それはきっと、気の迷い。

葉津緒

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と、急な浮遊感。


「わっ!?」


いきなり身体が浮いたと思ったら、お姫様抱っこされてて。び、吃驚した。

あ、崇悦の匂いだ。
嗅ぎ慣れたその匂いにものすごく安心する。
たったそれだけのことなのに変だよね。
大好きな崇悦が本当に帰ってきてくれたんだと、今ようやく実感出来た。

どうしよう、やっぱり凄く嬉しいな。


「おい睦実、お前少し痩せたんじゃないか? ちゃんとご飯食べていたのか?」

「えっと……最近はあんまり食べたくなくて」

「駄目だ、小さな睦実も可愛いが病気になったらどうするんだ。よし、これからは俺が毎日美味しい物をたくさん食べさせてやるぞ。
だがそうだな先ずは、お土産として世界中から取り寄せたお菓子を部屋に用意させよう。食欲がなくても甘いものなら大丈夫だろ?」

「あの、崇悦……それじゃ僕、虫歯になりそうだし太っちゃうよ?」

「ダメだ。睦実は頭の天辺から足の爪先まで、余すところなく俺の物だろ。虫歯菌ごときに侵させてたまるか。
よしそれなら俺が、大事な睦実の歯を毎日一本一本キレイに磨いてやるぞ。
だが安心していい。ぽっちゃりした睦実もきっと抱き心地が良くてますます魅力的になる筈だからな。俺のためにたくさん食べて、どんどん太ってくれて構わない」


いや、その。
さすがに歯磨きは自分でやりたいなぁ。
それに太り過ぎても病気になるのでは。

崇悦って昔から時々こんな感じで変な冗談を言うんだよね。もう慣れたけど。
嗚呼、でもまた今の発言を聞いた生徒会の皆様からすごい目で見られちゃってるし。

うああ、は、恥ずかしいっ。


「お、お願い崇悦。もぉ……行こ?」

「………………………………ブフッ」


「ぶふっ?」

「帝王……」


僕は無言で制服の胸ポケットからティッシュを取り出し、崇悦の鼻血を拭いてあげた。
うん、これも慣れっこだから。

生徒会の皆様に背中を向けてて良かったね、崇悦。
風紀委員長さまにはバレてるみたいだけど、まぁ別に良いか。



 ***



こうして僕は婚約者である帝王、崇悦の部屋へとお姫様抱っこされたまま向かったのでした。

その後。

朝まで崇悦によって鳴かされまくったとか、そのせいで翌日は学校を休む羽目になったとか、休んでいる間に崇悦が全校集会で僕との婚姻関係を発表しちゃったとか。

――を経て、最近はわりと静かに学校生活を送っています。


そういえば、崇悦が新しい生徒会長になりました。
前会長さまから無理やり奪った訳ではなく、きちんと選挙投票を行って全校生徒に選ばれたんですよ?

崇悦いわく日本は民主主義の国だから正々堂々それに従ったまで、だそうです。

あと、前会長さまは現在も生徒会の庶務という別の肩書でお仕事を続けていらっしゃいます。(※帝王命令)
僕も崇悦の指名で会長補佐になり、毎日仕事のお手伝いをしているんですよ。



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