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25.溺れるように愛されたい
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チュク。チュクチュク。
ヌチ。ヌチヌチ、クチュ。
いやらしい水音が寝室に響く。
「あっ、ンっ、ふぁっ……!」
同時に、あたしの漏らす声も。
あたし、こんな声、出るんだ。こんな声、漫画とかの誇張だって思ってたのに。
「ああっ……!」
胸を強く吸われ、ひときわ大きな嬌声と、腰が反った。そして。
「あっ、やっ、あっ、アアッ……」
あたしの下着の中に潜り込んだ課長の指が、グチっと濡れた音を立てた。
「ここ、気持ちいいのか?」
「わ、わかりませ、ンンッ!」
触れられてるのは、あたしの膣口。持ち主のあたしだって、そんなに触ったことないのに。
「アッ、いっ、ああっ、ンッ、そこぉ……!」
グチグチ、ヌチヌチ。
課長の指は執拗にそこをこする。
こするだけじゃない。
「ヒィン……ッ!」
グプ。
中にも入る。
「痛いか?」
「そ、それは平気……、アァン!」
確認だけすると、指が前後に動く。
「アッ、や、ダメですっ」
その動き、なんかヘン!
「ダメじゃない。気持ちよければ、そのまま感じていろ」
「そんなこと言ったってぇ、あっ、ああっ、んっ」
頭、おかしくなるっ! 息、熱い! うまく吸えないっ!
「真白、もう少しだけ力を抜け」
「む、無理ですっ! あぁんっ!」
力なんて入れてるかどうか、それすらわかんないっ!
「――仕方ないな」
へ?
スルスルと脱がされるあたしのおパンツ。――って。
(うぎゃあああっ! ナニアレ!)
脱がすため持ち上げられた腰。脱げていくおパンツと脚の間。つながる透明の――糸?
「濡れてるな」
そうですね!
あたし、あんな糸引いちゃってるぐらい濡れてますね!
そんな確認するように言わなくても、よくわかっておりますよ!
恥ずかしさで、頭爆発しそう。もうイヤ。死にたい。
「もう少し濡らしておくか」
ほへ?
「ひゃあっ、かか、課長っ!?」
持ち上げられた腰。その間に課長の顔が沈む。
「ああっ、そ、そんなとこっ、汚ぃ……、ひあぁあっ!」
舐めないで! そんなとこ舐めないで! お願いだから舐めないで!
「汚くない。真白のここはとてもキレイだ」
「ヒアッ!」
「ポテッと腫れて。ほんのり赤く色づいて。誘うような甘い香りがする」
「そっ、あっ、ンアッ、あっ、ああっ……」
「それに。しっかりほぐしておかないと。後で辛いぞ」
ジュッ。
「あっ、グゥ……ッ!」
目の前チカチカする。シーツに爪を立てるけど、うまく掴めない。
「ヒッ、あっ、ヤッ、あぁ……」
課長の指が肉をかき分ける。かき分けてその先に舌が進む。
「ンッ、あ、あ……」
声が嗄れる。腕が足が体が、ヒクヒクと震える。
ジュルジュルなにかを啜られる音がして。膣の内側に熱いなにかが触れる。
「か、ちょ……っ。あっ、ンあっ」
もうダメ。今度のこんどこそ、もう、絶対、無理! ヘン!
背中ゾクゾクするし、息がうまく吸えない。背を反らしても、指に力を入れても……。
「あああっ……!」
ドクン。
ひときわ大きく啼いて、息が止まる。心臓が大きく跳ねて、全身がこわばる。
「あ……、は……」
クタッと力が抜けて、同時に息が戻ってきた。パクパクと金魚みたいに口を動かす。
でも、体はヒクヒクと痙攣してる。耳の奥に心臓があるんじゃないかってぐらい、鼓動がうるさい。
目の前で炭酸が弾けてるみたい。チカチカする。
(あ……)
ぼんやりしたあたしの視界が、課長を捉える。
あたしから離れて、シャツをスラックスを、なにもかも脱ぎ捨ててく課長の姿。
筋肉質で、胸やお腹もそうなんだけど、首の筋とか鎖骨まで浮かび上がる体は、一度見ちゃうと目を離せなくなる。
(あ、ゴム……)
サイドボードから銀色の小さな袋を取り出した課長。ピッと開けるその姿までカッコいいなんて反則すぎん?
「真白」
そんな課長が、あたしに身を寄せる。とっても熱い課長の体。
そっか。
ゴムを着けたってことは、今から課長とそういうことするんだ。
「怖いか?」
その問いかけに、プルプルと首を横にふる。
怖いけど、怖くない。それより。
「ください」
課長の首に腕を回して答える。
怖いけど。課長となら怖くない。
「真白」
課長が、あたしにキスをする。
深く、あたしの舌を絡めて、唾液を混ぜるように。
(ンンッ……)
同時に、課長の指があたしの膣に沈んだ。さっきの舌よりも深く。
グチュグチュと響く音は、口か膣か。どちらからも、水音が響く。
(気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい)
声をあげられない分、気持ちいいが体のなかに蓄積していく。どんどん溜まって、爆発する時を待ちわびる。
「真白、次は力を抜けよ」
力?
「あっ……!」
グプと音がする。
「かちょ……ぉ……」
開けられた両足。指とは違う熱くて硬いものが、膣に挿ってくる。
「――――っ! 痛……いっ!」
痛い! 痛い、痛い、痛いっ! 焼けつくように痛い! メリメリ切り裂かれてるみたい!
「すまない。もう少しだけ……っ」
「ああっ……!」
ズンッとなにかがぶつかったような衝撃。身体の奥に溜まっていたものが弾けるような感覚。
「痛い……よな」
仰向けに転がるあたしに、覆いかぶさった課長の体。
課長の手がいたわるように、汗ばみ額に貼りついたあたしの髪を梳く。
「もう少しだけ我慢してくれるか。お前の体が俺の形を覚えるまで」
「は、い……」
痛いのは痛いんだけど、今はどっちかというと切り裂かれてるっていうより、ジンジンと痺れてる感覚に近い。
体は、「お前はよくやった。もう楽になってもいいんだ。痛いんだから抜いてもらえ」みたいなこと言うけど、心は、「絶対課長を離しちゃダメよ。苦しくったって頑張るの」みたいなこと叫んでる。
(今、あたし、課長とつながってる……)
痛みを凌駕するように、伝わってくる課長の存在。
課長とあたし。
どちらも裸で。
あたしのチビすぎる体は、スッポリ課長の腕のなかに収まって。
あたしと課長の匂いも吐息も熱も混じり合って。
あたしには課長しか見えなくて。課長もあたししか見てなくて。
なにより、あたしの体の奥で、二人つながってる。あたしの体の奥で、課長が動くのがわか――。
「――っ! そんなに締めつけるなっ」
「締めつけてなんかっ、アァンッ!」
腰が震えた。
先に動いたのは課長でしょうがっ!
「真白っ!」
「あっ、ンあっ、あっ、か、かちょぉっ……!」
ギシギシとベッドがきしむ。
グチュヌチュと濡れた音がする。
あたしの嬌声と、課長の乱れた吐息。互いの熱と匂いがあたりに満ちる。
「あっ、あっ、ンはっ、あっ、かちょっ、もっ、もうっ……!」
課長の動きが激しく速くなる。突き上げられるたび、あたしのなかに、気持ちいいがドンドン溜まっていって。
「グッ……!」
「あぁあっ……!」
ズンッと突き上げられ、脳裏で気持ちいいが弾ける。
「あ……、ヒ……ィ……」
あたしの腰を掴み、二度、三度と自分の腰を叩きつける課長。
そのたびに溢れた熱が、強張った体を満たす。ドクドクと溢れるその熱さに、体が震えた。
*
「すまない。無理をさせてしまったか?」
裸のまま、二人、いっしょにくるまった布団のなかで。あたしの髪を優しく梳いた課長が言った。
そんなことないと、首を横に振る。
そりゃあ痛かったし、シーツに赤い血の跡あったけど。だからって無理をしたって感じはない。むしろ。
「うれしかったです」
課長と一つになれて。
課長に愛されて。
「真白……」
そうやって、あたしを呼んでくれて。課長に名前を呼ばれて。あたし、とても幸せだ。
(――あ)
「そう言えば。課長って下のお名前、なんて言うんですか?」
ずっと訊きたくて、訊きそびれてたことを口にする。苗字=大神、名前=課長ってことはないよね? さすがに。
「お前、知らなかったのか?」
「……はい。すみません」
これって、怒られる案件?
恋人の名前を知らないなんて! 名前も知らない相手とセックスしたのか! って。
「将吾。大神将吾だ」
「大神……将吾さん……」
将吾、将吾。大神将吾さん。
何度も心のなかで反芻する。
「お前の初めてを奪った男の名前だ。よく覚えておけ」
課長――もとい、将吾さんが、柔らかい眼差しであたしを見つめる。
「違いますよ。あたしの初めてを奪ったんじゃなくて、あたしの初めてをたくさん愛してくれた人です」
その眼差しに負けないぐらい、あたしも微笑んでみる。
「ね? 将吾さん」
って、思いっきり噛んだ――っ!
初めての名前呼びだからって、気合い入れたらメチャクチャ噛んだっ!
ブハッ。
「フハッ。ハハハハッ」
吹き出し、思いっきり笑い出した将吾さん。布団の中じゃなきゃ、きっとお腹を抱えてたに違いない笑い方。
「リテイク! リテイクお願いします!」
うえ~ん。
カッコよく決めたかったのにぃっ!
どうしてあたしは、こうも抜けてるのよぉっ!
「いいぞ、何度でも呼べ」
泣きそうなあたしを、ポフンとかちょ……将吾さんが抱きとめる。
「その代わり。この先『課長』なんて呼んだら、そのたびにキスで口を塞ぐからな」
こんなふうに。
チュッと軽いキスが降りてくる。けど。
「それだと、あたし、いっぱい課長呼びしなくちゃいけなくなりますけど?」
クスクスと笑いながら伝える。
だって、いっぱいキスして欲しいし。キス以外のこともして欲しい。
今のあたしはとっても欲張りなのだ。
「むう」
将吾さんが、真剣に困ったって感じの唸り声を上げた。
ヌチ。ヌチヌチ、クチュ。
いやらしい水音が寝室に響く。
「あっ、ンっ、ふぁっ……!」
同時に、あたしの漏らす声も。
あたし、こんな声、出るんだ。こんな声、漫画とかの誇張だって思ってたのに。
「ああっ……!」
胸を強く吸われ、ひときわ大きな嬌声と、腰が反った。そして。
「あっ、やっ、あっ、アアッ……」
あたしの下着の中に潜り込んだ課長の指が、グチっと濡れた音を立てた。
「ここ、気持ちいいのか?」
「わ、わかりませ、ンンッ!」
触れられてるのは、あたしの膣口。持ち主のあたしだって、そんなに触ったことないのに。
「アッ、いっ、ああっ、ンッ、そこぉ……!」
グチグチ、ヌチヌチ。
課長の指は執拗にそこをこする。
こするだけじゃない。
「ヒィン……ッ!」
グプ。
中にも入る。
「痛いか?」
「そ、それは平気……、アァン!」
確認だけすると、指が前後に動く。
「アッ、や、ダメですっ」
その動き、なんかヘン!
「ダメじゃない。気持ちよければ、そのまま感じていろ」
「そんなこと言ったってぇ、あっ、ああっ、んっ」
頭、おかしくなるっ! 息、熱い! うまく吸えないっ!
「真白、もう少しだけ力を抜け」
「む、無理ですっ! あぁんっ!」
力なんて入れてるかどうか、それすらわかんないっ!
「――仕方ないな」
へ?
スルスルと脱がされるあたしのおパンツ。――って。
(うぎゃあああっ! ナニアレ!)
脱がすため持ち上げられた腰。脱げていくおパンツと脚の間。つながる透明の――糸?
「濡れてるな」
そうですね!
あたし、あんな糸引いちゃってるぐらい濡れてますね!
そんな確認するように言わなくても、よくわかっておりますよ!
恥ずかしさで、頭爆発しそう。もうイヤ。死にたい。
「もう少し濡らしておくか」
ほへ?
「ひゃあっ、かか、課長っ!?」
持ち上げられた腰。その間に課長の顔が沈む。
「ああっ、そ、そんなとこっ、汚ぃ……、ひあぁあっ!」
舐めないで! そんなとこ舐めないで! お願いだから舐めないで!
「汚くない。真白のここはとてもキレイだ」
「ヒアッ!」
「ポテッと腫れて。ほんのり赤く色づいて。誘うような甘い香りがする」
「そっ、あっ、ンアッ、あっ、ああっ……」
「それに。しっかりほぐしておかないと。後で辛いぞ」
ジュッ。
「あっ、グゥ……ッ!」
目の前チカチカする。シーツに爪を立てるけど、うまく掴めない。
「ヒッ、あっ、ヤッ、あぁ……」
課長の指が肉をかき分ける。かき分けてその先に舌が進む。
「ンッ、あ、あ……」
声が嗄れる。腕が足が体が、ヒクヒクと震える。
ジュルジュルなにかを啜られる音がして。膣の内側に熱いなにかが触れる。
「か、ちょ……っ。あっ、ンあっ」
もうダメ。今度のこんどこそ、もう、絶対、無理! ヘン!
背中ゾクゾクするし、息がうまく吸えない。背を反らしても、指に力を入れても……。
「あああっ……!」
ドクン。
ひときわ大きく啼いて、息が止まる。心臓が大きく跳ねて、全身がこわばる。
「あ……、は……」
クタッと力が抜けて、同時に息が戻ってきた。パクパクと金魚みたいに口を動かす。
でも、体はヒクヒクと痙攣してる。耳の奥に心臓があるんじゃないかってぐらい、鼓動がうるさい。
目の前で炭酸が弾けてるみたい。チカチカする。
(あ……)
ぼんやりしたあたしの視界が、課長を捉える。
あたしから離れて、シャツをスラックスを、なにもかも脱ぎ捨ててく課長の姿。
筋肉質で、胸やお腹もそうなんだけど、首の筋とか鎖骨まで浮かび上がる体は、一度見ちゃうと目を離せなくなる。
(あ、ゴム……)
サイドボードから銀色の小さな袋を取り出した課長。ピッと開けるその姿までカッコいいなんて反則すぎん?
「真白」
そんな課長が、あたしに身を寄せる。とっても熱い課長の体。
そっか。
ゴムを着けたってことは、今から課長とそういうことするんだ。
「怖いか?」
その問いかけに、プルプルと首を横にふる。
怖いけど、怖くない。それより。
「ください」
課長の首に腕を回して答える。
怖いけど。課長となら怖くない。
「真白」
課長が、あたしにキスをする。
深く、あたしの舌を絡めて、唾液を混ぜるように。
(ンンッ……)
同時に、課長の指があたしの膣に沈んだ。さっきの舌よりも深く。
グチュグチュと響く音は、口か膣か。どちらからも、水音が響く。
(気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい)
声をあげられない分、気持ちいいが体のなかに蓄積していく。どんどん溜まって、爆発する時を待ちわびる。
「真白、次は力を抜けよ」
力?
「あっ……!」
グプと音がする。
「かちょ……ぉ……」
開けられた両足。指とは違う熱くて硬いものが、膣に挿ってくる。
「――――っ! 痛……いっ!」
痛い! 痛い、痛い、痛いっ! 焼けつくように痛い! メリメリ切り裂かれてるみたい!
「すまない。もう少しだけ……っ」
「ああっ……!」
ズンッとなにかがぶつかったような衝撃。身体の奥に溜まっていたものが弾けるような感覚。
「痛い……よな」
仰向けに転がるあたしに、覆いかぶさった課長の体。
課長の手がいたわるように、汗ばみ額に貼りついたあたしの髪を梳く。
「もう少しだけ我慢してくれるか。お前の体が俺の形を覚えるまで」
「は、い……」
痛いのは痛いんだけど、今はどっちかというと切り裂かれてるっていうより、ジンジンと痺れてる感覚に近い。
体は、「お前はよくやった。もう楽になってもいいんだ。痛いんだから抜いてもらえ」みたいなこと言うけど、心は、「絶対課長を離しちゃダメよ。苦しくったって頑張るの」みたいなこと叫んでる。
(今、あたし、課長とつながってる……)
痛みを凌駕するように、伝わってくる課長の存在。
課長とあたし。
どちらも裸で。
あたしのチビすぎる体は、スッポリ課長の腕のなかに収まって。
あたしと課長の匂いも吐息も熱も混じり合って。
あたしには課長しか見えなくて。課長もあたししか見てなくて。
なにより、あたしの体の奥で、二人つながってる。あたしの体の奥で、課長が動くのがわか――。
「――っ! そんなに締めつけるなっ」
「締めつけてなんかっ、アァンッ!」
腰が震えた。
先に動いたのは課長でしょうがっ!
「真白っ!」
「あっ、ンあっ、あっ、か、かちょぉっ……!」
ギシギシとベッドがきしむ。
グチュヌチュと濡れた音がする。
あたしの嬌声と、課長の乱れた吐息。互いの熱と匂いがあたりに満ちる。
「あっ、あっ、ンはっ、あっ、かちょっ、もっ、もうっ……!」
課長の動きが激しく速くなる。突き上げられるたび、あたしのなかに、気持ちいいがドンドン溜まっていって。
「グッ……!」
「あぁあっ……!」
ズンッと突き上げられ、脳裏で気持ちいいが弾ける。
「あ……、ヒ……ィ……」
あたしの腰を掴み、二度、三度と自分の腰を叩きつける課長。
そのたびに溢れた熱が、強張った体を満たす。ドクドクと溢れるその熱さに、体が震えた。
*
「すまない。無理をさせてしまったか?」
裸のまま、二人、いっしょにくるまった布団のなかで。あたしの髪を優しく梳いた課長が言った。
そんなことないと、首を横に振る。
そりゃあ痛かったし、シーツに赤い血の跡あったけど。だからって無理をしたって感じはない。むしろ。
「うれしかったです」
課長と一つになれて。
課長に愛されて。
「真白……」
そうやって、あたしを呼んでくれて。課長に名前を呼ばれて。あたし、とても幸せだ。
(――あ)
「そう言えば。課長って下のお名前、なんて言うんですか?」
ずっと訊きたくて、訊きそびれてたことを口にする。苗字=大神、名前=課長ってことはないよね? さすがに。
「お前、知らなかったのか?」
「……はい。すみません」
これって、怒られる案件?
恋人の名前を知らないなんて! 名前も知らない相手とセックスしたのか! って。
「将吾。大神将吾だ」
「大神……将吾さん……」
将吾、将吾。大神将吾さん。
何度も心のなかで反芻する。
「お前の初めてを奪った男の名前だ。よく覚えておけ」
課長――もとい、将吾さんが、柔らかい眼差しであたしを見つめる。
「違いますよ。あたしの初めてを奪ったんじゃなくて、あたしの初めてをたくさん愛してくれた人です」
その眼差しに負けないぐらい、あたしも微笑んでみる。
「ね? 将吾さん」
って、思いっきり噛んだ――っ!
初めての名前呼びだからって、気合い入れたらメチャクチャ噛んだっ!
ブハッ。
「フハッ。ハハハハッ」
吹き出し、思いっきり笑い出した将吾さん。布団の中じゃなきゃ、きっとお腹を抱えてたに違いない笑い方。
「リテイク! リテイクお願いします!」
うえ~ん。
カッコよく決めたかったのにぃっ!
どうしてあたしは、こうも抜けてるのよぉっ!
「いいぞ、何度でも呼べ」
泣きそうなあたしを、ポフンとかちょ……将吾さんが抱きとめる。
「その代わり。この先『課長』なんて呼んだら、そのたびにキスで口を塞ぐからな」
こんなふうに。
チュッと軽いキスが降りてくる。けど。
「それだと、あたし、いっぱい課長呼びしなくちゃいけなくなりますけど?」
クスクスと笑いながら伝える。
だって、いっぱいキスして欲しいし。キス以外のこともして欲しい。
今のあたしはとっても欲張りなのだ。
「むう」
将吾さんが、真剣に困ったって感じの唸り声を上げた。
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