182 / 203
番外編2
レオ・ペルガメント2
しおりを挟む
さすがに血管が切れた時にひとりだと不味いと思い、妻のジェシカと金庫の中身を精査することにした。
「何よ、これは!」
ジェシカは最初の一枚手に取っただけで、目がつり上がってしまった。だが、気持ちは分かる。
「ジェシカまでも血管を切らないでくれよ、そのために呼んだのだから」
「これが落ち着いていられるとでも?さすがに両親は本当に血管が切れると危ないから、兄夫婦を呼ぶわ。お姉様も呼ばないと怒りそうね…」
「そうなると、ご両親にもバレないか?」
こそこそしていても、あのノーラ前公爵夫妻が気付かないはずがない。
「医者を呼んでおきましょうか?」
「それはいいけど…」
「ご両親のことはあなたに任せるわ、あなたがやるべきでしょう?」
「ああ、両親は私が一人で行う」
「既に報復された人は保管ということにして、後はどうしてやろうかしら。こちらで考えますから、あなたはご両親のことだけお考えになって、ほほほ」
「じゃあ頼むよ」
絶対に穏便には済まないだろうが、ジェシカを止める気はない。
結局、医師を念のために待機させて、ノーラ公爵家一家、隣国からポーラも飛んで来て、物凄く禍々しい空気が流れている。
「これ殺っちゃう?」
「殺っちゃいましょう」
「簡単に殺っちゃったら、楽な死に方になってしまうんじゃないか」
「締めて緩めて、じわじわ、殺らないと」
物騒な言葉しか飛び交わない。
サリー、すまない。大変なことになったかもしれない。
実は義母の生家は隣国の公爵家、義兄の妻も生家は侯爵家…ポーラの夫も公爵。力を借りようと思えば、他にもたくさんいる。
サリーから報復のことは聞いており、条件である私が王太子妃に相応しいとは言わなかったものの、馬鹿にしたり、見下していた者は多くいる。普通の記憶ならば、概ねこのようなことを言ったと書かれているだろうが、サリーの場合は一言一句、憶えているため、皮肉にも日付や場所、一緒にいた人物までしっかりと書かれている。
「優秀だと鼻に掛けて、嫌味ったらしい顔だこと」
「こんなのが王太子妃なんて、この国終わりじゃない?」
「頭がいいよりも、愛らしい方が優れているのよ」
「ブスが!」
皆、大事なサリーの記憶に、ゴミのような言葉が残っているということに、怒りしかない。背中に炎を背負っているかのようだ。
「この女、私に尊敬している、親しくしたいと言って来たわ!どの面下げてじゃない!招待客のリストから外しましょう」
「私もこの女にミーラ殿下の側妃はなんて言われたわ、よくもまあ言えたものだわ。潰しておけば良かったわ」
「うわ、これあの女の妹じゃない。姉妹揃って最悪だわ」
「私はこの女知っているわ、口が小さくて、ボソボソ喋って、いつも酸っぱいような顔をしているのよ。お前の方がブスだろうが!」
最終的にはただの悪口にもなっているような気もするが、着々と招待客から外されたり、ノーラ公爵家とポーラの嫁ぎ先の商会の顧客から外されていく。商会は他の商会を使えばいいのだが、ノーラ公爵家の商会でしか買えない物も多い。
「私の身内を蔑むような娘をお持ちの方とは、お付き合いは遠慮した方がいいと思いまして。そう思いますでしょう?」
そう言われて、一体どういうことなのかと思っても、言った方は憶えていないので、何のことか分からない。
「どうか教えていただき、謝罪させてはもらえませんか」
「憶えていないようなことなのでしょう?相手は、もう亡くなっているから、謝罪は出来ないわ」
愚かではない者は、まさか…と思う。そして、もう無理だと実感する。
愚かな者は、理由だけでもと言うが、それを聞いて謝罪されても、意味がないと言われて、こちらもどうにもならない。
問題はないのかと思うが、ある意味、サリーを蔑むような者は碌な者ではない。着々と一掃されていく。
そしてレオは、領地で療養している両親の元へ向かった。
「何よ、これは!」
ジェシカは最初の一枚手に取っただけで、目がつり上がってしまった。だが、気持ちは分かる。
「ジェシカまでも血管を切らないでくれよ、そのために呼んだのだから」
「これが落ち着いていられるとでも?さすがに両親は本当に血管が切れると危ないから、兄夫婦を呼ぶわ。お姉様も呼ばないと怒りそうね…」
「そうなると、ご両親にもバレないか?」
こそこそしていても、あのノーラ前公爵夫妻が気付かないはずがない。
「医者を呼んでおきましょうか?」
「それはいいけど…」
「ご両親のことはあなたに任せるわ、あなたがやるべきでしょう?」
「ああ、両親は私が一人で行う」
「既に報復された人は保管ということにして、後はどうしてやろうかしら。こちらで考えますから、あなたはご両親のことだけお考えになって、ほほほ」
「じゃあ頼むよ」
絶対に穏便には済まないだろうが、ジェシカを止める気はない。
結局、医師を念のために待機させて、ノーラ公爵家一家、隣国からポーラも飛んで来て、物凄く禍々しい空気が流れている。
「これ殺っちゃう?」
「殺っちゃいましょう」
「簡単に殺っちゃったら、楽な死に方になってしまうんじゃないか」
「締めて緩めて、じわじわ、殺らないと」
物騒な言葉しか飛び交わない。
サリー、すまない。大変なことになったかもしれない。
実は義母の生家は隣国の公爵家、義兄の妻も生家は侯爵家…ポーラの夫も公爵。力を借りようと思えば、他にもたくさんいる。
サリーから報復のことは聞いており、条件である私が王太子妃に相応しいとは言わなかったものの、馬鹿にしたり、見下していた者は多くいる。普通の記憶ならば、概ねこのようなことを言ったと書かれているだろうが、サリーの場合は一言一句、憶えているため、皮肉にも日付や場所、一緒にいた人物までしっかりと書かれている。
「優秀だと鼻に掛けて、嫌味ったらしい顔だこと」
「こんなのが王太子妃なんて、この国終わりじゃない?」
「頭がいいよりも、愛らしい方が優れているのよ」
「ブスが!」
皆、大事なサリーの記憶に、ゴミのような言葉が残っているということに、怒りしかない。背中に炎を背負っているかのようだ。
「この女、私に尊敬している、親しくしたいと言って来たわ!どの面下げてじゃない!招待客のリストから外しましょう」
「私もこの女にミーラ殿下の側妃はなんて言われたわ、よくもまあ言えたものだわ。潰しておけば良かったわ」
「うわ、これあの女の妹じゃない。姉妹揃って最悪だわ」
「私はこの女知っているわ、口が小さくて、ボソボソ喋って、いつも酸っぱいような顔をしているのよ。お前の方がブスだろうが!」
最終的にはただの悪口にもなっているような気もするが、着々と招待客から外されたり、ノーラ公爵家とポーラの嫁ぎ先の商会の顧客から外されていく。商会は他の商会を使えばいいのだが、ノーラ公爵家の商会でしか買えない物も多い。
「私の身内を蔑むような娘をお持ちの方とは、お付き合いは遠慮した方がいいと思いまして。そう思いますでしょう?」
そう言われて、一体どういうことなのかと思っても、言った方は憶えていないので、何のことか分からない。
「どうか教えていただき、謝罪させてはもらえませんか」
「憶えていないようなことなのでしょう?相手は、もう亡くなっているから、謝罪は出来ないわ」
愚かではない者は、まさか…と思う。そして、もう無理だと実感する。
愚かな者は、理由だけでもと言うが、それを聞いて謝罪されても、意味がないと言われて、こちらもどうにもならない。
問題はないのかと思うが、ある意味、サリーを蔑むような者は碌な者ではない。着々と一掃されていく。
そしてレオは、領地で療養している両親の元へ向かった。
712
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる