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第1話
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「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
豪奢なシャンデリアに照らされたダンスホール。
貴族たちの集まる舞踏会で、美しいドレスで着飾った女性を侍らせていた婚約者のウィラードから告げられたのは、婚約破棄の宣言ではなく、愛の告白であった。
「な、なんて……?」
ルーシャは一瞬、自分が何を言われたのか分からなくて困惑する。
遠巻きに見ていた人々も唖然としているが、なんと発言した張本人も驚いていた。
「なっ、なんで俺は本音を話してしまったんだ……!?」
ウィラードは呆然としているが、それはルーシャには聞き逃せない言葉だった。
(えっ、『本音』?)
おかしい。
この状況は絶対におかしい。
ウィラードはルーシャに対して無愛想で素っ気なく、ルーシャがどれほど彼に尽くそうがお構い無しの婚約者だったはずだ。
数年前に黙って隣国へ留学へ行ってしまい、ようやく帰ってきてくれたが、彼の態度は一向に変わらないまま。
手紙を出そうと考えたりもしたが、これまで一度も返事を貰えなかったことから、また何も返ってこないはずだと諦めたりもしていた。
しかし、帰ってきてからも無愛想なままのウィラードには一つだけ変化があった。
ルーシャ以外の女性と親しくしているのだ。
ルーシャとのお茶会はいつもつまらなさそうだったし、夜会でダンスをする時も目を合わせることすらしてくれなかった。
それなのに、その令嬢とは楽しそうにお茶会をして、彼女の友人たちも交えて談笑していたり、ルーシャとはまるで違う対応だ。
その上、パーティーで隣に立つどころか腕組みまで許している。
ルーシャは思ったのだ。
もしやウィラードは、この令嬢のことが好きなのだろうかと。
無愛想だった彼が心を許したのだから、これは恋心を抱いているに違いない。
二人の距離の近さからしても、そうだとしか思えないのだ。
特に好きでもなんでもないルーシャは、ただの親が決めた婚約者。
今のウィラードにとっては一番目障りで仕方ない存在になる。
だから、そろそろ婚約破棄をされるのでは無いのかと身構えていたのだが……。
(なんか、思っていたのと違うような……?)
ルーシャはようやく自分の間違いに気がついたが、もうウィラードは止められない。
「ウィラード様、何をおっしゃいますの!?あなたが好きなのは、このわたくしでしょう!?」
ウィラードが侍らせていた令嬢が、憤りながら詰め寄るも、彼は冷たくその手を振り払った。
「は……?君のことなんか好きでもなんでもないんだが。というより、どうして君はいつも俺の周りをうろついているんだ?今日だって離れてくれとずっと遠回しに言っていたのに、君のせいでルーシャに誤解されたじゃないか!」
「ええっ!?」
「はっ!俺はどうしてしまったんだ……!?」
なぜか令嬢とウィラードは二人して驚愕の声を上げている。
令嬢の方はまさかそんなことを言われると思っていなかったからなのだが、ウィラードの方はまたしても自分の発言に驚いているからだった。
ウィラードは口を抑えたあと、かつてないほど焦った顔をしている。
その険しい顔は恐ろしいほどの気迫で、誰一人として彼に声をかけることなどできなかった。
一体何がどうなっているのか。
ルーシャが婚約破棄されようとしていたはずなのに、なぜかややこしいことになっている。
(これは多分、私のせいなのよね……!)
ルーシャが思い出すのは、つい二週間前の出来事だった。
「え?」
豪奢なシャンデリアに照らされたダンスホール。
貴族たちの集まる舞踏会で、美しいドレスで着飾った女性を侍らせていた婚約者のウィラードから告げられたのは、婚約破棄の宣言ではなく、愛の告白であった。
「な、なんて……?」
ルーシャは一瞬、自分が何を言われたのか分からなくて困惑する。
遠巻きに見ていた人々も唖然としているが、なんと発言した張本人も驚いていた。
「なっ、なんで俺は本音を話してしまったんだ……!?」
ウィラードは呆然としているが、それはルーシャには聞き逃せない言葉だった。
(えっ、『本音』?)
おかしい。
この状況は絶対におかしい。
ウィラードはルーシャに対して無愛想で素っ気なく、ルーシャがどれほど彼に尽くそうがお構い無しの婚約者だったはずだ。
数年前に黙って隣国へ留学へ行ってしまい、ようやく帰ってきてくれたが、彼の態度は一向に変わらないまま。
手紙を出そうと考えたりもしたが、これまで一度も返事を貰えなかったことから、また何も返ってこないはずだと諦めたりもしていた。
しかし、帰ってきてからも無愛想なままのウィラードには一つだけ変化があった。
ルーシャ以外の女性と親しくしているのだ。
ルーシャとのお茶会はいつもつまらなさそうだったし、夜会でダンスをする時も目を合わせることすらしてくれなかった。
それなのに、その令嬢とは楽しそうにお茶会をして、彼女の友人たちも交えて談笑していたり、ルーシャとはまるで違う対応だ。
その上、パーティーで隣に立つどころか腕組みまで許している。
ルーシャは思ったのだ。
もしやウィラードは、この令嬢のことが好きなのだろうかと。
無愛想だった彼が心を許したのだから、これは恋心を抱いているに違いない。
二人の距離の近さからしても、そうだとしか思えないのだ。
特に好きでもなんでもないルーシャは、ただの親が決めた婚約者。
今のウィラードにとっては一番目障りで仕方ない存在になる。
だから、そろそろ婚約破棄をされるのでは無いのかと身構えていたのだが……。
(なんか、思っていたのと違うような……?)
ルーシャはようやく自分の間違いに気がついたが、もうウィラードは止められない。
「ウィラード様、何をおっしゃいますの!?あなたが好きなのは、このわたくしでしょう!?」
ウィラードが侍らせていた令嬢が、憤りながら詰め寄るも、彼は冷たくその手を振り払った。
「は……?君のことなんか好きでもなんでもないんだが。というより、どうして君はいつも俺の周りをうろついているんだ?今日だって離れてくれとずっと遠回しに言っていたのに、君のせいでルーシャに誤解されたじゃないか!」
「ええっ!?」
「はっ!俺はどうしてしまったんだ……!?」
なぜか令嬢とウィラードは二人して驚愕の声を上げている。
令嬢の方はまさかそんなことを言われると思っていなかったからなのだが、ウィラードの方はまたしても自分の発言に驚いているからだった。
ウィラードは口を抑えたあと、かつてないほど焦った顔をしている。
その険しい顔は恐ろしいほどの気迫で、誰一人として彼に声をかけることなどできなかった。
一体何がどうなっているのか。
ルーシャが婚約破棄されようとしていたはずなのに、なぜかややこしいことになっている。
(これは多分、私のせいなのよね……!)
ルーシャが思い出すのは、つい二週間前の出来事だった。
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