【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

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番外編1

エマ・ネイリー14

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「でも次男だそうで…」

 爵位がないのか。騎士ということは家の手伝いをしているわけではないだろう。結婚に二の足を踏んでいるのも、それが原因かもしれない。

「爵位がないと許さないって親もいるものね」
「やはりそうでしょうか」
「うーん、高位貴族の方なら、いくつか爵位を持ってらっしゃるでしょうけど、子爵男爵辺りはまず持ってはいないでしょうね」
「そうですか…」
「でも男爵家を出ることはないんじゃないかしら、騎士として貴族籍は必要でしょうから」
「そうですね、もう少し考えてみます」
「私で良かったら相談してね」

 ソフィアは自身の結婚は考えられないが、ここにいる人たちが幸せな結婚が出来るなら、嬉しいと思うほど、東の修道院に愛着を感じている。

 そのことがソフィアを暴走させてしまった。

 ある日、あまり外出はしないソフィアだが、二人の修道女たちと一緒に買い物に出掛けた。そこで一緒にいたイーサが、あの方が前にエマと一緒にいた騎士だと教えてくれたのだ。

 エマは考えると言っていたが、向こうの話も聞いてみたいとお節介心を出してしまい、二人にちょっと本を選びたいから、しばらく別行動をしたいと言い、待ち合わせをすることにした。そして、セイルに話し掛けた。ソフィアは男性が怖いというわけではないので、話すことは問題ない。

「あの、エマ・ネイリーと一緒にいた方ですよね」
「一緒にいたというのは語弊がありますが、騎士として何度かお声掛けをしたことはあります」
「あなたが好意を持ってらっしゃる方ではないの?」
「いいえ、私ではありません。どなたかと間違えてらっしゃいませんか?」

 確かにイーサが見た時はこの人だったけど、あまり外出のない修道女がいう男性が、同一人物だったとは限らないことに気付いた。

「えっ、そうなのですか…失礼しました。てっきりあなたかと」
「彼女は騎士とお付き合いしてらっしゃるのですか」
「お付き合いまでは分かりませんが、好意を寄せられていると…」
「そうですか…私ではないことは確かです」
「失礼しました」

 しっかり確認もせずに、行動力がありすぎると兄に諫められたことを思い出して、恥ずかしくなってしまった。

「いえ、気にされないください。失礼ですが、わざわざ話し掛けて来るぐらいですから、ネイリーさんとは親しいのですか?」
「特別親しいわけではありませんが、幸せになって欲しいとは思っていまして。元々、お顔だけは存じていたものですから」
「そうでしたか、その騎士が誰なのかご存じありませんか」

 なぜそのようなことを聞くのだろうか、修道女に好意を抱くことは、褒められることではないのは分かるが、咎められることなのだろうか。

「騎士団の中にいるならば、私もどういうつもりか聞いてみましょう」
「えっと…名前は知りませんが、男爵家の次男だと伺いました」
「男爵家の次男ですか…多いですね」

 セイルは自身もであるが、男爵家の次男は騎士団にもたくさんいる。最初にエマにぶつかっていたヒースも男爵家の次男だ。聞いて回るわけにもいかないが、忠告はしなくてはいけない。

「一つだけ申し上げておきます。もし好意を持っている者がいたとしても、私は反対します」
「っな!修道女だからというのですか!」

 やっぱり男は馬鹿にして、ふざけるなと思った瞬間だった。

「違います。修道女以前の話です、顔を知っていたのなら、彼女が何をしたかご存知ないのですか?事実を確認することをお勧めします」
「…えっ」
「私のことは信じなくても構いません、失礼な物言いを申し訳ありませんでした。私は二度とネイリーさんに関わることはありません」

 セイルは王都から戻っていたが、エマ・ネイリーとは会わないようにしていたのだ。セイルは王都で偶然、同期に会い、ある話を聞いていた。
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