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意識
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唇を離しても、また重ねたくなる。息をつかせないほど激しく舌を絡ませて、倫子の舌を味わった。唇を離すとつっと糸が垂れる。
「こんなにするなんて……。」
春樹の胸の中で、倫子はそうつぶやいた。
「久しぶりだったから。」
抱きしめる体の温もりも久しぶりだった。女特有の柔らかさや温かさ、そして匂いもすべてが懐かしく思える。
「セックスするの?」
「いいや。飲んでると立たないこともあるし。」
「おじさん。」
「言ったな。」
そう言ってまたキスをする。倫子の口から苦しそうに声が漏れた。
「ん……ん……。」
倫子の飲んだ酒で酔いそうだ。自分の何倍も飲んでいるのだから。
「酔いそう。」
春樹はそう言って倫子をまた抱きしめる。すると倫子は呆れたように言った。
「酔ってるじゃない。大人しく寝て。」
「帰るの?」
倫子はすっと春樹から体を離す。
「今度があれば良いわね。」
すると今度、春樹は倫子の体を後ろから抱きしめた。
「一緒にいて。」
「酔っぱらい。」
「セックスできないからすねるな。」
「別にしてもしなくても良いわ。」
必要性を感じない。いつもそう思っていた。ただ遊びでセックスをするのはかまわない。ただ興味はある。ここまで歳の離れた人とすることは今まで無かったから。
「あいつとはしたの?」
「あいつ?」
「バーの男がずっと君を見ていた。」
牧緒のことだろう。牧緒とは寝たことはない。牧緒はそもそも尻の軽い男だ。だから亜美が目を光らせて、そうならないようにしていたのだ。だが牧緒は隙があれば、寝ようと思っているらしい。
「したこと無い。でもあなたも奥さん以外の人と寝たりしないの?」
「久しぶりだよ。こんなことをするのは。奥さんと出会う前はそれなりだったけど。」
「経験豊富。」
「かもね。」
すると倫子は、すっと体を離す。
「あなたと寝るときは、不倫ものを書くかもしれないわね。まぁ……これだけでも不貞をしたようなものだけど。」
「倫子。」
「帰るわ。一瞬でも忘れられて良かったでしょう?」
玄関へ向かい靴を履くと、春樹の方を振り返った。
「早く寝て。」
「君も気をつけて。何なら、そこにタクシーを呼んでもいい。」
「そうね。」
すると春樹はまた少しかがむと、倫子の唇にキスをする。ドアをくぐり、明日になればまた同じ毎日になる。編集長と作家の関係なのだから。だからこの一瞬だけでも一緒にいたかった。
在宅勤務から会社勤務に変わり、伊織は自分のデスクをもらった。支給されたパソコンとタブレットで、仕事をこなしている。
デザインの仕事というのは依頼がきて、案を自分で出す。それを依頼者が見て「これがいい」というものを採用されるのだ。伊織のデザインは採用されるときは続けて採用されることもあるが、採用されないときは全く採用されずそんなときは相当落ち込んでいることが多い。
だから会社勤務になれば、他のデザイナーと切磋琢磨して自分の力を上げることが出来る。社長の上岡富美子はそう思っていたのだ。伊織は会社で孤立しているところもないし、うまく周りとやっているような感じもする。冗談を言うことも、道化になることも抵抗はない。こういう人が居るのは、会社としてありがたい。
「仕事中すいません。富岡さん。」
事務の女の子が、伊織に近づいてきた。
「はい?」
「新しい住所って、これで合ってますか?」
事務の女の子はいつも着飾っていて、いつも飲み会だの合コンだのに余念がないらしい。
「はい。間違いないですよ。」
あらか様にその女の子は伊織を狙っている感じがあるが、肝心の伊織は全く興味がないようだ。
「アパート名とかじゃないんですね。貸家か何かですか?」
アパートであればアパート名や号数などが書いているのだが、それがないのにその女の子は違和感を持ったのだろう。
「知り合いの所を間借りしてるんです。」
「間借り?」
「他にも居ますから。」
自分の他は女性ばかりだ。だがそれを言う必要はないだろう。
「ルームシェアってことですか?なんか、お洒落ですね。」
お洒落なのだろうか。ただ単に泉とは時間が合わないし、倫子は最近ずっと部屋にこもっている。一緒に住んでいると言っても、お互いに干渉しないようにしているようにも見えた。
「どんな人なんですか?えー?見てみたい。あたし、遊びに行っても良いですか?」
「いいや。悪いんですけど、家主がそれを嫌がっているんで。」
他人に興味がないのだから、誰を連れてきても倫子はネタのために少し話すかもしれないし、泉も愛想はいいかもしれないが、さすがに全く知らない人を連れてくるのは抵抗がある。
「不自由ね。」
資料を手にした同僚の女性が、下げずんだように伊織をみる。
「なに?高柳。」
高柳明日菜は、伊織の同期になる。別の芸術大学をでたようだが、伊織のようにぽんぽんと採用はあまりされていないように思えた。だから半分とはいっても採用される伊織が羨ましいのだろう。
「アパートでも借りたらいいのに。別に贅沢しなきゃいけるでしょ?」
「和室がいいんだよ。大学の時の寮で洋室は懲りた。」
床に座ると尻が痛くなるし、ブラインドは融通が利かないし、何よりベッドで寝られない。
「借りてるの和室なんですか?」
「うん。」
「今時和室なんて……。」
明日菜はそう言ってバカにしたように、伊織を見ていた。
「はーい。仕事して。」
富美子はそう言うと、事務の子も明日菜も自分の席へ戻っていった。すると伊織の携帯電話にメッセージが届く。倫子からだった。
「今日は夕食はいらない。」
泉もいらないと言っていた。久しぶりにどこかへ飲みに行くのも有りかもしれない。伊織はそう思いながら、香水の瓶のボトルのデザインをまた始めた。
「こんなにするなんて……。」
春樹の胸の中で、倫子はそうつぶやいた。
「久しぶりだったから。」
抱きしめる体の温もりも久しぶりだった。女特有の柔らかさや温かさ、そして匂いもすべてが懐かしく思える。
「セックスするの?」
「いいや。飲んでると立たないこともあるし。」
「おじさん。」
「言ったな。」
そう言ってまたキスをする。倫子の口から苦しそうに声が漏れた。
「ん……ん……。」
倫子の飲んだ酒で酔いそうだ。自分の何倍も飲んでいるのだから。
「酔いそう。」
春樹はそう言って倫子をまた抱きしめる。すると倫子は呆れたように言った。
「酔ってるじゃない。大人しく寝て。」
「帰るの?」
倫子はすっと春樹から体を離す。
「今度があれば良いわね。」
すると今度、春樹は倫子の体を後ろから抱きしめた。
「一緒にいて。」
「酔っぱらい。」
「セックスできないからすねるな。」
「別にしてもしなくても良いわ。」
必要性を感じない。いつもそう思っていた。ただ遊びでセックスをするのはかまわない。ただ興味はある。ここまで歳の離れた人とすることは今まで無かったから。
「あいつとはしたの?」
「あいつ?」
「バーの男がずっと君を見ていた。」
牧緒のことだろう。牧緒とは寝たことはない。牧緒はそもそも尻の軽い男だ。だから亜美が目を光らせて、そうならないようにしていたのだ。だが牧緒は隙があれば、寝ようと思っているらしい。
「したこと無い。でもあなたも奥さん以外の人と寝たりしないの?」
「久しぶりだよ。こんなことをするのは。奥さんと出会う前はそれなりだったけど。」
「経験豊富。」
「かもね。」
すると倫子は、すっと体を離す。
「あなたと寝るときは、不倫ものを書くかもしれないわね。まぁ……これだけでも不貞をしたようなものだけど。」
「倫子。」
「帰るわ。一瞬でも忘れられて良かったでしょう?」
玄関へ向かい靴を履くと、春樹の方を振り返った。
「早く寝て。」
「君も気をつけて。何なら、そこにタクシーを呼んでもいい。」
「そうね。」
すると春樹はまた少しかがむと、倫子の唇にキスをする。ドアをくぐり、明日になればまた同じ毎日になる。編集長と作家の関係なのだから。だからこの一瞬だけでも一緒にいたかった。
在宅勤務から会社勤務に変わり、伊織は自分のデスクをもらった。支給されたパソコンとタブレットで、仕事をこなしている。
デザインの仕事というのは依頼がきて、案を自分で出す。それを依頼者が見て「これがいい」というものを採用されるのだ。伊織のデザインは採用されるときは続けて採用されることもあるが、採用されないときは全く採用されずそんなときは相当落ち込んでいることが多い。
だから会社勤務になれば、他のデザイナーと切磋琢磨して自分の力を上げることが出来る。社長の上岡富美子はそう思っていたのだ。伊織は会社で孤立しているところもないし、うまく周りとやっているような感じもする。冗談を言うことも、道化になることも抵抗はない。こういう人が居るのは、会社としてありがたい。
「仕事中すいません。富岡さん。」
事務の女の子が、伊織に近づいてきた。
「はい?」
「新しい住所って、これで合ってますか?」
事務の女の子はいつも着飾っていて、いつも飲み会だの合コンだのに余念がないらしい。
「はい。間違いないですよ。」
あらか様にその女の子は伊織を狙っている感じがあるが、肝心の伊織は全く興味がないようだ。
「アパート名とかじゃないんですね。貸家か何かですか?」
アパートであればアパート名や号数などが書いているのだが、それがないのにその女の子は違和感を持ったのだろう。
「知り合いの所を間借りしてるんです。」
「間借り?」
「他にも居ますから。」
自分の他は女性ばかりだ。だがそれを言う必要はないだろう。
「ルームシェアってことですか?なんか、お洒落ですね。」
お洒落なのだろうか。ただ単に泉とは時間が合わないし、倫子は最近ずっと部屋にこもっている。一緒に住んでいると言っても、お互いに干渉しないようにしているようにも見えた。
「どんな人なんですか?えー?見てみたい。あたし、遊びに行っても良いですか?」
「いいや。悪いんですけど、家主がそれを嫌がっているんで。」
他人に興味がないのだから、誰を連れてきても倫子はネタのために少し話すかもしれないし、泉も愛想はいいかもしれないが、さすがに全く知らない人を連れてくるのは抵抗がある。
「不自由ね。」
資料を手にした同僚の女性が、下げずんだように伊織をみる。
「なに?高柳。」
高柳明日菜は、伊織の同期になる。別の芸術大学をでたようだが、伊織のようにぽんぽんと採用はあまりされていないように思えた。だから半分とはいっても採用される伊織が羨ましいのだろう。
「アパートでも借りたらいいのに。別に贅沢しなきゃいけるでしょ?」
「和室がいいんだよ。大学の時の寮で洋室は懲りた。」
床に座ると尻が痛くなるし、ブラインドは融通が利かないし、何よりベッドで寝られない。
「借りてるの和室なんですか?」
「うん。」
「今時和室なんて……。」
明日菜はそう言ってバカにしたように、伊織を見ていた。
「はーい。仕事して。」
富美子はそう言うと、事務の子も明日菜も自分の席へ戻っていった。すると伊織の携帯電話にメッセージが届く。倫子からだった。
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