53 / 203
絶念
しおりを挟む
「ティファナの言うことは事実だよ。ルイソード殿、時間を取って済まない。だがこれだけは言わせて欲しい」
ローサムは顔を上げて、ルイソードに断りを入れて、話し始めた。
「邸でルトアスは色々言っていたのかもしれないが、ティファナが、私が妃殿下のことを話したことがあったか?学園に入学前に、ペルガメント侯爵令嬢には敵わない、王太子妃は絶対に無理だと言った時だけじゃないか?」
「…」
「ティファナは始めは敢えて一切出さなかった、比べられると思うかもしれないからとね。でも、次元が違うから、比べようもないと私に言ったよ、そして他の人には無理だとね、比べる相手が周りにいないんだよ」
「あなたには敢えて言わなかったわ、だって他の誰も出来ないのだから。でも言っていたら、こんなに驕ることはなかったのかしらね、私は間違えたのね」
ティファナは落ち着いた声のまま、顔も上げず、話し終えた。
「どちらにしても、最低だよ。そもそも妃殿下には権利がある、婚約者にすり寄るなんて。姉さんだって、義兄上が言い寄られていたら、意見していたじゃないか」
ルイソードも長身で端正な顔立ちで、夜会やパーティーで色目を使う者もおり、横で牽制しているルアンナを見掛けたこともある。
「そ、それは…」
「自分は言い寄ってもいいが、言い寄られるのは許さないとでも言うのか?」
「ルトアス、もういいよ。ルアンナは何も理解できないことが、よく分かった。親がいくら言って、気を揉んでも、認めないのなら伝わらない」
「あっ、違うの。サリーが陰湿だっただけなのよ」
「王太子妃殿下だ!呼び捨てにするなど、そんなことも分からないのか!!」
冷めた口調ではあったが、ルイソードは常識のある話し方をしていたが、怒号がついに響き渡った。
「同級生だから、つい」
「友人でもなければ、知り合いですらない、王太子妃殿下をつい呼び捨てするのか?今までもしていた証拠だな」
「知り合いではあるもの…」
「加害者としてだろう」
「かがい、しゃ…でもこれまで何も言って来なかったの。そんなに怒っていないということじゃないの?」
「それは、お前が決めることではないわ!」
あまりに愚かな発言にローサムが怒鳴ったが、ルイソードもティファナもルトアスは全く同じ感想を持った。だが、ルアンナに意見する気力も失っていた。
「今日はお引き取り願えますか、離縁については、またこちらから連絡します」
「離縁?離縁なんてあり得ないわ、嫌よ、ルイ、待って」
「黙りなさい!」
ローサムが再び怒鳴ったが、凍てつく怒りを表したのはルイソードの方だった。
「君は一切、謝罪もしないんだな。信じられないよ」
「あっ、ごめんなさい、ごめんなさい、許して」
「もう遅い。認めて謝罪すらできない。妃殿下のせいではない、君自身の責任だ。そこだけは履き違えるなよ」
ローサムとティファナがルアンナ両腕を持ち、私の家はここだ、シュリアに会わせて、シュリアを連れて来てと喚くルアンナを連れ帰った。
ルイソードが離縁する理由を両親に話すと、離縁に賛同し、シュリアはこのままこちらで育てることになった。アズラー侯爵家も異論はないと、離縁状にサインにして、慰謝料と養育費を受け取ることにした。
今後のことを考えると、直接会わせることは難しいかもしれないが、ささやかな贈り物なら渡しますと言うと、ティファナは誰からとは言わないでいいので、渡していただけると有難いですと涙を流し、何度も御礼を言った。ルアンナは暴れていたが、夫妻も孫に会えないのは辛いだろう。
そして、夫妻はひと回り小さくなったような身体で、シュリアをどうかよろしくお願いしますと、深々と頭を下げて帰って行った。
ルアンナはルイソードは自身を愛していると言っていたが、婚約、結婚をしたからには努力するべきだという意味であったが、ルアンナは贈り物をくれる・思いやってくれる=私を愛していると判断したのだろう。ゆえにルイソードはまだ再婚は考えられないが、離縁で疲れはしたが、精神的に落ち込むことはなかった。
シュリアは乳母と使用人に大事に育てられおり、理解できる年になったら話をして、本人がもし会いたいというなら会わせることは否定しないが、ルアンナが母親ということは枷になることだろう。その憂いを出来る限り、拭ってはやりたい。
ローサムは顔を上げて、ルイソードに断りを入れて、話し始めた。
「邸でルトアスは色々言っていたのかもしれないが、ティファナが、私が妃殿下のことを話したことがあったか?学園に入学前に、ペルガメント侯爵令嬢には敵わない、王太子妃は絶対に無理だと言った時だけじゃないか?」
「…」
「ティファナは始めは敢えて一切出さなかった、比べられると思うかもしれないからとね。でも、次元が違うから、比べようもないと私に言ったよ、そして他の人には無理だとね、比べる相手が周りにいないんだよ」
「あなたには敢えて言わなかったわ、だって他の誰も出来ないのだから。でも言っていたら、こんなに驕ることはなかったのかしらね、私は間違えたのね」
ティファナは落ち着いた声のまま、顔も上げず、話し終えた。
「どちらにしても、最低だよ。そもそも妃殿下には権利がある、婚約者にすり寄るなんて。姉さんだって、義兄上が言い寄られていたら、意見していたじゃないか」
ルイソードも長身で端正な顔立ちで、夜会やパーティーで色目を使う者もおり、横で牽制しているルアンナを見掛けたこともある。
「そ、それは…」
「自分は言い寄ってもいいが、言い寄られるのは許さないとでも言うのか?」
「ルトアス、もういいよ。ルアンナは何も理解できないことが、よく分かった。親がいくら言って、気を揉んでも、認めないのなら伝わらない」
「あっ、違うの。サリーが陰湿だっただけなのよ」
「王太子妃殿下だ!呼び捨てにするなど、そんなことも分からないのか!!」
冷めた口調ではあったが、ルイソードは常識のある話し方をしていたが、怒号がついに響き渡った。
「同級生だから、つい」
「友人でもなければ、知り合いですらない、王太子妃殿下をつい呼び捨てするのか?今までもしていた証拠だな」
「知り合いではあるもの…」
「加害者としてだろう」
「かがい、しゃ…でもこれまで何も言って来なかったの。そんなに怒っていないということじゃないの?」
「それは、お前が決めることではないわ!」
あまりに愚かな発言にローサムが怒鳴ったが、ルイソードもティファナもルトアスは全く同じ感想を持った。だが、ルアンナに意見する気力も失っていた。
「今日はお引き取り願えますか、離縁については、またこちらから連絡します」
「離縁?離縁なんてあり得ないわ、嫌よ、ルイ、待って」
「黙りなさい!」
ローサムが再び怒鳴ったが、凍てつく怒りを表したのはルイソードの方だった。
「君は一切、謝罪もしないんだな。信じられないよ」
「あっ、ごめんなさい、ごめんなさい、許して」
「もう遅い。認めて謝罪すらできない。妃殿下のせいではない、君自身の責任だ。そこだけは履き違えるなよ」
ローサムとティファナがルアンナ両腕を持ち、私の家はここだ、シュリアに会わせて、シュリアを連れて来てと喚くルアンナを連れ帰った。
ルイソードが離縁する理由を両親に話すと、離縁に賛同し、シュリアはこのままこちらで育てることになった。アズラー侯爵家も異論はないと、離縁状にサインにして、慰謝料と養育費を受け取ることにした。
今後のことを考えると、直接会わせることは難しいかもしれないが、ささやかな贈り物なら渡しますと言うと、ティファナは誰からとは言わないでいいので、渡していただけると有難いですと涙を流し、何度も御礼を言った。ルアンナは暴れていたが、夫妻も孫に会えないのは辛いだろう。
そして、夫妻はひと回り小さくなったような身体で、シュリアをどうかよろしくお願いしますと、深々と頭を下げて帰って行った。
ルアンナはルイソードは自身を愛していると言っていたが、婚約、結婚をしたからには努力するべきだという意味であったが、ルアンナは贈り物をくれる・思いやってくれる=私を愛していると判断したのだろう。ゆえにルイソードはまだ再婚は考えられないが、離縁で疲れはしたが、精神的に落ち込むことはなかった。
シュリアは乳母と使用人に大事に育てられおり、理解できる年になったら話をして、本人がもし会いたいというなら会わせることは否定しないが、ルアンナが母親ということは枷になることだろう。その憂いを出来る限り、拭ってはやりたい。
1,082
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる