたない顔だけはやっちゃダメよ。
それに、ドレス。
今さら変更は出来ないけれど、それでも、一番いいわたくしになっておきたい。皆に見られることよりも、陛下の下す評価のほうが気になるわ。
特別美しい容姿はしていないけれど、それでもキレイだと思われたい。
髪だって、ツヤが出るほどくしけずっておいたほうがいいかしら。
となると、早く起きたほうがよさそうね。
オルガに頼んで髪を……。
「あっ……!」
動いたはずみで、トプンと脚の間に、なにかがあふれた。
「あ、あ、ああ……」
ヌルッとしたそれに、思わずそのまま座り込む。
「おはようございます姫さま、お目覚めでしょうか……って、姫さまっ?」
洗面用具と水差しを持って入ってきたオルガが、手のなかのものを放り出して駆け寄ってきた。
「大丈夫でございますかっ? おかげんでもっ……?」
心配そうに、肩をつかまれる。
「あっ、オルガッ……」
わたくしも必死になって彼女にすがる。身を動かすたび、体の奥からゴポッとこぼれ落ちる。
「こっ、子種が、あっ……!」
トロトロとあふれ出す子種。その未知なる感覚に、目に涙が浮かぶ。
「子種……?」
今さらながらにわたくしが裸であることに、オルガが気づいた。
そして、彼女の視線が朝の光に照らされた、乳白色のぬめりに釘付けになった。
清らかな朝の陽ざしが部屋に満ちている。
その部屋の、一人で眠るには大きすぎる寝台の上で、かすかに身じろぎする。
乱れたリネン。手を伸ばすと、そこに、かすかな温もりが残っている気がした。
……陛下。
昨夜の庭園。
オルガの情事を見てしまった私は、そのあと陛下と出会ってしまい、そのまま身を交わした。
子を成すのにふさわしい日ではない。
わかっていたけど、そのムダになる子種を受け入れてしまった。
だって。
……すごく、気持ちよかったのだもの。
自分の指で触れるのとは違う。先日の挿れただけの交わりとも違う。
もったいないなんて思わなかった。逆に、もっと欲しいとすら思ってしまった。
だから。
だから、陛下に部屋まで運ばれて、もう一度交わってしまった。
交わって、気持ちよくなって、そのまま陛下にすがるようにして眠ってしまった。
陛下も、そんなわたくしを抱きしめ、一緒にいてくださった。
朝になって、陛下はご自分の部屋に戻られてしまったけれど、その前に受けた口づけが、ボンヤリと身体に熾火のような熱さを残す。
また、抱いてくださらないかしら。
挿入のとき、陛下のそれはとても大きくて、少し痛かったけれど、それでも受け入れた後は、半端なく気持ちよかった。濡れていたおかげかしら。痛みより快楽の方が大きかった。突き上げられる快感から逃れられないことのほうが苦しかったぐらい。
初めてのときは、痛くて二度としたくないと思ったけれど、今は違う。子がデキるデキないよりも、またあの快楽を味わいたい。
不思議。
今まで陛下のことを、契約相手程度にしか思っていなかったのに、今は愛しくてたまらない。夫婦になれたことを、神に感謝したい気分。
* * * *
最高の一夜だった。
そう思ったのは、明け方、あの女の寝所を離れたときだった。
夫婦として、正しい営みをしたと思っている。互いに快楽を求めるように身体を交え、愛し合った。
庭での情事は、ルシアンのものを見て興奮した衝動からだったが、二度目は違う。あの女を抱きたい、愛したいという感情からくるものだった。
なぜ、庭で自慰行為にふけっていたのかは知らない。だが、あの場にあの女がいたことで、思わぬ快楽を得ることに成功した。
ルシアンから当分はつつしめと言われたのに、その日の夜に抱いているとは。
まさかの展開に、自分でも驚く。
本当は、朝の興奮を鎮めるためにも、もう一度抱いておきたかったが、夜明け前に自室に戻りたかったので、グッとこらえた。なんとなくだが、この一夜のことを、ルシアンに知られたくなかったのだ。部屋で、普通に眠ったふりをして、夜が明けきるのを待つ。
目を閉じて、思い出すのはあの柔らかな肢体。朝の別れの時、名残惜しそうに伸ばされた細い指が触れた感覚。
黎明の空が白く晴れ渡り、鳥のさえずりが聞こえはじめる。
「陛下、起きていらっしゃいますか?」
遠慮がちな叩扉の音とともに、ルシアンが入ってくる。
今目が覚めたばかりのような顔をして、大きく背伸びをする。
着替えを手伝わせ、真新しいシャツに袖を通す。
「今日の予定は?」
「本日は、少々の謁見と、ご城下へのパレードが予定されています」
ああ、そうか。王妃を城下の者たちにお披露目するためのパレードだ。当然ながら、あの女も参加する。
どんな顔をして現れるのだろうな。
まさか、結婚式のときのような、ツンとすました顔はしていないだろう。だからといって、あの夜のような目の下を赤く染め抜いた色っぽさはないだろうが。
恥ずかしがるか? それとも?
愛らしいあの声で「陛下」と、鈴を転がすかのように呼ばれたら、冷静でいられる自信はないな。
「陛下?」
クラヴァットと結びに目の前に立ったルシアンが、不審な顔をした。
いかん、いかん。
ゆるみかけた頬を、ムッと引き締める。
* * * *
今日は、確か城下にパレードに出る日だったわね。
そんなことを思いながら、ゆっくりと身体を起こす。
ということは、わたくし、陛下にお会いすることになるのかしら。
……どんな顔して会えばいいの?
昨夜のことを思い出して、一人、顔が熱くなる。
微笑む? それとも無表情で?
ああ、でも、笑ったとしても、ニヤケてはダメよ。あくまで、優雅に典雅に。だって、皆に観られるのだもの。はしたない顔だけはやっちゃダメよ。
それに、ドレス。
今さら変更は出来ないけれど、それでも、一番いいわたくしになっておきたい。皆に見られることよりも、陛下の下す評価のほうが気になるわ。
特別美しい容姿はしていないけれど、それでもキレイだと思われたい。
髪だって、ツヤが出るほどくしけずっておいたほうがいいかしら。
となると、早く起きたほうがよさそうね。
オルガに頼んで髪を……。
「あっ……!」
動いたはずみで、トプンと脚の間に、なにかがあふれた。
「あ、あ、ああ……」
ヌルッとしたそれに、思わずそのまま座り込む。
「おはようございます姫さま、お目覚めでしょうか……って、姫さまっ?」
洗面用具と水差しを持って入ってきたオルガが、手のなかのものを放り出して駆け寄ってきた。
「大丈夫でございますかっ? おかげんでもっ……?」
心配そうに、肩をつかまれる。
「あっ、オルガッ……」
わたくしも必死になって彼女にすがる。身を動かすたび、体の奥からゴポッとこぼれ落ちる。
「こっ、子種が、あっ……!」
トロトロとあふれ出す子種。その未知なる感覚に、目に涙が浮かぶ。
「子種……?」
今さらながらにわたくしが裸であることに、オルガが気づいた。
そして、彼女の視線が朝の光に照らされた、乳白色のぬめりに釘付けになった。
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